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二人のブレス  作者: ビッキー


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38/40

第三十八話 決断

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 シロッコの気が充実していくと同時に、凄まじいスピードで体も超回復される。それは気の質がもたらした異変であるが、一同予測外の事態が訪れるのであった。

 

「ヴァン、スマンな。敗者に対してここまでしてくれるなんて・・・この恩義は必ず返すぜ。オレの熱風の力、存分に活かしてくれよな。」

 シロッコはそう言うと、ヴァンにそっと熱風の石を手渡す。ヴァンは黙って頷き、自らのブレスにセットするのであった。ブレス内では結合魔動石の生成が始まる・・・

 そして、【風牙】の文字を映し出して結合魔動石生成は完了する。以前、ティナが何となく予言したことが現実となったのだ。

「おい!リン、デルタ!風炎の文字が消えて、風牙の文字が出やがったぜ。俺サマには風牙の意味はよく解らねぇが、パワーアップしたんだよな?」

《ヴァン、やったな。これでイプシロンが示した【豪傑】と【熱風】二つの力を得られたな。》

《あぁ、覚醒魔人の私には解る。お前の気は熱風の気を取り込んで、極種の一つになったようだ。とんでもない力だぞ、これは・・・》

 デルタは半ば興奮していた。いつも、冷静沈着な彼女にしては非常に珍しいことであった。それだけ、この風牙の力はとんでもないのだろう。

 しかし、この現象はヴァンだけのことではなかった。ヴァンの気を受け取ったシロッコにも同様な現象が体内で発動していたのだった。

「オレの気が・・・何かが違うな。ヴァン、お前の風牙の気と同様にオレの体内の気も風牙になっちまったようだ。オレには解る・・・お前の気がキッカケでオレの気が目覚めちまったようだ・・・フッ!とんでもない力を出せるぜ!こいつは!お前からは、とんでもないギフトをもらっちまったな。」

 シロッコも興奮気味であったが、何やらただならぬ気配を感じたのか、上空を見上げる。


 上空には一見何も存在していないように見えるが、実は精神生命体のスキル神サモンが現れたのであった。

「何だ、お前は?幽霊かと思ったぜ。実体がないからな・・・だが、異様な力を感じる、何者なんだ?」

 シロッコは気配の先を見据えて話をしていた。一方のヴァンもその異様な気配は感じていたが、シロッコほど鮮明には感じていなかった。

 同じ風牙の力を持ってはいたが、やはりシロッコの方が格上ということであろう。

《ほう、私が見えるのか。やはりな・・・私はスキル神サモン。シロッコ、君に話があって参上した。》

「スキル神サモン?聞いたことねぇぞ。そのスキル神様がオレに一体何の話があって来たっていうんだ?」

 シロッコは威風堂々としていた。例え相手が神だろうが、自分の芯はしっかりと持っているのでブレない。ある意味、ガンコではあるのでヴァンとも気が合うのかもしれない。

《シロッコ、君を覚醒魔人へと昇格させに参上した。瀕死の状態であった君は、そこの人間から気を分けてもらい、それがキッカケで風牙の力を手にした。風牙は極種の力で選ばれし者のみ、持つことが可能。十分に覚醒魔人の資質はあると判断した。勿論、本人の同意なしでは覚醒魔人への進化は成立しないので、君の意向を聞かせてほしい。》

「それはさておき、あんた実態がないのか?精神生命体のように見えるが、そんなんで重要なことが出来るのか?まぁ、余計なことかもしれんがな。」

 その言葉はサモンに深く突き刺さった。生と死の神、ペルセポネーに頼めば、肉体の復活も可能になったのであるが、彼女とはどうも気が合わない。

 その為に現状維持で精神生命体として、神の職務を全うしているのだ。

《うむ、君が問うのももっともだが、私のことは心配不要だ・・・》

《なぁ、デルタ!覚醒魔人って、ギリシャ文字の奴がなるんだろ?オレはそうじゃないから、この場合どうなるんだ?》

《私に問うな!サモン様に問えば良いであろう。私はたまたま、ギリシャ文字の名前だったから覚醒魔人になれたのだからな。》

 サモンは自らが話している最中に、シロッコとデルタが話し合いを始めたことに少しイラッとした。自分はシカトされたことに気付いたからだ。

《あの~私の話を聴いているのかな?何か質問があれば、私に聞けばよい。》

 サモンは神らしく振舞おうと、自らのいらだちは腹に収めるのであった。

「ん?あぁ、悪いな。何か精神生命体って、そのうち消滅しちまいそうだったから、ブレス内で覚醒魔人のデルタと話をしちまった。」

 この男・・・煮ても焼いても食えぬ者かもしれんな・・・サモンは思ったことをズバズバと口にするシロッコを少しずつ楽しんで見るようになってきた。

 最初はイラッとしていたが、歯に衣着せぬこの者は純粋に生きているだけに過ぎないという認識に変わったからである。

「オレからの質問は三つある。一つ目は覚醒魔人になったら、何かメリットはあるのか?それが知りたい。」

 この質問はもっともである。何が嬉しくて自分の環境を変えなければならないのか、俺でもメリットなくして受諾する気にはなれない。

《メリット、あるよ~!覚醒魔人へと進化すれば、基礎体力や筋力、気、スキルレベルやスピードなど多方面に渡って百八十パーセントまで向上する。正に魔人の上に君臨するべく者へと進化するんだ。どうだい?素晴らしいだろ?》

「あぁ、そうか解った。二つ目の質問だ。覚醒魔人は名前が重要でギリシャ文字の奴しかなれないと聞く。オレはそれにはそぐわないが、このケースだとどうなるんだ?」

 シロッコは冷静にサモンの返答を受け止め、次の自らの疑問をぶつけていく。

《名前ねぇ・・・覚醒魔人はその能力の向上の為に決められた名前を紐付けしなければならない。それがギリシャ文字にあたる。言い換えれば、その名前にのみ与えられた特権なのだ。名前がキーワードで覚醒魔人への進化が成立するといえば、解りやすいだろう。覚醒魔人も戦死していく。今の所、ベータとゼータが欠番なのだ。だから、君にはベータかゼータかに改名してもらえば問題ない。》

「改名か・・・解った。最後の質問だ。覚醒魔人の役割とそれを断った場合のリスクはあるのか?」

《覚醒魔人になったら、魔王のフォローをするのが役割だ。魔王から指示をもらい、覚醒魔人は動いていく・・・そんな感じだ。覚醒魔人進化を断った者は今までに存在していない。だって、百八十パーセント強くなれるチャンスをふいにするなんて考えられないよ。まぁ、断る者がいたとしたら・・・その者のスキルを無効にする。それがリスクだな。》

「そうか、よく解った・・・スキル神サモン、オレは覚醒魔人へは進化しないことにするぜ。オレの熱風、いや今や風牙になったんだったな・・・この風牙の力、無効にしてくれて構わない。そういうことだ。解ったら、さっさと済ませてくれ。オレもヒマではないからな。」

 シロッコの決断に一同驚愕した・・・サモンの申し出を断り、パワーアップのチャンスをふいにするだけでなく、スキルすら無くなる・・・こんな選択をするとは思ってもいなかったからだ。

「おいおい、シロッコ!あんたのスキル、無くなっちまってもいいのか?俺サマはあんたとまたバトルをしたいって、心底思っているんだぜ!」

《そうだよ!シロッコ!あんたの強さは私もよく解っている。覚醒魔人の私が言うのも何だが、特に問題なく日常を送れているぞ。考え直せ。》

 ヴァンやデルタが説得にあたるが、シロッコの考えは変わらなかった。

「ヴァン、デルタ・・・皆、聞いてほしい。サモン、わざわざ出向いてもらってありがとう。オレの考えを伝えたい。聞いてもらえるか?」

《あぁ、初めてだからな・・・覚醒魔人進化の申し出を断られたのは・・・聞かせてもらおうか、君の考えを。》

 シロッコはその場にデデーンと胡坐をかき、話を始める。

「能力の向上だが、確かに魅力的だ。だがな、現場で得られた能力ならともかく、与えられたものを受け取る気にはなれねぇ。そんなものに頼りたくねぇ。泥臭い中、もがき続けてオレはここまで強くなったんだ。」

《うむ、君の強さへのこだわりは理解した。だが、それだけじゃないんだろ?断った理由は・・・》

 サモンはシロッコの話の続きを聴く。

「次に名前だが、オレはシロッコって名前が気に入っているんだよ。オレに熱風の力を与えてくれた先代シロッコの想いをふいにする訳にはいかない・・・それによ、ベータだかゼータだか知らねぇが、風牙のベータ?風牙のゼータ?どっちも今一だろ?やっぱ。風牙のシロッコ!これが一番だぜ。」

 サモンは沈黙してシロッコの話を聴く。自分は彼が強ければ良いという考えの人物と思っていたが、思ったよりも彼の想いは深かったからだ。

「最後に魔王様のフォローをするっていうのは、別に指示があればオレはいつでもやるぜ。未だかつて、そんな指示は受けたことはないがやぶさかではない。それが魔界を守る為の魔人の役割だと認識しているし、覚醒魔人だけの仕事でもなかろう。まぁ、スキルが無くなっちまっては大したことは出来なくなるがな。」

 シロッコは豪快に笑った。それはとても爽快で一片の悔いも感じられなかった。


 サモンは思った・・・この男、指針が全くブレることがない。自らの指針をブレさせることなく、正は行い、邪は滅する・・・そういう者であると・・・

《シロッコ、君の想いは理解したよ。強制的に覚醒魔人になってもらうことはしていないし、意味がない。残念だが、今回は断念しよう・・・そして、君の風牙の力は、極種で無効にするのは勿体ない。是非、魔界の為に役立ててほしい。魔界を守ってチョ。》

 どうやら、サモンの【守ってチョ】というのは口癖らしい。とりあえず、シロッコのスキルが無くなることは回避され、サモンはその場から去っていった。

「シロッコ、良かったな。スキルが無事で・・・また、俺サマと再戦してくれよな。」

「あぁ、約束だ。オレは約束を守るし、ブレス内でもお前の力になってやる・・・ところでデルタ、お前に聞きたいことがある。」

《何だ、シロッコ?》

 シロッコはデルタに聞きたいことがあったようで、問いかける。

「お前がヴァンと共に行動しているのは、魔王様からの依頼か?経緯は知らないが、ヴァンに関わっている時間は多いであろう?そんな状況で魔王様の依頼をこなせる訳がない。覚醒魔人の仕事が魔王様の依頼と今、聴いたからな・・・問うてみたくなったのだ。」

 

 しばしの沈黙を破って、デルタの爆弾発言が始まる。

《私はカイとのバトルで、ヴァンに風の石を託し、ブレスを通じて行動を共にすることにした。実はな・・・これは魔王様からの依頼だったのだ。カイたちと行動を共にし、彼らの成長の為に関わって支えてやってほしいと・・・そして、最終目標であったイプシロン、アルファ、シロッコに認めてもらうことに成功し、各々が力をつけた。スマンな・・・この案件は、イプシロンとアルファもグルだったのだ・・・そして、たった今どうやらゼウスは絶命したらしい。お前たちにも解るであろう?ゼウスの気が感じられなくなったのだ・・・決戦の日は近いかもしれんぞ。我々も可能な限りの力を付けてきた。集結の日まで、出来る事をしていこう。》

 この告白は、衝撃的だった。ヴァンは唖然とし、ブレスの念波グループを通じて俺やゲンにも情報は流れてきた。

 ゼウスが絶命させられ、生態系を守るために、魔王発信で覚醒魔人の三人が結託し、俺たち三人の人間を育成してきたということだ。ゼウスを超える力を発揮できる可能性がある俺たちに・・・

 今まで様々な情報や事実が判明してきたが、今回の案件が一番のサプライズであった。

 もしかして、魔王がキールに予知夢を見させたのではないか?とも思えたが、それは今回スルーする。

 そんなに悠長に構えている場合じゃないな・・・と俺たちは心構えをしっかりと持つことを再認識されられたのだから・・・

 スキルの欠片の守護者であるキャンティの一族たちから、それを奪うという事件が起きていたのを知ったのは、それから数日後であった。

 神経毒から回復したキャンティの一族から、キャンティの元へと次々と緊急連絡が寄せられる。彼女たちのいる星々は、死星化されてしまった。

 それは、ストロームのパワーアブソーブによって、星の生命力までも奪われてしまったから・・・こうして星獣ストロームは臨界点を突破し、絶対神ゼウスをも絶命させ、真なる超星獣と化す。

 そして奴は、最後のスキルの欠片を狙いに魔界にあるキャンティの工房へとやって来たのであった。絶対神ゼウスが絶命した瞬間、全宇宙に衝撃が走った。

 ある程度のレベルを超える強者ならば、ゼウスの気が消失したことに気付いていたのだ。勿論、俺達もそれに気付き当初は動揺した。しかし、キールの予知夢で事前に想定していた事態だった為、冷静ではあった。

 キャンティもその異変には気付いていたが、目の前に首謀者であるストロームが突如現れたことのほうが驚きであった。

「お前がゼウスをやったのか?神殺しのお前が今度はあたいに何の用だい?」

「冷静だな。お前が最後のターゲットだ。と言えば解るか?お前の一族全てのスキルの欠片を頂いたんだ。最後にお前のスキルの欠片を頂けば、オレは全宇宙最強になれるのだ。その前にゼウスの奴が邪魔をしてきたから、葬ってやったまでよ。【神撃】でな。」

「バカな・・・神撃はゼウスの必殺の一撃だろ。それをお前が使ったのか?」

「イヤ、オレには神撃は出来ないが神撃を喰らう瞬間、オレとゼウスの場所を入れ替えたんだよ。ゼウスは自分の技で絶命したって訳だ。もっともオレはキャンサーのスキルの欠片を持っているから、神撃はもう使えるがな。試しに使ってみようか?如何にお前が不老不死でも細胞が消滅していく技だ。お前も絶命しちまうがな。」

 キャンティはここまでの話を聞いて高笑いをしだした。

「気がおかしくなっちまったか?まぁ、無理もない、オレの強さはお前たち魔人の領域を遥かに凌駕しているのだからな。」

「フッ、この会話はブレスを通じて我友に通信させてもらったものでな。カイ、ヴァン、ゲン、そういう訳だ。後は頼むな。」

 別の場所で待機していた俺たちは、光速移動でキャンティとストロームの前に現れた。光速移動した俺たちを見ても、ストロームは驚きを見せることなく平然としていた。

「何だ、お前たちは?お前たち雑魚に今、用は無い。オレはキャンティに用があるんだよ。彼女のスキルの欠片を奪いにな・・・」

「まぁ、そう言うなよ。しかし、残念!遅かったな。だってキャンティのスキルの欠片は魔動石に加工されていて、既に俺がゲットしているんだ。」

 それを聴いたストロームは額に青筋をたてて憤慨し、俺たちに戦いを挑んでくる。

「何だと!あと一つでキャン一族のスキルの欠片八個全てが揃って、スキルの珠が手に入るっていうのに・・・欠片を加工してお前が持っているだと?オレの全宇宙最強の野望が、こんなガキに阻まれたっていうか?許さん、許さんぞ!」

 怒りで我を忘れたストロームは俺に向かって強襲してきた。俺は光速では動かずに動きを見切ってギリギリのラインで攻撃をかわす。コウさんが昔、俺と組み手でみせた防御法である。

 光速で動くのは簡単であったが、こいつはスキルコピーの能力がある。下手にこちらの手の内を見せるのはかえって危険と判断したためである。

 ファイの力を使えば、奴の能力を封印させることは可能であるが、これもスキルコピーされちまったら、正直お手上げになっちまう。

 封印とスキルコピーは表裏一体なので、慎重にならなければならない。


 俺は念波でキャンティと密談を交わす。

《キャンティ、何かめっちゃこいつ怒ってるケド、何でなんだ?》

《カイ、あの時の宴でも話が出たが、あたい達一族のスキルの欠片八個全てが揃うと究極の【スキルの珠】になるんだよ。スキルの珠を有する者はこの世の全てのスキルを使えるようになる究極の生命体になる。あたい達はキャン一族・・・「Can」って言えば、サモンがあたい達に欠片を託した理由が解るだろ?こんなこともあろうかと、あたいは自分のスキルの欠片を加工し魔動石にした。そして、有望で心が清らかなお前に剣の石を託したんだ。どうだ?「できる」女は違うだろ?》


「オレの前世はルーツ・・・最強となり、お前に復讐する為に転生してきた。ここまで計画通りに順調に来たが・・・」

 何やらブツブツと言い出したストローム。それを聞いた俺は全てを悟った。そうか・・・そうだったのか。

 Can一族のスキルの欠片が全て揃うと、この世の全てのスキルが使用できるようになる。奴の目的がそこで、俺に対して復讐の手段として計画していたのか・・・

 この世の全てのスキルが使えるってことは正に無双になるわけだからな。それが無となった今、奴は尋常ではない怒りで攻撃を仕掛けてくるだろう。

 ん?Can一族って、もしかして物凄い一族なんじゃないか?思い返せば、一人一人のスキルのレベルは高かったよな。キャンティからの情報だと、キャン一族のスキル七人分は奪ったようなので、それとゼウスの神撃は確定だ。そして、スキルの欠片は七つ奴の体内にあるということであった。

《やはり、ポジションチェンジ、パワーアブソーブ、スキルコピーが厄介だな。ヒートトルネードや昇龍波なんかは、見せたらコピーされちまう。ヴァン、ゲン、気をつけろよ。》

《あぁ、解ってるって。今更だが、ゲンの昇龍波って何で【竜】じゃなくて【龍】なんだ?何か意味あるのか?》

《龍は竜を超えたことになるらしいんだよ。竜のパワーを超えた波動だから、昇龍波と名付けたんだ。》

《じゃあゲン、お前内部覚醒しているかもな。ある部分が特化して覚醒することもあるらしいぞ。》

《カイ、そうなのか?ボクにはよく解らないが、確かに威力は凄まじいからね。》

 俺たちはストロームを前にして、今話すべきことではない話をしていた。

 それには理由があって、少しばかりの余裕感があったからである。


《龍神!闘鬼神!名将!》

 いきなりサモンの声が聴こえてきた。

《ゲンには龍神。ヴァンには闘鬼神。カイには名将の指輪を与えよう。スキル神が不公平感を与えてはいけないのだが、事が事なのでな。各々、指にはめると良い。龍神の生命力、闘鬼神の戦闘力、名将の頭脳が得られるぞ。ゼウス亡き今、世界を守ってチョ。》

 そして、指輪がサモンから俺たちの手元に届いたかと思いきや目の前から消滅し、ストロームの手中に握りしめられていた。

「フッ!スキルの珠が手に入ららなくなったんだ。代わりにはならねぇが、この指輪はありがたく頂いておくぜ。」

 そう言うや否や、奴は指輪を飲み込み体内に保管する。奴の体が青白い閃光し、新たなる進化を始める。

「こいつはいいぜ。溢れんばかりの生命力と戦闘力、新たなる知識や戦術が頭を駆け巡っていやがる・・・サモンさんよ、ステキなギフト、ありがたく活用させてもらうぜ。」

 俺たちは忘れていた。奴は盗みの達人ルーツが転生したんだった。チョッと気を許すと大事な物は盗まれちまう。

「ヴァン、ゲン、グリフォンとハルさんを体外に出すなよ。前みたいに奴に吸収されちまったら、大変だぞ。」

「あぁ、解ってるって。サモンさんよ、指輪はすまなかった。俺サマたちも油断してたぜ。あのさ、シロッコに言われて気付いたんだが、俺サマ達は恵まれ過ぎていたんだよ。そして、今もサモンさんがパワーアップの為の指輪を用意してくれた。そんなんなくても、自力で何とかすべきなんじゃないのか?今まで、努力してきたろ?それを活かせば、結果は解らねぇが活路は見いだせるんじゃねぇか?」

「折角の指輪が申し訳ない・・・カイ、了解だよ。まだまだ、こちらも手の内を出していないから、奴も用心していると思うよ。そして、ヴァンの言う通りかもしれないね。ボクたちは恵まれ過ぎていた。三竜姫のパートナーとなってからは、特にそれは思うよ。ブレスや仲間たちにね・・・でも、あの指輪は必要ないと思うよ。カイは名将としての資質を発揮している。どんな時でも冷静に諦めずに最善の策を講じようとしている。ヴァンは闘鬼神の如く、大いなる力を二つも得た。そして、ボクは竜を超えた龍の力を阿修羅の力と共に扱えるようになっている。それだけ成長してきたじゃないか。」

「あぁ、そうだな。サモンさん、そういうことだ。結果、奴をパワーアップさせちまったが、俺たち三人に任せてくれよ。」

《余計なことをしてしまいましたね。ブレスを・・・いや、二人のブレスを育ててきた君たちなら、どんな難関もクリアしてくれるでしょう。だからこそ、【彼】も・・・いや、何でもありません。私は遠くから見守っていますよ。》

 サモンは去っていく・・・彼ってのが気になるが、今はバトルに集中しなきゃな。


 奴の進化が終わり、圧倒的な威圧感を放出する。

「待たせたな・・・神からのギフトは素晴らしい。だが、スキルの珠が手に入らなくなったことは決して許せん・・・この進化中に考えたんだが、こんな忌々しい星はもう必要なくなったし、このメタル系銀河も必要ない。何もかもぶっ壊して、オレは違う銀河でまた暴君の限りをつくすことにした。覚悟するんだな!オレは宇宙空間でも生きていけるが、この星が無くなったらお前たちは生きていけないだろ?」

 ストロームは俺たちにそう告げると、ニヤリと笑う。

 俺たちは奴に戦術を悟らせないように念波で意思疎通を行う。

《一体奴は何をする気なんだ?このスティール星をぶっ壊すって言ったが、そんなに簡単には出来ないだろ?》

《いや、ここでハッタリを言っても意味がないからね。奴は名将の指輪を手にしたことにより、知識や戦術レベルは相当に上がっているハズ。ボクたちは、柔軟に対応していくしかないよ。》

《ヴァン、ゲン、気をつけろよ。もし俺が奴のスキルを使えたならって考えたら、スティール星を破壊する方法が幾つかあるんだ。》

《え~!!チョッとカイ、何とかしなさいよ!あんたとティナは宇宙空間でも生きられるかもしれないけどさ、ウチとキールはムリなんだからね!不老不死の生命体は酸素が無いと細胞が消滅しちゃうんだよ。》

《リン、わたくしたちは空間転移が出来るからいざとなれば亜空間や異次元に逃げ込めば大丈夫ではないでしょうか?》

《おっ!その手があったな。でもさ、スティール星の皆はどうするんだ?ウチらだけ逃げちゃいかんと思うよ。》

《イヤイヤ、チョッと待ってくれよ。奴はこのメタル系をも破壊するって言ってるんだぜ。奴には名将の指輪があるんだ。ゲンの空間転移のことも掌握しているだろう。当然、亜空間や異次元も対象内なんじゃないか?》

 俺は思ったことを口にする。一同が無言になってしまったが、放置してる奴の動向は常に注視するようにしていた。

 それにしても、宇宙空間では不老不死は無意味になっちまうんだな。まぁ、細胞がダメージを受けて超回復するのが不老不死と考えれば、細胞に酸素を与えないと超衰退して消滅していくのは理解出来る。

「さて、お前たちとはここでおさらばだ。宇宙の藻屑となるがよい。」

「ハッ?何言ってやがるんだ?お前、何もしてねぇじゃねぇか。」

「いやヴァン、奴は何かもうしでかしたんだと思うよ。ボクたちがそれに気づいていないだけじゃない?」

 そう、もし俺が奴のスキルを使えるなら。俺は天空を見上げた。そこにはまだ何も無かったが、俺は天空の力を用いてサーチしてみた。

 

 明らかに何かが近付いてくる・・・それはとんでもない物が・・・

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