◆第三話『聖なる光―サンクタラルクス―』
「悪いね、付き合わせちゃって」
ルッチェ・ラヴィエーナは、リズアートを伴って《飛翔核》の置かれた王城の地下を訪れていた。
相変わらず殺風景な場所だ。
だだっ広いくせに、奥側の台に《飛翔核》が鎮座しているだけでほかにはなにもない。
足音を響かせながら《飛翔核》のもとへと向かう。
「いえ、それは構わないのだけれど」
リズアートはどこか落ちつきがなかった。
無理もない。
すでに《運命の輪》が破壊され、大陸外縁部では騎士たちがシグルと戦っているのだ。
そんな彼女の心情を理解していながら、ルッチェは構わずに話を続ける。
「どうしてもリズさんがいないとダメみたいでさ」
「……もしかしてベッチェが残した仕掛けについて、なにかわかったの?」
「うん。というよりもっと早くに気づくべきだったよ。大陸全土に及ぶ大きな仕掛けを施せる場所なんて、ここしかないってね」
二人して《飛翔核》の前に立った。
取り込んだアウラが少なくなっているからか、《飛翔核》の発する光が目に見えて弱くなっている。周りを囲っていた白い靄にいたっては、もう見られない。
《飛翔核》を置いた台の前には半球形の結晶が埋め込まれた円柱型の台座があった。
王族が《運命の輪》より《飛翔核》へとアウラを注ぐための装置だ。
それらの脇をルッチェは通りぬけ、《飛翔核》の裏側へと回る。
床に目を落としながら、うろちょろと歩く。
「えーとどこだっけな~……と、あったあった」
傷の入った箇所を見つけた。
ルッチェ自らが目印につけておいたものだ。
腰を落とし、正方に区切られた傷入りの床を両手で持ち上げる。
と、掌に収まる程度の球形型結晶があらわになった。
「《運命の輪》が壊れたいま、《飛翔核》にアウラを注ぎこむ手立てがないよね。でも、これを切り替えれば……」
ルッチェは持ち上げた床を脇に置いたあと、その球形型結晶へとアウラを注ぎ込んだ。直後、地響きに近い音が鳴りはじめる。《飛翔核》の置かれた台座。その両側の床が柱のごとく盛り上がっていく。それらはしなるように内側へと曲がると、《飛翔核》のちょうど真上で接触。一本の柱となってうねりながらさらに上を目指し、ついに天井を貫いていった。
「……まさかこんな仕掛けがあったなんて」
リズアートが感嘆の声を漏らしていた。
ルッチェは立ち上がったあと、《飛翔核》の向こう側にいる彼女へと言う。
「よし、《災厄日》にアウラを注ぐときみたいに手を置いてみて」
「え、ええ」
リズアートは少し強張った様子で、円柱型をした二本の台座に両手に伸ばした。
彼女の手が台座の結晶に触れた、その瞬間――。
先ほどルッチェが出現させた柱がまばゆく光りだした。次いで柱の側面から薄い糸状の光が幾つも伸びると、輪となって瞬く間に《飛翔核》を包み込んだ。
これまで風前の灯といった感じだった《飛翔核》が、息を吹き返したように力強い光を放った。その後、胎動するかのようにゆっくりとした明滅を繰り返し始める。
リズアートが目を瞬かせながらぼそりと口にする。
「これって、アウラを吸収してる……?」
「そう。おそらく、このリヴェティア大陸の周囲の空からね」
「もしかして、これで大陸を浮遊させるってことは――」
「それは無理じゃないかな。だって、《運命の輪》は空に満ちたアウラのほとんどを吸い取って圧縮。それを《飛翔核》に送って、ようやく大陸が浮遊できてたんだ。たかが大陸周辺のアウラを吸い取っただけのこれに、大陸を浮遊させるだけの力はないよ。仮に周辺のアウラを残らず吸い取っていたなら話は別かもしれないけど、これはあんまり多くのアウラを吸い取れないみたいだし。その証拠に、ほら」
ルッチェはアウラを纏った。
黄色の光翼が背から放出される。
それは本来の自分が纏える色となんら変わらない。
「アウラ、普通に纏えるでしょ」
「本当にベッチェが残した仕掛け……聖なる光専用ということね」
「そういうことになるね。あ、もう手放して大丈夫だと思う。いまのそれ、起動のときだけ必要みたいだから」
言いながら、ルッチェは纏っていたアウラを散らした。
先ほど二本の柱が現れたとき、ほかにも動きがあった。
《飛翔核》の裏側、つまりリズアートが立っている場所のちょうど反対側。そこに腰ほどの高さを持った円柱型の台座が出現していた。上部にはリズアートが手を当てたものよりも、さらに大きな結晶が埋め込まれている。
「さて、仕上げといきますか」
台座前に立ったルッチェは結晶へと掌を当てた。
瞬間、《飛翔核》の発する光が強くなった。さらに鳴動をはじめ、地面が激しく揺れ動きはじめる。《飛翔核》から柱が弾けるように上へと伸びた。柱を伝いながら天井へと突き刺さる。
ルッチェは天井を見上げながら、空へと向かう光に想いを乗せた。
「大した効果はないかもしれない。それでもベッチェが残してくれた遺産だ。みんなの役に立ってくれることを願うよ」
◆◇◆◇◆
西方防衛線にて、リンカ・アシュテッドは戦いの最中、突如として大陸を覆った光の膜に目を奪われていた。
それは大陸圏外を浮遊する複数のドリアークが放った黒球をすべて弾いた。
さらにガリオン、アビスの大陸侵入を阻んでいる。
どうやらかなりの硬度をもっているようだ。
ただ、完全ではないらしい。
モノセロス、ベリアルの直接攻撃を受けた箇所は破損、穴を開けられてしまっていた。二呼吸ほど経てば、まるで水が流れ込むかのように穴は塞がっていく。が、そのわずかな合間を縫ってほかのシグルがなだれ込むように光の膜の内側へと侵入してくる。
と、光の膜に見とれている間に三体のモノセロスの接近を許していた。
脇からガリオン、アビスも追随している。
リンカは上空に意識を向けた。なるべく広く空間を把握する。ちりりと後頭部に痛みが走る。この痛みだけは何度体験しても慣れない。奥歯をかみ締めると同時、上空に二十本近い結晶の刃を生成する。神の矢だ。それらを接近するシグルたちへと一気に放つ。
リンカは片足で軽く地面を蹴って跳ねた。
その間、神の矢がモノセロスたちへと降り注ぐ。あちこちで耳障りな慟哭が響く。足を緩めたもの、その場でのたうつもの、中には地に縫いつけられたものもいた。
総じて動きが鈍った。
とん、とリンカは静かに足を地につけた。
体を一気に前へと倒す。弾かれるようにしてシグルのほうへと向かう。ほとんど地を這うような格好だ。逆手に持った一対の短剣を後ろへと流しながら、シグルたちの側面から側面へと渡っていく。地に足をこすりつけながら、自らの体を何度も何度も回転させる。その勢いを利用して、シグルたちを斬り裂いていく。
自分に仕掛けてきたシグルの集団を抜けた。
肩越しに振り向くと、ほぼ同時に攻撃を加えたシグルが地に横たわったのが見えた。
まばたきを一回すると、それらは霧散していく。
ふぅ、と息をつきたいところだが、いまはそんな暇などない。
リンカは休む間もなく次々と襲いくるシグルをさばいていく。
「相変わらず見事なもんじゃ。多対一において、おぬしの右に出る人間はもうおらんじゃろうな」
そう悠長に喋りながら、ひとりの老人がそばにやってきた。
ティゴーグの騎士、アヌ・ヴァロンだ。
こちらの背中を守る格好で、シグルの迎撃にあたる。
「どうやらラヴィエーナの嬢ちゃんが話しておった《聖なる光》が成功したようじゃな」
「みたいね」
「これを使わない手はない。シャディンの小僧!」
ヴァロンがやや北側に位置する戦線へ向かって叫んだ。
そちらにはモノセロスと戦闘を繰り広げる騎士がひとり。
「全員、前線を押し上げろッ! 《聖なる光》を挟んでシグルを迎撃せよッ!」
ジャノがほかの騎士たちを鼓舞せんと咆哮をあげながら思い切り剣を振り下ろした。剣撃の軌跡が光る刃となって放たれる。飛閃だ。それは眼前にいたモノセロスを両断したのち段々と巨大化し、多くのシグルを巻き込んでいく。
崩壊したシグルの戦線へとジャノが勢いよく突撃する。ほかの騎士たちもあとに続いていく。
「われらはもう少し前で暴れるとするかの」
ヴァロンが大陸を覆う《聖なる光》のもとへと向かおうとする。
と、行く手を塞ぐように人型のシグル――ベリアルが飛びかかってきた。
「人間め、小癪な手をっ」
ベリアルの鋭い爪がきらめく。ヴァロンに動きはない。それどころか達観したように敵の爪をじっと見つめている。ついに眼前に迫る。
そばで見ていたリンカはさすがにまずいと思い、助けに入ろうと手を持ち上げる。が、その手をさらに動かすことはなかった。
ヴァロンの体が一気に色をなくしたのだ。
彼が得意とする己の身体を結晶と入れ替える技、幻影結晶だ。
ベリアルの爪によってヴァロン型の結晶が頭部を中心に砕け散った。その間、影がそばを素早く駆け抜け、ベリアルの後ろへとつけた。本物のヴァロンだ。
「ほれっ」
ヴァロンは戦場に似合わない声で剣を振り下ろした。背を斬られたベリアルがうめき声をあげて空中でよろめく。しかし一撃で葬るには至らなかったらしい。すぐに体勢を整えたベリアルが振り向きざまに黒い爪を薙ごうとする。
振り向いたと同時、ベリアルの頭部に剣が刺さった。ヴァロンがあらかじめ突き出していたのだ。不恰好に大口を開けたベリアルが振り上げていた腕をだらりと下ろした。間もなく、その身体は黒煙と化し、散っていく。
さすがは過去、狭間で最強と謳われた騎士だ。老練な剣さばきはもちろんのこと、狡猾さを活かした立ち回りは賞賛の言葉しか贈れない。
「なまじ知能があるとやりやすいのう。どうやらわしはベリアルと相性がいいらしい。嬢ちゃんは一角を頼めるかの」
「了解」
ヴァロンと別れたリンカは、打ち合わせ通りモノセロスを集中的に排除していく。
この西方防衛線を守るティゴーグ、ディザイドリウム騎士団は数が多い。
さらにヴァロンやジャノといった優れた騎士がいる。
決して余裕があるわけではなかったが、戦線を押し上げることはそう難しくなかった。
もちろん油断することはしない。ゆるやかに戦線を押し上げていく。
そしてリンカがモノセロスを五十体ほど斃した頃。
ついに《聖なる光》のそばに戦線が到達した。
「いまの戦線を維持し、《聖なる光》を抜けた奴から順に排除していけ! 絶対に外へは出るなよ!」
ジャノの指示が戦場に響いた、そのとき――。
大陸が縦に大きく、何度も揺れた。
ちょうどリンカは地に足をつけていたため、ふらついて思わず手をついてしまう。モノセロスやガリオン、ギガントも同様によろめいている。
あまりの衝撃に防壁や尖塔の一部が崩落していた。
あちこちから悲鳴や動揺の声が聞こえてくる。
いったい何ごとかとリンカはさらに周囲の様子をうかがった。
視線が大陸の外側へと向いたとき、違和感を覚えた。
これまで大量のシグルの隙間からは空が見え隠れしていた。
しかし、いま、そこには空以外のものも映っていたのだ。
外縁部の向こう側に地面が続いていた。荒廃した箇所が大半を占めるものの、わずかに緑も見える。ちらほらと水色も見えた。視界の大半をシグルが飛び交っているため、はっきりとは見えないが、これは――。
「……地上!」
過去、人々が暮らしていたという大地。
シグルによって奪われてしまった大地。
ついに、その場所へと下り立ったのだ。
そのことに気づいたものは少なくなかったらしい。
先ほどまで大震動で動揺していた騎士たちから感嘆の声が漏れていた
あまり景色などに興味を抱かない自分でさえ、感慨深いものを感じているのだ。
無理もない、とリンカは思う。
ふと気になるものが映り、眉根を寄せた。
二の足で立つ巨大なシグルがいたのだ。
それは角塊を積み上げたような体をしている。
のそりのそり、と鈍重な動きで大陸へと向かってくる。
「なにあれ、ギガント……?」
自分の知っているギガントは下半身を引きずり、上半身で這うように移動していた。
だが、目に映るギガントと同じ姿のシグルは二の足で歩いている。
もしかすると大陸が浮遊しているとき、《災厄日》に現れたギガントは不完全な状態だったのかもしれない。いや、おそらくそうなのだろう、とリンカは感覚的に悟った。
ギガントが《聖なる光》の前に到達した。
その巨大な手を合わせ、槌のように振り下ろす。その一撃は、さしたる抵抗なく光の膜を破った。さらに勢いをとめることなく縁へと激突。凄まじい轟音を鳴らし、外縁部の一部をえぐりとるように破壊してしまう。衝撃に乗せられて砂塵が辺りへ一気に広がる。
その凄惨な光景を前にリンカはもちろんこと、ほかの騎士も唖然とした。
しかし悠長にしている暇などない。
光の膜に空いた巨大な穴から、またガリオンやアビスが大量になだれこんできたのだ。
次から次へと……!
ヴァロンはベリアルの相手を、ジャノは全体の指揮をする傍らでモノセロスも相手にしている。二人とも余裕がない。
あたしがやるしかない。
そうリンカが決意したとき、ギガントの脇を通り抜ける影が目に入った。
正確な実体を捉えられないほど、あまりにも速い動きだった。
瞬きをしていたらきっと見落としていただろう。
――だから反応できたのも、ほとんど奇跡だったと言ってもよかった。
リンカはとっさに後方へ飛び退いた。直後、先ほどまで自分が立っていた地面に極細の斬撃が刻まれる。また黒い影が映った。だがやはり一瞬しか映らない。ふたたびそれはすぅっと音もなく動きだす。消えているのではないと頭ではわかっている。わかっているはずなのに、あたかも消えたかのように錯覚してしまう。
得体の知れない敵を前に、リンカの中に恐怖感が湧き上がってくる。身体が一気に冷えたような感覚。歯をかち合わせ、強張る体を抑えこむ。と、視界の右端に黒い靄が映ったような気がした。確証はなかったものの、リンカは剣を地面に突き刺して急停止した。すぐさま体勢を立て直し、自分が進んでいた方向へと体を向ける。
「これも躱すか」
そこに見たことのないシグルが立っていた。
形体はベリアルと似ているが、それよりも小柄で人に近い。
関節部分こそ盛り上がっているものの、ほかはかなり細身だ。
まるで洗練された刃物に見えなくもない。
頭部は面長で、口が前面へ尖った格好。若干、ドリアークに似ているか。額には一本の角がついている。人の腕ほどの太さを持つそれは頭頂部、後頭部を這って背中へと流れている。
「きさま、人間とは思えぬ良い反応をする」
ベリアルも言葉を話すが、声がしゃがれている。
端的に言って不快だが、目の前のシグルからそんなものは一切感じない。
むしろ人間の紳士が話すようになめらかで静かな声だ。
「わたしはオウル様に仕える一柱、ヴェリス。名を訊こう、幼き少女よ」
シグルとは思えない相手の言葉遣いに、リンカは途中まで名乗ってもいいと思いかけていた。だが、最後のある言葉で考えが変わった。
体勢を低くするやいなや、前へ踏み出した。剣を握る手に力を込め、ヴェリスと名乗ったシグルへと飛び掛らんとする。
瞬間、目を見開いた。
眼前に立っていたはずのヴェリスが、視界のどこにも映っていなかったのだ。
「名を知る前に殺すことになってしまったか。残念だ」
背後からヴェリスの声が聞こえた。
いつの間に……ッ!?
リンカは腹の底が冷えるような感覚に満たされた。
すぐさま振り返ろうとする。が、体が言うことを聞いてくれなかった。気づけば膝をついていた。纏っていたアウラも散っていた。体中がひりつく。見れば、あちこちに無数の斬り傷が刻まれていた。もともと赤かった騎士服に血の濃い赤が滲んでいく。
リンカは、ついにどさりと前のめりに倒れた。
わずかな衝撃が体に伝わり、刻まれた斬り傷に痛みがはしる。思わず呻いてしまう。
視界がかすみはじめた。うっすらと見えるのは地面と、その上で戦う騎士とシグルの姿だ。意識が朦朧としているからか、どこか遠い世界のように感じる。
メルザリッテと同等のシグルがいると聞いていたが、おそらくヴェリスのことで間違いないだろう、と思った。
たしかに強い。
目で追えなかったことなんて初めてだ。
それでも――。
こんなあっさりやられるなんて。
ヴェリスを自由にさせれば西方防衛線は壊滅してしまうだろう。ヴァロンやジャノがいるとはいえ、彼らがヴェリスの対応に当たればほかがおろそかになってしまう。ベリアルやドリアーク、モノセロスといったシグルに打ち勝てる騎士はそう多くない。
では、どうすればいいのか。
そんなもの決まっている。
あたしが……やらないと……っ!
リンカは指先に力を入れた。ぴくりとする。まだ動く。今度は手首に、肘に、肩に、と順番に力を込めていく。脳が止めろと言っているが、無視した。痛みをあまり感じなくなった。代わりに全身が焼けるように熱い。我慢すれば問題ない。
腕を胸の前まで引き寄せて上半身を起こした。膝を立てて、ゆっくりと足裏を地面につける。二の足で立った瞬間、ふらついた。倒れてしまいそうになるが、アウラをふたたび取り込むことで、なんとか踏ん張った。
「ほう、立ち上がるか」
敵は感嘆するような声を漏らしていた。
リンカはヴェリスへと向き直りながら、口をゆっくりと動かす。
「……リンカ・アシュテッド」
礼儀を考えて名乗ったのではない。
敵は並のシグルとは違う。
そう、自分に印象付けるためだった。
「これはひとり目で当たりを引いたようだ。その名、しかと覚えさせてもらった」
ヴェリスが両手に一本ずつ剣を作り出した。
どちらも長剣だ。
リンカの短剣よりも大分長い。
結晶武器を生成するシグルを初めて見たが、驚きはなかった。
この敵は、それだけの潜在能力を持っている。
リンカは大きく息を吸い込み、ゆっくりと吐く。
息が少なくなるにつれて感情が昂ぶっていく。心臓の鼓動も早くなっていく。
力の差は歴然だ。
加えて、すでにこちらは死に体だ。
それでも戦わなければならない。
戦わなければ死ぬ。
リンカはすべての息を吐き出したあと、あらためて一気に息を吸った。造り出した一対の短剣を逆手に持ち、構える。
ヴェリスが剣の切っ先を向けてきた。
「わたしが風になる前に死んでくれるなよ」




