第六話 段階
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情報収集ってもちろん大事だけど、ティナのウン千年分の知識と情報があればある程度イケるんじゃん?いきなり丸投げするのは好きではないので、俺なりに分析して考えてみた。
天空の力があるんだったら、地の力もあるのか?
地ならば、地面上の掌握、地面内の鉱物の活用、もしかしたら火山パワーや地震パワーなんかも使えるかも。パワーの限度が想像出来ないな。でも、もしゲット出来たら魅力的な力なのは間違いない。
で、天空と地があれば海・・・水の力もあるかもしれないな?水だったら、水中での移動スピード、水の弾丸、水の刃なんか有り得るな。
他にはどうだ?ティナの破壊という事にフォーカスしたら、物理的破壊以外に考えられるのは・・・光と音か?
光はビーム、色んな波長の光線、稲妻が有り得そう。ティナのブレイクスキルと稲妻をコラボしたら、物凄い技になるかも。なんてったって秒速三十万kmのスピードを誇る光だ。この力はなんとしてもゲットしたい!
音は音波・・・低周波、高周波、超音波が考えられるな。音は光よりはスピードが劣るけど、光の技が効かない相手には有効かもしれない。特に音は光と違って目に見えないからな。
天空、地、水、光、音・・・この5つの力が得られ、使いこなせれば正に無敵!力のある魔石は、早い者勝ちだから急いでゲットしたいのは山々だけど、俺自身の身体強化と天空の力を使いこなせるようになるのも同時並行で行っていく必要がある。
とりあえず、今の俺はティナの負荷を三百kgに上げてもらっている。座禅による波動力の底上げ、ティナのバトルをイメージしたイメージトレーニング、天空の力練習、特に飛行・サーチ・ガードについては力を入れていこう。
まずは飛行。ティナはすんなりと飛行していた。じゃあ、俺はどうするのか?俺なりに考えた対策がこうだ。地上には重力がかかっている。この重力があるから、人は飛行が出来ない。無重力空間であれば、不安定ながら人は浮遊出来る。
ならば、天空の力を使って俺の周囲の大気の重力をコントロールしてみるか?
このやり方であれば、恐らく浮遊も出来るし飛行も出来るであろう。しかし、そのスピードは極めて遅くなるのが想定される。そりゃそうだ、推進力がなけりゃ飛行スピードが出ないのは至極当然である。
では、どうする?俺は座禅中、波動力の練り上げを行いながら色んな可能性を模索していた。そして一番ベターと思われる方法を考え付いたのだ。それは魔剣ゼロの活用。ゼロは俺の波動力を喰って、魔力を成長させている。そしてゼロの魔力とイコールになるように俺の波動力も徐々に増大していく。
即ち、これがゼロと俺の関係なのだ。そういう風に魔人キャンティが俺たちの魔剣を作ったと説明をうけている。これを活用しない手はない。飛行において俺は天空の力を体から吐き出して推進力にする。体外に出た波動力は短時間であればまだ活力があるのだ。
その体外に出た波動力をゼロに喰わせる。結果、ゼロは成長し俺自身の波動力も成長。実に無駄のないエコな波動力の活用方法である。また、飛行の際には天空をコントロールすれば、極力空気抵抗を無くした状態が可能になるハズだ。
ティナに説明してもよくわかんないと言われそうなので、実際に飛行状態を観てもらうのが一番と勝手に結論付けた。男は黙って行動あるのみである。
さて、実際の飛行練習・・・と思ったが、ティナにどんな風に飛んでいたのかを聴いてみた。
「あたし?あたしは飛びたい時に飛ぶイメージをして、ビューンって飛ぶだけだよ。」
なんじゃそりゃ?やっぱり、ティナに聴いた俺がバカだった。
「でも、ブレスに転移してカイトが飛ぶ練習をすれば、それがあたしのやり方と同じか違うかってことは解るよ。」
というので、その通りにとりあえずやってみた。まずは集中して俺の中に宿る波動力を高めていく。
《カ~イト、スゴイね。かなり波動力の限界値が上がってるよ!これならイケるんじゃない?ビューンといってみよっ!》
俺はティナがそんなことを言ってきたが、無視して波動力を徐々に体外に放出していった。俺の周囲の大気がうごめく。ゼロにはその波動力を忘れずに喰うように言ってある。
しかし、その仕組みは俺は知らなかったのでティナに聴いてみる。
《ゼロからは人間の目には見えない魔糸っていうのが出てるよ。その魔糸がカイトの波動力をキャッチして、そのまま吸い上げているって感じかな。魔糸は魔人以上じゃないと出せない高等スキルだって、キャンティが昔言ってたっけ。》
そうなんだ、と俺は未知なる情報に頷く。多分、ゲンならその仕組みなどは把握出来るのかもしれない。そんなことを思いつつ、引き続き俺は波動力の放出を行っていく。
地面には風圧がかかり、砂ぼこりは起きるのだがナカナカ俺の体は中には浮かない。あっ!そうか。今はティナの負荷が三百kgかかっていたんだっけ。俺の体重と合わせたら、そりゃ重いよな。
ティナには俺への負荷を解除してもらい、再び波動力の放出を試みる。やっぱ、負荷がないと体がめっちゃ軽い。動きも俊敏だ。ティナはビューンって飛べるよ!なんて言ってたケド、ホントに波動力を一気に放出したら出来そうな気がしてきた。
俺も男だ!波動力をちまちま放出なんてしないで、一気に吐き出すぞ。とりあえず、飛びたい方向は真上。意識を集中して・・・
「ハッ!」
俺は体内にある大量の波動力を一気に吐き出した。すると俺の体は一瞬にしてスティール星の重力をも感じさせないほど、遥か上空に一瞬で移動できたのだ。
「ティナ、飛べたよ。スゴイ!これが上空の景色か。」
《カイト、やったじゃん。流石はカイトだね。ねっ!ビューンって飛べたでしょ?》
ティナも嬉しそうだ。
「ねぇ、ティナ。ティナの負荷を三百kgに今すぐ戻してみて。ホントは負荷があっても飛べなきゃって思うんだ。」
《うん、わかったよ。でも、カイト大丈夫?一気に負荷を戻したら、地面に向かって一直線!なんてならない?》
ティナは俺の心配をしたが、俺の覚悟はブレスを通じてティナに伝わる。それに俺は不死身なので問題ないのだ。
《じゃあいくよ。三・二・一・えいっ!》
俺の体には三百kgの一気の負荷がかかり、ガクンとバランスを崩した。地面へと急降下する俺・・・
俺ももうダメかと思ったが、諦めずに波動力を吐き出し続けていき、バランスをとっていった。地面に追突する瞬間、体を守ろうとしようと無意識に波動力を使いまくる俺。ドッカーン!と激しい音とともに俺は地面に叩き落とされた。
しかし、何一つケガをした箇所は無い。身体硬化の影響かと自分なりの解釈をしたが、よくよく観ると俺の周囲には大気が激しくうごめいていた。
これって、ガードが出来ちゃったってこと?何と俺がマスターしたいスキルの一つであるガードが無意識のうちに発動していたのだ。俺の周囲を激しく動く大気。
ガードの完成であるが、これは仮免許である。何故ならば波動力をどのように使ってこれが発動させたのか分からない状態なのだから。
《カイト、スゴイね。今、カイトの周囲の大気が完全にカイトにコントロールされてたよ。》
一時休憩しようとティナと話をしたが、ティナがブレスから出て買い物に行くと言って出かけた。その隙に俺はゼロに質問した。
「ゼロ、お前にも魔気っていうのはあるのか?グリフォンとハルさんにはあって、ゲンはその魔気をコントロールしてたケド。」
俺の質問にゼロはこう答えた。
《カイ、我には魔力・魔気・魔糸がある。人間には理解出来ないかもしれないので、説明しようぞ。魔力とは我々魔族の力そのものを表す。魔力とお前たち人間の波動力は同類のものだ。グリフォンやハルピュイアは魔力を翼に変換出来る。我の場合は魔力で剣を変形させることや魔族との同化にも魔力を使っている。》
「えっ?魔力と波動力って同類なのか?だからゼロは波動力を喰って魔力に変換出来るんだな、なるほど。で、剣の変形って何か意味があるのか?パワーアップ的な感じなのか?俺的にはゼロの潜在パワーは相当なものを感じるケド・・・」
《フッ、それは必要になったら説明するとしよう。今はまだその時ではない。次に魔気だが、これは気としてなるもので視覚化は出来ぬ。魔力の中に流れるものとでも言えば理解できるか?》
「魔気はイマイチよく分からんなぁ。でも、もしかしたらゲンみたいに感じることは出来るかもしれんから、チョッと魔気を放出してみてくれよ。」
俺はゼロを右手に持ち、天に向かって掲げた。
《我の魔気をか?今のお前は物質のほんの些細な移動音をも感じることが出来るようになったから、もしかしたら魔気を感じることは出来るかもしれんな。よし、試してみようぞ。》
ゼロはそう言うと剣から魔気を放出してみせた。
俺は目を閉じていたが、剣から溢れ出す異質なものを感覚的に感じた。そして目を見開いて剣を見遣る。
「な、何だこれ。青白い煙みたいのが出てるぞ、何かドライアイスから出てる煙みたいな。確かあれって、空気中の水蒸気が冷やされて液化した水だよな。これが魔気なのか?」
俺の独り言を聴いたゼロは驚きを隠せない。
《な、なんと!カイ、お前魔気が見えるのか?魔気は視覚化出来ないハズ、これが見えるということは、お前波気が使えるレベルにあるぞ。》
「は?波気って何だ?初めて聴くぞ。魔気の人間版か?」
ゼロは思った。自分の相棒は、とんでもない奴だと。ゲンが魔気をコントロールした時も驚いたが、カイはそれ以上だと・・・
視覚化出来ないものが見えるということは、無限の可能性があるということの証明なのだ。
《カイ、お前は素晴らしい!我の想像以上をいく奴だな。先に魔糸の説明をするぞ。魔糸は魔族の体から糸状に発して魔力や波動力を吸収する。植物でいえば根のようなものだ。この魔糸も視覚化出来ないのだが、お前ならば見えるかもしれんな。お前が飛行した際に我は魔糸を出してお前の波動力を吸収していた。魔糸も観てみるか?》
「あぁ、魔糸っていうのも興味があるよ。俺にはまだ見えないかもしれないケド、やってみてくれ。」
ゼロは俺の希望に対して魔糸を出してみてくれた。
「これが魔糸なのか?うん、見えるよ。糸状の青白い糸。魔気も魔糸も基本同じだな。どちらからもゼロの心を感じるよ。これらが見えるとどうなんだ?」
《我ら魔族の魔力・魔気・魔糸に対して人間には波動力・波気・波糸が存在する。人間は魔力や波動力を感じることが出来ても魔気や波気、魔糸や波糸を感じることはほとんどの者にとって不可能だ。波動力が魔人クラス並みに高いレベルにある者かゲンのように一種の天才にしか不可能。カイ、お前の波動力は、とんでもない高レベルにある。ティナの波動力の影響もあるだろうが、日々行っていた座禅による波動力の練り上げの成果だろう。お前が主であることを誇りに思うぞ。》
今までへなちょこだった俺が高い魔力を持ったゼロに褒められたのだ。地道な努力の積み重ねによって得られた成果。これは素直に喜んで良いことだ。
「ゼロ、ありがとう。俺、あんまり褒められたことがないから、イマイチそのスゴさの度合いが解らないケドさ。で、魔気が見えると波気も使えるってどういうこと?」
《うむ、通常では視覚化不可能な魔気が見えたのだ。ならば、魔気と同類の波気も見えるだろうし使えるだろう。お前が取組中の防御法、サーチとガードには波気が必要なのだ。おっと、既にガードはお前が無意識に波気を使って発動させていたか。》
は?ガードが一回事故によって偶然発動されたのは波動力の成果じゃなくて、あれって波気の成果だったのか?俺は全く無意識で放っていたであろう波気について思い出す。
あの時は上空から急降下してきて、地面に追突するのを防ぐために無我夢中でもがいていた結果。あれが波気・・・チョッと待て。
ゼロの奴、サーチも波気があれば可能とか言ってたな。どういうことか今の俺では考えが追いついていかなかったので、ゼロに答えてもらうことにした。
「ゼロ、波気があればサーチもガードも可能って言っていたけど、具体的に教えてくれ。」
《うむ、まずはガード。これはお前の周囲に大気の激しい流れを作って相手の攻撃を防御するというものであろう。波気とは波動力の気の流れ。お前の高い波動力の気で周囲の大気を操作するのだ。天空の力をもった高出力の気は、大気を操作出来る。これが出来れば、その応用は幾らでも可能。ティナのブレイク系、クラッシュ系の技もここに通ずる。後は練習あるのみだな。》
俺はあっけにとられた。求めていた技の基本が俺の考えたガードで、それをマスターすれば、映像で観たティナの技が可能になると教えられたのだ。
それが波動力ではなく、波気の力であると。
波動力はあくまでも俺自身のパワー、波気はそのパワーの気の流れで、その気を駆使していくこと・・・こんなことは想定外であったが、ゼロが相棒で良かった。
ティナに質問してもドーンとかズバーンとか感覚的なことしか答えが返ってこないのは明白なので、一生解決出来ない迷宮入りの問題であったのは間違いない。このことはティナに怒られるので、ここだけの話にしよう。ゼロには大感謝である。
《次にお前が望んでいたサーチだが、これにも波気を使う。まずはお前が波気で相手を捉える。その波気が相手の脳から体各所に送られる指示を最速で察知し、お前に瞬時にその情報をフィードバックする。相手の攻撃はすでにお前にはお見通しだ。後は対処も容易いであろう。》
そうか、そういうことか。何となくぼんやりと見えていた目標がゼロのお蔭で現実的になり、俺は自分の考えに間違いはないと確信した。
ガード、サーチ、ティナの技・・・どれもが波気を使うことで問題が一気に解決に向かう爽快感を感じた瞬間であった。
「あとさゼロ、もしかしたら魔糸も見えたから波糸も使えるのか?波糸があれば、魔力や波動力を吸収することが可能なのか?」
《その通りだ、カイ。波糸は魔糸と同様のものだ。もし仮にだ、相手の魔力や波動力が自分よりも圧倒的に強大であったらどうする?その時は相手から奪えば良いであろう。そのパワーは我の力となり、カイお前の波動力に還元される。しかし、波糸を相手の体に絡ませないと相手のパワーを奪うことは出来ないから、そこは注意点だ。波気や波糸はお前の波動力とリンクしているから、お前の波動力が尽きた時にお前の波気や波糸は消滅してしまうぞ。まぁ、もっともそうなる前に我の魔力を波動力に変換してお前に送ってやるから心配するな。》
波気はスゴいものであったが、波糸もとんでもなく使えるものだ。
「おい、カイ。お前スゴイな。俺サマはまだ翼を消すことすら出来ないっていうのに。」
と突然ヴァンが念波で話しかけてきた。そうだ忘れていた。俺たちは念波のグループ化をしているから、ヴァンとゲンとはいつでも話が出来るのであった。
魔剣とは念波で話すので、その念波内容も無条件で俺、ヴァン、ゲンは把握出来るのであった。ティナ、リン、キールはブレス内にいた時にはその情報が伝わるが、ブレス内不在の際は伝わらない。
「カイ、スゴイね。ボクは感じることは出来るが、魔気を見ることまでは出来ないよ。勿論、魔糸も見えないしね。」
ゲンも念波に参加してきて、俺のことを褒める。
「俺はヴァンみたいに力もないし、ゲンのように器用ではない。只、考えるのは好きだから、どうしたら自分やティナを守れるかって考えただけさ。」
「人には得手不得手がありますよ。ボクにはないものをカイはもっているということです。」
「俺サマもそう思うぜ。心・技・体どれも必要だが、カイはカイなりのやり方で今後も突き進め。俺サマもゲンも自分なりのやり方で必ず強くなってみせるからな。」
「俺はまだキッカケを作れただけで、これから波気や波糸はしっかりとマスターしていくよ。飛行に関しても練習不足だしね。」
俺たちがそんな念波でやり取りをしていたら、リンとキールが念波に参加してきた。
《チョッと何男子だけで盛り上がってるの?カイ、あんたゼロのお蔭で問題解決したみたいだけど、ティナがブレス内に不在だからっていってティナのことバカにしてたでしょ?なんかヒドくない?ティナに言ってやろ。》
リンがグサッと図星をついてきた。
お気楽な考えのティナからは感覚的な情報が多く、今回のような具体的な情報を期待するのは正直難しい。ゼロもウン千年間の知識があるのだ。しかもティナとは違って、より具体的な知識が・・・
それを当てにしてしまったのは事実で、話の成り行き上でこうなったというのは言い訳にしかならない。
「リン、ゴメン。その通りだよ。俺も自分の考えが実際はどうなのか、正直不安でゼロに頼ってしまったんだ。ティナに聴いてからでも良かったよな。でも、俺はティナに聴く内容とゼロに聴く内容をしっかりと分けているんだ。それってダメなのかな?」
そのやり取りを聴いていたキールが念波で話しかけてきた。
《リン、人には得手不得手があるってゲンさんも言っていたじゃないですか。ティナにはこの手の質問は向いてないとわたくしも思いますよ。》
ありがたい!キールは俺のフォローをしてくれた。流石はゲンのパートナー。
俺たちがそんなやり取りをしていた最中、ティナが買い物から帰ってきてブレス内に転移してきたのだ。
《カイト~、これ見て。飛行に関する本を買ってきたよ。あたしは飛べるけど、説明するのが苦手だからさ~。一緒に飛んだ時、あたしの飛び方に似てたケド、何かチョッと違うのかな?って思っちゃって。とりあえず、一緒に読んでみよっ。》
観てみれば、魔人が執筆した飛行に関する書物で非常にレアな本が一冊。これを探し出すのも大変だったと思うのと同時にその想いに俺はめっちゃ感動した。
「ティナ、ありがとう。この本、大切にするよ。でも、俺何となく飛行のコツ分かったような気がするんだ。」
《カイト、ホントに?教えて教えて!》
ティナが興味津々な声で俺に問いかける。
「あのさ、俺は今まで俺自身が成長してティナの想いに応えるんだっていう考えが強すぎたと思うんだ。それはティナが凄かったからっていうのがあったからかな。でもね、違ったんだよ。俺が!じゃなくて、俺たちが!一緒に成長していくんだっていう気持ちが大切なんだって気付いたんだ。だから、地面に急降下した時に無意識でガードが発動したんだよ。あれはティナを傷つけちゃいけないっていう想いがとっさに出たんだと思う。あの力は波気っていうんだって。だから、俺たちは天空の波気を使えばきっと三百kgの負荷があっても飛べるってね。」
俺がそう伝えるとティナはブレスから出てきて俺にハグをしてきた。
「ありがとう、カイト。大好きだよ。うん、一緒に頑張っていこうね。約束だよ。また一人で何か悩み事を抱え込んでいたら許さないからね。」
それを聴いていたリンやキールは無言でフェードアウトしていった。リンはああ見えて、同じ竜姫のティナを大事に考えてくれているし、この雰囲気を壊したくないという気遣いも出来ている素晴らしい奴だ。
ちなみにティナの飛行方法は俺とは異なり、圧倒的な波動力そのものを大放出してのものだったらしい。どんだけ潜在能力が高いんだよ?
仮にティナが魔人だったら、魔王クラスの魔力の持ち主だったとゼロがこっそりと教えてくれたのだった。
「ティナ、波動力について俺なりに考えたんだけど、地・水・光・音の波動力を得ることは可能かな?」
ティナはかなり驚いた表情をしたが、優しい表情になって質問に答える。
「カ~イト、ビックリしたよ。いきなりそんなこと言われて。フツウは幾多のバトルをしていって、たまたま波動力持ちの魔石をゲットしていくものだから・・・答えは可能だよ!でも可能性は限りなくゼロに近いのも事実かも。」
えっ?可能性ゼロって!ムリなのか?
「どういうこと?俺じゃあムリなのか?」
「あたしが知っている中で水と地の波動力をブレスにゲットした武闘家は今までにいたよ。武闘家はその命を全うするとゲットした魔石は消滅し、元の持ち主に戻るんだ。魔石は生死を問わずに認められた者に与えられる物。魔石が元の持ち主に戻るっていうことは、もう解るよね?異質な力持ちの魔獣は不老不死だっていうこと。水と地の力をゲットした武闘家は随分前に死んじゃったから、今はゲットする可能性ある かも。でも、光と音の魔石が武闘家にゲットされたってことは、あたしが生きているこのウン千年なかった。如何にそれが難しい事かってこともあるかもしれないけど、光と音の力をもった魔獣には関わるなっていうのが武闘家なら常識かもね?だってチャレンジした武闘家は皆、無事には生きて帰ってこれなかったから。」
ガ~ン!!やっぱ考えが甘かったか?そりゃそうだよな、理想の力を突き詰めたら光と音も含まれたけど、人生そんなに甘くはないのだ。
ん?チョッと待てよ。ハッハハハハ!俺は不老不死じゃないか!死なないってことは諦めなければ可能性はゼロじゃないってことだよな。
「ティナ!イケるよ!絶対に!だって今の俺は不老不死じゃん。何度もチャレンジすることになるかもしれないけど、俺は地・水・光・音の力ゲットを諦めないよ!」
それを聴いたティナはウンウンと頷き、満面の笑みで俺に抱き着いてきてこう言った。
「やっぱ、カイトはサイコーだよ!あたしが絶対にカイトの力になってあげるから、一緒にチャレンジしていこうね!」
俺は照れ臭かったけど、とても心強いパートナーの想いを受け止めて満足だった。
「いいカイト、よく聴いてね。地の力を持つのは猿魔、その俊敏さと攻撃力の高さは折り紙付き。そりゃ、このスティール星の地力パワーを活かした攻撃が出来るんだから納得だよね。」
ウンウンと俺は頷きながら、記憶の片隅に情報を置いておく。
「水の力を持つのは鮫魔、サメの魔獣で水中でのスピード、攻撃力、水を駆使した技の数々、水中では無敵の強さを発揮するよ。」
水中での初動は気をつけていかないとだなと思った俺。ティナは続けて問題の二つの波動力について説明を続ける。
「光の力を持つのは雷魔、その強さは底が知れず光の利点をフルに使った攻守はスゴいってもっぱらの噂。あたしも会ったことはないんだ。音の力を持つのは天魔、超音波での攻撃は見えないから脅威だよね。音速で行動してくるみたいで、超音波も多方面から発信されたら厄介かも。」
ティナの説明を聴いた後、やっぱこの中でラスボス感満載っていったら間違いなく雷魔だよなって思った俺。きっと光のスピード、破壊力を駆使してくるだろうから俺なんかまともにバトルしたら、ゴキブリに殺虫スプレーをかけるが如く一瞬でイチコロだろう。
ヴァンやゲンも時期的にそろそろ異質な力持ちの魔石ゲットに向けて行動してくるかもしれない。ゲンは恐らく異次元や亜空間での魔石ゲットを狙ってくるだろう。
このスティール星では存在しない魔石、一体どんなのがあるのかは想像もつかないがゲンならきっととんでもない能力をゲットするに違いない。
ヴァンは威力あるものに関心があるだろう。
リンの魔力もそういったものの力を極限まで高めることが出来るようだしな。だから、俺とヴァンが狙う魔石はもしかしたらかぶるかもしれない。ティナとリンの情報はほぼ同じだろうから、早い者勝ちになるかもな。俺たちは親友だが、同時にライバルでもあるのだ。
現状、身体能力は圧倒的にヴァンの方が上だ。これでも俺は少し成長したとは思うが、それはヴァンも同じ。リンに負荷をかけてもらって修行しているので同条件なのだ。
体の基礎体力などはヴァンの方が俺よりも上なので伸びしろは高いであろう。
ヴァンの波動力のレベルは正直よく分からない。いえているのが俺は魔気、波気、魔糸、波糸の視覚化が可能で波気は使える段階にあり、波糸も訓練次第では使えるだろう。ヴァンはそこまでいっていないと思えるので、そこの面は俺が圧倒的に優位である。
今後の方針をどうするか?俺は現状を様々な視点で考えたあげく、ティナに衝撃の覚悟を伝える。