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EP.05 《混戦の最中で》

EP.05  《混戦の最中で》


01


 敵に囲まれてしまった以上、ヨシヒロとノリカの採るべき選択は限られている。


1、諦め、降伏すること

二人の性格・信念的に不可能。というか相手が応じるとは思えない。


 2、真っ向から戦う!

出来なくはない。しかし、先程の戦闘でエネルギーを消耗し、武器も破損させてしまった。

手持ちの予備バッテリーに交換すれば再び全開で戦えるが、損傷したパーツを回復修理するには、鉄屑など、金属を取り込み、リカバー用のデータにするしかない。

 武器修復を抜きにしても、今この状況でバッテリー交換を呑気に行えるか?

 ……大変厳しいだろう。

 何せ、相手はエスパーで、現在の自分らは丸腰の只の人間。

 身体能力的に分が悪すぎる。


「さぁて、どうしようかな……」

 ヨシヒロは半ば諦めの入った口ぶりで失笑。

「どうもある訳ないでしょ! 戦いあるのみ!」

「けど、この敵数に、現在のエネルギー配分が釣り合うとは……」

「分ってるって! あたしが暫く踏ん張るから、その間、あんたはバッテリー交換しな!」

「やっぱ、そうなる?」

「それしかないっしょ?」

「まぁね……」

 ヨシヒロは「やってやるか!」と、眉を釣り上げた。

 ―――が!

「何もさせねぇよ!」

 ヨシヒロ・ノリカ双方の目の前に敵1人ずつの姿が唐突出現!

 テレポーテーションで、強引な先手を相手は仕掛けて来た!

 エスパー2人はSボードへ手を伸ばす!

 ――衝撃音が狭い空間に響く!

 ヨシヒロとノリカへ接近したエスパー2名の首は機械で構成された手に掴まれ、放り飛ばされ、後方の仲間と激突した!

 鉄鋼の手に鉄鋼の体躯……。

 メタリックブルー&ブラックグレーの装甲の持ち主。

 メタリックグリーン&ダークブルーの装甲の持ち主。

 CオライオンとGバンディッタが助けに来た!

 思わず、安堵の息を漏らすヨシヒロ・ノリカ。

「げ! 味方が来やがった!」

 と、敵陣がうろたえた瞬間、電光の矢がエスパー連中へ降り注ぐ!

 パールホワイト&ピンクのボディの機体……。

「味方は絶対、守るんだから!」

 空中からエンゼクロスがビームアロー乱射攻撃して来た!!

「くそ、一旦退避!」

 このままではエンゼクロスに倒されるだけだ。

現場リーダーの指示を受け、一斉散開!

 封鎖された通路が開く。

「今だ! 逃げるぞ!」

 マグナム乱射で敵を牽制しながらの、Cオライオンの命令。

 ヨシヒロ、ノリカは無言で首肯し、狭い通路から脱出した!

 眩しい太陽が待ち構えていた。

 が、そんな事気にする暇もなく、一心不乱に2人は疾駆!

 2人と併走する2機=Cオライオン・Gバンディッタとその上空から同行する1機=エンゼクロス。

「助けて貰ったのは嬉しいけど、何でギリギリまで来なかった訳ぇ~?」

 ノリカ、Cオライオンを見やり、半ギレで問う。

「まぁ、作戦があってな……」

「作戦……?」

 ヨシヒロは眉を歪な形状にする。

「そうだ。これを好機に、一気に畳み掛ける! いいか、よく聞け………」

 司令塔Cオライオンはその、一気に畳み掛ける策を手短に説明した。

 そうしている間に魔手が再び強襲する。

「逃がすかー!」

 大きく響く声が後方より確認!

 一旦退却した敵陣が再度襲来する!

 敵勢は火炎・電撃・バズーカなど様々な射撃・砲撃をお見舞いする!

 Cオライオンは立ち止まり、後ろへ身を向ける。

「ここは俺に任せろ! Gバンディッタとエンゼクロスは2人が完全回復させるまで守ってやれ!」

「分った! 任せろ」

 Gバンディッタは走りながら、頷いた。

「……でも、一人で大丈夫?」

「問題ない。そちらこそ気をつけろ。敵は共通してテレポーテーション能力を与えられているからな」

「うん……」

 エンゼクロスはチラとCオライオンの背中を見て、生身の仲間の護衛へと飛び去った。


 同時刻。単身、敵勢へ燦然と立ち構えるCオライオン……。

 次々と折り畳まれた肩・脚の銃器が暴れんと広がっていく。

「全て撃破だ!」

 空間を火球の羅列にせんと、多数の銃口からビーム弾が豪雨を越える勢いで総射!!

 3分の1は回避に成功するも、この先手に3分の2が人間の姿をしたデータに変換される!

「よし……。まずまずだな……」

 テツトは拳を篤く握る。

 ……しかし、全滅させた訳では無い。

 油断は禁物。現に残党が左右へ回り込んで来た!

 Cオライオンはガン=カタで押し寄せる敵陣へ対抗した!

 華麗な身のこなしで、標的を乱れ撃つ!

 混沌と入り乱れる異能の人間が電脳封印とされていく………。


02


 息を切らし、走り抜けるヨシヒロとノリカ。

 バチッとSボードのバッテリーカバーをはめ込む2人。

 走りながら何とかバッテリー交換は成功したようだ。

「よしっ! これで全回復ぅっ!」

 ニカッと唇を緩めるノリカ。

「さて……、次は……」

 周囲を見回すヨシヒロ。何かを探している……。

 目的の物……場所……。

 ――あった!

「!! あの中になら!」

 ヨシヒロの視線の先=古びた町工場。

 この中に金属=愛機の攻撃の要・キャリバー修復材料が全く置いていない訳がない。

 即座に方向転換し、駆け込む!

 ノリカもヨシヒロの動きに反応。

 彼に追随した。

「あ、工場! 修復すんのね! OK!」

 工場目掛け駆け込む!

 だが! バルカン攻撃が突如、押し寄せる。

 腕がバルカン砲のエスパー5人ほどが出現!

 連射攻撃により、行く手を阻む!

 ヨシヒロ&ノリカ、一旦走行停止。

「ちょ、邪魔すんなゴルァ!」

 人差し指を突き上げ、上ずった声でノリカは怒り吼えた。

「ま、正体を突き止めた以上、本腰上げて畳み掛けに来るか普通……」

 ヨシヒロは爽やかに失笑。

 そこで、緑の海賊ロボットが間に割って入り、ワイヤーで本体と繋がった碇=アンカーを発出!

 うねるワイヤーが、5人纏めて縛り上げる!

「俺が相手だ!」

 Gバンディッタは人差し指を内側へ仰ぎ、挑発!

 次いで、ワイヤーを巻き戻しながら、横へ放り飛ばす!

 コンクリート製の塀に叩き付ける! 鈍重な衝撃音が轟く!

「ようし、今のうちぃ!」

 指をバチンと鳴らし、ノリカは目的の場所へ再び駆ける!

「暫くは頼むよ!」

 ヨシヒロは颯爽と仲間=緑の海賊TDへ背を向けた。

 再び仲間と共に戦う為に……。

 ドア前へ到着!

 仕舞っている扉をヨシヒロは、日頃の努力の成果=ヒーロー飛び蹴りをかまし、無理矢理ドアを開く!

 室内へなだれ込む!

 息を荒げ、辺りを散策する2人……。

「! あれ!」

 ノリカが指差した先=束になった鉄パイプが横たわっている。

「よし、リカバリーパーツ、発見!」

 鉄パイプの束へと駆けるヨシヒロ・ノリカ。

「くたばれ!」

 その言葉と共にまたもや、新たな刺客が召喚!

 今度の敵4人は全員冷凍光線を発射する!

 同時に、超薄型ミサイルが2本、反対方向から出陣!

 敵の冷凍光線を喰らい、凍結させられた!

「ぬぅ、おのれ……」

 冷凍ビーム発射能力を持つ4人が喉を唸らせ、向かい側の機影を睨む。

 身構えているエンゼクロスの姿がそこにあった!

「2人共、急いで!」

「サンキュ、流石親友!」

「親友じゃないけど、助かったよ!」

 ノリカ、ヨシヒロはエンゼクロスに戦闘を任し、目的へと動く。

 しかし、敵は多い。

冷凍ビームを放射するエスパー!

 冷凍光線がヨシヒロ・ノリカへと襲来!

「イケメンヒーローを……舐めないで貰いたいね! ンハッ!」

 ヨシヒロは高くジャンプし、アクション俳優さながら、冷凍ビームを跨いだ!

「あ、あたしだってぇ! って、んがっ!」

 ノリカは力むが、落ちているスパナに足を引っ掛け、ズッこける。

格好良く避けられなかった。

 ダンスで培った能力と咄嗟のアクションの能力は似て非なるモノなようだ。

 しかし、幸いにもそのお陰で冷凍ビームを回避した。

 舌打ちし、悔しがる冷凍ビームを放ったエスパー。

そこへエンゼクロスのリングビットが出現し、これ以上の攻撃を阻ませる!

 その隙にSボードを開き、キーボードを叩く。

 ヨシヒロ、ノリカはSボードから赤外線のようなものを放出させ、鉄パイプに照射。

 光に包まれた鉄パイプはコンバートアタックを喰らったエスパー同様、0と1に分解されていく。

 今回の場合はそのまま、Sデヴァイスが照射しているレンズの方へデータ化された鉄パイプの束が吸い込まれていく。

 鉄パイプは姿を消し、Sデヴァイス内の修復データとして、取り込み変換された。

 次に、ブレイクパーツ・リカバリーの項目を選択。


 キャリバー + 金属データ = ………

 カードビット + 金属データ = ………


 〔NOW RECOVERING〕という文字及び、回復度を示すメモリが液晶画面中央に出現。

 

 エンゼクロスは単独で4人のエスパーと対峙。

 四方八方から放たれる冷凍ビームを、持ち前の高い機動力で回避していく。

 しかし、ここは室内。

 得意の空中を使った移動が難しいので、苦戦していた。

 ついにはビームに当たり、左足を凍結させられてしまう!

 これにより、歩行は不可能となる。

「しまった!」

 ミヤは焦燥する。

 飛行もこの低い天井では難しい。

 その上、左足が凍ってしまっては今まで走り回って回避していた事も出来ないし、片脚のブースターだけ噴出出来ないので、空中移動もバランスが悪くなってしまっている。

 非常に拙い状況である。

「よし! 畳み掛けるぞ!」

「おうよ!」

 4人のエスパーは執拗にエンゼクロスを追い込む!


 ………ヒュン! 


一直線に駆け抜ける電光の弾丸……。

 それらは冷凍ビームと激突!

 熱弾と冷凍化光線の衝突により、蒸発煙が発生!

 相殺された!

「何っ!?」

 まさか? と、エスパー勢が睨んだ先に、ライフルモードのキャリバーを構えた白銀の閃光騎士=Lシュヴァリエが再光臨していた!

 間入れず、カードビット8枚全てが右往左往飛び交う!

 7枚は敵を翻弄し、1枚は天使型TDの脚部の氷結部分のみを器用に切り裂いた!

 脚を動けるようにした!

「! やった♪」

 エンゼクロスが見向けた先=完全復活・MAX充電完了のLシュヴァリエ&ウィザースロット! と、持ち主、ヨシヒロとノリカが強気な顔でサムズアップを送る。

 時間稼ぎへの感謝の意を込めて。

「さぁて、大暴れするよぉっ!」

「最高のカタルシス、逆転の開始さっ!」

 高揚するノリカ、ヨシヒロ!

 彼らの愛機、Lシュヴァリエ・ウィザースロットが地を蹴り、駆け出す!

「このぉ!」

 4人のエスパーはテレポーテーションで1箇所へ集結! 合体冷凍光線で迎撃!

「フフ、冷凍攻撃の対策は回復中に考案させて貰ったよ!」

 ヨシヒロはキーボード上に色白の美しい指で華麗にワルツを奏でる。

Lシュヴァリエは突如、右真横へ移動し、右肩・右脚のマニュピュレーターを伸ばす!

 端に置いてあるリフトカーを掴み、Lシュヴァリエは身体を回転し、掴んだリフトカーを投げ飛ばす!

 リフトカーは氷結化光線の餌食に!

 広大な冷凍ビームを、リフトカーを盾にすることで、防いだ!

「んなっ!」

「やりやがったなぁ……」

 渾身の一撃を無碍にされ、憤るエスパー4人。

 その隙にカードビットが彼らを囲み、彼らを押し込み、サンドイッチにする!

 相手は動けなくなった!

 その時だ!

 射撃体勢のエンゼクロス……コンバートアローを1つずつ、お見舞い!

 ……30秒後、メモリーカード4枚がエスパー達の居た場所へ散らばった。

 周辺の敵を全て撃破! 

 ……かに、思えたが。

 ゾンビゲームの如く、新たな刺客が今度は6人・わらわらとお出ましになった。

 しかも、ヨシヒロ・ノリカに、直接接近!

「とっておきの能力を魅せてやる!」

 と、いきり立つ刺客は瞳孔を開き、マインドコントロール波を発する!

 これは念力的攻撃であろうと看破したヨシヒロは即座に、Lシュヴァリエのマスクチェンジで念力の流れを捉えたいところだが、今回はそんな時間はなさそうだ。

 なので、Lシュヴァリエに手っ取り早い対応をコマンドする。

 Lシュヴァリエのキャリバーが発光! 

 電光を纏う! 

 次に、スパークするキャリバーをコンクリートへ叩き付ける!

 稲妻がの騎馬の如く、駆け抜け、ヨシヒロ・ノリカとマインドコントロールを試みるエスパーの間へ疾駆!

 喧しく、激しいスパーク音を立て、一時的にでも壁となる!

 この雷及び雷音の壁がマインドコントロール波を遮断! 電磁波が念力を掻き消す!

 マインドコントロールを試みたエスパー達は顔を顰め、舌打ちする。

 その隙にLシュヴァリエがコンバートスラッシュを刻み、葬る!

「残念。マインドコントロールは電磁波で搔き消させて貰ったよ」

 ヨシヒロはからかうような笑顔を魅せた。


 反対側。ウィザースロットの戦闘。

 カードビットがウィザースロットへ向って来る!

 縦横無尽に動くカードビットが持ち主に切り傷を刻んでいく!

「ちょ、あちゃぁ~、しまったっ!」

 ノリカはマインドコントロールの回避を失敗。

 カードビットを相手エスパーに操られてしまった。

 物質操作能力者にカードビットをコントロールされてしまう。

 しかし、無策ではないノリカ。

「だったら、こうだっての!」

 ウィザースロットの、クリアーイエローのマスクローブを上へスライドさせ、目元を覆い、サーチングバイザーに!

 これにより、相手とカードビットの間に操り糸のような念力波を可視化する!

 次いで、ウィザースロットは左腕をビームニードル、右腕をバルカンにし、接近戦に飛び込む!

 器用にカードビットの猛攻を回避。

ビームニードル・ビームバルカンの攻撃による電磁波でエスパーとカードビットを繋ぐ操り糸を搔き消し、カードビットを開放させた!

「そ、そんなバカな!」

「対策なんか頭に入ってるっての! 1年間の準備、舐めんな!」

 つかさず、カードビットを脚部コンテナに回収。

 機械を無理矢理操る能力を持つ相手には寧ろ足枷になってしまうカードビットを格納。

 そして、舞い踊るようにウィザースロットはニードルとバルカンで敵を葬っていく!

「こうなったら、本体を操って!」

 3人掛かりで、操りの意を伝える念力を飛ばす!

「そんなの、無駄だっての!」

 サーチングモードのウィザースロットには敵の念力の流れがハッキリ見える。

 四方八方攻めて来るが、お構いなしに機動力とバーニアーを駆使してスルリと回避し、最後に3人纏めてコンバートスティングを見舞った!

 これにより、第2群は全滅。

 戦闘時の興奮を冷まさんと、ノリカは荒い呼吸を整え出す。

「ったく、いつまでも妬んでばっかで……。あたしだってさ、あたしだってさ……」

 ノリカの脳内に幼き日の子役バックダンサーの自分が浮かび上がる。

 ―――母に放り込まれて始めたものだったが、実力があり、コーチ・スタッフ内の評価も良かった。

おだてに弱い幼少のノリカはまんざらでもなくなり、ダンスに熱中した。

 しかし、ライバルに金持ち・権力者の親を持つ者が多くおり、その娘の親が裏交渉をエサに娘にオーディション合格・融通を根回しさせる輩が居た。

 そういった連中に貧乏な事務所や制作会社は負けてしまい、その娘らを贔屓してしまった。

 その反動でノリカは突出が難しくなり、オーディションが合格せず、次第に仕事も減り、次第にダンス・芸能に対し馬鹿馬鹿しくなり、身を引いた。

 ―――胸糞悪い過去なんか放り飛ばし、普通の女子学生として生きて来たノリカであった。

 悔しくないと言えば嘘になる。

しかし、今更グジグジ言ってもしょうがないのは重々承知。

 被害者面はしたくない。

 というか、した所で意味が無い。

忘れるしかないと思うノリカにとって、そう出来ない人間にはつい、苛立ってしまうのであった。

だが、残念ながらのんびり感傷に浸らせ続けてはくれない。

また新たにエスパーチームが襲来。

 老化してしまう程に萎えるノリカ。

「って、げぇーっ! またぁ~。しつこっ!」

「ハハハ、やはり我らがリーダーの予想通りだったか……。まぁ、僕らの正体を掴んだ以上、徹底的に僕らを直接攻撃する事に固執するかぁ。捕まえれば一気に逆転出来るからねぇ」

「あ~あ、最悪っ!」

「さぁ、文句はそこまでにして、戦うよ楠さん?」

「はいはい」

 かったるそうにノリカは首肯。

 ヨシヒロ・ノリカは新たに出現した敵との戦いに臨んだ!


03


 一方、町工場前で繰り広げるもう1つの戦い……。

 Gバンディッタの背中ランドセルから伸びた、バズーカと両脚のアリゲーターキャノンを発射! 発射時&ヒット時に、轟音が轟く!!

 Gバンディッタはバズーカを背中へ畳んだ。目の前の敵を全滅させたのである。

 直後、メモリーカードが散り落ちた。

「おし!」

 海賊TDは額に飾ってある眼帯型サーチゴーグルを片目にセットし、サーチングゴーグルを装着。

姿を隠している敵がまだ潜んでいないか、周囲をサーチする……。

 ―――敵の存在は確認出来ない。

 自分もヨシヒロらの元へ行って、援護しようと一歩進む。

 そこへ流星の如く、弾丸が通過。

 海賊型の進行を妨害。

 周辺の屋根に新たな異能者刺客がチンピラ風に立ち構え、出現。

 その中にはサッカー部で苦楽を共にしたかつての友=ヒデノリの姿が確認出来た。

「そこのカッコイイロボットさぁん、僕チン達を少しでも多く、倒したくあ~りませんかぁ~?」

 ヒデノリが人差し指を上へ突き上げ、挑発の意を示す。

「!! ヒデノリ……」

 敵の狙いは戦力の分散だろう。

味方を何人犠牲にしても、結果的にヨシヒロ・ノリカを捕らえれば、味方を元に戻す事が出来、一気に逆転可能。故に、惜しみなく次々と敵が現われる。

コウスケは重々承知している。

だが、こちらが先に向こうを全滅させればいいだけの話だ。

「おっしゃ! 乗ってやろうじゃねーの!」

 メタリックグリーンの戦機は挑発した相手へと飛び込む!

 ニタリと口を歪め、逃げ去るヒデノリ達エスパー軍団。

 明らかに陽動の意図があるように思える。

 しかし、多様なギミックの宝庫であるTDに敵はない。

 臆する事も、油断する事もなく、Gバンディッタは追走!

 屋根から屋根を飛び越えていくヒデノリ達エスパー。

 後ろから警戒心を持ちつつ、屋根と屋根の間を飛び越え続けていくGバンディッタ。

 ……暫し、この状況が続く。

 後ろからバズーカで狙い撃てるが、敢えて狙わない。

 Gバンディッタにはじっくり対峙したい相手があの中に1人、居るからだ……。

 いつの間にやら、港へ到着していた。

 客人・Gバンディッタはコンクリート上へ重厚な鋼鐵足を落とす。

 緑の海賊ロボットの周辺には血気立ったチンピラ臭い連中=エスパーが総勢50人ほど囲んでいた。

 突如、天へ差し向けられた人差し指!

 ヒデノリによるものである。

「タイマン勝ち抜き戦だぁ! テメェにはこれから1人ずつ戦って貰うぜ!」

 コウスケは表情を顰める。

(成程、分り易い時間稼ぎ手段だなぁ……)

 向こうの消滅進行具合を遅延させる手段……ここで素直に応じては敵の思う壺だ。

 こんな要求には応じず、いきなり複数へ攻撃するのがセオリーだ。

 しかし、その状況ではヒデノリと向かい合えないまま、倒す事になるだろう。

 コウスケは苦悩する………。

 ならば、一か八かこちらも要求してみようと考えた。

「あぁ、分かった。まずは言いだしっぺのお前!」

 Gバンディッタのガンメタルの指は堂々とヒデノリを指差した!

「お前から相手になれ! 順番なんてどうでもいいだろ? どうせ皆、戦うんだしな」

 ヒデノリは即座に笑い悶える。

「クハハハハッ! イイゼ、イイゼ! 確かに順番なんてどうでもいいモンなぁ!」

 ゲラゲラ高笑いをするヒデノリは身体機械化超能力を発動!

右腕をキャノン砲、左腕をチェーンソウに変形させる。

 ロボットと両腕か機械化した人間が対峙……。

 双方の間に海風が通過………。

 それがゴングかの如く、通過後、両者は駆け出した!

 アームアンカーとチェーンソウが火花を散らし、激突!

 鍔迫り合いする中、両者は鬼気迫る表情で睨み合う!

 Gバンディッタは脚部のアリゲーターハングキャノンを広げていく。

 アリゲーターハングで相手の脚部を掴み、ゼロ距離射撃を見舞う戦術を試みる。

「させるかよっ!」

 ヒデノリは片脚を上げ、キャノンを上から踏み付ける!

 更に中央から脚部を割り込ませ、もう1つのキャノンを内側横から脚部で押さえつける!

キャノンが明らかに自分に向かないようにする! 

「! 何っ!?」

 コウスケ、まさかの戦術に衝撃する!

 反対にヒデノリは「やってやったぞ!」と、強気に笑んでみせた!

「だったら、こうだ!」

 チェーンソウと衝突中のアンカーを強制射出&そのアンカーが搭載された腕でアッパーをかます!

相手を後上へと放り飛ばした!

 コンクリートへ叩き落されるヒデノリ。

「ぐ……やっぱ、手強いぜこいつ……。時間稼ぎ、どんだけ出来っかな俺……」

 歯を食い縛り、ヒデノリは起き上がっていく。

「……もう一度訊くけどさ」

 Gバンディッタが訊ねて来た。

 ヒデノリは眉毛をうねらせ、海賊TDを睨み上げた。

「んあ?」

「やっぱり、優位な立場に立ち続け、勝ち続ける方がいいか?」

 ヒデノリに取っては愚問他ならぬ話。

 腹を抱え、ヒデノリは失笑した。

「ったりめーだろ。勝つのが嫌いな人間なんかいねぇよ。だってよぉ、どいつもこいつも、少しでも偏差値の高い大学に行きたがったり、公務員や大企業社員になりたがるじゃんか……。皆、安定を望むんだよ。負けて凋落するのなんて誰も望まねぇ!」

「……かもな……。んじゃさ、もう1つ質問」

「……もう1つ?」

「誰もが勝ったり負けたりするゲームと予め勝ち負けが決まっているゲーム………。もとい、お前は〔負け続ける人生〕と〔勝ったり負けたりする人生〕、どっちがまだマシだと思うかって話」

「それは……流石に後者の方がマシだな。……でも、お前がそれを言うかよ」

 一瞥をコンクリートへ吐き落とすヒデノリ。

 何せ、相手は自分らに対し、無敗を喫しているのだから。

「TDが無きゃ、俺だって只のザコだよ……。サッカーとかな……」

「サッカーとか……? ! お前まさか!」

 現在、ヒデノリ達エスパー軍が分かっている事は敵TD使い5人のうち、2人の正体がヨシヒロとノリカである事。

 ……つまりは、残り3人もクラスメイトである可能性は高い。

 更にサッカーで敗北経験があるとなると自ずと候補は絞られる。

「おぉっと、話の続きは2人だけでやろうぜ?」

 Gバンディッタ、ヒデノリの襟元を掴み、力いっぱい斜め上へと放り飛ばす!

 飛んでいった同じ方角へGバンディッタは跳躍!

 追尾した!

 唖然と周囲で観戦していたエスパー勢は「どうする?」と談合。

「やっぱ、加勢するべきだろうか?」

「いや、全滅する時間が長くなるだけだろ?」

「下手に動かず、深大寺さんの指示通り、俺達は時間稼ぎに徹するべきじゃないか?」

「むむ、そうだな……」

 ―――と、結局は〔待機〕という選択肢を採るのだった。


 港周辺には廃工場があり、うち1つの屋根にヒデノリは墜落。

 同時に、Gバンディッタが同場所へ着地。

 次にGバンディッタはバズーカを叩きつけ、古びた屋根をくり貫く。

 海賊型ロボは無言でヒデノリを見つめ、開けた穴へ飛び込む。

 ヒデノリも何も言わず、その穴の中へ落下。

 廃工場内。

 ヒデノリはコンクリート上に降り立つ。

「よっ! 直接遭うのは久しぶりだな」

 この声……電子音声ではない。

 聞き覚えのある声。

 ヒデノリが先程看破した通り、Gバンディッタの横後ろ方向に、コウスケがドラムの上に座っていた。2人は驚きを一蹴させた、爽快な顔となる。

「コウスケ……お前だったか」

「こっちも驚いたけどな。お前がエスパーになってたなんて」

「ハッ、残念だな。お前なら分かってくれる思ってたのにな」

「分かりたいけど、分かっちゃいけないんだよ……」

 コウスケは儚げな目を遠くへ向けた……。

 哀愁めいた失笑。ヒデノリは脱力する。

「凄いな。お前の自制心は。大人だな」

「そうかぁ?」

「そうだよ。俺は悔しい・妬ましいという感情には勝てねぇわ」

「エリート共を馬鹿にしたり、恥掻かす程度でも無理か?」

「あぁ。その程度で治まるなら、エスパーにわざわざなんねぇよ」

 コウスケは爽やかな顔をして天井を見上げた。

 先程、自分がマシンを通して開けた穴から曇った空を確認する。

「……そっか、なら……戦うか?」

 もう何もいう事は無い。ヒデノリは無言で首肯した。

 第2ラウンド・スタート!

 振り翳されるヒデノリの腕=チェーンソウ!

 Gバンディッタのバズーカがブツ放される!

 コウスケは戦う前に決意した。

 ヒデノリの行い=スポーツエリートに代わってエスパーがスポーツの頂点を牛耳る=スポーツ格差の拡大を放任する訳にはいかない。

 しかし、ヒデノリの無念を晴らさぬまま、葬るのも、良心が・友人としての情が阻む。

 ならば、せめて戦うことで、少しでもストレス発散させてやりたい。

 そう考えたコウスケは戦う道を選んだのだった。

 ヒデノリとGバンディッタは一旦、後退し、距離を取る。

 ヒデノリは両腕を2連バズーカへと変換!

 Gバンディッタは背中から伸びたバズーカと両脚のアリゲーターハングキャノンの砲口から光を充満させる!


 さぁ……勝負だ!


 両者、最大出力のエネルギー弾を発進させる!

 真っ向からぶつかる2つの電光球!

 じりじりとGバンディッタ側が圧倒し、遂には敵の攻撃を切り裂いた!

 瞬時にヒデノリは光球に包まれた!

「ハハ、負けるって、やっぱ気分ワリィな……」

 ヒデノリは涼しげに笑った。

「そうだな。他人を負かせ過ぎないようにしないとな……」

 コウスケは柔和な表情で0と1へ分解されていく友の姿を見届ける。

「んじゃ、ちょっくら眠るわ、俺」

「あぁ。次に目覚める時には格差が小さくなっているかもな。おまえらのお陰でエリート共をビビらせられたからさぁ。行き過ぎた英才教育により、極僅かの人以外を不幸にしてしまった。これ以上そんな人間を生み出さない為にも、英才教育を撤廃し、正々堂々平等な環境下で、楽しくスポーツをやるようにしましょう! ……みたいな?」

 コウスケは照れ臭そうに頬を掻く。

「ハハ、そうなればいいな……」

「させるさ。俺にはGバンディッタっつー、頼もしい相棒がいるからな」

「おっ、そうだな。そいつがあれば何か変えられるかもな」

「変えてみせるさ……」

「そいつは楽しみだな。おっと、そろそろ消えちまいそうだ。……じゃあな。親友!」

「あぁ……。またな!」

 2人は実に爽やであり、儚げな表情だった。

 その2人のうち、1人は消え、メモリーカード内に眠る……。

 コウスケは一息着き、友人の眠るメモリーカードをポケットに仕舞った。

 そして、端整な顔をグイと上げる。

 一転、戦意の強い顔つきに。

「さぁて、残りは要求を破棄して、纏めて倒すとすっか! もうちょい頑張ってくれよぉ! Gバンディッタ!」

 キーボード操作に呼応し、メタリックグリーンの海賊TDは再び戦火の中へと!


04


 一方、こちら道路。

 Cオライオンはやかましい程に展開していた身体中の銃器を綺麗さっぱり折り畳む。

 そして、西部のガンマンの如く、指でカラカラとハンドマグナムを回し、両腰ホルスターにマグナムを収納した。

 同時に、メモリーカードが雨の如く、コンクリートへ次々とダラダラ落ちて来た!

 つまり、目前の敵を全滅させたのである。

 喧しかった空中が一気に殺風景となった。


 パチパチパチ!


 緩やかな拍手の音がこの静かな空間に響き渡る。

「お見事。流石司令塔といったところか……」

 Cオライオンは声に反応! 

早撃ちガンマンの如く、素早くガングリップを引き抜き、声の方角へハンドマグナムの銃口を向ける。

その先……。

威風堂々と闊歩する男の影!

 ボス=深大寺である。

「ほう、ボスのお出ましか……。俺達もそこまで倒して来たか」

「うむ。現時点で1013人中、621人を君達は撃破した。私以外の残った仲間は君の味方を現在交戦中だ……」

 Cオライオンは初手として、揺さぶりの1弾を発射。

 深大寺は余裕綽々と、テレポーテーションへ瞬時に回避。

「フ、良いのか? ボスが俺1人を相手して。正体の判明した方を集中して狙うべきだと思うが?」

 深大寺は落ち着き払い、ネクタイを締め直す。

「いやいや、ボスというのは一番厄介な敵と戦うという宿命があってだね……」

 深大寺は今迄の戦いを通し、司令塔であり、最も厄介な敵がこのメタリックブルーのマシン、Cオライオンであると看破していた。

 ガン=カタの構えをし、戦闘体勢に入るCオライオン!

「いいだろう……。俺はもう、あんたに敢えて何も言わない………」

「勝負といこうではないか。パワーアップした私が君を潰そう」

 テツトが魂を託し、動かすマシンの目前には以前尊敬した人物。

 金コネを持たずして政界へ昇りつめた経験のある男が立ちはだかる。

 その深大寺正十郎に対し、現在幻滅という感情はない。

 説教するつもりもない。

 自分には理解出来ない、彼にとって思うところがあるだろうからだ。

 しかし、肯定はしない。彼の目指すヴィジョン=格差はあるままで、立場が変わるだけの変革は正しくない。―――だから、もう何も言わず、ただ戦う。

張り詰める壮絶な空気……。

 並大抵の人間を窒息させる程の重圧……。

 両陣営ボスの、頂上対決が始まった!!






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