第八話 無茶
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《おい、皆緊急通信だ!》
俺は実家を出て一週間後、ヴァンとゲンに念波通信を行った。何故すぐに連絡を取らなかったのかというと波気と波糸の訓練に時間が必要だったのだ。
波気は次のステップへと訓練は移行し、波糸に至ってはオナラが出ては困るので自然に波糸が出るようになりたかったのだ。そう、ようはスカシっ屁レベルまでもっていくのが目標だったのだ。俺はその辺は用意周到なのである。
《なんだよ、朝っぱらから緊急事態か?》
《カイ、おはよう。何かあったのかい?何なら空間転移して、そっちに行こうか?》
二人は何かあったのかと少し勘ぐっていたが、俺は冷静に昨晩閃いたことを伝えていく。
「なぁ、俺は今日から旅に出ることにしたんだ。でも現状ではどこに向かえば良いのか見当もついていない。情報を集めながら旅をしていくのもいいケド、時間が相当かかるんじゃないかって思わないか?」
《おう、それは確かにそう思うぜ。俺サマも朱と紅の波動力をゲットしたいのだが、情報がなくてな。あちこち無駄足をくらってるぜ。朱はマグマだから火山に行けば良いのかって思わなくもないが、火山自体どんだけあるんだよって感じだしな。》
《そうだね、ボクは一つゲットしたい力が決まったよ。それは、プラズマスターの力で存在することまで辿りついている。だけど、その場所までは残念ながら不明なんだ。》
俺はヴァンとゲンの話を聴いた。
ゲンの言うプラズマスターってのがどんな力なのかは解らないがゲンの奴のことだ、きっとスゲーものなのだろう。
《おい、ゲン。プラズマスターって何なんだ。教えてくれよ。》
俺は早く閃いたことを話したかったが、ヴァンはゲンの話に食い付いた。
《うん、プラズマスターっていうのはプラズマを統合管理する力、プラズママスターのこと。プラズマとは炎・雷・太陽なんかで、これらがコントロール出来るってスゴくない?もっとも直接触れなきゃダメらしくて、太陽に触れても大丈夫な肉体が必要らしいよ。高い能力を得るには、やはりそれなりのものが必要ってね。》
俺とヴァンは無言になった。ゲン、そのプラズマスターってとんでもないぞ。
俺たちが考えてる光の波動力や煉獄極の波動力はそれに対して無効化されちゃうんじゃないか?とか思ったが、それぞれが思うように行動していけばよい。結果は誰にも解らない。
プラズマスターにも恐らく弱点はあるだろう。能力とはいうならば、じゃんけんの様なものなのだ。プラズマスターに対して強い能力は光や熱系の能力には弱いかもしれない。
ゲンもそんなことは承知しているのだろう。
ただ、この世はプラズマが溢れているのも事実。それをコントロールしようというのは視点が高いと俺は思う。
話を俺の話に戻したい。
《えっと、話がそれちゃったケド、俺の話をしたいんだいいかな?》
《おお、悪い悪い。そうだったな。良い話か?緊急っていうから、もしかしたら悪い話なのか?》
《カイは変わった視点を持っているから、ボクは好きだよ。楽しい話だといいなぁ~。もしかしたら、各々が狙った波動力をゲット出来る近道が見つかったとか?》
ヴァンとゲンでは捉え方が違うので、俺は戸惑ったがゲンは流石だなと思った。
そして、閃いたことを二人に伝える。
《あのさ、キャンティに頼んで魔力をサーチ出来るアイテムを作ってもらうっていうのはどうかと思ったんだ。魔力や波動力が発した時に特殊な波動が生じるじゃん。もしくは微量な魔気をサーチ出来るアイテムは出来ないかな?無茶振りかもしれないケド、これが出来ればかなり有効なアイテムになるんじゃないかってね。》
俺の提案を聴いて二人は目を見開いた。
《お前、スゴいこと考えつくな。それがあったらかなり楽になるよな。》
《流石はカイ。出来るかどうかは解らないけど、魔剣やブレスを作ったくらいの奇才。もしかしたら、可能かもしれないよね。》
今まで念波に参加していなかった皆も念波に参加してきた。
《カイ、それがあれば楽になるよね~。ウチは同属の朱と紅の魔力っぽいのをたまに感じるんだ。でもね遠すぎてよく解らなかったり、ほんの一瞬だけだったりして困ってたんよ。》
《わたくしはSNSでプラズマスターの情報を集めていましたが、ナカナカ思うようにいっておりませんでした。このアイテムがもし出来たら、カイさんお手柄ですね。》
ヴァンやゲン以外にもリンやキールも現状の本音を言ってきた。そうだよな、皆やっぱ苦労していたんだ。
《カイト~、そんなこと考えてたの?あたしはなんかカイトの実家に行った時は気疲れしちゃったから、熟睡しちゃったし。ここ一週間は特訓続きだったじゃん。そんなこと考える余裕なかったよ。》
ティナは初めて俺の両親に会ったのだ。緊張して当たり前、俺がもしティナの両親が生きていていざ会うということになったら、同じようになるだろう。
ここ一週間も波気と波糸の特訓続きでティナは心身共に披露していても不思議でない。
《拙者はキャンティならば、それは出来るのではないかと思うぞ。しかし、かなり文句を言われたり言い訳言われたりして、すんなりとはいかないかもしれんが。》
《もしキャンティがごねてきたら、私がお願いしましょうか?何故かわかりませんが、私の言うことにはキャンティは比較的素直に聴いてくれるんですよ~。》
キャンティのことをよく知るグリフォンとハルさんが心強い言葉を言ってくれた。
《我はシステム的なことはキャンティならば、可能と思うぞ。むしろ、問題と思えるのは材料と作製時間だろう。我ら魔剣の材料は魔界の地底深く存在していた超希少金属のギドファインと存在場所不明の金属、夜叉極からなるとキャンティから昔聴いたことがある。夜叉極の存在場所はキャンティ以外誰も知らぬという。あと作製時間だが、我らは各々約五百年間、ブレス開発には約三百年間かかったとか。故に新たな特殊アイテムは開発作製までの時間がかかるかもな。》
ゼロが魔剣とブレスの情報を教えてくれたが、確かに材料と開発時間は俺たちにはどうしようもない。
《まぁ、考えていても行動しなくては結論が出ないよ。まずは全員が揃って、キャンティの所まで行って交渉しよう。ボクが空間転移で魔界まで連れて行ってあげるから。》
ゲンは既に空間転移がスムーズに行えるようだ。次元を超えるということは体にも相当負荷がかかるハズ。何気に波気のコントロールが出来ているからゲンもその負荷を克服出来ているのだろう。
俺たちは合流することになり、交渉は話術が得意なゲンにしてもらうことになった。もし、キャンティがごねたらハルさんにお願いしようとキチンと保険もかけているのである。
ゲンの空間転移により、まず俺たちは秘密基地グリモアで合流した。この時、試しに俺の十メートル四方にサーチをかけていたのだ。訓練の結果、サーチは二通りの使い方をマスターしていた。
一つは特定の相手自体をターゲットにして、次の行動を事前察知するロックオン。もう一つは今回のように事前に俺の周囲に波気を充満させ、瞬間的に大気が変動したらいち早く察知するアラート。ゲンの空間転移に俺のアラートが対応できるか試したかったのだ。
結果は大成功!大気の歪みを事前に察知して、その後にゲンが現れたのだ。勿論、ゲンも波気を使える者として、俺のアラートには後で気付いたという。
俺は瞬間移動や空間転移を魔人や魔王などなら使えるんじゃないかという考えがあるので、これは大きな成果となった。もし強大な敵が瞬間移動や空間転移を使ってこようものならば、即座に対応が可能になったからだ。
そして、空間転移で魔界にあるキャンティの工場まで一気に移動した。何とも魔界というのは重苦しい大気だ。初めて魔界に足を踏み入れたが、この重苦しい大気に耐えがたいので、天空の波動力がある俺はその重苦しい大気をスティール星と同様な状態に変化させた。俺の天空の波動力も我ながら使いこなせるようになってきたなと感じていた。これでやっと違和感なく行動が出来る。
しかし、この何気ない行動が俺にとって未来を大きく変えるものになるとは予想もしなかったのである。
《なんだ、この大気の変動は?こんなことは今までになかった。どんなことがあれば、このような特殊な大気に変わるのか?おもしろい、非常におもしろい。退屈なのが当たり前になっていたのだ。こんなチャンスは逃すべきではない。是非とも真相を明らかにしたい。退屈しのぎにはなるだろう。気配を無にしてしばし様子をみようではないか。》
俺たちも感知出来なかったのだが、俺が魔界の大気を行動しやすいように変動させたことが、ある者に興味を抱かせたようだ。
そんなことを知る由もない俺たち・・・
キャンティは瞑想に入っていた。そこへ俺たち六人+魔剣三人がガヤガヤと乱入したのだ。
キャンティの機嫌が一気に悪いものになってしまったのは致し方ない。
「チョッとあたいは今、瞑想中なんだよ。邪魔しに来たのか?とっとと帰っておくれよ。帰る前にこの大気の変動、どうせカイの仕業なんだろう?元に戻しておいてくれよ。」
来たとたん帰れとは、はるばる遠方より俺たちは来たんだぜ・・・とは思ったが、それは俺たちの都合であってキャンティには関係のないことなのだ。
「何よ、せっかくあたしたちが遊びに来てやったのに。あんただっていきなり登場してきたことあったじゃん。しかも、魔眼と魔耳を使って盗聴盗撮まがいのことまでしてたのに。」
ティナが言い返したが、これにはキャンティはぐうの音も出ない。
「ハハハッ、そんなことも昔あったかもね。じゃあ、お互いさまってわけね。でも、あたいは今新製品を考えていて忙しいんよ。だから少ししたら帰ってよ。」
「なによ、昔って。数か月前のことじゃん。」
リンが突っ込んで話を蒸し返す。
「あれ?そうだっけ。まぁ、いいじゃん。実は退屈だったから、新製品を考えていたんよね。一つの作品を計画、設計、開発、作製、完成まで至るのにゆうに数百年はかかるから。作っていくのも楽しいんよ。その代り全身全霊込めて作るから、めっちゃ疲れるケドな。」
「なによ!暇ならあたしたちが来て嬉しかったでしょ?あたしたちがわざわざ魔界まで来てあげたんだから、もっと喜びなさいよね。」
おいおい、ティナ。俺たちは遊びに来たのではなくて、キャンティにお願いがあって来たんだぞ。リンたちはティナを睨み付けるようにガン見していて、それに気付いたティナが助けを求めるように、うるうるした眼差しで俺を観ている。
調子に乗ったお前が悪い。とはいうものの、全員から冷ややかな対応をされてチョッと可愛そうだったので、俺は話を切り替えた。
「流石、キャンティ。どんなのを考えてたのか教えてくれよ。やっぱ、ブレスや魔剣並みの素晴らしいものなんだろうなぁ。」
「ん?カイ、お前ブレスや魔剣の素晴らしさが解ったのか?最強の金属、最高の科学力と生命力のコラボ。どちらもハイテクを駆使した究極の作品だぞ。」
ここでゲンの登場である。こいつの話術でどこまでキャンティをその気にさせることが出来るか、お手並み拝見である。
「いやぁ~、キャンティ。魔剣とブレス、驚きの連続だったよ。ゼロから聴いたんだけど、ギドファインと夜叉極、両方とも初耳の金属だったしね~。」
そう言われたキャンティは得意気にドヤ顔で話を続ける。
「そうだろう?ギドファインは魔界でもナカナカ採掘されない希少種の金属なのだぞ。夜叉極は極秘金属なので、情報は教えられんがこれらを混ぜ合わせた金属が魔剣のベースになるのだ。まぁ、魔剣にするにはもっと更に色々と必要なことがあるのだがな。」
「そうだよね~、やはり産みの苦しみってあると思うよ。そんな貴重な金属とは全く知らなかったし、きっと特殊技術を駆使したんだろうなぁ~。」
「そうだろうな、凡人にはあたいの考えすら理解に苦しむんだから。でも、褒めてくれてありがとう。三本の魔剣も現状に満足しているのが魔気から感じるぞ。三本とも成長したな。」
ゼロたち魔剣トリオはそれを否定しない。俺もゼロの魔力限界値が相当に上がっているのを感じている。イコール、俺の波動力限界値も自分では解らないが上がっているという証だ。
「ブレスの金属はまた違うのでしょう?武闘家の人数分、材料を揃えるのは難しいと思いますし、軽量とその高度な科学力に特化しているように感じます。」
「流石はゲン。ブレスは軽量化に重きを置いている。必要無ければ人体内に収納出来るようにしたのは壊れては困るからだ。まぁ、収納というか体の表面に出ていない時は人体と同化させているのだがな。」
え?同化って、じゃあブレスも魔動石も人体の一部になっているということなのか?なんか物凄すぎて、俺たちの常識レベルを遥かに凌駕した科学力だ。
やっぱり、キャンティは奇才過ぎる。これで魔人だっていうのだから、解らないものだ。
「実はそんな素晴らしいキャンティにお願いがあって来たんだよ。ボクらは今、魔動石や超魔石を探している。しかし、目的の魔獣や異次元獣に遭遇出来ていないのが現状だ。そこで、特定の魔力や魔気を感知出来るアイテムを作ってほしい。無理を承知で頼みたい。これには人間や魔族の未来もかかってくるかもしれないからさ・・・どうかな?」
キャンティは瞼を閉じ、しばし考えるのであった。
いや、実は考えているフリをしているように観えたのは俺だけであろうか?
「いきなり無茶振りだなゲン、確かに魔力や魔気には個々の特性がある。その特性を捉え、こちらからアプローチ出来なくもない。だが、特定の魔力や魔気を捉えるだけではダメだ。魔獣や異次元獣とアイテムとをホットラインで接続するような通信機能も必要なのだ。それには膨大な魔力か魔気が必要であるぞ。膨大な魔力を受けたら膨大な魔力から必ず反発が生じるのだ。そのホットラインを辿っていく。イメージとしてはそんな感じだな。どうだ?カンタンではないのはお前なら解るであろう?これを作るのには相応の時間が必要だ。ブレスでさえも約三百年間かかったのだ。それだけの期間をお前らは待つことが出来るのか?」
キャンティは少し疲れた表情でゲンに問いかける。どうやら、このアイテムを作るにはシステム的にかなりややこしいというのが表情に出たようだ。
「そうだね。時短の為の何か良い方法があれば良いケド・・・」
ゲンの発言後、煮詰まった俺たち。ここで真打ちハルさんの登場である。
《キャンティ、お久しぶり。あなたらしくないネガティブな発言ですね?私がリスペクトしている全宇宙最強の科学鍛冶師はそんな人ではないのでが・・・それともしばらく経ったから腕が落ちて言い訳言うようになってしまったのですか?》
その挑発ともとれる言動を聴いたキャンティは黙っていない。
「は?あたいが言い訳してるって?腕が落ちるわけないでしょ!まぁ、全宇宙最強の科学鍛冶師っていうのは当たってるケドね~。ハルピュイア、お前はいつもあたいの痛い所ついてくるなぁ。」
苦笑いしながら、何やら嬉しそうな表情のキャンティ。どうやら、ハルさんにイジられるのが楽しい様だ。まぁ、普段は孤独な職人さんだからな。全身全霊込めて作った自分の子供のような魔剣が絡んでくるのだ。
しかも同性の女性だから、なおさらなのかもしれない。グリフォンやゼロは男性だから、こうはいかないのかもしれない。ハルさんとの絡みには嬉しさと楽しさがあるのだろう。
「しょうがないね~、手はあるよ。でもね、タダでってわけにはいかないよ。確かにあんたたちは、あたいの愛する魔剣達の主かもしれないけど、あたいの労力ってもんがあるからね。それに一つ問題があるのよね。」
キャンティはそう言うと、どうだ!と言わんばかりにふんぞり返っていた。
手があるって言うケドさ、どんだけ懐が深いんだよ。短期間で俺たちが望むアイテムをホントに造れるのか?
もし可能ならば、奇才どころか科学工学のエキスパートじゃん。
俺も将来はキャンティに弟子入りして科学工学を学びたいなと正直ウズウズしてきたが、問題はティナがそれを許さないだろうということだ。
魔人とはいえキャンティはそれを感じさせない美少女。弟子入りするとなれば、四六時中一緒にいることになる。
例えティナが傍にいるとはいえ、それはティナにとって決して面白くない日常になるからだ。まぁ、この件に関しては今の目的が達成されたらおいおい考えよう。
一度に幾つもの課題をクリア出来るほど、俺はこの手のことに関して要領が良くないのだ。
さて、話がそれてしまったが俺たちの要望を叶える手があるということについて、キャンティからもっと詳しく聴くことにした。
「キャンティ、手があるってどんな奥の手があるのさ?実はもう密かに開発中のものがあるとか?あるなら、ウチにも見せてくれよ。」
「そうそう、俺サマは仕組みを解らないが新しいおもちゃとかは好きだぞ。ゲームなんかもカイやゲンには負けたくないから、ひたすらやりこんだりしてきたからな。しかし、ゲンには幾ら挑戦しても勝てなかったが。」
リンとヴァンが一番にキャンティに食い付いてきた。こういった話にはリンやヴァンが一番興味をもつことなのだ。
だけど、ヴァン・・・キャンティが作るのは、おもちゃやプラモデルなんかじゃないんだぞ。
プロとしてはそんなことを言われては面白くないと思われがちだが、キャンティは予想外ににこやかに二人の意見を聴いている。
こりゃ、魔界では相当にヒマしてたんだな。皆になんやかんや言われたり、自分が頼られたりするのがよっぽど楽しいみたいだ。
「皆も解っているとは思うが、ブレスには通信機能がある。念波やSNSもやり方によっては可能だ。そして魔力や波動力といったエネルギーのコントロール、魔気や波気といった気のコントロールも出来る。なので、ブレスのカスタマイズ化を試みればお前たちの望みは叶えられるかもしれない。だけどね、一つ問題がある。相手の魔力を感知するのには、ブレスから膨大な魔力か波動力を放出しなきゃならないの。」
「でしたら、ゲン、ヴァン、カイが個々に波動力を限界まで放出すれば良いのではないでしょうか?三人ともこの数か月でかなり力をつけたと思われますし。」
キールが思ったことを口にする。
あれ?いつの間にかゲンのことを呼び捨てにしてるじゃん。ゲンとキール、二人の間の距離も近づいてきたのかな?
これには皆が気付いたようで、リンとティナはキールのことをにっこりしながらもガン見していた。当のキールは顔を赤くして視線を下に落とす。
こういうのも初々しくて観ていて微笑ましいものだ。まぁ、当の俺も昔はこんな感じだったんだケドね。俺も成長したものである。
「それではダメなんよ。確かに三人の波動力は格段に上がったと思うよ。でもね、目的の魔獣や異次元獣の魔力は正直それ以上だと思うの。魔動石や超魔石はかなりレアな物だから当然よね。その相手の膨大な魔力とピッタリ同等の魔力か波動力をブレスから発し続け、念波を繋げて相手と接触する。だから、今のお前たちの波動力以上のパワーを持ち、且つ安定した一定の力を放出し続けることが条件なのよ。」
ヴァンやリンにとっては難しいらしく、こっそりとグリフォンからもっとかみ砕いた説明をしてもらって理解しようとしていた。
ティナは天然だが、こういったことは理解が早いので助かる。ゲン、キール、俺は当然ながら理解出来ていた。
「だからな、その安定した一定のパワーを放出出来るものを作らないといけない。ブレスのカスタマイズ自体は大したことないケドね。あれはそもそも成長していくアイテムに仕上げているから。」
無茶振りをしたハルさんが責任感を持ってティナに聴く。
《キャンティ、その物を作るのにどれ位の時間がかかるものですか?ブレスのカスタマイズの所要時間も教えてください。》
「ん~ブレスのカスタマイズ化は一つ十分位かな?でも、パワーの源を作り出すのは一つ二カ月位かかると思うよ~。」
ブレスのカスタマイズ化ってそんなに簡単に出来るものなのか?ケータイの機種交換だって、とてもじゃないケド十分じゃ終わらない。ケータイよりもハイテクなブレスだけに驚きである。
恐るべしキャンティ。いや、正に尊敬に値する。一体どんな脳みそしてるんだ?なんか科学工学全てを網羅してるって感じじゃないか?
じゃあ、問題はそのパワーの源だな。二カ月はチョッと長いよな。三人で半年かかるのか・・・こりゃ順番はじゃんけんとかになったら、一生後悔するじゃんけんになるに違いない。
そんなことを考えていたら、ティナがキャンティにとある提案をしてきた。
「あのさ、キャンティ。そのパワーの源って大きさや重さに制限とかあるのかな?」
「イヤ、大きさや重さは関係ない。デカければブレス内に収縮されるように設定が出来るからな。もしかしてティナ、お前が作りたいのか?」
「まさか~あたしはそういうのって不器用だから出来ないよ~。出来るのは料理くらいかな?でもね、あたしにナイスアイデアがあるんだ。」
出た!なんかティナがまた怪しいことを言ってきたぞ。
あたし保証に続く、またどうせなんの根拠もないアイデアなんだろう。
どうか皆の前で恥をかかないでほしいと俺は密かに願うのであった。
皆もティナの性格は理解しているので、そういった視線を送る。
皆の冷ややかな視線があった為かティナがリンとキールを手招きして招集し、打ち合わせを行っていた。
「えっと~あたしは勿論自信があったんだケド、一応確認もしたかったからリンとキールにも考えを聴いてもらったよ。で、三人の総意でここはあたしたちの竜水晶の出番かなと。」
「えっ?俺たちが普段肌身離さず持っておいてって言われていたこれか?」
「この玉っころにそんなパワーがあるのか?俺サマには全く感じないぜ。まぁ、見た目はキレイだけどな。」
「ボクはこの竜水晶から秘めたる力をたまに感じるよ。恐らく、これはボクたちのレベルに応じて柔軟にパワーを変化させているんじゃないのかな?」
俺たちが思い思いに意見を述べると、キャンティはズカズカと俺の目前に迫ってきて竜水晶をガン見する。
流石にこんな間近になると一瞬ドキッとしてしまうのだ。
それをティナに感じさせないようにする為に俺はなるべく視線を他にやった。
「ほ~気付かなかったね!こんな間近に丁度良いものがあったなんて。灯台下暗しとはこういったことだね。」
どうやらキャンティも自分で時間を要して作らなくても良くなりそうだとホッとする。
「あのさ、この竜水晶ってそんなに秘めたるパワーがあるのか?俺たちへの負荷のコントロールが目的じゃなくて?」
「お前、そんなことも解らずにこの竜水晶を託されたのか?これはティナ達三竜姫本来のパワーそのものだぞ。」
えっ?マジか・・・
じゃあこれから放出される魔力ってMAXのティナのパワーなのか?そのパワーをブレスから目的の魔獣や異次元獣に念波を使って放出し場所を把握する。
アイテムだから安定かつ一定のパワー放出が可能だしな。これで問題解決!目的にも最短で遭遇が可能になる目途がついた。
俺たちはハイタッチをして喜びを分かち合っていた。ところがキャンティが面白くない表情をしてこう言ってきたのだ。
「あのな~ブレスのカスタマイズ化をするのはあたいなんだよ。あたいはタダではしないってさっき言ったんだケド。」
そりゃそうだよな。何に対しても対価で返さなければならない。
まだ宝石屋に売っていない魔石をキャンティにあげても喜ばないだろうしな。俺たちは工房の雑用でもしようかと相談したが、ティナたちがそれでは納得しないと思えたので却下にした。
《なぁ、ゼロ。キャンティは何が好きなんだ?好きな物をあげたら、喜んで受けてくれると思うんだケド。》
俺は念波を小さくコントロールして、ゼロとひそひそ話を行った。
《カイ、キャンティは甘い物が好きだ。だが残念なことに魔界には甘い物がほとんどない。昔は我たちを放置して人間界に行き、甘い物を大量に仕入れて食していたことも度々あったぞ。どうやら職人は大量にカロリーを消費するようなのだ。》
その情報を受け取ると、俺はニヤリと微笑んだ・・・