第二十四話 希望
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俺はメタル化されたファイを復活させる為、キャンティ一族の元へと旅立つことになった。
しかし、星々を回る旅なので、そう簡単にはいかないだろう。その間、ヴァン・ゲン・コウさんは阿修羅の力を得る為に別行動をする。
「キャンティ、お前の一族について教えてくれ。それに星々っていっても宇宙は広いし、一体どこを目指せばいいのか皆目見当がつかないよ。」
「カイ、心配するな。あたいの工房には、一族皆のいる星々へとつながっている超電磁リングがある。それを使っていけ。星に着いたら、一族のスキルの欠片とあたいの石が共鳴して行き先は導いてくれるよ。一族はあたいと見た目と声が同じだケド、髪の色が違う。一族皆に共通して言えるのは、真なる強さと心の清らかなる者を認めてくれることかな。まぁ、何かあったら念波で話をしよう。」
「解ったよ。ありがとう、キャンティ。あとさ、ついでに頼みがある。」
「なんだ?水臭いぞ。あたいとお前の仲だ、何でも言ってくれ。」
「うん。あのさ、キチットにぽんぽんってのがいたろ?あの子をお前の弟子にしてくれないか?メカニックは好きみたいでさ、見どころありそうな子だったから。それにお前が定期的にキチットに顔を出してくれれば、俺たちも安心できるんだよ。」
「残念だが、あたいは弟子を取らない主義だ。それにあやかしの血が混じっているとはいえ、所詮は人間。寿命もたかが知れているから、教えられることも限られてくるぞ。」
「ホントは俺がお前の弟子になりたかったけど、そうも言えなくなったからな。俺の代わりにあいつを可能な限り面倒みてやってくれないか?」
《キャンティ、寿命のことなら心配するな。既にファイの奴が布石を打っているぞ。カイ、我には解ったぞ。あの魔浪、魔狸、魔兎は生死を司る神ペルセポネーの加護を受けた【生魔獣】であると。彼らがブレスをゲットして生魔獣の魔石をセットすれば、生魔獣の恩恵である不老不死になれるのだ。ファイの奴、ああみえてあの三人組のことが気に入ったのであろう。心憎いことをする奴だ。》
ゼブルの話を聴いて俺は悟った。そうかファイの奴、そんな先のことまで考えてあの三人組に適した生魔獣を与えたのか。懐の深い奴だ。いや、俺の影響かもしれないな。
自分よりも人のことを考えてやれって俺はいつもファイに言い聞かせていたから。ファイ、絶対にお前を復活させてやるぞ・・・
「キャンティ、聴いての通りだ。頼んだぞ。」
「カイの頼みだ。断れないか・・・解ったよ。でも、あたいも自分の仕事がある時はムリだからな。それは理解してくれよ。」
「あぁ、勿論だ。ありがとう。」
俺はキャンティを引き連れて、ぽんぽんの元へ事情を伝えに行った。かなり戸惑う三人組であったが、それもそうだよな。いきなり、君たちは不老不死になれるよなんて人間が言われたら「は?」ってなるよ。
しかし、ぽんぽんは普段ポヘーっとしているがキャンティを目の前にした途端、背筋がピンと伸びていた。ブレスを作った尊敬する人が目前にいるのだ。気持ちは理解出来る。
「じゃあ、あとは頼んだぞ。キャンティは工房で待っていてくれ。準備が出来たら、俺も行くから。あっ!そうそう、ぽんぽんさ、合体ロボよりもキャンティに魂を入れ込んだアンドロイドの作り方を教えてもらったほうがいいかもよ。もんたには事が落ち着いたら、ティナを料理の先生につけてやるからな。ティナの料理はレベルが違うぞ~。楽しみにしててな。」
俺は言いたいことは言って、光速でその場を去った。ぽんぽんともんたは目をキラキラさせて天を見上げていた。人間、目標が出来るとワクワクするものだ。それもサイコーの先生方がついてくれるのだから、喜びもひとしおだろう。
コタロー、ぽんぽん、もんたは現在十五歳で、ブレスが持てるようになるのに、後一年ほどかかる。それまでにもし、生死がかかるほどのピンチになっても三魔獣が守ってくれるであろう。それにキャンティもついていてくれる。
あいつの剣術は何とも心強いからな。
何でも三魔獣の名前は、狼の魔獣マロウはマロン、狸の魔獣マリがマリン、兎の魔獣マトはマドカにしたそうだ。
マドカだけ濁点が入ってはいるが、三魔獣たちもその名前を気に入っているらしい。
俺たちは食料と水、それと着替えをブレス内に準備してキャンティの工房へと光速移動した。
ある程度はこの工房も観たつもりだったケド、そういえば謎の部屋がいくつかあったよな。
そんなことを思いながら、キャンティの案内で謎の部屋へと入っていった。
「な・なんなんだ?この部屋は・・・空気感がおかしいぞ。」
ブレス内にいたティナもその違和感に気付いたようだった。
《カイト、この部屋の空気、対流がスゴイね。魔界の大気も異質だったケド、この部屋は更に異質だよ。》
ティナが言うように、この部屋は気圧や酸素濃度、重力が刻一刻と変動しているのだ。
「カイ、ここは七つの星々とリンクしている特殊空間。七つの星々の重力、酸素濃度、気圧なんかが混じりあっているのだ。まぁ、異質な感じがするのは当然だよな。あっ!そうそう言い忘れていたケドさ、あたいは今魔界にいるものの、昔はスティール星で生まれ育ってたんだ。だから、スティール星のメタルの欠片とスキルの欠片を持っている。まぁ、スキルの欠片は加工してカイに託したんだケドな。」
そうだったのか。だから、スティール星のことや三竜姫のことなんかも詳しいんだ。
「あとさ聴きたかったんだケド、メドゥーサ修復に八個のメタルの欠片を使うのは解った。でも、お前の母さんは何でわざわざ八個のメタルの欠片を使ってメドゥーサを作ったんだ?しかも、今回みたいに修復するのに星々を回らないとなると面倒じゃないか?」
「メドゥーサは剣に封じるしか方法がなかったって言っただろ?あの剣はな、元々は【メタルの珠】から出る八種類の特殊光から出来ている。八つの異なる種の光が結集され、金属の結晶に変化していく激レアな剣なのだ。だから、同じような剣を作らせない為にも母上は【メタルの珠】を八個に分けて欠片にし、星々の一族に持たせた・・・そういうことだ。でも、あたいはあそこまで剣が崩壊していたらメドゥーサの魂も消失したと思ったがな。」
光を結集して金属にすることが可能なのか?
そんな特殊な科学と技術は非常に興味があるが、悪用された場合恐ろしいのも事実だ。メドゥーサはかなりヤバい奴で剣に封印するしかなかったって言ってたからな・・・封印の技術に使われかねない。
でも待てよ、その恐ろしい奴が破れない金属を竜魔人化した俺が破壊しちまったってことは竜魔人ってかなりヤバい状態だったんだな。まぁ、俺が意識を正常に保っていれば竜魔人化なんてことは二度とないだろう。
さて部屋をよく観てみると、何と超電磁リングが七つあるではないか。
「スゲーな!超電磁リングが七つもあるなんて!これで目的地までは最速で行けるな。」
《カイト~なんかドキドキするねっ!あたしも他の星に行くなんて初めてだよ。》
「ティナ、遊びに行くんじゃないからな。早くファイを復活させてやろうな。」
《そんなこと、解ってるよぉ。今まではクロちゃんやファイが旅でずっと一緒だったからさ、二人きりって何か新鮮な感じがするじゃない。》
《我がいることも忘れるなよ。カイ、覚醒した我を大いに使ってくれ。》
《あっ!ゼブルもいたんだよね。ゴメンゴメン。ねぇ、レイちゃんはどうなったの?基本ゼロ主体の自我なの?》
《レイは我と同調して一つになった。我はレイだし、レイは我なのだ。話し方は我のままだがな。我の考えはレイの考え、レイの考えは我の考えなのだ。》
《なんかよく解んないケドさ、ヨロシクね!》
おっと!ゼブルを忘れてた。こいつ覚醒したんだったよな。
「なぁ、ゼブル。お前、我は無限とかって言ってたケド、何が無限なんだ?パルスの石をゲットして俺の結合魔動石も無限の文字が出てる。石の力はまだ試していないから、どんな能力なのか解らないケドさ。」
《我の魔力は竜魔力に変化し、その量と威力は無限。カイ、お前の体が耐久可能な限界レベルまで上げることが可能になった。そして竜魔力は尽きない。ゲンのプラントは魔力を作り続けて使っていく能力だが、我の竜魔力は放出した分と同じ分、竜魔力が還元されてくる。放出した分がマイナスとしたら、同じ量が反発されてプラスとして返ってくるのだ。だから、今までの様に魔糸を使う必要も無くなった。》
えっ?そんなこと可能なのか?クロちゃんは竜魔力が突然変異のものだって言っていた。前例のない竜魔力・・・俺に使いこなせることが可能なのか?
っていうか、それだったら騎糸はもう出番ないってことじゃないのか?あれだけ必死にオナラの如くを意識して身につけた騎糸・・・想定外にも短命だったな。
ゼブルが供給源だったら、わざわざ相手から魔気なんかを奪わなくても済むからな。まぁ、ゼブルが崩壊した時は騎糸の出番はあるんだろうけれど、そんなことは想定しにくい。俺並みに魔気や魔糸なんかが見えて、可能性がある奴にもし出会えたら、魔糸や騎糸を教えてやることも出来るか・・・
もし、女の子だったらどうしよう。オナラの如くやるんよ!なんて言いにくいぞ。
《カイト!女の子のこと、考えちゃダメっていつも言ってるよね?カイトはあたしのことだけ、考えてくれていればいいんだよ。解ってるの?》
おっと!ティナに叱られてしまった。
ティナは今、ブレス内にいるから気をつけないとな・・・俺の考えは筒抜けになっているんだった。
「勿論だ。解っているよ。悪かったな、騎糸がもう必要ないんじゃないかって考えたからつい・・・」
《ウソだよ!チョッと言ってみただけ。今はあたしのことよりもファイのことを考えてあげなきゃね!》
俺は嬉しかった。ティナが自分のことよりもファイのことを大事に思っていてくれていることに。俺たちは想いを一つにして、突き進むだけだ。
ふと疑問に感じたので俺はゼブルに問うてみた。
「ゼブル、無限の結合魔動石のこと、何か知ってるのか?俺はまだ何も解らないんだケドさ。」
《カイ、無限の結合魔動石はな、天空・剣・光・音に関して無限の可能性をリアルに出来る資格の証明。今までは、光の魔動石がブレスにセットされることは無かった。だから、魔界では無限の結合魔動石は【幻の石】と言われていたのだ。我には解っていたぞ。お前、【ロックオンⅢ】を考えていたであろう?そのロックオンⅢも容易に可能になったのだ。》
ロックオンⅢ・・・ロックオンは相手の筋肉の初動を感知して、事前に対応していくスキル。
ロックオンⅡは相手の神経情報を感知して事前に対応していくスキル。ここまで俺には出来た。
しかし、ロックオンⅢは相手の脳からの指示を感知して事前に対応していく究極のスキル。
俺の天空の力で脳に侵入して、その情報を得ていくとなると、その集中力はハンパないものが必要とされるし、こちらの精神力も莫大に消耗されてしまう。
それに相手が単体であれば良いが、複数相手にこのスキルはまずムリなのだ。
だから、俺はこのスキルは諦めていた。それに今の俺には光の力がある。
光速で行動が出来る今の俺にはロックオンⅢは必要ないと思っていたのだ。
《カイお前、光速で行動出来るからロックオンⅢは必要ないなんて思っているんだろ?ロックオンⅢはバリアが張られていなければ、理論上は相手の脳に幻覚をみせることも可能になるんだぞ。》
「えっ?そうなのか?確かに脳の指示を感知することが出来るのであれば、その脳の視床下部に対して幻覚をみせることも可能になるかもしれないな。でも、以前試したことあるが精神力がもたないよ。」
《フッ、お前我が無限になったのを忘れたのか?精神力はお前の気力の一部だろ?お前の騎力は我の無限の竜魔力で補えばよい。それに無限の石は無限の可能性に満ちている。使い方はお前次第だ。楽しみにしているぞ。》
そうか、そういうことか。それならば、可能かもしれないな。無限のゼブルパワー、何とも頼もしい。まぁ、ロックオンⅢは使えそうであれば使っていこう。
究極の技は存在しない。このロックオンⅢも通用しない相手が必ず存在すると俺は考えている。
スキルの一つとして意識はしていくがな・・・あと俺の無限の石、どう使っていけばいいのだろうか?まぁ、おいおい考え付いたことがあったら、ブラールのいるリアトリスで試していこう。
「ゼブル、ありがとう。なんか俺、新たな力を得てワクワクしてきたよ。」
《カイト、良かったね。あたしもナイスアイディア思いついたら、言うからね。》
「ティナ、ありがとう。頼むな。ところでキャンティ、まずはどの星に行ったらいいんだ?何か順番はあるのか?」
「カイ、順番は無い。だけどな、クローム星のキャンサーには気をつけろよ。奴の能力はスキルコピーだ。お前の能力をコピーして挑んでくるぞ。お前はお前と戦うことになる。そのことを肝に銘じておいてくれ。」
「解ったよ。他の星の奴もやっぱ皆とんでもない奴らなんだろ?気をつけていくよ。」
《ねぇ、キャンティ。あんたの一族のスキルの欠片ってやっぱりあんたと同じで魔動石なの?同じなら、カイトがその力をもらうことも出来るんじゃない?》
「ティナ、残念ながらそれはムリだ。本来、スキルの欠片は水晶の欠片みたいな物だ。それをあたいはブレスにセットして能力が使えるように特殊加工したんだよ。」
《そっか、そうなんだ。じゃあ、カイト!無限の力を使えるようにならないとダメかもね。》
やはり事がすんなり行くわけがないと思っていたが、俺の想定外の奴がいるかもしれない。
さっきは思いついたら試していこうなんて悠長なことを考えていたが、それどころじゃないよな。
無限の力・・・
一体どこまで俺が使いこなせることが出来るのだろうか?今は宝の持ち腐れだよな。
ちょっと、リアトリスで試してみるか。旅はその後でも遅くはあるまい。
「キャンティ悪い。すぐにでも星々を回ろうと思っていたが、ヤバい奴もいるみたいだから、やっぱリアトリスで無限の力を試してみてからにするよ。なんか不安になっちゃってさ。」
「そうか、その方が良いかもな。あたいの剣の力も無限に引き出しておくれよ。楽しみにしているよ。」
「あぁ、解ったよ。じゃあな。」
俺たちは雰囲気の個性でブラールのいるリアトリスに光速移動した。
やっぱこの雰囲気の個性は便利だな。
ファイは覚醒魔王になる可能性があるなんて言ってたケド、そんな恐れ多いものになりたくはない。俺は俺なのだ。
「よっ!ブラール、元気だったか?」
「うわっ!カイ、いきなり登場してくるなんてビックリするじゃんか。今日はどうした?遊びに来てくれたのか?」
俺は無限の力を試しにきたことを伝えて、場所を借りることにした。
例によってリアトリスの外側にはバリアを設置しておく。
今回は想定外のことも十分に考えられるので、ここでも無限の力を使ってみた。
無限の力を使うコツとかあるのかもしれないが、さっぱり解らない以上、騎気を目一杯高めて光のバリアと雷のバリアを作ってみる。
「ん~?ダメだこりゃ。特に変化を感じないぞ。ティナ、どうだ?」
《ん~?やっぱ変化ないような感じだよね。力を発揮する為に何か特別な方法があるんじゃないの?前例がない力だから、ゼブルやクロちゃんにも解らないだろうし・・・カイトが色々試すしかないよ。》
そっか、そうだよな。今まではクロちゃんやゼブルが色々教えてくれていた。
俺はそれに甘えていたような気がする。自らの力で乗り越えていくことは、時には必要だ。
今後は困った時には皆を頼る前に自分自身でも努力していこう。とはいえ、いつも困ったことが起きるんだケドね。
俺は思いつくまま無限の力を引き出す方法を試しまくっていった。・・・とはいえ、そう簡単に結果が伴ってくるはずもなく行き詰ってしまっていた。
「ダメだこりゃ・・・クッソ~どうしたら、無限の力を引き出せるんだ?」
《カイト~きっとなんか方法があるはずだよ。でも、前例がない結合魔動石だからね~あたしにも解んない。》
万策尽きた感の俺がふと視線を逸らすとブラールは何やら行っていた。
「チェンジモードブラール!」
ブラールは全身をブラックホールと同化させて、暗黒鳥と化したのだ。
「カイ~どうだ?オイラの新しい技、ヴァンのモードフェニックスを真似てみたんだよ。カッコいいだろ?」
「こ・これだ!!!サンキュー、ブラール!おかげで謎が解けたぜ!」
《カイト~ブラールの変身で謎が解けたの?あたしにはさっぱり解んないよ。》
《我にも解らん。カイ、説明してくれ。》
「あぁ、ブラールはブラックホールを操れる能力を持っている。それは解るよな。モードブラールってスキルはブラックホールを操るんじゃなくて、ブラックホールを自らの体と同化させて暗黒鳥となったんだよ。俺は天空・剣・光・音、それぞれの単体、もしくは複合での能力は操ることは出来る。でもさ、俺はまだこれらの能力と同化はしたことはない。解るか?無限と同化するんだよ。俺は考えが間違っていた。俺に無限の石が合わせてくれるんじゃない、俺が無限の石に合わせるようにするんだ。つまり、自らの能力と同化することで無限の力を引き出せるはずだ。まぁ、やってみるさ。観ていてくれよな。」
俺は心を無にして無限の石と波長を合わせるようにした。魔動石には意思がある。ティナ、キャンティ、マイちゃん、パルス、四人の意思が結合した波長・・・その波長を感じて、俺の波長を同化させるんだ。
今までロックオンやロックオンⅡを散々やってきて、目に観えない状況を感じてきた俺だ。自らにロックオンするようなもので、容易いことであった。
「いくぞ!モードMUGEN!フルスロットルだ!」
俺の体は青白く輝き、気が付くと体は少し大きく成長した感があった。
《カイト~何か体が大きくなったんじゃない?なんでかな?》
「今までの体では限界ゾーンが低かったと思うよ。車でもパワーがあるのはエンジンがやっぱゴツイ。パワーを出すにはそれ相応のエンジンが必要なんだよ。俺が無限に合わせたから無限が俺に求めた体ってわけだ。なんかめっちゃ力が湧いてくる感じがする。」
《カイ、何かやってみてくれ。我も使ってみてくれよな。》
「あぁ、まずはリアトリスにバリアを張らないとな。」
俺はリアトリスの外にバリアを張ってみた。
「こ・これは・・・」
明らかにバリアの質が違う。今までは線香花火のようであったが、これはねずみ花火のように激しく明るい。
俺は試しに光弾を放ってみた。光弾自体もレベルが違う。まるでドリルのような光の弾が一直線にバリアへと向かう。バリアは何事も無かったように光弾を吸収収束させたのだ。
これが無限の力か・・・俺自身のパワーアップが更に進めばもっととんでもないことになるだろう。正に無限・・・
そして、ゼブルをブレスから取り出し構えてみた。ゼブルは何とその身を変化させて、光輝く巨剣となったのだ。想定内だな、俺の状態に合わせて無限の力を発揮するってゼブルは言ってたもんな。
巨剣からは今までなかった波動を感じる。これは、真空・雷・超音波の融合波か?
「真雷波!」
俺はなぜかそう叫び、剣を振り下ろす。
それが自然体であるが如く・・・ブラールが特訓用に用意していた【ハイパーダイヤモンド極】の塊の数々は跡形もなく粉塵と化した。
「スゴイな~!この塊は滅多なことじゃ壊れないから特訓用には最適だったんだケド、一撃でこれだもんな~。デルタの竜騎トルネードを受けても無傷だったのに・・・」
「これもお前のお蔭だ。サンキューなブラール。」
《ブラール、あんたもやるじゃん!あたし、見直したよ。》
《我も驚いておる。ここまでの変化とパワーを出せるとは思わなかったぞ。魔剣として誇りに思う。》
「おっと!そうそうブラール、特訓次第でお前もゲンの昇龍波は出せるハズだよ。あとさ、俺も色々考えたんだケド、お前ホワイトホールも出せるんじゃないか?」
「えっ?昇龍波がオイラにも出来るのか?そのホワイトホールってなんなんだ?初めて聞くぞ。」
「いいか?ゲンの奴はプラズマスターの力があるから、触れたプラズマ系のエネルギーを自らが吸収し使うことが出来る。あいつは空間転移が出来るからな。片手を空間転移させ対象に触れさえすれば、色々なプラズマ系の攻撃が出来るようになっている。だからブラックホール内にあるプラズマ系のエネルギーである昇龍波が出せるんだ。ブラックホール内にあるものならばお前にも使える可能性があるんだろ?で、ホワイトホールとはブラックホールと同レベルの放出する力だよ。放出って意味では昇龍波と被るケド、ポイントはブラックホールとホワイトホールが同レベルの重力ってこと。この二つを同時に出し、相手に当てることが出来たらどうなると思う?宇宙規模の引き込む力と放出する力で挟まれたら、相手の体はまずもたないだろうな。これは俺からの今回の礼だ。まぁ思い付きだからさ、気軽にチャレンジしてみてな。完成したら、ヴァンにも教えてやってくれ。ブレスの念波で伝わるだろう。」
「うん!オイラやってみるよ。ここってめっちゃヒマだからさ、そういう情報は非常にありがたい。楽しみが増えたよ。」
《カイト~疑問なんだケド、ゲンはそうしたら全てのプラズマ系の技が使えるんじゃないの?カイトやヴァンが努力して使えるようになったスキルも使えるんじゃないの?》
「ティナ、確かにゲンの奴はプラズマ系のものに触れさえすれば、そのものを使えるだろう。しかし、あいつのスキルも万能じゃない。スキルっていうのは細かいレベル的な要素があるんだよ。例えば俺の光弾にあいつが触れてもあいつは光弾を使えない。それは俺が光を特殊変化させて、俺にしか出来ない光のレベルを具現化したものだからだ。ゲンが如何に器用だとしても未知のものは作れやしないんだよ。だから昇龍波は単純にエネルギーそのものだから、ゲンは使いこなせているんだ。解るか?」
どうやらティナには難しかったようで、その後は質問が無かった。そして新たな目標が出来たブラールは、ウキウキしながら俺たちを見送ってくれた。
俺たちは再びキャンティの所へ光速移動し、超電磁リングが並ぶ部屋へと立ち入った。
「やっぱここは何回来ても異質な部屋だな。」
《えへへっ!ここで精神修行したら、良いかもね~。カイトの騎気のレベル、上がるんじゃない?》
俺もそう思った。精神的に安定しない場所での瞑想は、その成果も大きいものがある。
「落ち着いたら、それもアリだな。だが、今はファイを復活させてやるのが先決だ。」
《いざ行かん!星々の旅へ!・・・ってカイト、どっから回っていくの?キャンティは順番などないって言ってたケドさ。》
俺たちはキャンティから星々の一族の能力について、軽く事前に情報収集した。やはり、どこからでもいいって訳ではない。
情報は何よりも大切で事前に心構えも出来る。そういえば、ジェニムのおっちゃんも言ってたよな。
「まずはビスマス星のキャンスリーに会いに行くぞ。」
こうして俺たちの星々への旅がスタートした。
一時経過・・・
「違う、違う!何度言ったら解るんだ?ぽんぽん、力学と機械工学が基本なんだよ。これがまずは理解できないとアンドロイドどころか、合体ロボすら絶対に出来ないよ。まずは、お勉強をしっかりすること。気の短いあたいがひとつひとつ丁寧に教えてやってるんだ。チョッとは成果を出してくれよ。」
「は・はい!師匠!ぽんぽん、頑張ってるの。でも、物理学どころか数学も苦手なの。」
キャンティはやれやれといった表情で、ぽんぽんを見守る。フッ!あたいとしたことが、弟子なんてこのウン千年とったことなかったのにな・・・こうして弟子を持つと、やっぱり可愛いものだ。特に出来の悪い子はな・・・
近くではコタローが、どこからか調達してきた忍術の本と経営学の本を山積みにして読み漁っていた。まだ、十五歳でブレスを持つことが出来ないが、どうしてどうして努力家じゃないか。あたいは好きだな。こういった子が・・・
コタローとぽんぽんの近くでは、マロンとマリアが小さい体になって、ちょこんと座り見守っている。そして料理を作っている、もんたの近くにいるマドカも・・・
この三魔獣、生魔獣って言っていたよな。
そういえば、古の魔界文献で見たことある。
【生魔獣は主が決まったら、その主を守ることが使命なり。そして、その使命により絶対的存在へと自然変化するものなり。如何なる生命体も邪をもってこれに触れし時、亡き者とならん。】
この可愛らしい三魔獣が自然変化するのか?
もしこれが真実なら、あたいが守るまでもないな・・・
そんな物思いにふけっている時に、もんたの包丁さばきが心地よい音を奏でる。
タンタンタンタンタ~ン!
まな板と包丁が奏でたハーモニーであったが、キャンティはその包丁使いに一種の才能を見出したのだ。
「おい!もんた!チョッといいか?」
「は・はい!な・なんでしょう?キャンティさん。」
もんたは何かしでかして、叱られるのではないかと内心ドキドキしていた。
「お前、あたいの弟子にしてやるよ。ぽんぽんとは違うぞ。剣術の弟子だ。お前には、剣の才があると直感した。カイにも剣術は教えてやったが、あいつは独自の剣術に目覚めたからな。お前には包丁クラスの剣をあたいが与えてやるよ。工房にお前にピッタリの剣があるからな。どうだ?楽しくなるぞ。」
「僕が剣術を?ムリムリ!僕は包丁しか使ったことないし、まな板の上にある動かない物に対してしか切ったことないし・・・」
「大丈夫だ。案ずるな。ソードマスターのあたいの目に狂いはない!さあて、楽しみが増えたぞ!」
鼻歌交じりでキャンティが自分の工房まで空間転移した後も、もんたをはじめとする三人の愉快な仲間たちはあっけにとられるのであった。
ここはビスマス星。この星はとにかく暑い。太陽の暑さもあるのだが、湿度も高く不快指数はスティール星の比ではない。
そして、虫が多いことでも有名な星で熾烈な生存競争の結果、生き残った昆虫人の星でもある。
とはいえ、人間や魔族も生存しておりお互いに共存しているのである。
超電磁リングを通じて俺たちはビスマス星へとやってきた。
「ふぇ~カイト~熱いよぉ。あたしは炎とかの耐性はあるケドさ、日常の暑さには弱いんだよね。」
「確かに暑い。気温は・・・ゲッ!四十五度かよ!こんな中、歩き回ってたら熱中症になるな。ティナ、ブレス内は涼しいみたいだから転移してろ。」
「うん!ありがとっ!カイト、やっさしい~。」
ティナは俺に言われて、ブレス内に転移した。俺もこの気温で長時間は耐えがたいから、光の薄いバリアを体全体に覆わせることにした。このバリアは薄いとはいっても優秀で何とも快適だ。
太陽の光は入射光、透過光、吸収光の三つで構成されている。透過光をバリアで防げば吸収光もなくなるし、問題ない。
その為には、入射光を出来るだけ反射光に変えていけばよい。こういう時に科学を勉強しておいて良かったと切実に感じる。俺の光のバリアは騎力を使っているが、ゼブルの竜魔気力が失った騎力を補填してくれる。
ビスマス星は気温が高いが酸素濃度や気圧なんかは特に問題ない。食料はブレス内に一応保管してきたが、この星の食料もナカナカ口に合うものが多く驚きだった。
しかし、虫が多いので食事は注意しておかないと放置した食料に虫がたかっているという事態も発生する。話に夢中になっていたティナのクレープに虫が大量にたかっていた時には、ティナが青ざめていた。
流石の破壊竜も大量の虫が寄ってくると弱いらしい。やっぱその辺は女の子だよな。
「ふぇ~ん、カイト~クレープが台無しになっちゃったよ~。」
「俺のはまだ包装を開けてないから、これ喰えよ。俺はいいからさ。」
「えっ!いいの?やった~えへへっ!カイトだったら、きっとそう言ってくれると思ってたよ!わぁ~い、ありがとっ!」
しかし、この星は昆虫人が多い。虫が進化し、この暑さに対応出来るタイプの生物として、昆虫人に自然進化を遂げたのであろう。
魔人や魔王、人化した魔獣は見た目、人間となんら違和感がない。
魔人や魔王はそれが自然体らしいし、魔獣は人化した方が余計な魔力を消耗しなくて都合が良いということだ。
しかし、昆虫人は背中に羽が生えているので一発で解る。それに体皮は人間と異なり、少々硬い。まぁ、見た目は人間の皮ふと変わらないんだケドね。
さて食事もしたし、目的のキャンスリーの所に行くとするか。キャンティは俺のブレスにある彼女の石と星々のスキルの欠片が共鳴して、行き先を示してくれると言っていた。
彼女の石は、元々スキルの欠片を特殊加工して作った物。
キャンスリーのスキルの欠片は水晶のようだが、ホントに共鳴してくれるのだろうか?
俺はブレスを体の表面に出し、無限の石を見つめた。この無限の石は結合してはいるが、キャンティの石も含まれている。
すると一本の光が無限の石から発せられた。
これがスキルの欠片同士の共鳴なのか?
俺は光速で光の指す方向へと移動する。一瞬で最終地点へと到着し、目の前にはキャンティとそっくりな緑色の髪の美少女が立っていた。
「待っていたよ。あんたがカイだね?話は事前にキャンティから聴いている。メタルの欠片が欲しいんだろ?」
「あぁ、俺たちは親友をメドゥーサの呪いから救ってあげたい。あんたにとってメタルの欠片はガーディアンだってことも聴いている。無事にメタルの欠片が揃って親友が復活したら返すよ。だから、俺たちに貸してくれないか?」
まぁ、すんなりとはいかないだろうなと思っていたので、俺はいつでも戦闘態勢に入れるよう気持ちはスタンバイしていた。
ジロジロと俺を物色する彼女・・・口を開いたと思いきや想定外な答えが返ってくる。
「あぁ、いいよ。貸してあげるよ。持っていきな。」
「えっ?ホントにいいのか?助かるよ。ありがとう。ことが済んだらすぐに返しにくるからな。」
「ただし、あたいも保険が欲しい。あんたとは初対面だしさ、あんたが約束を破ってとんずらしないとも限らないだろ?あんたの持っている結合魔動石か魔剣かその妙な石を預けてくれないか?それとも、その可愛い彼女を置いていってくれるかい?」
キャンスリーは不敵に微笑み、俺の返答を待っていた。確かにこいつの言うことももっともだ。
俺は初対面でこいつにとって、信用信頼はない。大切なものを貸す代わりの代償を求める気持ちも解る。
しかし、俺にとって結合魔動石、ゼブル、クロちゃんの石、ティナのどれも手放せないかけがえのないものだ。
「確かにお前の言うことは、筋が通っていて要求も理解出来る。しかし、俺にとってはどれもかけがえのない無二の存在なんだ。解ってくれないか。俺が出来ることで他の事だったら何でもするよ。」
「そうかい、それなら仕方ないね。あたいとバトルをしようじゃないか。もうしばらくバトルはしてなくて、あたいもヒマを持て余してたんだよ。ただし、勝負は生死に関わるレベルまではしたくない。人が死ぬのを観たくもないしな。あんたが戦闘不能になったらあたいの勝ちで、その時はメタルの欠片は諦めな。あたいが戦闘不能になったり、それ以前にあんたのことを認めることが出来たらメタルの欠片は貸してやろう。これでどうだい?」
「あぁ、解った。それでOKだよ。武器は使っても良いのか?」
「ん?いいぞ。あたいにダメージを与えられればいいけどな。あたいも武器は使わせてもらうよ。」
「場所はどうするんだ?ここでやったら、迷惑がかかるだろ?」
「あぁ、この奥にバトルステージがある。ウチら一族は皆、バトルに関わることが多いからな。キャンティの奴も持っているだろ?」
そうなのか?
あいつそんなことは一度も言ってなかったよな。
こういったバトルとか能力の試技をする時は、決まってブラールのいるリアトリスを使っていたからな。
キャンティの奴、自分のバトルステージを壊されたくないから、その存在を言ってなかったのか?
でも、そのお蔭で俺は無限の力を開放して使えるようになったんだけどな。
もし、キャンティが場所を提供してくれたら、無限の力を開放する為の手段まで辿りつけなかっただろう。
まぁ、リアトリスに行かなくなったらブラールの奴、ヒマを持て余して生き甲斐を無くすだろうから今のままでいいや。
さて、そんなことよりもキャンスリーとのバトルだな。
キャンティからの情報では、こいつの能力はテレポート。
瞬間移動はゲンも使えていたが、恐らくそのスピードはキャンスリーの方が上だろう。
武器に関しては情報がないが、ゼブルがいれば問題ない。俺もバトルを楽しむとするか。
俺とキャンスリーとのバトルはこうしてスタートするのであった。




