EP.01 《ロボットVSエスパー》 後編
03
敵が動くまで準備をしながら、待つこと約1年後……。
―――山の中にある高校の1つ、岩鉄高校――。
この高校を上空より捉える〔ステルス化した衛星カメラ〕……。
これはステルスサテライトと言い、校内をも解析し、映像を捉える事が出来る代物である。
大きさは一般軽自動車ぐらいの縦・横・高さ。
ステルスサテライトは校内の様々な部屋をチェックしていく……。
不可解な映像ばかりが見つかった。
どの教室も授業が始まる前にも関わらず、半数近くの生徒が居ない。
廊下やトイレなど、他の場所を確認するが、その半数を補う人数は見当たらない。
本日は特別何かある日でもないし、現在は秋なので特に病気が流行る時期でもない。
実に珍妙な光景であった。
旧校舎の人気のない階段にて、その事を確認する5人。
その5人はSボードと呼ばれるデヴァイスを使って、ステルス衛星機を遠隔操作している。
「ふむ。やはり、今日か……」
5人の中央に存在するテツトはある事を確信。
次にテツトは左へ顔を回す。
左には男2人。うち1人・ヨシヒロが美顔を爽やかに悩ませ、両掌をひょいと翳す。
「他のどの学校も同じだよ……。半数近くが学校へ来ていないアリサマさ」
「こっちもだぁ。小中高に大学、殆どの学校の生徒が消えてらぁ。こりゃ、マジで今日が決行日だな」
「ヨシヒロ、コウスケ……。そっちもか」
テツトは女子2人=ミヤとノリカの方へ目線を持っていく。
「う~ん、学校だけじゃなく、殆どの企業も人らもやっぱり、居ないよぉ~」
「あちゃ~、こっちもだわぁ~。ここまでいくと凄いモンだわぁ」
「都内企業もか……」
テツトは女子2名の様子より、結果を看破する。
――そうしている間に、授業開始のチャイムが鳴る。
「って、もうこんな時間かよ」
苦い顔で予鈴の音を耳にするコウスケ。
舌打ちをするテツト。
「チ……。一旦教室へ行くか……」
5人は一斉に自分達の教室の階へ疾駆した。
……が、途中の廊下にあった水入りバケツにミヤは足を引っ掛けてしまい、転倒。
床へブチ蒔けられる水。その水へ落ちるミヤ。
テツト達4人は、咄嗟に水被りを回避。一旦、走行停止する。
「あっちゃ~、やっちまったなこりゃ……」
酸っぱい顔で髪を掻くコウスケ。
「どうする? 拭く? 無視する?」
ノリカは頬を引き攣らせ、仲間に意見を求めた。
が、いつの間にかテツトは無言で雑巾を踏み、スケート感覚で水を拭いていっていた。
「喋る暇があるなら行動しろって事かい? ナイスヒイロイズムだ。参考にさせて貰うよ」
キザったらしくパチンと指を鳴らし、クスリと笑んだヨシヒロ。
彼は水道付近にある雑巾を掴み、地面に落とし、テツトと同様スケーティング雑巾がけをする。
「買いかぶるな。面倒事は合理的に駆除するに限る……それだけの話だ」
テツトはさらっと解釈の訂正を促す。
ヨシヒロは長い睫毛のある瞼を降ろし、不敵に笑んだ。
「フフ、そうかい……」
「いったたた……」
ようやく立ち上がるミヤ。服はびしょびしょで、下着が透けて見える状態となっていた。
淡いピンクのブラジャーがくっきりと浮かび上がった。
「うわぁ~びしょびしょぉ~」
「あ~あ、世話焼けるんだから……」
「ゴメン……」
「次から気をつけなよ」
「うん……」
ノリカはスカートからハンカチを取り出し、濡れたミヤの肢体を拭く。
唯一いやらしい視線でミヤの胸元を眺めるコウスケはポケットからハンカチを取り出す。
「んじゃ、俺も鳳の濡れた身体を……」
しれっとわざとらしい笑顔で女子2名へ向うコウスケ。
だが、ぬっと襲来したノリカの2本指に、コウスケの両目が突かれる。
「ぐほぁーっ!」
「あんたは床拭きな……」
「チ……へいへい」
と、渋々、コウスケは雑巾を掴んだ。
水道前に投げ飛ばされる湿った雑巾。……後始末終了。
――とっくに予鈴の鳴り終えた頃。
5人は慌てて自分達の1の5教室へ駆け込んだ。
ここで、教師が遅刻に関して叱責する。
………と、いうのが定番だが、それは無かった。
教室内は5人などお構いなしに、困惑に包まれていた。
テツト達のクラスも半数近くの生徒が出席していない状態。
更に何故か教室のテレビが点いており、ニュース番組が流れている。
1時間目担当の女性教師が何度もリモコンで電源を切ろうとしているも、何故か点いたままという、妙な光景があった。
何でテレビ切れないんだろう? と、眺める残りの生徒達。
テツト達5人はこの珍妙で、不気味な教室を見やる。
「んあ? テレビ?」
「何で点いているんだろ? 授業で使うっけ?」
ぼんやりと疑問を呟くコウスケに、ミヤ。
「いや、そういう予告はしていなかったハズだが……」
テツトは記憶と現状により、意図して点けられたものではないと看破。
彼ら5人の一番近くの席の加賀ナオキ君が、現状を5人に説明する。
「分かんないけど、さっき勝手に点いたんだ。で、先生が消そうとしているんだけど消えなくてさ」
「はぁん? 消えないってぇ?」
「このテレビは最新のもの。誤作動とは思えない……。妙だねこれは……」
難しい表情となるノリカに、ヨシヒロ。
そんな時、突如淡々と女子アナウンサーが疾走事件を述べているニュース番組から、いきなり、内閣官邸が映る。
「む!?」
反応するテツト達。教室内の皆も改めてテレビへ注目。
次に官邸を映すテレビから音声が発せられる。
「やっほ~、テレビの前のみ~なさ~ん! ご~きげん麗しゅう~!」
ひょうきんな印象の若い男の声――。
テツトにとっては聞いた事のあるこの声に、口調。
派手なピンク色のスーツを着用したあの男が、自分を超能力者へ勧誘したあの男の姿がテレビの向こう側にあった。
テレビの向こう……。
それはニュース等で御馴染みの内閣官邸である。
その官邸・会議場を背景にこの派手なスーツの男が居る。
その場違いな男がトリッキーに、タップダンスを始め、言葉を続けた。
「どもども~、初めまして~。私、倉岡と申しますよん。で、その私目がナ~ゼ、内閣官邸に居るかと言うとですねぇ~。……ぐふふふ♪」
倉岡は軽快な足取りで、ぴょんと横へ移動。
彼が退けた先、そこには戦慄の光景があった。
ぐしゃぐしゃに凹んだりと、破損が荒々しく広渡る室内。
顔には分り易く打撲痕や出血が見られる老人・中年達……。
コテンパンに打ちのめされ、グロッキー状態の政治家達の姿があった。
そして、そんな政治家連中を見下している人物が15人ほど存在している。
「じゃ~じゃじゃ~ん、クズやら、無能やらと叩かれまくっていてもの何~だかんだで日本を統括している政治家の皆さんはこのと~り、ボッコボッコになっていま~す。これがどういう意味か分っかりますかよ~ん?」
再びテレビの前に顔を出し、画面いっぱいに陰険な笑顔を押し付ける倉岡。
「教えてあげま~す。テロっちゃったんですよ~ん。ブ~ックック! 実にお間抜けな姿ですねぇ~」
この映像は日本各地で放映されている。
テレビに注目している人々は衝撃を覚える他無かった。
04
小憎たらしい嘲笑をしている倉岡は詳細を更に伝える。
「ナ~ゼ、我々がこ~んな事出来たか気になりませんか? 気になりますよね!?」
じりじりとこの人を不愉快にさせるのが得意そうな悪辣な笑顔を近づけながら尚も、倉岡はマシンガントークを連射する。
「実はですねぇ……我々はエスパー=超能力者なんですよっ!」
カメラいっぱいに近づけた顔を急に倉岡は遠ざけ、横へさささっと消え入る。
「そしてそしてぇ、お待ちかねぇ~。今回のテロの首謀者にして、我々エスパーテロ軍団・リッチプレッシャー(RP)のリーダー、深大寺正十郎様の登場なりぃ~」
倉岡と入れ替えに30代前半そこらの男性が闊歩して来る。
この30代そこらの男、表情はやつれており、頬もコケており、まるで人間に戻りかけているゾンビのような風貌である。
深大寺正十郎と呼ばれたこの男は、見る物を呪いそうな程の邪念溢れる瞳をカメラへ真っ直ぐ向け、声を発した。
「テレビの前の諸君! 我々は超能力を持っている。試しに1つの証拠を見せてやろう」
深大寺は後ろを向き、顔を血塗れにしている政治家1名へ向けて平手を翳す。
すると、牽引フックに吊られたかのように、その政治家が突如浮かび上がる。
ニタリと口元を歪ませ、深大寺は掌を左へ向ける。
それに呼応し、浮遊している政治家は左へ引っ張られる。そしてそのまま近くの壁へ激突するのだった。
元々気絶していたので、悲鳴を上げる事すらなく、更なるダメージを喰らうのだった。
深大寺は鼻を突き上げ、自慢気な顔で再びテレビに顔を向けた。
「ふふふ、どうかな? ……諸君」
1の5強室内。
教師をはじめとする多くの生徒達が目を疑っていた。
信じ難い現実に、ざわめく。ざわめかざるを得ないのだった。
―――で、テツト達5人はというと……。
いつの間にやら、教室から消えていた………。
テレビ前の深大寺は声明を続けた。
「この通り、この国を指揮する政治家は武力で我々が捻じ伏せた。理由は何か……それは、この社会を変える事だ! 現在の世の中は生れた環境に恵まれし者が有利な格差社会である! その立場を逆転させるのだ! 具体的には庶民・貧乏人である我々超能力者が、恵まれし者共に天罰を与えるのだ!」
凛とした表情を以て、深大寺は拳を篤く握り締める。
「つまりは恵まれし者を徹底的にこき降ろし、貧乏人に没落させるのである!」
倉岡はひょっこりと隣に映り、仰々しく拍手喝采を送った。
「いや~! 素晴らしいっ! あの憎ったらしい金持ち共に天罰を与えるのですねぇ~! はい~、拍手! 拍手ぅ! パラリラパラリラァ~!」
「そして、具体的にはこうなる。倉岡!」
「はいはい~、皆さんに分り易く、紙芝居で説明しますねぇ~」
スケッチブックがカメラ前に浮遊して来、勝手にページが捲れて行く。
これは倉岡の能力である。
―――幼稚な作画にミスマッチな、えげつない紙芝居がスタートする。
1ページ目。自分達を模した人物達が政治家や警察を殺害する絵。
「まずは政治家さんや警察さんを殺しちゃいま~す。つまりは我々がこの国のルールを作る立場になっちゃいま~す」
パラリとページが捲れ、2枚目に突入。
自分達が他の人間を踏み付けている絵に変わる。
「次にエスパーが融通された社会にしちゃいま~す。はぃ~、エスパーじゃない人、か~わいそぉ~っ!」
じわじわとおちょくった口調で倉岡は紙芝居を進める。
3枚目に切り替わる。
自分達が他者から金や物品を強引に奪う絵が出現。
「そしてそしてぇ~、全ての勝利や財産・安定を我々が頂いちゃいま~す。我々エスパーは何やっても自由! お金も地位も権力も全て力ずくで奪っちゃいまーす!」
最後の4枚目へ突入。
路頭にて、非エスパーと書かれた人物の死体の山が描かれている絵。
「これによって、クソ金持ちエリート共は貧乏で不憫な生活しか出来なくなってしまいま~すよん! ザマミロ・オブ・ザマミロですよんっ! あーでも、〔我々が恵まれていないと判断した人〕には攻撃はしませんよ~ん。それどころか恩恵を分け与えますよん。な~ので、ご安心をっ! でーも、どういう基準になるかは分りませんけどね~ん」
ふざけていて、ねちっこい語り口での紙芝居を終えた倉岡。
操術念力から開放され、スケッチブックは床に落ちた。
再び、深大寺はやつれた不気味な顔を突き上げ、画面中央に映る。
「……という事だ。これより、政治家共にトドメを差す……。つまりは公開処刑だ!」
気絶していた政治家勢……。
もとい、気絶したフリをしていた一同だったが、この言葉には流石に動揺。
情け無い悲鳴を上げ、ボロボロな身体引き摺って逃げようとする。
「フン、醜い悪足掻きだ……」
「た、頼む、やめてくれ! い、命だけはっ!」
総理は裏返った声で命乞いを始める。
「総理、私の顔に覚えはあるか?」
「い、いや、知らん……」
「く………。そうか。記憶力の悪い老害が舵を握る世は正すべきだな」
何となく予想はしていたが、ショックであった深大寺。
短い間ではあったが、この総理と同じ世界へ立っていたのに……。
一瞥を贈呈する深大寺の後ろで黙々と待機していた仲間エスパー連中が一斉に姿を消し、逃げていく政治家の目前に出現。
――テレポーテーションである。
政治家一同は深大寺達15名ほどのエスパーテロ軍団に囲まれた。
深大寺は高圧的に総理を中心とした政治家へじりじりと近寄っていく。
「総理、終わりだ……お前達金持ちの時代は。時代は我々エスパーのモノのとなるのだ! あの世で反省するがいい! 世襲・英才教育を重んじ、不公正を容認した醜悪な政治をな!」
彼らを映像として捉えるカメラは倉岡が操るモノ以外にもあった。
……それは透明=光学迷彩を装備した衛星機であった。
「――いや、貴様達の時代も来ない………」
謎の電子音声を耳にするこの場の全員。
その声の発生場所を探さんと、辺りを見渡す深大寺達。
「だ、誰だっ!」
深大寺と総理の間に0と1の配列が人の形をし、出現。
それが瞬時にブルーを基調としたロボットと化した!
そのロボット、身長180cm前後。成人男性ぐらいの体格を誇る。
メインカラー・メタリックブルー、サブカラー・ブラックグレー、クリアーブラックのアンテナ付きゴーグル他、センサーを搭載。
ぱっと見の装備として、両肩上にマシンガン、両腰にマグナム、両脚に畳まれたミドルライフル、右腕にシールド状になっているが、実質は折り畳まれたロングスナイパーライフル。そして、胸部左上から右斜め下にベルトのように巻かれたライフルを持つ。
総じて全身銃器の機影が燦然と現われた。
―――この機体こそが、さっきの電子音声の持ち主である。
「な! 何だとっ!?」
予想だにしていないかった来客に、深大寺達は眉を潜め、身構える。
「多少の鬱憤晴らしなら、目を瞑るのだが……流石に殺害の領域になると止めざるを得ない」
「……何者だ?」
深大寺は怪訝な顔を形成し、謎の機影に問うた。
「機種名・【テクノドゥル(TD)】、マシン固有名、【コマンドオライオン】。貴様らの野望を阻止する者だ!」
その言葉を言い終えると同時に両腰のビームガン=マグナムを手に取り、ガン=カタの如く構える!
まごう事なき、戦闘体制だ!
深大寺達エスパーテロ軍団・RPは察知した。
この、Cオライオンと名乗る機体が敵であり、自分らと戦う事を!
「ほう、正義のロボット気取りか! 面白い! 正義など子供の脳内にしかない事を我々大人が教えてやろう! やれ!」
深大寺の指示の下、総勢15人の異能者が1機のTDへ飛び掛る!
「喰らえ!」
右側の3名が掌から火炎弾を連射!
これが彼ら3人の超能力のようだ。
瞬時に拳銃=マグナムのトリガーを絞るCオライオン!
Cオライオンは無数の火炎弾へハンドガン=マグナムと右肩のマシンガンを外側へスライド、右脚を半分分割し、ミドルライフルを展開! ビーム弾を連続で射出!
全ての火炎弾を撃ち抜き、相殺! 爆煙が発生!
更にCオライオンは発砲!
爆煙を突き抜け、その先へ………。
火炎を操るエスパーへと向う光弾!
舌打ちをし、3人はテレポーテーションを図る。
しかし、1名遅れてしまい、Cオライオンのビーム弾の餌食となった!
攻撃を受け、悶えるその男……。
その悲痛の叫びに、思わず、エスパー一同は動きを止めた。
攻撃を喰らったエスパーは悶えながら、己の身体が0と1の羅列になっていく……。
見たことの無い症状ゆえ、深大寺は目を疑う。
「な、何だこれは……?」
「データコンバート……人間をデジタルデータに変換する……。先程の攻撃はコンバートショット。データ化プログラムを光弾にし、身体へ撃ち込んだものだ」
「そ、そんなデタラメな……」
「デタラメでも現実だ。そして、これからお前らも“保存”されて貰う」
「保存だとっ!?」
Cオライオンは腕スリットからメモリーカードのようなものを射出。
そのカードは0と1になっていくエスパーの身体に突き刺さり、カードがそのエスパーを吸い込んでいった!
文字通り、そのメモリーカードに先程のエスパーというデータが保存されたのだった。
「くそっぉ! ふざけるなぁ!」
激昂する残る仲間エスパー連中は血気立った表情で脚部と背中にジェットブースターを装備・拳を鋼鉄にする能力を発動! メタリックブルーのTDへ飛び掛った!
四方八方から高速移動し、殴りかかって来るエスパー連中の攻撃をかわしては両手・両肩・両脚の銃器を大乱射して応戦するCオライオン。
「ほう、身体能力強化か……」
余裕綽綽のCオライオンの操作主=テツト。
ブルー&ブラックの狩人型TDは重厚な外見に似合わず、軽快な動きで応戦。
しっちゃかめっちゃかな画の中、動き回っているエスパー達は次第に自分らの動きのパターンを読まれ、追い詰められる。終いにはデータ化プログラムを撃ち込まれていく!
―――あっと言う間にエスパーは残り5人ほどになる。
あまりにも短時間に行われた事ゆえ、愕然となるしかない深大寺や倉岡をはじめとする残るエスパーであった。
「ぬ、やるではないかCオライオン……。だが! 倉岡ぁ!」
「はいはいぃ~」
倉岡はいやらしく、両指をくねくね動かす。
「さぁて、問題ですよん! テレビジャックを誰がどうやって行っているでしょーかっ?」
獰猛な大蛇の如し、目を開眼!
ドン! と、両手を突き出す倉岡!
「正解はぁ~、私が操っているのでーす! 私、倉岡は無機物を操る超能力を持っているんですよねぇ~。つまり……ロボットである貴方も操れるんですよぉ~んだ!」
一変、血気立った印象になる倉岡は操るべく、念力をCオライオンへ飛ばす!
………カシャッ!
――Cオライオンはうろたえる様子は無く、額のアンテナ付きゴーグルを目元へセット!
そのゴーグルは実際には目に見えない〔念力の流れを可視化〕させ、自身へ迫る脅威を捉える!
確認! 真っ直ぐにやって来る、操りの意を持った波動を!
Cオライオンは落ち着き払ったまま、床を足の裏で蹴り飛ばし、念力の流れから完全に逸れた!
その上で、低空中に位置するCオライオン、脚部ミドルライフルを下へ伸展させ、棒高跳びの棒の如く、床を更に蹴り上げ、完全に相手の魔の手から離れるのだった!
この、サーチングモードはゴーグルを額に上げたノーマルモードよりも、高度な演算能力が出来る反面、多くのエネルギー=電力やセンサーの稼動率=マシン発熱量を上げる。
何が起こるか分からない戦場。
念の為、エネルギー温存や機体に負担を掛けないようにすべきなので、必要時以外には基本的に使用しない形態なのである。
アッサリ回避された倉岡の攻撃。
念力を回避するなどあり得ないと思っていた倉岡は何度も瞬きする。
「ありっ? 逃げた? 念力は見えないハズなのに?」
「見えるんだよ……。こちらには “貴様らの念力”がな!」
脳髄へ疾る稲妻! 絶句する倉岡。
倉岡の真横には、青いTDが銃口を構えているのだった。
Cオライオンは即座に回り込んでいたのだった!
「うっしょぉ~ん!」
倉岡は鼻水を吹き飛ばし、両頬を押さえ、ムンクの叫びとなった!
このままでは倉岡がコンバートショットの餌食になってしまう。
深大寺が倉岡の前にテレポーテーションし、咄嗟に倉岡を連れて姿を消す!
そして、危険な敵=Cオライオンから離れた端へと再出現。
「ぐ……おのれ……。まさか、こんな敵がいたとは………。貴様、政府の者か?」
「違うな。俺はわざとお前らに政治家共をボコらさせた」
「何……? では一体、何者なんだ……?」
Cオライオンはむくりと深大寺らにマグナムの照準を向け、答えた。
「言った筈だ。エスパー格差社会を阻止するだけだと……。誰の味方でもない……」
掴みどころの無い存在……。
唖然となる深大寺と倉岡。
深大寺は数秒後、高笑いを開始。
「クハハハ! それはご立派だな! だが、面白い事を教えてやる! 我々が政府を襲撃した同時刻、我々の仲間が警察や自衛隊を潰しに行ったぞ! お前はそっちへ行った方がいいんじゃないのか?」
深大寺は眉毛を歪に動かし、悪辣とした顔で青いTDに揺さぶりを掛けた!
「フッ。……必要ないな」
まさか……仲間が? と、悪寒を察知する深大寺。
焦燥の汗を落とす深大寺へ銃口を真っ直ぐ向けるCオライオン。
「そうだ。貴様らの脳裏に描いた通りの事だ……」
Cオライオンのコマンダー、星渡テツトは戦略通りと言わんばかりの、不敵な表情を浮かべた!