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女性が怖い僕でも、君の手は怖くなかった  作者: パーカー


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5/8

他人の声と、君の隣

二人きりの世界は、

とても静かで、優しいものです。

でも、現実には必ず、

他人の声や視線が入り込んできます。

それは試すようで、

突き放すようで、

ときに、過去を呼び起こすもの。

これは、

その中で隣を選び直した話です。

その日は、図書館の奥が珍しく騒がしかった。

「え、あれ佐伯じゃない?」

「隣、女の子じゃね?」

ひそひそとした声。

笑いを含んだ視線。

佐伯 恒一は、背中が一気に冷たくなるのを感じた。

——来た。

過去の記憶が、条件反射みたいに蘇る。

体が硬直し、呼吸が浅くなる。

水野 玲奈は、すぐに気づいた。

恒一の手が、微かに震えている。

「……移動します?」

小さな声。

選択肢を、そっと差し出す。

恒一は、首を横に振った。

「……ここで……大丈夫、です」

それは、彼なりの抵抗だった。

少し離れた席で、同じ学科の男子たちがこちらを見ている。

「佐伯、いつの間に彼女できたんだよ」

「意外と普通じゃん」

“普通”。

その言葉が、恒一の胸を刺した。

玲奈は、ゆっくりと立ち上がった。

「……すみません」

一瞬、空気が止まる。

「彼、集中したいみたいなので」

声は穏やかだった。

でも、曖昧に笑ってやり過ごさなかった。

「用事がないなら、静かにしてもらえますか?」

はっきりとした距離の引き方。

男子たちは、気まずそうに目を逸らし、離れていった。

玲奈が席に戻る。

「……ごめんなさい。勝手に」

恒一は、胸の奥が熱くなるのを感じていた。

「……ありがとう、ございます」

声が、少し掠れていた。

「怖かったですか?」

正直に、頷く。

「……でも」

言葉を探して、続ける。

「……一人じゃなかったです」

玲奈は、少しだけ笑った。

「それなら、よかった」

帰り道。

今日は、人通りが多い。

恒一は、意を決して言った。

「……さっき、普通って言われて……」

「はい」

「……前は、それが、嫌でした」

玲奈は、黙って聞く。

「……でも今は……」

言葉が詰まる。

「……普通じゃなくても……いいって……思える人が、隣にいるので」

玲奈は、立ち止まった。

「……私も」

小さく息を吸ってから、言う。

「周りにどう見られても、恒一さんの隣がいいです」

今日は、自然に手を繋いだ。

誰かに見られても、

からかわれても、

逃げなかった。

怖さはある。

でも、守られただけじゃなく——

守りたい側に、少しだけ近づいた気がした。

第5話では、

初めて“外側の世界”が物語に入りました。

守られること。

守られる自分を、受け入れること。

そして、

守りたいと思ってしまったこと。

それらは全部、

恋の入り口にある感情だと思います。

他人の評価は消えません。

怖さも、急にはなくなりません。

それでも、

「誰と並ぶか」は選べる。

そう気づけた一日が、

この話の核心でした。

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