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EP.08 《己にとって邪魔なものこそ、悪か?》

EP.08  [己にとって邪魔なものこそ、悪か?]


01


「お待ちしておりました星渡様方。お車にお乗りくださいませ」

 Dr鳳研究所前にリムジン車があり、ガセイのメイドが車のドアを開ける。

「行くぞ」

 テツトの指示により、ヨシヒロ達4人はリムジンへと乗り込んだ。

 リムジンはメイドにより、運転され、テツト達は移動していった。

 ヨシヒロ達4人は初めて、所謂高級車に乗った為、各々興奮していた。

「スゲェ、俺初めて乗ったよリムジン……」

「広いし、イイ匂いがするねぇ~」

 下品にもノリカはこの空間の匂いを鼻の穴をひくひくさせ、嗅ぐ。

「何か場違いな気がする……」

 もじもじと身体をくねらせるミヤをヨシヒロは冷笑する。

「ハハハッ、乗れと言われたんだ。場違いではないよ」

「まぁ、そうなんだけど………」

 4人はざわざわと話し、盛り上がる。

 反対にテツトは無言で過ぎ去っていく背景を眺めている。

 テツトは思い起こしていた。

 ………ガセイとの出会いを。


 それは半年前の話。

 CオライオンらTD5機は無事完成。

 試運転も何度か重ね、試行錯誤の末、完成に至った。

 しかし、5機だけでは不十分ではないか? 戦力は多い事に越した事はないと考え、ここから新たにマシン開発をした。

 元々、Dr鳳が作ったデータコンバートシステムにより、Sボードで作成した設計図と金属をデータとして取り込めば新たにマシン・武器開発する事は難しくない。

 敵のエスパー連中もまだ仕掛けて来ないので、こちらもまだ準備しておいていいだろうと判断したテツト。

 しかし、金属データの採取に困った。

 今まではDrが残した部品・材料やスクラップや廃工場から採取していったのだが、極端にスクラップあたりの金属が消えていくのはさすがに不自然だし、知られては困る存在に知られるのは拙いを考えていた。

 そんな時に予期せぬ来客が来た。

 そう、それが辰巳ガセイである。

 彼はあらゆる事業に手を出している大企業グループ・辰巳コンツェルンの一族。辰巳グループに技術提供をした事があるDr鳳の元へ用があってここへ来た。

 しかし、生憎Drは逝去。

 なので、孫娘のミヤに話を振った。

「え? ここの技術を買い取りたい?」

「はい、グループをより一層進化させる為にです」

「う~ん、そう言われても………」

 買い取らせていいのやら分らぬミヤは脳を渋くする。

 というか、どんな技術があるのかよく分らない。

 だが、テツトは考えた。今までDr鳳が辰巳グループへ技術提供を全てまではしなかった理由を。

 恐らく、〔碌なことにならなさそうだ〕とでも、判断したのだろう。

 優れた技術は使い方・使うタイミングを間違うと社会を悪い意味で狂わし兼ねない。その点を懸念しての事だろうとテツトは考えた。

 だから、このガセイの言うとおりにするべきではない。

 それに現状エスパーと戦う戦力が少ない。

 そこでテツトは策略を図った。

「今はそれどころではない。長い話になるが、聴いてくれ」

「はい? 何でしょう?」

 テツトはガセイに世襲エリートを復讐を目論むエスパー軍団についての話を伝えた。

「……ほう、そんな野望が……。恐ろしいですね。僕も狙われるという事じゃないですか。何せ、大企業トップの血族にして、エリート学生ですからねぇ。成績優秀・スポーツ万能・容姿端麗……妬まれる要素満載です。あぁ、困った、困った」

 サラサラの髪を靡かせ、美顔を悩ましげにするガセイ。

 実に仰々しい挙動。

「けっ、嫌味かよ……」

 コウスケは顔を歪め、不貞腐れる。

「な~んか、感じ悪いよねぇ、あいつ」

 コウスケに耳打ちするノリカも同じような感想を持っていた。

「……そこでだ。お前には俺が指定するモノを買い取って貰おう」

「それは?」

 楽しそうに小悪魔めいた笑顔で、ガセイは己の顎を摩った。

「対エスパーロボット、TDのうち、リンドヴルムカイザーを購入し、己の身だけを密かに守れ」

 その要求の意図が汲み取れない一同。

 真っ先に要求を突きつけられたガセイが意味を問う。

「護身出来るマシンを得られるのは嬉しいです。しかし、何故密かに己だけを?」

「俺達の仲間だと思われたくないからだ。お前以外の俺たち5人は庶民だ。ヤツラを説得できる可能性を考慮しておきたい……。ダメモトでもな」

「そうですか。いいでしょう」

「あともう1つ、鉄・アルミ・ジュラルミンなど、あらゆる金属や半導体を提供しろ。それがリンドヴルムカイザーの購入費だ」

「金属?」

「材料だ。これ以上の説明が要るか?」

「……いえ。分かりました。提供しましょう」

 あっさりと承諾。

 交渉成立となった。

「うわぁ、あっという間だな……。にしても、辰巳ガセイだっけ?」

「はい、何でしょう?」

「お前金持ちらしいけど、まだ高校生だろ? 材料出す金なんて持ってんのか? 親からせびると編に勘ぐられないか?」

「いい質問ですね。答えましょう。僕は中学校の時からエリートのたしなみとして株をやっているのですよ。それで、高校生にしてかなりの自己資産がありましてね。幾らか知りたいです?」

「い、いや………。遠慮しておく」

 コウスケは苦い表情で拒否。

 金額を聞いてしまえば、余計に金持ちエリート様の嫌味を聞かされる気がしてならなかった。

「へぇ、君、可愛気ないねぇ~」

 左右平手をひょいと翳し、ヨシヒロは呆れる。

「当然ですよ。僕、何でも出来ちゃいますから。学校へ行けば部活の勧誘ラッシュ。街を歩けば芸能界のスカウト。ふぅ、うんざりしちゃいます」

 いつもポーカーフェイスのヨシヒロが、眉間・眉をひくひく震わす。

 ヨシヒロは本格的に演劇の道へ進むのは高校卒業し、大学進学してからと思ってはいるが、高校時代に芸能事務所からスカウトぐらいは貰っておきたいと思っている身。

 しかし、今のところそういった経験はないので、スカウト経験者には嫉妬心が蠢くのであった。

「そ、そうかい……。た、大変そうだね……」

「こいつ、口開きゃ、8割近く自慢と嫌味言う奴ね……。ウザッ!」

「聴こえてるよ、ノリカちゃん」

「聴こえるように言ってんだっつーの」

「ははは、構いませんよ。有象無象の負け犬の遠吠えに嫌悪する程、低品質な心臓は持ち合わせていないもので……」

 余計に癇に障ったのか、般若の如き羅刹の顔芸をノリカは行う。

「こんの………」

「ノリカちゃん、落ち着いて……」

「古いギャグマンがのやり取りはそこまでだ。辰巳ガセイ、用件は済んだ。帰れ」

 テツトが冷然とそう促し、ガセイはゆっくりと腰を上げる。

「そうですね。ここでおいとましましょうか」

 ガセイは背を向け、入り口ドアへと歩む。

 ―――が、途中、わざと足を止める。

「あ、そう言えば……。僕、ロボットコンテストには出た事無かったなぁ~。色んなスポーツの大会で実績出したり、塾へ行ってたりしていたから……。でも、もし出場していたら、どの位の成績でしたかねぇ~。ふふふ……」

 肩を震わせ、嘲笑を堪えるように背を丸め、この研究所から姿を消したガセイ。

 研究所内・不快指数低下。

 ガセイが消えた事で、気を楽にするヨシヒロ達4人。

「ったく、金持ちエリートってムカツクなぁ」

 コウスケは怪訝な表情で耳の穴を穿る。

「ってかさぁ、何であんな奴にRカイザーあげるって言っちゃった訳ぇ? 戦力増強なら内の学校の誰かでもイイジャン?」

 ノリカの質問にテツトは不敵な笑みで応じる。

「戦ってみたいからさ。金持ちエリートと庶民が、ほぼ同じ条件で始めるモノ=TD操作における対決となると、どういう結果になるか楽しみじゃないか」

「!! そ、それが狙いだったのかい?」

「あぁ、だが俺は負けるつもりは無いけどな。皆だって見たいだろ? 恵まれた環境におんぶに抱っこのカスを庶民生まれがブッ潰す逆転劇をな!」

 その言葉が皆の心を太陽の如く照らす。

「でも、向こうは戦ってくれるのかな?」

 ミヤは御尤もな素朴な疑問をぷかりと浮かべる。

「理由ならもうあるさ。奴はこの研究所全ての技術を欲しがっている。それを濫用しようとした時、俺達が阻止する。奴はどうもキナ臭いからな」

「はぁ……」

 何となく納得してみるミヤ。

「ま、理由などなくても無理矢理戦わせるけどな。……とは言っても、エスパー討伐した後の話にはなるが………」

 それは狩人の如く、反逆者の如く、狡猾で猟奇的な表情だった。

 恵まれた環境に生れた人間が何もかも上手くいく世の中であっていい訳が無い。

 少しでも庶民の逆転勝利という事実が庶民に対して夢・希望を与えられるのではないか?無論、自分自身、金持ちエリートのクソ野郎を撃破してイイ気分になりたいというのもある。

 だからこそ、〔敵〕には〔同条件の武器〕を持っていなければ困る。

 ただ、それだけの話である。


 長々とテツトはこれまでの流れを回想し終えた時には辰巳邸・敷地内へとリムジンが到着しようとしていた。


02


 Rカイザーが指定した場所日時。

 ドーム内を埋め尽くすのは高齢者=そこには大勢の高齢者が来場していた。

 あらかじめ指定されたレーンに沿って、並んでいる。

 ここに集まった高齢者達は皆、元の資産も少なく、貰える年金も少ない人々であり、生活が厳しい環境で、更に病弱化により、家族へ迷惑をかけたくないという理由からデータ世界への移住を決断した。

 また、デヴァイスを通して、家族と接する事が出来るのだし、いいかとも思えたのでデメリットはないと思えた。

 Rカイザーを操りし者=ガセイは来場の様子をステルスサテライトを通して確認した。

 ………1LDK・アパート1部屋分ぐらいの、一軒家の子供の部屋にしては広過ぎる、流石お坊ちゃまの部屋と言わんばかりの大きなガセイ自身の部屋で。

「ふふふ、目論見通り。大多数が来ましたね」

 ガセイはさらさらの頭髪を搔き分け、にたりと笑む。

「……大金稼いで逃げ切った高齢者は極僅か。殆どは少ない年金での生活を強いられている。理由としては働き、稼いで年金を納められる若者の減少だ。故に脱出したい人間は多い。大勢集まるのは必然ではあるな」

 ガセイの向かい側のソファーに腰掛けている人物=テツトはコーヒーを啜った後、結果に対する理由を淡々と述べた。

 この部屋に本日招かれたのはテツトだけではない。

 テツトの左右には男子2名、女子2名が存在。

 ヨシヒロ、コウスケ、ノリカ、ミヤである。

「……で、星渡君、結局じーさんばーさんらをデータにしちゃう訳?」

 かったるそうに耳の穴を穿っているノリカは司令塔に指示を仰ぐ。

「ドームに来ている人達は希望者だ。望み通りにするべきだ」

「ま、拒否していないのなら、そうなるよねぇ~」

 ヨシヒロは一人、すファーに座らず、ストレッチしながら話の流れに納得。

「ふ~ん、OK~」

 ノリカも納得し、スレンダーな脚をクロスし、シルバー&パープルのSボードを開く。

 6人はそれぞれのSボードの操作ボタンに指を近づける。


 ドームステージにて、6機のTDが出現。

 館内を埋め尽くす高齢者達は一斉に注目を送る。

「皆さん、お待たせしました! 苦痛な現実からお別れしましょう! 皆さん、順番にいきますよぉ!」

 紅の竜人・Rカイザーの電子音声が響き渡り、高齢者は列を正していく。

「ではまず、一番目の貴方から……」

 Rカイザーは手前の爺さんに身体の向きを合わせ、ブレスキャノンの搭載された竜の口を開く。

 そこへ突如、爆撃の一閃が!

 6機のTDへピントイントで襲来して来た。

「な、何だぁ!?」

 Gバンディッタは襲撃を放ったであろう場所へ見上げた。

「ちょ!? 嘘でしょ!?」

 ウィザースロットは驚き、身構える。

 信じられないものがドームの天井を突き破り、襲来したのである。

 その姿は所謂、モンスター。

 蠅タイプ、烏賊タイプ、食虫植物タイプの気色悪い巨大獣。

 似ている………。

 以前戦った魔竜やインベーダー=超能力で身体変化した深大寺達に。

「ど、どうして? Dr毒島は捕まったハズだし、エスパーテロリストは全員逮捕されたハズなのに……」

 エンゼクロスは疑問の渦に包まれる。

「勝手にDr毒島の技術を手にしたのだろう。つまり、それが出来る存在……権力のある存在が奴らの正体だな」

「権力者の上、僕らの邪魔をしに現れた……。となると、正体が絞られて来るねぇ」

 Lシュヴァリエは薄々感付いていく。

 しかし、謎のモンスターの威嚇攻撃が、彼らの推測タイムを邪魔する。

 目からの光線攻撃。

 6機のTDにスパークという目暗ましを与える。

「君達、いかんなぁ。お年寄りを排除するなど。これでは姨捨山状態ではないか」

 中央の蠅モンスターがくちゃくちゃと細長い口を動かし、主張を開始。

「フ、よく言えたものだ。そんな世の中にしたのは誰だ?」

 不敵に嗤い、ビームマグナムを巨大モンスターへ照準を合わすCオライオン。

「ふむ。誰かの所為にしたがるのは良くないなぁ。誰の所為でもない事態だってあるのだよ」

「……どうかな? タクティクスε!」

 Cオライオンが叫んだ矢先、Rカイザー以外のTDの動きが瞬時に変わる。

 Cオライオン、Lシュヴァリエ、Gバンディッタが一斉射撃!

 3頭の巨大モンスターへ威嚇射撃を放った!

 蝿・烏賊・食虫植物モンスターはたじろぐ。

 その隙へエンゼクロスとウィザースロットのカードビットが飛び出す!

「避難して下さい!」

 エンゼクロスが避難誘導を担う。

 ドーム内の高齢者達は出口へ一斉に駆け込んだ。

 Cオライオンらが放った威嚇射撃を巨大モンスターは弾き始める。

 反撃を始める。

 それに伴い、下部に居る老人達へビーム弾などが降下。

 危ない! ……と、思われた寸前に巨大カードが防御。

 ウィザースロットのカードビットが縦横無尽に動き回り、カードの側面で見事に防御!

 一般人への被害を防いだ!

 Rカイザーは淡々とこの様子を眺めている。

「ほぉ、モンスターさんはこの場で戦っちゃいますかぁ。オカシイですねぇ。彼らは高齢者がデータ化されるのを阻止しに来たハズ……。おっと、今は推測している場合ではないですかね? さて、僕は……。威嚇射撃にでも加わりますか」

 ガセイはくすくすと余裕めいた笑いを溢し、シルバー&レッドのSボードのキーを叩く。

 緑青に発光する竜人TDのRカイザー。

 獰猛な口を開口し、ジェネレーターキャノンを大放出!

 上斜め30度。

 蝿モンスターへと飛翔した。

「ぬうっ!」

 自身へ襲来するビーム砲を察知。蝿らしく、素早い動きで回避。

 Rカイザーの砲撃は天空へと消え去った。

「む? 素早いですね……。ならば!」

 Rカイザーは竜人。当然竜の如き、鋭い爪や尻尾がある。

 テイルユニットが突如分離し、それらが鳥竜・フレスヴェルグへと変形。

 翼を広げ、空中へと上昇した。

「バージ・フレスヴェルグ……向こうは逃げ切れますかね? クククッ………」

 ほくそ笑む操作主の目論み通り、蝿モンスターを小型鳥竜が翻弄。

 自分より小さいものが自分より素早く動かれる。

 これほど鬱陶しいものはない。

 蝿モンスターは苛立っていく………。

 そうしていくうちに、フレスヴェルグが蝿の大きな羽にピタリと付着。

「むっ!? どういう事だ? まさか……」

「ふふ、想像通りですよ……」

 ガセイは涼しい顔で選択キーを押す。

 躊躇無く自分のマシンのパーツを自爆させる。

 テツトですらやむを得ない時でしかしない手法をさらっとやってのけたガセイ。

 お坊ちゃま育ち所以か、勝つ為なら捨てるモノは堂々と捨てる手法を採った。

 蝿モンスターにしがみ付いたフレスヴェルグは身体を発光させ、自爆!

 盛大に爆音が轟いた。

「さぁて、ダメージはどうでしょうね?」

 空間を埋め尽くした爆煙が退いていく―――。

 片翼を消失し、ふらついている大蝿があった。

 手応えアリ。

 ガセイは邪悪な笑顔に顔を歪める。

「ぐぐ……。おのれぇ………」

 不安定に飛行維持する蝿モンスターは下方向を確認。

 居ない。先程まで居た高齢者達が避難を完了した事を把握。

「よし……。これでいい……。今日はここまでにしようではないか………」

 蝿の巨大魔獣は瞬間的に姿を消した。

 紛れもないテレポーテーション。

 この能力をも持っているとは間違いない。

 Dr毒島の開発したエスパー及び、モンスター化システムのものであろう。

 残りの烏賊・食虫植物タイプもCオライオンらと射撃合戦を切り上げ、動揺にテレポーテーションで消え去った。

 ――途端に一面が静寂となった。

 

 ガセイの部屋にて、一息降ろす6人。

 首をゴキゴキと鳴らすコウスケ。

「はぁ、何だったんだ、あいつら?」

「威嚇牽制だな。今回の事件により、老人達は怖くてTDの元へは来られなくなった。一番の目的はそれだろう」

「テツト……。けどよぉ、それがヤツラにとって何のメリットになるんだ?」

「おやおや、君は他人に尋ねてばかりですねぇ。自分で考える事は出来ないんですか? それとも考えても答えが出せないのですか?」

「何ぃ?」

 ガセイの嘲笑に、コウスケは顔を顰める。

 だが、憤慨まではせまいと踏み止まった。

「簡単な話です。現状を変えないようにする。ただそれだけに意味・メリットがあるんですよ彼らにはね……」

「彼ら……それはつまり、お前の祖父らの事か?」

「「「「えぇっ!?」」」

 いきなりガセイの祖父へと話が向う。

 ヨシヒロ達4人はテツトの言葉に驚き、硬直。

「はい。さっきの3体のうち、蝿のヤツは僕の爺様・辰巳コンツェルン会長です」

「ステルスサテライトで確認していたか?」

「えぇ。とっくにね」

 ミヤは無言で身の毛が弥立ち、驚愕した。

(この人、容赦なく自分の家族を……。何か因縁があるのかな……?)

「ふむ。つまり、高齢有権者なんだね。あのモンスターの正体は」

「ヨシヒロ、その通りだ」

「嫌だねぇ、高齢者と言う大勢の精力を利用して若者を搾取。その上、貧乏な高齢者に貧困を強いらせ、自分ら金のある高齢者だけ、のうのうと生きる。要するに彼らにとって都合のいい世の中であって欲しい訳かぁ~。こんなの、僕のヒイロイズムが許さないねぇ~ホント」

「さて、爺様達はどう出ますかねぇ」

 しらじらしくそうのたまうガセイ。

「フ……。向こうが仕掛け次第、迎え撃つまでさ………」

 テツトは涼しい顔を作って言って見るも、引っ掛かっていた。

 何故、敵の正体が分かっているのに、ガセイは祖父達に奇襲攻撃を過去に行わなかったのかを。

 肉親を葬る事へ躊躇するような類ではない。

 先程、自爆マシンを平然と祖父へ貼り付けた事が何よりの事実だからだ。

 ……何か、彼にとって意味のある〔スジ立て〕があるのだろう。

 現時点・少なくとも辰巳会長を倒すまではガセイとは味方ではある。

 大人しく、様子を見る事にするテツトであった。


03

 

 同時刻。総理の自宅・書斎へテレポーテーションして来た3人。

 辰巳会長とその右腕の安原(63歳)と、城戸総理の3人である。

「おのれぇ~」

「会長、手強いですねヤツラ。やはり、あのエスパー大群を倒しただけの事はありますよ」

「大丈夫だよ、安原君」

「総理。何か策でも?」

「勿論。シンプル・イズ・ベストなものだ。味方を増やし、敵を減らすのだよ」

 実に余裕めいた笑顔で、両手を後ろにクロスさせた総理は次策を述べていく。

「知っているかね? いつの時代も女の子は大金に弱いのだよ。玉の輿願望と言う奴だねぇ。それが、年寄りから貰うお金でもね……」

 辰巳会長も勝ち誇った笑みで、頷く。

 安原は圧倒されつつも納得。

 これなら、いけると判断。

 

 辰巳会長と城戸総理は小さな若き乙女達を巨大な手で捕らえる――。

 巨大な手中に閉じ込められた女性達の上空より札束が雨の如く降り落ちていき………。


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