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4. 弟の首と愛姫の肌

初陣から戻り、体の血の匂いを落とすなり、政宗は新妻の愛姫を激しく抱いた。


出会ってから二年。祝言をあげて一月あまり。

まだ幼さの残る雛のような夫婦だが、夜の営みはもう大人と変わらない。


政宗の肉体はすでに武将のそれだった。


背は伸び、身体は鋼のように締まり、愛姫の華奢な体を壊れんばかりに押し伏せ、何度も揺さぶる。


初夜から幾度となく彼に抱かれてきた愛姫も、この夜の熱には息を呑んだ。



「愛……っ 愛……!」


快感と痛みが入り混じった声をあげる愛姫の身体に、政宗は己の生を刻むように溺れていく。


「かわいい……ワシだけのものだ」


その言葉は、今ここに自分が生きている証を確かめる呪文だった。


戦で嗅いだ血の匂い、脈打つ首筋の温もり。

その境目が溶け合い、政宗の脳裏に闇が広がる。


目を閉じた瞬間――そこに弟の首があった。


白く無機質な顔。光を帯びたようにぼんやり浮かぶ。


まるで夜の虫のように、その光に引き寄せられる。



あれは何だったのか。

なぜ、今も見せられているのか。




『兄上!』


脳の奥で響く声。


初陣前、母の横で微笑んでいた弟――小次郎。


その聡明な顔立ちは政宗とは似ておらず、

むしろ、遠くで冷ややかに見ていた母の面影と瓜二つだった。


『ご立派でございます!兄上のご武運をお祈りしております!』


無邪気に笑う弟。


政宗は微笑み返そうとしながら、胸の奥に沈殿する黒い泥を抑えきれなかった。


完璧に整った顔。母に愛される顔。


それを見つめるたび、胸の奥で何かが軋んだ。


何も欠けることのない、美しい弟…ーー



(ワシに同情してるんだろ?知っている)



その声は、腹の底から唸りとなって低く呻いた。


愛姫を抱きながら、政宗は声に支配されて冷たい汗が背中をつたい流れたのを感じた。




(お前だけが母上に愛されてる。お前さえ、いなければ…)



熱い息を吐き、愛姫の肌を飲み込みながらふるえた。



頭の中が沸騰する。



愛ゆえの快感なのか、弟への殺意に気づいたのか。


それすら分からずに、闇に消えて行くように意識が掻き消えていった。







政宗の心のなかにある「弟が憎い」「殺したいのかしれない」という願望が分かりやすく出てきた話でした。

そして、母も弟も政宗の中にしか出てきていませんが、一緒に屋敷では生活しています。


愛姫との初夜もすでにサラッと終わっていて、すまみません(笑)



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