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天と地と狭間の世界 イェラティアム  作者: 夜々里 春
終章【光満ちる空】
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◆第十四話『赤の昇華』

「なに言ってるの」


 エリアスが口から零した諦めの言葉は、すぐにリンカによって拾われた。

 彼女は指先を地に食い込ませながら両手を自身の胸のほうへと手繰りよせる。全身を震わせながら、ゆっくりと二の足で立つ。


「あたしは諦めない。ようやく逢えたあの人にまだ感謝を伝えられてない。それだけじゃない。ほかにもまだやり残したことがたくさんある。だから……絶対に生き残る」


 そう力強く言い放つリンカは揺るがぬ意志を瞳に宿していた。 

 この絶対絶命の状況であっても彼女はまだ諦めていないというのか。

 やり残したことがあるから、と。

 その理由のために最後まで戦い抜くというのか。


 やり残したこと。

 わたしにはなにがあるだろうか、とエリアスは自問する。

 頭に浮かんだのはリズアートのことだった。

 護衛という立場で彼女とは誰よりも長い時間をともにしてきた。

 騎士を続けているのは彼女を護衛するためという理由が大きい。

 最近は別で動くことが増えてしまったが、叶うならば自分が老いによって役目をまっとうできなくなるその日まで彼女の護衛を続けたい。

 それぐらいだろうか、と思ったとき、ある人物の顔がふっと浮かんだ。


 ベルリオット・トレスティングのものだ。

 彼に対して初めこそただのひねくれものという印象しかなかった。

 だが、ともに過ごしていくうちに、その印象は大きく変わっていった。

 ――大切な者を守るためならば命を賭してでも戦う。

 少々自分を蔑ろにしすぎなところもあるが、それでもその姿勢にはいつも心を動かされた。もしかすると憧れのようなものを抱いていたかもしれない。


 リズアートが彼にひどく執心していたこともあり、一時は嫉妬のような感情を抱いたこともあったが、いまではそんな気持ちなどいっさいない。

 ベルリオット・トレスティングという人物を理解し、そして受け入れたのだ。

 彼と出会ってからの日々は間違いなく自分にとって大きな比重を占める。

 だが、時間にして決して長いわけではない。

 叶うなら騎士としてではなく、ひとりの人間として、もっと長い時間をともに過ごしてみたい。

 きっとそうすれば、いま、胸に抱いた気持ちがはっきりとするような気がした。


 わたしも生きたい……生きて、その先にある未来を見てみたい……!


 そうエリアスが心の中で強く願ったとき――。

 こちらの気持ちを折るかのようにヴェリスとドゥラオスが猛った。地を踏み切り、凄まじい速度で向かってくる。さすがというべきか、ヴェリスのほうが圧倒的に速い。


 ふいに視界がうっすらと赤に染まった。

 先ほど頭部を負傷したが、そのときの血が垂れてきたのだろうか。

 ただ、それにしては眼に違和感がない。

 感覚が薄れているような気配はない。

 エリアスははたと目を見開いた。


 いや、違う。これは――!


 それを認識した途端、体が勝手に動いていた。

 再生成した剣を力任せに振るう。肉迫したヴェリスの黒の手とぶつかりあう。腕から肩の骨が軋むのを感じたが、構わずに振りぬいた。地面の砂を巻きこみ、ヴェリスを突き飛ばす。


 エリアスは肩で息をしながら舞い上がった砂塵を見つめる。

 体のあちこちが焼けるように痛い。重い。

 だが、動く。

 自身の内に射し込んだ希望の光が、心を奮い立たせてくれたおかげだ。

 打ち合った結晶剣も強度を増したのか折れていない。


 これが赤の光(ルーブラ・クラス)の力……!


 薄いが、紛れもなく赤い。

 自分の限界だと思っていた紫の光(ヴァイオラ・クラス)を突破したのだ。


 ふと砂塵の奥に巨大な影が映る。

 直後、砂塵がうねるように歪んだかと思うやいなや、ドゥラオスが姿をあらわした。

 いまならば、ドゥラオスの攻撃を正面から受けられるかもしれない。

 そう思い、エリアスは剣を構えて腰を落とす。

 と、左脇からなにかが飛び出した。

 そちらには一人しかいない。

 リンカだ。


 彼女は地に半円を描きながら凄まじい速度で駆けていく。何度体を横回転させ、その剣で何度斬りつけたのか。まるで見えない。

 ドゥラオスの股下を抜けたリンカだったが、それで終わりではなかった。流れるように反転すると、ふたたび攻撃を加えながら敵の股下をくぐる。いつの間に放っていたのか、さらに二十本もの神の矢が敵の背に突き刺さる。

 ドゥラオスが慟哭をあげながら、その場に膝をついた。


 エリアスは唖然としていた。

 これまでの彼女も速かったが、いまの動きは比べ物にならない。

 隣に立ったリンカが、しれっとした様子で言う。


「メルザさんが前に言ってたこと、本当だったみたい」


 彼女もまた赤い燐光に包まれていた。

 エリアスは驚愕すると同時、妙に胸がすっきりしたような感覚に見舞われる。

 以前、メルザリッテに稽古をつけてもらった際、エリアスとリンカはあることを言われていた。


 ――お二人は一千年にひとりの資質を持っております。豊富なアウラで満たされた地上の空気を吸ったとき、もしかするとアウラが昇華するかもしれません。


 そのとき、エリアスは半信半疑だった。

 武には自信があったが、それは一年前までだ。

 思っていた以上に自分よりも強者が多かった。

 強者と会うたびに、これまで築き上げてきた自信が欠けていった。

 だから、自分などが、という思いが先立っていたのだ。


 だが、いま、自分は手にしている。

 赤の光という力を。


 この力さえあれば――。


「わたしはまだ戦える」


 砂塵が晴れた。

 膝を折るドゥラオスに加え、ゆらりと立ち上がるヴェリスが目に入る。

 奴らを見据えながらエリアスは口にする。


「きさまらを斃し、生き残る。そして……」


 ――伝えよう。

 死の淵を目前にして確かとなったこの気持ちを彼に――。


 ドゥラオスが空気を震わすように叫んだ。

 発狂したように両拳を地に打ちつけると同時、その大口から黒球を吐き出す。その大きさはドリアークが吐くものとは比べ物にならないほど巨大だ。


 リンカが黒球に自ら向かっていき、両手に持った一対の剣を放った。黒球にあっさりと呑み込まれたのを見るやいなや、一本の幅広長剣を造り出す。黒球の側面へと剣の腹を添えるように当てて後ろへ流す。

 通り過ぎた黒球が後方の冥獄穿孔の外殻へと衝突。凄まじい衝撃音を鳴らし、深く抉りこんだ。


 リンカは長剣を放り捨てるやいなや、一対の短剣を生成し、逆手に持った。

 突撃の勢いを殺さずにドゥラオスに飛びかかっていく。

 ドゥラオスも今度は不覚をとるまいとばかりに迎撃の一手を繰り出す。


 リンカがふたたび交戦状態に入る中、ヴェリスもまた動き出した。奇声をあげながら地を這うようにエリアスのほうへ向かってきた。一瞬にして距離をつめられる。先ほど反撃を食らった怒りからだろうか、ここにきてさらに速度が上がっている。

 だが、見えないわけではない。追えないわけではない。


 エリアスは剣を振り下ろした。ヴェリスの黒の手と打ち合う。互いの得物がこすれ合い、ぎりぎりと音を鳴らす。震えるだけでどちらにも傾かない。一瞬の硬直ののち、互いの得物を弾いた。


 生まれたのはわずかな間だけだ。ふたたび打ち合い、甲高い音を鳴らす。

 連撃が始まる。攻撃の間隔が速くなっていく。自分の限界を超える速度へ到達する前に敵の手を強く弾き、大きく飛び退いた。


 ヴェリスが即座に距離を詰めてくる。

 エリアスも前へと翔けた。接触の際に一撃を加え、通り抜ける。地を、空を翔けながら一撃を互いに打ち合っては離れてを繰り返す。接触はほんの一瞬だ。しかし、その一瞬にすべてをこめなければ確実に死が待っている。


 すぐ近くでリンカとドゥラオスが戦っていた。

 先刻よりも戦場は密集状態だ。互いの敵と結んだ線が交差することは珍しくない。


 リンカのほうも死力を尽くした上で敵と互角といったところか。

 ただ、力技を不得手とするリンカでは、ドゥラオスの巨大な体を屠るのは厳しいのかもしれない。

 持ち前の俊敏さで敵を翻弄しているものの、大きな傷を与えられていないようだ。


 エリアスは自分がいつ倒れてもおかしくない状態であることを理解していた。

 おそらくリンカも同じだろう。

 時間がない。

 とはいえ決め手もない。


「リンカッ!」「エリアスッ!」


 ほぼ同時に目が合った。

 どうやら考えていたことは同じのようだ。

 これは人の未来がかかった戦いだ。

 ひとりで戦う必要なんてない。


 決め手がないなら作るしかないッ!!


 と、視界の中、槌のごとく振り下ろされたドゥラオスの右拳がリンカの頭上へと迫る。リンカはそれを避けるやいなや、敵の極太の脚へと細かい傷を刻んだ。

 ドゥラオスがたまらず膝をつく。


 エリアスはヴェリスを無視し、ドゥラオスへ追い討ちをかけに向かった。飛行の勢いをそのままに敵の巨大な横腹を薙いでいく。斬り傷程度ではない。いまや赤色に染まった剣は敵の肉を裂いた。その傷口から黒煙がしゅぅと音をたてて噴き出す。


 エリアスは全力で翔けたため、勢いを殺しきれなかった。奥の地面に足をつけながら硬直してしまう。その間、背後から脅威が迫ってくるのがわかった。頭だけを回し、振り返った先にヴェリスの姿を認める。


 いまのヴェリスの顔からは先刻のような知性など微塵も感じられない。

 牙をあらわにした猛獣そのものだ。

 次の瞬間、その顔が強張る。

 側面からリンカが迫っていた。しかもヴェリスの腕がない左側からだ。


 ヴェリスは完全に体の向きをリンカへと向きなおす。それはわずかな時間ではあったが、腕を振るよりも大きな動作だ。いくらヴェリスであっても、いまのリンカの速さを前にしては反撃する余地がなかった。


 防御の体勢に入ったヴェリスへとリンカが肉迫。恐ろしく速い連撃を加える。

 そのあまりの速さに、エリアスは剣の軌道を影としか捉えられなかった。ただ、結晶を打ち合う甲高い音が連続して聞こえるだけだ。


 苦悶の表情を浮かべたヴェリスが咆えた。

 気迫だけではない。そこにはたしかな脅威が混じっている。

 それを感じとったのか、リンカが後退した。

 怒り狂ったヴェリスがリンカへと狙いを定め、翔けだそうとしたとき――。


 エリアスはヴェリスへと肉迫した。

 リンカが稼いでくれた時間を利用し、距離を詰めていたのだ。

 腕が破裂しそうなほど力を込めた一撃を上段から振り下ろす。その間、眼前で素早く動く影を捉えた。敵が黒の手を割り込ませてきたのだ。

 完全に不意をついたというのに反応するとは、さすがとしか言いようがない。

 だが、体勢はこちらの方が圧倒的に有利だ。


 エリアスは剣を振り抜いた。直後、接触したヴェリスの手首から先を音もなく切断した。さらにその先に控えていたヴェリスの胸から腹を斬り裂く。自分でも制御しきれないほどの力をこめていたからか、下方へと体が引っ張られた。


 目だけを動かし、即座に敵の状態を確認する。胸に刻んだ傷は深い。そのうえ両手も斬り落とされている。それだけを見れば戦うことなどできないと思う。だが、息の根は止められていない。


 その証拠に敵は口に黒煙を収束させ、先の尖った結晶を生成していた。それを歯で強く挟みこみ、こちらを突き刺そうとしてくる。

 なんという執念だろうか。

 エリアスは反応しようにも、先ほどの攻撃による硬直で動けなかった。

 黒の刃が、こちらの顔面に到達する、直前――。


 ヴェリスの頭部がエリアスの右こめかみをかすめ、背後へ飛んでいった。眼前には首から先を失った、ヴェリスのものと思しき肉体が浮いている。瞬きひとつの間に落下を初め、地面に落ちる前に黒煙となって霧散していく。


 いったい何が起こったのだろうか、とエリアスは混乱した。

 だが、答えはすぐにわかった。


「言ったでしょ、あんたを倒すのはあたしだって」


 いつの間にかリンカがそばで浮遊していた。

 どうやら彼女がヴェリスの首を斬ったようだ。

 なんという速さだろうか。最後の動きだけは、なにもかも目で追うことができなかった。

 そうエリアスは感心していると、突如として凄まじい音に耳を襲われた。


 ドゥラオスの咆哮だ。

 大地がうなっているのではないか、と思うほど骨に響いてくる。

 やはりというべきか、先ほどの横腹を裂いた一撃ではしとめきれなかったらしい。

 ふいに影が下りた。

 見上げた先に巨大な黒結晶塊が浮かび、こちらへ向かって落下してきていた。

 ベルリオットが使う《神の種》と似ているが、明らかにこちらのほうが巨大だ。


 ドゥラオスがふたたび哮りながら、あわせた両拳を槌のようにして地面を強くたたきつけた。地面に走った亀裂の中から、黒の結晶柱が飛び出す。こちらはメルザリッテの使う《戒刃逆天》に酷似している。


 黒色結晶柱が勢いよく空へ向かって伸び、黒結晶塊に激突する。と、両方とも弾けるように砕け散った。その後、数え切れないほどの結晶片となって辺り一面に降り注ぐ。避けられる空間はほとんどない。


 エリアスは次々に迫りくる黒結晶片を剣で振り払っていく。

 破片となっても人ひとりほどの大きさを持っている。一撃受けるたびに全身の骨が軋み、体がだんだんと重くなっていくようだった。

 ドゥラオスがまたも猛り、黒色結晶塊を追加した。

 どうやら一度きりの技ではなかったらしい。

 結晶片が止むことなく降り注いでくる。


 これではとても前へ進めない……!


 そうエリアスが心の中でこぼしたとき、リンカの声が飛んでくる。


「行って、エリアス!」

「ですがっ」

「大丈夫、道はあたしがなんとかするから。だから、あんたはあのデカブツをやって」


 苦痛に歪んだリンカの顔を見た瞬間、エリアスは悟った。

 彼女もわかっているのだろう。

 互いにもう出せる力は限られている、と。

 だからこそ役割を分担したのだ。

 ――確実に敵を仕留めるため。


「わかりました」


 エリアスは翔け出した。

 直後にひとつの黒色結晶片が頭上に落ちてきたが、目を向けることすらしなかった。リンカがなんとかすると言ったのだ。ならば、自分はただ一直線にドゥラオスのもとへ向かうだけだ。


 頭上で結晶の砕け散る音が鳴った。次いで、前方上空を翔けていくリンカの姿が映る。彼女は両手に持った一対の剣や、あちこちに生成した神の矢で数え切れないほどの黒結晶片を破壊していく。


 こちらの進行経路を把握しながら戦うその器用さは、さすがとしか言いようがない。

 自分にはとてもできない芸当だ、とエリアスは思う。

 ただ、そんな自分でも、ただ力を込めるだけならばできる。


 エリアスは剣を持つ手に力を込めた。さらに速度を上げ、放たれた一本の矢のごとく直線的に飛ぶ。向かう先は地上で咆えるドゥラオスだ。

 初めて北方防衛線で対峙したとき、一度として力で打ち勝つことはできなかった。

 だが、いまの自分には赤の力がある。

 リンカという最高の友がともに戦ってくれている。

 そして――。

 絶対に勝たなければならない理由がある。


 なんとしてでも勝つ! 勝ってわたしは帰る!


 ドゥラオスの口から黒球が放たれるが、エリアスはそれを力任せになぎ払った。直後、迫ってきた巨大な拳とこちらの剣がかち合った。凄まじい衝撃が周囲へと迸り、辺り一面の砂が巻き上がる。

 形勢は傾いていない。

 互いに全力の一撃を突き出したままだ。


「っぁああああああああ――!!」


 エリアスは本能の赴くまま叫んだ。

 肉が、骨が、血が呼応し、躍動する。全身に漲った力を赤の剣に乗せ、体ごと押しこんだ。巨大な黒の拳を裂いた。動き出した剣の勢いに任せ、その先に控えていた腕ごと黒の巨躯を切断する。腕が止まらなかった。さらに振り落とした剣が地面へと衝突、そこを始まりとして凄まじく太く長い亀裂が走る。


 亀裂の勢いが止まったとき、エリアスはようやく地に足をつけた。自分のものとは思えない破壊力を前に一瞬呆けてしまうが、ドゥラオスのうなり声によって正気を取り戻した。まだ戦うのか、と思ったがどうやら最後の慟哭だったらしい。その巨躯は黒煙と化し、空気に溶けていくようにすぅと消えていく。


 その光景をじっと見つめながら、エリアスはどこか夢のような感覚にとらわれていた。

 だが、黒煙が完全に目の前から消え去ったとき、ようやく現状を受け入れることができた。本当に、あのヴェリスとドゥラオスを斃したのだ、と。


 勝利を認めたとき、視界がぐわんと歪んだ。

 気づけば目には青い空だけが映っていた。

 どうやら仰向けに倒れてしまったらしい。

 体を打ちつけたはずなのに、その感覚すらなかった。

 立ち上がろうという意志はあるが、まったくといっていいほど体が動いてくれない。


 近くでどさりという音がした。

 エリアスはどうにか目を動かし、音の聞こえた方をうかがう。

 そこには見慣れたリンカの横顔があった。

 どうやら彼女も体が動かないらしい。


「勝った」

「そうですね」

「もう動けない」

「わたしもです」


 そんな内容のない会話をリンカとしながら、エリアスはふたたび空を見上げた。


「リンカ、気づいていますか」

「うん」


 すぐ近くというわけではない。

 だが、そう遠くない場所からシグルが近づいてきているのだ。

 それを感知できたのは辺りが荒地でなにもなかったことや、自身が赤の光に昇華したことが理由かもしれない。


「わたしたちは役目をまっとうできたのでしょうか」

「たぶん」


 残念ながら、戦いの最中に自覚した思いを伝えることは出来そうになかった。

 だが、役目をまっとうできたというのなら――。

 悔いはない。

 おかげで穏やかな気分でいられた。

 エリアスは目をつむった。


 姫さま……ベルリオット・トレスティング……。


 そう心の中でつぶやきながら、まもなく自身に訪れるであろう終わりを待った。

 だが、いくら待ってもそれは訪れなかった。

 代わりにシグルの不快な悲鳴が耳をついた。

 いったいなにが起こっているのだろうか。


「エリアス、起きて」


 リンカの声が聞こえた。

 エリアスは目をあけるやいなや、頭を倒し、リンカの視線の先を追う。

 そして映った光景を前に思わず目を見開いた。


 あれは……!



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