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◆第六話『波乱の予感』

「おい、トゥトゥ。俺の居場所、教えただろ」

「うっ」


 教室に戻ったベルリオットは、席につくなりナトゥールを問い詰めた。

 ナトゥールが乾いた笑みを浮かべる。


「あはは……。ば、ばれた?」

「ばれたもなにも、俺があそこにいるって知ってるのお前しかいないだろ」

「……ごめん。でも、相手が姫様だったら答えないわけにはいかないでしょ?」

「まあ、それはそうだけど」


 とはいえベルリオットがあの丘陵地帯にいるときは、ひとりになりたいとき、なのだ。

 誰であろうと足を踏み入れられるのは良い気分ではない。

 それをわかっているからこそ、いつも一緒にいるナトゥールも、ベルリオットが丘陵地帯にいるときは近寄らないのだ。


「もうびっくりしたよ。いきなり姫様から声をかけられるんだもん。って、そうだ。どうして姫様がベルを捜してたの? 見た感じ、お忍びできていたみたいだけど」

「さぁ?」

「さぁ? って。会えたんだよね?」

「ああ、会ったよ。会って、いきなり殺されかけた」

「え……、えぇええ!?」


 教室中の視線が集めてしまったナトゥールは、大声を出してしまった口を両手でふさいだ。

 ひそめた声で訊いてくる。


「ベル、なにか姫様の恨みを買うようなこと、したの?」

「するわけないだろ。そもそも会ったのだって初めてだ」

「じゃあ、どうして?」

「試したかったんだと。俺の実力を」

「ベルの? あ~……」


 ナトゥールは聡い。

 ライジェル繋がりであることに、すぐに行き着いたのだろう。

 それがベルリオットは癪に障った。そして癪に障ってしまった自分を否定したくて、わざとおどけた。


「結果は聞くなよ」


 ベルリオットがアウラを使えないのは周知の事実だ。

 そしてアウラを使えない人間などベルリオット以外のほかに聞いたことがない。

 ナトゥールが、なにかを思案するようにあごに人差し指を当てる。


「うん、それはわかるんだけど……」

「はいはい、俺はどうせ帯剣の騎士だよ」

「もうっ……いじけないで」

「いじけてねえよ。それで、なにが気になってるんだ?」

「姫様がベルの実力を試すためだけにきたとはどうしても思えないの。公務じゃないと姫様がこっちにくるのって難しいんじゃない?」

「あー、なんか訓練校に用事があって、そのついでだって言ってたな」

「姫様が訓練校に? なにしに?」

「王族のすることなんて、俺にはわからねえよ」


 そうベルリオットが答えると同時、教室の扉が開いた。

 禿頭の教師が入ってくる。

 いつも堂々としているその教師の足取りは、柄にもなくガチガチだ。

 見てわかるほどの冷や汗までかいている。


 様子がおかしい。

 しかしその理由をベルリオットはすぐに理解する。

 仏頂面の女性騎士を護衛に伴い、教室に入ってきた者こそが原因だ。

 震える声で、禿頭の教師が話し始める。


「あ、ああ~……。本日から、きみたちと共に訓練を受けてもらうことになった、リズアート・ニール・リヴェティア様だ」

「わたしのことはリズって呼んでくれて結構よ。みんな、これからよろしくね」


 と、にっこりと満面の笑みを浮かべるリズアート。

 絶句した。

 ベルリオットだけでなく、教室中の訓練生が絶句した。

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