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EP.09 《ノリカ結婚10秒前?》

EP.09 《ノリカ結婚10秒前?》


01


 その日、突拍子もないニュースが流された。

 何と、“一夫多妻制導入”を日本政府が掲げたのだ。

 理由は「少子化対策。金持ちな奴は沢山嫁貰って子作りしろ」という話らしい。

 テツトは朝食の白米を食しながら、このニュースを知る。

「ほぅ……。こう来たか」

 そこへ洗濯籠を持ったテツトの母がテレビをチラと見やる。

「あらまぁ、こんな制度作っちゃってぇ~。こりゃ、モテル男は更にモテ、モテない男は更にモテなくなるわねぇ~」

「結婚したい相手が居るが、相手は結婚しているので諦める必要が無くなったからな」

「そうだねぇ~。厳しい世の中になっていくねぇ~。あ~、怖い、怖い」

 既に結婚した女であり、今更新たに結婚するなど面倒と思うテツト母は他人事にようにぼやき、ベランダへ洗濯物を干しに行くのであった。


 旧校舎階段。

 御馴染みである、テツト達5人の学校での集合場所である。

「な~んで、いきなり一夫多妻制なんか可決したんだろう?」

 コウスケ達は疑問の渦中に居た。

 そこにテツトが回答の弾丸を放つ。

「金持ちジジイが若い女を沢山抱え込みたいからだろう。要は玉の輿枠を増やすという事だ。これにより、金持ち老人と女だけは幸福となり、反対に若い男と金の無い老人が不憫な目に遭う」

「ふぅ、イヤなエロオヤジの発想だねぇ~。『可愛い女の子は何人でも大歓迎! オジサン、お嬢チャンには沢山お金あげるよぉ~。………だが、ヤローは来んな。死ね!』と、いう話だろ?」

 ヨシヒロは美顔を悩ませ、詩を詠うように呟く。

 無言で首肯するテツトは話を続行。

「この法案を作ったのは既得権持ちの高齢者だ。この前ドームに襲来したモンスターの招待はヤツラで間違いない。ヤツラは常に自分らだけがいい思いをして逃げ切ろうとしか考えていないからな。こういう政策に出ても何ら不思議ではない」

 豪快に組む、スレンダーな美脚。

 ノリカは苛立ち気味に両脚をクロスした。

「ハン! 気に入らないねぇ~。金をやりゃあ、エロオヤジに若い女が群がると思ってるとはねぇ~。随分、女を安く見られたモンだわ」

「どういう反響があるかは現時点では分からん。しかし、現在は不況。就職が難しい時代。プライドを捨てても養ってくれるジジイに媚びる奴が居ないとは思っていないだろう、連中は」

「う~ん、お金が無い……生活が出来ないのなら、プライドを捨てちゃう人も出ちゃうのかな……?」

 両頬を掌で支えるミヤは呆然と溜め息を落とした。

「俺は女ではない。だからそんな事は分からん。しかし、この制度を放置すれば碌な事にならん」

「んじゃ、具体的には何だよ?」

 コウスケの質問にテツトは応じる。

「若い男・金のない男・モテない男・貧乏高齢者は更に追い詰められ、金持ちオヤジと結婚出来た女も行く行くは年齢差の都合上、金持ちオヤジに先立たれ、金の無い生活を強いられる。一夫多妻制で資産が減るから遺産など必然的に枯渇するからな」

「ナルホド、合法的に女遊びに大金消費して、ポックリ死ぬ既得権オヤジ共の勝ち逃げシナリオって事かぁ。美しくないなぁ~」

 眉で波描き、ヨシヒロは顔を渋くする。

 勢いよく持ち上がる美尻。

 ノリカは燦然と立ち上がった!

「決まりねっ! 徹底的にブッ潰す! それっきゃないっしょ?」

「イケメンヒーローは他人を不幸にする存在を放っておかない。立ち向かうのは当然。いや、必然さ」

「若い・金無い・モテない3拍子の俺としちゃ、容認なんか出来ネェモンな! やってやるぜ!」

「それ……言って悲しくない?」

 ミヤは哀れな小動物を見るような目でコウスケを眺める。

 コウスケは図星ゆえ、ずっこける。

「んだぁぁっ! 痛いトコ突かないでぇ~。遭えて触れないでくれよそこはっ!」

「ご、御免……」

 ヨシヒロ、ノリカは思わず笑い出す。

 テツトだけは冷静なポーカーフェイスをしたまま、和んだ空気を打撃する。

「……しかし、まだ敵の数・勢力は掴めていない。ステルスサテライトで調査中だ。向こうのデータが集まるまでは下手に動かんぞ?」

「ま、そうなるかぁ。それまでじっくり構えておくとしよう……。討伐する楽しみは暫く後かぁ」

 自分のSボードを見つめ、不敵にヨシヒロは笑んだ。


02


 昼休憩が終わり、平常の授業を受講するテツト達。

 何ら変哲もない数学の授業中。

 ――のハズだった。

「……え~。次は問3だな。ようし、問2は田中が解いたから、その後ろの川元。解いてくれー」

 30代前半の男性教諭が川元カオリ=メイドカフェでアルバイトをしているノリカ・ミヤの友人は虚ろな表情をしていた。

「あー、はい……」

 覇気の無い声で応答し、黒板へと進行。だが、途中で足元がよろめき、床に倒れ伏してしまう。

 思わず、椅子から飛び跳ね、動揺するノリカ。

「ちょ、カオリ!?」

 いきなりクラスメイトがふわりと倒れた。

 クラス内の一同は怪訝な目で倒れた学友に注目する。

「おいおい、どうしたんだ?」

 怪訝な顔で教師が駆け寄る。

 既にノリカはカオリの額に手を当て、熱があるかどうか窺う。

「先生、熱あるみたいです。あたし、保険室に連れていきます」

「お、おぉ、頼んだぞ、楠」

「あ、あたしも行きます。一人じゃ連れていけないと思いますから」

 ミヤが挙手。

「そうだな。女子2人で運んでいってくれ」

「はい。運ぶよっ、ミヤ」

「うん!」

 ノリカとミヤは友・カオリの腕を肩に掛け、立ち上がった。

 こちら保健室……。

「風邪みたいね。川元さん」

 保健室のおばさんは熱を測り、風邪であると診察した。

「何か、心当たりある? 楠さん、鳳さん」

「そうですね……」

 ミヤはカオリが倒れた原因を考え出す。

「バイトのし過ぎ……かな? 最近かなりシフト入れているって聞いていたから」

 ノリカが心当たりを自信なさ気に呟いてみた。

「それかなぁ。ただでさえ、学業をこなしながら、アルバイトというのはキツイというのに……」

「そうですか……」

 知らないところで友達が苦労していた現実を知ったミヤとノリカは悄然となった。

「あ、ゴメン。これから会議があるから、ここ、少しの間、開けるね。2人は早く教室へ戻りなさい」

「あ、はい……」

 保健室のおばちゃんはそう言い残し、退室した。

「ノ、ノリカ……」

 カオリが意識を取り戻し、ノリカを呼ぶ。

 2人は反応し、カオリの居るベッドの方へと急行。

「どうしたの? 浣腸でもしようか?」

「浣腸って……ノリカちゃん」

「あたし、迷っているの……」

 ノリカ・ミヤの脳上に“?が”灯る。

「……実はね。凄くお金持ちのおじさんに養って貰えるかもしれないの」

「えっ?」

「金持ちのオッサン?」

「うん……メイドのアルバイトしている時に出会った人なんだけど……」

 その時の事を細かく語り出すカオリ。


 ――それは昨日の事。

 カオリは家の経済的余裕が無い為、アルバイトをしている。

 そんなカオリの元へ容姿はガマガエルのような気持ち悪い太った中年男性が来客。

 その男は高価な指輪や時計など貴金属を持っており、服装も醜い容姿に似つかわしい高級スーツを着用している。

 どう見ても金持ちのようであった。

 この男、セクハラをしつつ、「自分は金があるから君を専属メイドとして高く雇ってあげる。いや、お嫁さんにしてもいいよ。……但し、毎日僕とエッチする事。お嫁さんなら、毎日子作りしないとねぇ」と用件を突きつけた。

 明らかにいやらしい魂胆での要求。

 カオリは無論、断った。しかし、

「君、高校生だよね。お金無いから働いているんだよね。君、お金……裕福な生活が欲しくないのかい?」

 と、不気味な笑いで揺さぶりを入れた。

 気色悪い中年金持ち男は高級指輪をわざと輝かせ、自分の電話番号を記した紙を残し、カフェを後にした。


「な~るほど、気持ち悪いのを我慢して金を選ぶべきかどうかって事ねぇ~」

 ノリカがさらっと要約。

 カオリはそれで間違いないと頷く。

「お金は欲しいよ。でも、あんな気持ち悪い人にいやらしい事を毎日されるのは……」

「抵抗あるよね……」

 ミヤの意見にカオリは同意を見せる。

「そうだけど、このままバイトと学業をこなして、大学まで行っても、その先に保障された未来は無い……。だから、いっその事……とも思えちゃって」

「そうだよね………」

 ミヤは否定意見を言えず、ジレンマに共感してしまう。

「かーっ! ダメダメッ! うまい話には絶対裏があるって! やめときな!」

 スレンダーな美脚をクロスし、一蹴。

 ノリカにとってはいけ好かない話であった。

「大体ねぇ~、好き勝手遊ばれてポイ捨てされんのが関の山よ、そんなの! これ、一夫多妻制になった事を利用しているね、きっと」

「どういう意味?」

 テツトの話を受けていないカオリにはさっぱり分からない。

 なので、ノリカは説明に入った。

 カオリは納得。

 勝ち逃げを決めた富裕中高年の玩具にされ、その後、妻を増やされ、自分の取り分を減らされる。金を女に管理されないよにさせる。

そして、年老いたら資産を失い、男や子供の面倒を全て自分ひとりに押し付けられる始末が目に見えている事を知った。

 カオリは我に返って、冷静になった。

「やっぱり、うまい話はないよね……ゴメン。変なこと言っちゃって」

「謝る事はないよ、カオリ」

「そう! 悪いのは他人を玩具のように弄ぶヤツ! 徹底的にブチのめすべきねぇ……」

 ノリカの脳内に稲妻が走る。

「あーっ! そうだっ!」

「ノ、ノリカちゃん?」

 突然雄叫ぶノリカに唖然となるミヤとカオリは目をパチクリ動かす。


03


 ガマガエルのような顔の中年男がカオリの働くメイドカフェへと来客した。

 彼はある少女の隣へと座る。

「うへへ、待ったかい? ノリエちゃん?」

 ノリエと呼ばれた少女は髪型をツインテールにした、ノリカ。今回はフリフリのロリータファッションでここへ来客していた。

「ごめんなさい。友達のカオリさんから貴方の話を聞きまして是非会ってみたくなりまして」

 今迄と全く異なるファッションに態度・口調。

 ノリエという架空の人物に変身したノリカはこの男に接触を図ったのである。


 この様子をステルスサテライトを通して静観しているのは無論テツト達5人。

 彼らは鳳研究所に待機している。

「うへぇ、何だこの演技。鳥肌立つぜマジで……」

 背筋が凍り、寒気を堪えるコウスケ。

 そんな彼に同意を示すガセイ。

「全くです。演技力とは恐ろしいものですね」

「しかし、彼女、思い切った作戦に出たねぇ~。意外だよ」

「そう? ノリカちゃんらしいと思うけど……」

 ヨシヒロとミヤはそう言いながら、クッキーを食す。

 テツトはSボード画面を凝視し、ノリカが実行している作戦の全貌をおさらいする。

(この中年金持ちオヤジがモンスターになるプログラムを受けている可能性は高い。そうだとしたら、他の仲間を把握している可能性も高い。要するに潜入調査。もし、予想が的中していれば、大きな情報を手に出来るかもしれん。……まずはヤツがモンスターになるか、否かを確かめなくてはな……。頼むぞ。楠……)

 この身を投じて挑んだノリカに今は全てを託すテツトら一同であった。


 ノリカもとい、現在ノリエである彼女は話を進めていく。

「あのー、私贅沢大好きなんですよねぇ。私の家、あまりお金無いのに、無理してちょっとイイ服、買っちゃうんですよ」

「へぇ~。ノリエちゃんは贅沢が大好きかぁ~」

「はい。とっても。だから、お金持ちの人ってとても魅力的に感じちゃいます」

(んな訳ねーだろ、バーカ……。グロガエルに興味なんか持つかっつーの)

 心の中で反対の事=本音を溢す。

 ノリカは演技とはいえ、我ながら嫌なことをしているなと思った。

 金持ち・コネ持ちを贔屓・融通していた芸能プロダクションの事……。

 本人の実力・才能だけでなく、背後も評価に入れるのは気に入らなかった。

 それに、大人の世界の話だが、色仕掛け、媚売りで仕事を取らないと生きていけない芸能人の先輩方を思い出すと居た堪れない。

 一層、個人の才能・実力よりも世渡り能力が重視される事に納得がいかない。

 おかしくない?

 役者って、演技で評価される職業でしょ? 

……と。

――そう思いつつも、会話は続く。

「それに……貴方はお金だけの人じゃないと思うんです。どこの馬の骨かも分からない女を妻にしようとしてくれる心温かい人だと思います……」

(んな事、微塵にも思ってないし! どうぜ若い女体狙いだろーが、クソエロオヤジが!)

「そう思ってくれるかい? 嬉しいなぁ~」

「そうですか……。だけど、1つ、心配な事があります」

「何だい? お金なら困らないよぉ。僕は金融業会のトップに君臨しているんだよ。たとえ、今働いている会社が潰れても100歳まで遊んで暮らせるお金はあるんだ」

「でも、そのお金を無理矢理奪われては大変ですよね。防衛する力、持っています? 弱い人と一緒に居たくないなぁ~。身体も許したくないなぁ~」

 ノリエはわざとらしい口調で煽りに入った。

「ぬぬ……防衛かぁ。セキュリティは堅いし……」

「堅いし?」

 男は突如、小声になり、ノリエに耳打ちをする。


「実はね、私はモンスターに変身出来るんだ。自己防衛は万全さ。それに、その力で如何なる存在も屈服させられるんだ……。勿論、君もね……」


 一気に情報を漏らすこの男。

 下心が優先され、力ずくで・さっさとノリエを弄ぶべく、圧倒的力があると牽制に掛かったのである。

 ……これを待っていた。

 ノリエもとい、ノリカの心中でニタリと計略的な笑みに顔が歪む。

「へぇ~。そうなんですかぁ。見てみたいなぁ~。逞しいモンスターのす・が・た♪ その後は逞しい人間の時の裸を見ようかな? あたしの裸を見せた後で♪」

 後は畳んでいくだけだ。

 ノリカは相手を餌付けし、誘導に出る。

「も、もちろんだともぉ~。そうだなぁ~公園にでも行こうか」

「はい……。楽しみです」

 ノリエの演技力満点の笑顔。

 場所は近場の公園へと移る。

 既に日は暮れ、人っ子一人居ない公園。

 そこへノリエと男がやって来る。

「ぐへへ……誰も居ない。ノリエちゃんとこのままエッチ出来そうだよ……」

 ヨダレを垂らし、下品な笑みに歪む男。

 下心が沸騰していく。

「んじゃ、ノリエちゃん、僕のカッコイイモンスター姿、魅せてあげるよ!」

「わぁい! 楽しみぃ!」

(ハン、今日であんたはデータ世界へオネンネだよ)

 男が気を高め、踏ん張りを入れる……。背中を丸める。

 細胞を転換させていき、人肌から両生類的なヌメヌメした肌へと変貌していく……。

 巨大なガマガエルへと姿を変えた。

(フン、顔は変身前と同じじゃん。何このギャグ……)

「きゃー、こわーい! グロテスクぅ!」

 突然、棒読みをし、怖がる演技をしながら、ノリエは公園から去っていこうとする。

「逃がさないよ。身体の隅々までノリエちゃんをペロペロしちゃうんだからねー!」

 カエルモンスターらしく、長く、弾力性のある舌を伸ばし、ノリエへと迫る!

 ロープの如く、捕らえんとする。

 

 ……シュッ!


 そこへ電光石火の如く、“キャリバー”が長い舌を切り飛ばした!

 颯爽と地を踏む、美しき騎士ロボット……。

 Lシュヴァリエが招来された!

「ふぅ、下品だなぁ性欲塗れの人間……いや、ケダモノは。ケダモノは退治しないとねぇ」

「き、貴様はっ!」

「ふふっ、正義のヒーローさ」

 ニヒルに自己紹介をし、Lシュヴァリエはキャリバーを構え直し、身構える。

「逃げたまえ。一般人の少女よ!」

「は、はいっ、そうしますっ!」

(ま、後で戦いに参加するけどね)

 無駄に芝居めいたやりとりでノリエは走り去っていった。

「くっ! 逃がすかっ!」

 カエルモンスターはバネのある脚部を唸らせ、跳躍。

 Lシュヴァリエを飛び越え、ノリエへ迫らんとする。

 しかし! そこへ無数の射撃が襲来し、空中の巨大カエルを弾き飛ばした。

 カラカラと西部ガンマンの如く手元に回される2丁拳銃。

 獰猛な鋼鉄の竜口……。

 CオライオンとRカイザーが新たに登場した。

「フッ……。こちらに仲間が居る事を忘れたか」

「油断大敵。いや、欲情危険ですよ。カエルさん……」

「く、くぅっ……」


「へへへ、そういうこった!」

 カエルモンスターを囲うようにGバンディッタ、エンゼクロス、そしてウィザースロットが光臨。

 6対1となる。

「ふん! だから何だ! これでも喰らえ!」

 カエルはべとべとした気持ち悪い液体を吐き出した。

 Cオライオン、Rカイザーは地を蹴り、回避。

 避けた事でその後ろにあったジャングルジムへと付着。

 じわじわとジャングルジムの鉄格子が溶解していく………。

「成程……。溶解液ですか」

「皆、気をつけろ!」

「気をつけても遅いよーだ!」

 次々とカエルモンスターは溶解液を吐き飛ばす。

 TD達は身軽に避けるか、ビーム攻撃で相殺させる一方で、攻撃へ転じ難い状況………。

「まずはヤツの口を潰すしかないな……」

 オライオンはカエルの口内を第一ターゲットとする。

 しかし、ここで策を皆へ呟けば、相手に警戒される。

 自分以外へ溶解液を吐いた直後を狙うしかない。

 そして、そのチャンスが今、到来。

 エンゼクロスへ溶解液が飛ぶ。

 機動力の高いエンゼクロスはアクロバティックな動きで、見事相手の攻撃を空振りに終わらせた。

 今だ! シールドライフル展開&スタンバイ!

 ゴーグルをツインアイ前にセット。

 ポインティングショットモード・オライオン。

 狙いを定め………発射!

 閉じようとしている大口内への狭い隙間を通過し内部へ直撃させた!

「んぐぉああああっ! 口がぁ! 口がぁ!」

 カエルは悶え、転倒してしまう。

「よし、トドメはウィザースロット! お前が決めろ!」

「へん! 言われなくても!」

 ウィザースロットはカードビットを発進させる。

 カードフォーメーション形成。

 ノヴァモードをの準備を整える。

「……気に入らないのよ……」

 ウィザースロットの電子音声に反応するカエル。

「な、何……?」

「他人を自分のいいように動かそうとする、力を持つヤツがねぇっ!!」

 カードの円陣が光の太柱を放ち、カエルモンスターへと照射する。


 ……何故、下衆なヤツが権力・金を持っているのだろう。

 違うか。金や権力を手に入れたから下衆になってしまう人が出てしまうのだろう。

 選ぶ側は選ばれる側より権力がある。

 だから、選ばれる側は逆らえない。

 それを利用する選ぶ側はどうしても気に入らない。

 許せない。

 ノリカの怒号を乗せ、プリズンド・デスが巨大カエルモンスターを0と1へコンバートさせていくのだった。

「反省しな。クズ」

 ウィザースロットはメモリーカードを投げ付け、0と1の羅列を封じ込めた。

 メモリーカードはブーメランのようにウィザースロットの掌へと戻る。

「さぁて、後で洗いざらい吐いて貰おうじゃないの……」

「溶解液じゃなくて、情報を……ね」

 Lシュヴェリエが割り込む。

「ふふっ、そうね」

 ウィザースロットの持ち主ははにかんだ。

 ミッションは成功に終わったのだった。


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