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EP 10 テツトはぼんやりと考えた
河川敷にて、テツトとヨシヒロはぼんやりと川を眺めていた。
「ところでヨシヒロ。お前は誰かを妬んだことがあるか?」
「なんだいいきなり? う~ん、そうだねぇ。まぁあるね」
「誰だ?」
「ミュージシャンのSAKUTO。もう、カッコ良すぎ。完璧すぎって感じ?」
「生まれ変わったら、SAKUTOになってみたいか?」
対し、ヨシヒロは涼し気に笑い、首を左右へ振った。
「まさか。生まれ変わっても、僕で満足さ。僕には僕の美しさがある……」
「そうか……」
「そういう君はどうなんだい?」
「俺か……。正直、自分より環境のある奴は羨ましいと言えば羨ましい。……だが」
「だが?」
「自分より環境のある奴に勝てたら、楽しいだろうな……。絶望的に打ちのめされない限りは逆転劇に挑戦してみるのも悪くないかもしれん」
「なるほどね。でも、全く勝てなかったらどうする気だい?」
「勝利自体を俺の基準にする。要するに、現在の結果に自己満足してみるという話だ」
「へぇ……」
「ま、これは最後の手段だ……。なんとか、使わないでいたいものだ」
テツトは立ち上がり、背筋をうーんと伸ばした。