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第二十一話 限界

やっと半分折り返し完了しました♪

残り半分、楽しんで頂ければと思います♪

ご感想も頂ければ幸いです♪


よろしくお願い致します♪


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 よろしくお願い致します!

 ゲンは暗黒空間リアトリスに空間転移した。そして、俺の名案に驚くのであった。


「そんなことが可能なのか?カイ、お前の科学知識の高さにはいつも驚かされるよ。でも、理論としては試してみるのも面白いよね。」

「そうだろ?俺も聴かれたから言ったケド、ヴァンにも教えておいてやらないとだな。あいつ、こんなことは考えたこともないだろうからさ。」

 俺の提案はこうだ。ゲンが狙う力、プラント。こいつは魔力を限界無しに生産可能らしい。

この力がゲンのものになれば、俺たちにとっても大きなプラスになる。

 現状、ゲンの能力としてはプラズマスターの力と空間転移の力のみである。

 これだけで、プラントの力を持つルギアに対抗できるのであろうか?答えはYESだ!ゲンはプラズマスターの力で、手足をプラズマ系の力で覆うことが可能だ。

 プラズマとは偉大なる力。太陽、光、雷、炎など多種多様で要はエネルギー全般である。ここで一見何の関係もないように感じるブラックホールの特性について考えてみたい。

 ブラックホール、それは大きいもので太陽の二十億倍の質量を持つといわれている。そのブラックホールは物質を吸い込むと同時に強力なジェット噴射もしているのだ。その噴射はプラズマ系のガスであり、宇宙最大級の高エネルギー。

 そう、ゲンがこのブラックホールのプラズマ系のジェット噴射を手から放出していければ、ルギアに対抗可能である。いかに異次元獣の特殊能力が限界無しの魔力生産とはいえ、宇宙規模の高エネルギーに太刀打ち出来るハズがない。

 所詮、個は個なのだ。圧倒的な規模の力には匹敵しない。このことをヴァンにも後日伝えたが、予想通りよく理解出来ていないようだったので、ゲンに再度現物を見せて理解してもらった。ゲンは時間を取り、俺の発案を具現化する特訓にあてていく・・・

 

 俺、ティナ、ファイはゲンと別れて久々の休息を楽しむのであった。ふらりと立ち寄った町にあった焼肉屋。ジュージューと食欲をそそる音と匂いが店内を充満し、たまらない。

「カイト~焼肉なんて、めっちゃ久々だね~。」

「あぁ、そうだな。ファイ、焼肉は初めてか?」

「人間界では初めてだな。だが、魔界にもあるぞ焼肉屋は。どんな肉を使っているのかは、よく知らんがな。」

 俺とティナは、そこを敢えてツッこまなかった。ていうか、あまり想像したくない魔界の焼肉屋・・・何かグロテスクなお肉が出てきそうだからな。

 そんな話をしながら、メニューを見ていると聞き覚えのある声が耳に入る。

「こんちゃん、こっちこっち!ぽんぽんともんた、早く早く~!」

 ふと声の方に目を向けると、何やら団体の宴会が行われているらしかった。ワイワイと賑やかな宴会だなと思っていたら、先程の聞き覚えのある声が俺たちに声をかけてきた。

「あー!カイ発見!ティナ~久々だねー。めいめい今日も元気だよー。」

 ん!この女の子は、闘技場魅和ノ刻の受付をしていためいめいだ。

「一緒にめいめいと焼肉パーティーしようよー。あっ!この三人はめいめいの友達でこんちゃん、ぽんぽん、もんただよー。」

 俺たちが視線をやると、先程呼ばれていた男の子三人がめいめいの席に座っていた。

「初めまして。僕はこんたろ。こっちがぽんたろで奥の奴が、れもんたろ。よろしくね。」

「よろしくなの。ぽんぽんって呼んでほしいの。」

「ぼくは、れもんたろ。もんたって呼んでね。」

 何とも礼儀正しい三人組だ。ぽんぽんは口調が面白いけど。

「俺はカイ、こっちがティナ。そんでこっちの奴がファイ。よろしく。」

「あたし思ったんだけど、なんで皆、たろがつくの?兄弟とか?」

 そうだよな。何で皆、たろがつくんだろ?

 れもんたろが代表して説明してきた。

「ぼくたちは兄弟とかじゃないんだけど、将来三人で何かお店をやりたいねって思って、名前を変えたんだ。」

「そうなの。ぽんぽんたちで、たろずショップを開くの。」

「まだ、具体的には考えていないんだけどさ、二人は僕がこんたろだから、名前を合わせてくれたんだ。」

 

 三人が協力して何か一つのことをしようというのは素晴らしいことだよな。そんな考えをしていたら、周囲が急に盛り上がってきたのだ。

「よっちゃん、おめでとう!」

「この幸せ者!」

「おめでとう!よっきゅん!」

 何やら結婚式の二次会のようで、めいめい達の友達が結婚したそうだ。

「めいめいの友達、よっちゃんが今日結婚したの。カイたちもお祝いしてあげてー。」

「そうなんだ。祝いの席で俺たちなんかが同席してもいいのか?」

「よっちゃんはそんな小さなことは気にしないよー。そうそう、さっきよっきゅんって言ってた子がぺのダンスの家元だよー。」

 そういえば、よっきゅんって聞こえたな。ぺのダンスって何だ?と思ったが、家元まで存在するとなると格式高いダンスなのかも。

「あっ!花嫁さんも登場してきたよー。」

ふと見ると、そこにはキラキラ輝く美しさを身にまとった女の子が登場してきた。

「ミユーちゃん、おめでとう!」

「キレイキレイ!」

「よっちゃん、幸せ者~!」

 めいめいの話によると、よっちゃんというのは男の子のあだ名で、花嫁さんはミユー。

 この席は二人の結婚式の二次会だそうだ。長身でイケメンのよっちゃんとアイドルなみの可愛らしいルックスのミユー。

 何ともお似合いの新婚さんだ。俺たちは焼肉をほおばりながら、楽しい会話を交わしていた。

 ここで、ふとここまで無言だったファイがいきなり口を開く。

「おい、お前たち人間じゃないだろ?」

 こんたろ、ぽんぽん、もんたの三人は唖然としていた。勿論、俺たちも・・・一人、めいめいだけが焼肉をモリモリ食べている異様な光景になったのだ。

「ファイ、急に何だよ~。こんちゃんたちが困惑してるじゃない。あたしたちは招待されてるんだから、そんな失礼なこと言わないでよね~。」

 しかし、この後問題発言をしたファイから意外な真相を伝えられる。こんたろ達三人組は、人生の岐路に立つのであった・・・


 そして、三日後。ゲンは俺が提案した、ジェット噴射のコントロールをマスターした。規模がデカ過ぎるエネルギーだが、流石はゲン。よく三日間でコントロール出来るようななったものだ。

 ちなみにヴァンも同様に、コントロールする特訓をしていったが単独ではムリだったようで、デルタの助けをもって何とか出来るようになったらしい。

 だが、ヴァンには不向きな高等スキルなので、使用されることはなかったんだよね・・・

 やっぱ、色んな面でデルタはスゴい!流石は覚醒魔人だ。

 デルタに聴いたのだが、何でも覚醒魔人は全部で十六人いるらしい。こんなハンパない奴らが、あと十五人もいるのか・・・デルタ一人でさえ、あれだけ手強かったのだ。残りの覚醒魔人とは、あまり深く関わりたくないな、とか思ったことはココだけの話にしよう。


 ゲンはプラントの力を得るべく、ブレスを使ってホットラインを結んだ。ホットラインが指し示した場所まで移動したゲンであったが、わざわざお目当てのルギアの方が出迎えてくれたのだ。異次元獣ってどんだけ暇なのか。

「待ちかねたぞ。お前がココに来るのをな。私がプラントの超魔石をもつルギアだ。久々の客人だ、こちらもせいぜい楽しませてもらうよ。私の力が欲しいのだろう?ならば、お前の力を示してみせよ。」

「これがルギアか・・・ヴァンのように潜在パワーはとんでもないな。」

 挨拶が終わったと思ったら、いきなりルギアは攻撃を開始する。

「魔力炉開放、ブラストウエイブ!」

 ルギアは手から衝撃波のようなものを、ゲンに向かって連弾してきた。ゲンはその行動を観てから、瞬間移動を試みる。ルギアはゲンの瞬間移動に対して、瞬時に対応が出来なかった。視覚に入ってからの攻撃方位の修正を行っていった。

 そして、ゲンは再び瞬間移動でかわす。双方、その繰り返しでルギアの攻撃はゲンに当たることは無く、周囲に爆音だけが鳴り響く。

「そんな攻撃では、ボクを捉えることは出来ないよ。」

「ふむ、そのようだな。じゃあ、これではどうかな。」

 ルギアはブラストウエイブを放ったが、ゲンは瞬間移動で交わす。

 しかし、ルギアはゲンが瞬間移動で現れる所が事前に解っていたように交わされたブラストウエイブを操りゲンにヒットさせたのだ。

「クッ!なぜ、ボクがココに現れると解ったんだろう?」

《ゲン、こいつ魔気を四方八方に張り巡らしているよ。わたくしには感じられます。》

 キールがゲンに対してアドバイスを行った。

《ゲン、私を使いなさい。あのブラストウエイブは視覚化出来ませんが、私ならば感じられるので対応出来るはずです。さぁ、早く!》

 ハルさんは自らの出番を要望し、ゲンはそれに応えた。久しくブレス内に収まっていた、ハルさん。ゲンの騎気を喰らい続け成長したその姿は、明らかに以前までのハルさんでは無かった。

「ほう、剣も扱えるのか。だがな、そんなものじゃ私には勝てないよ。」

 ルギアはブラストウエイブを撃ち放った。今度のゲンはハルさんを両手で持ち、ブラストウエイブに対応しようとしていた。


 ガイイインンン~!!

 金属と衝撃波が激突し、その音だけが周囲にこだまする。

「ブラストウエイブを弾き返して、刃こぼれ一つしていないとは・・・もしやそれは魔剣か?魔力が伴っていないと、私のブラストウエイブは到底弾き返すことは不可能だからな。」

「その通り、これは魔剣だよ。ボクもビックリするほどの成長を遂げているけどね。」

「フッ!そうか、じゃあこいつはどうかな?」

 ルギアはブラストウエイブの連弾をゲンに対して撃ち放ってきた。次々と弾き返すゲン。

 それはハルさんが、自らの意思で動き対応していたがルギアはブラストウエイブを屈曲させて放つようになってきた。野球でいう所の変化球だ。

 カーブ、シュート、スライダーなどその変化は多種多様であり、スピードも衝撃波としては破格のものがあった。ハルさんも必死に対応していたが、流石に苦しくなってか変化が生じたのだ。

 何と!ハルさんは剣身が変形させ、柔軟に屈曲した姿を繰り返し、その変化球並みの全ての衝撃波を弾き返す。それは、しなやかな女性の体の様に・・・元々、ハルさんは半人半獣の女性だったから不思議はないか。

「ほぉ、お前のその魔剣素晴らしいな。私のブラストウエイブ全ての変化にそこまで剣身を変化させることが出来るとは。楽しませてくれるな。」

「いやいや、君の衝撃波も物凄い威力でビックリしているよ。」


《魔剣のハルさんだったから、何事もなく無事に弾き返していたが、生身の体に直撃をさっき喰らった所はかなりのダメージだ。もし、これの連撃を喰らったらマズいな。じゃあ、今度はこちらから行くか・・・キール、ハルさん、特訓の成果を見せるよ!》

 念波でゲンはキールとハルさんにそう伝え、騎気を練り上げていた。

「カイ、ヴァン、お前たちの技を使わせてもらうよ・・・サンダートルネード!」

 ゲンはそう言うと、俺たちの技のパクリ技を行ってきたのだった。まぁ、俺もヴァンもデルタの竜騎トルネードをパクって技が完成したのだ。ゲンにもその権利はある。

 しかし、このトルネード技ってやっぱスゴいよな~。破壊力もスゴいが、自らの能力をフルに使っているからな。

 これを一人で考えたデルタはやっぱスゴい奴だ・・・ヴァンの奴、もたもたしていたら、デルタの奴が痺れを切らして何かしでかすかもしれないぞ。


 ゲンはハルさんを天に向かって掲げ、自らの騎気をコイル状にしてハルさんに巻き付ける。

そして、手からは電流の放出。ゲン、単体では電流の放出は出来ないが、事前に電流に触れてさえいれば、ルギアのスキルで後でコントロールして放出することが可能なのだ。

 ゲンはハルさんを軸にして電磁力で回転を始めた。俺のゼロトルネードとは基本的には同じだ。違うのは俺の騎気の方が高レベルで光の力が使える為、電流も高レベル。

 一方のゲンはそこが俺よりも劣るものの、自らには翼がある為、その分回転力は補えている。

「な・何だその回転は・・・電磁力を使った攻撃か?モーターのコイルを自らで行おうというのか?無茶苦茶だな、お前。じゃあ、私もこれで対応させてもらうよ。」

 ルギアは野球のキャッチャーのような構えを取り、ゲンの攻撃に備える。ゲンの回転力が存分に達し、サンダートルネードは発動した。そして、ルギアの元へと向かっていく。

「来た来た!じゃあ、こっちも行くよ。魔動ブラスト!」

 ルギアはキャッチャーの構えを取りながら、手からは絶えることのない高衝撃波を撃ち放った。

 サンダートルネードVS魔動ブラスト・・・回転技と高衝撃波が激突し、周囲に暴風が吹き荒れる。

「クッ!押し切れないな。ボクのありったけのパワーなのだが、この高衝撃波は凄まじい。カイのようにマウントを取って重力を操作なんてことは出来ないし、デルタのように圧倒的なパワーもない。」

《ホントにカイの奴はスゴい・・・こんな電磁コイルを考えつくか?フツーじゃ考えつかないよな・・・》

 ゲンはルギアにはまだ余力があるとみて、技の解除を試みる。

「なんだ?もう終わりなのか?面白い技だったケドな、私には通用しなかったようだな。」


 魔動ブラストか・・・先程までのブラストウエイブとは比にならないほどの高出力の衝撃波だったな。ゲンは疲弊からか、ハルさんの剣身を地面に突き刺し目を閉じ、しばし考える。

あとこちらの手で残っているのは、【昇龍波】のみか。

 それは、カイが教えてくれたブラックホールパワーの一部。プラズマ系のガスを一気に噴出する高エネルギー波。恐らく、奴の魔動ブラストはこれで抑えられるだろう。

 後は持久戦になるか・・・こちらはブラックホールのエネルギーだ。ほぼ、限界が無いといっても良いがボクの精神力が持てばの話だが。一方の奴の攻撃も魔力を無限に生み出すというものだから、ほぼ限界無しなのだろう。これも奴の精神力の問題か。

 精神力VS精神力であれば、多少はこちらに分があるかもしれないな。さて、いくか・・・

「さぁ、次はどうするんだ?もっと私を楽しませてくれよな。」

「ルギア、次の攻撃で最後にしよう。気が付けば、この辺一帯もボクたちのバトルで荒廃してしまったからね。あまり、周囲に影響を与えたくはなかったが、このレベルでのバトルでは致し方ないか・・・」

「そうだな。だが、この辺の荒廃は安心するが良い。私の魔力で復元可能だ。魔力をある次元のレベルで長時間放出し続けると、物質は復元するのだ。この辺の物質は私の魔力で出来ているのでな。」

「そいつは面白いことを聴いたよ。ならば、思い切ってこのあともバトルが出来るね。」

 ニヤリとゲンは笑みを浮かべたが、疲弊した騎気のレベルは相当なものだ。だが、昇龍波は自分自身の騎気を使用するものではないので問題ない。

「いくぞ!魔動ブラスト!」

「こちらもいくよ!昇・龍・波!」

 ルギアはキャッチャーの構えのまま、変わらずに魔動ブラストを発動させる。

 どうやら、この構えが一番安定していて高出力を保てるようだ。

 一方のゲンは直立のまま、攻撃を仕掛ける。

 手からはブラックホールからの高出力エネルギーのガスが噴出されていく。

 宇宙と個の戦い。これでは個の方の分が悪いと思いきや、魔動ブラストの勢いは一向に衰えないのだ。

 それだけ、高出力を作り続けることが可能なルギア。素晴らしい、それにこの攻防も楽しいものだ。

 レベルが接近するとこういったものなのか。ゲンはこう感じたが、ルギアも同様にそう感じていた。この素晴らしい戦いをもうしばらく堪能したいものだ。


 時間としてどの位経過したであろう。二人の攻撃は足すことも引くこともなく、精神力と精神力との戦いになっていた。

《さて、そろそろ私の出番ね。》

 ハルさんは剣身こそ地面に突き刺さっていたが、柄は天を向いていた。そこから出る魔糸。

それは、ルギアに向かって絡みつく。吸収されるルギアの魔力・・・

 一方、放出され続ける魔動ブラスト。

 このダブルパンチでルギアの体内では異常が生じていた。ルギアは今まで感じたことのない違和感に襲われていた。

 なぜ、パワーダウンしているのかが理解出来ないルギア・・・

 それは、ハルさんの援護射撃によるものであったが、そのことには一切気付いていない。

「こうなったら、これしかないな・・・パーフェクトガード!」

 ルギアはピタリと魔動ブラストをストップさせ、体色が赤褐色に変化した。

「ん?なんだ?奴の体色が赤くなったぞ。」

《ゲン、何かヤバいんじゃないかしら?気をつけてくださいね。》

 この時、ゲンはハルさんの援護射撃にやっと気付いたのだ。

《そうか、そういうことか。ありがとう、ハルさん。パーフェクトガードって言っていたから、恐らく防御系のスキルなのかな?》

《いえいえ、これで、別の意味の持久戦になりましたね。今の所、こちらにアドバンテージがありますね。》

 ゲンたちは念波でお互い話し合い、想いを一つにしていった。

 続けて、昇龍波をルギアに放ち続けるゲン。

 その攻撃に対して、赤褐色のボディーで受け止めるルギア。

《ん?これは、おかしいですね。単なる防御技でなく、もしかしたらこちらのエネルギーを吸収しているのかもしれませんね。》

 それならば、それで宇宙規模のエネルギーにケンカを売っているルギア。どこまで吸収が出来るものなのか、観たいものである。ハルさんは、ここで魔糸での魔力吸収をストップした。ブラックホールのエネルギーを吸収し続けるルギアは余裕の表情だ。

「お前は、よくやってるよ。私にパーフェクトガードを発動させるとは。だがもうそろそろ、お前のエネルギーも尽きる頃だろう。お前のエネルギーは私が吸収しているからな、有効利用させてもらうよ。」

「あぁ、じゃあ出力を上げていくよ。もっと吸収してみろよ。ボクもどんどん発散させていくからさ。」

 ゲンのエネルギー放出量が三倍に膨れ上がる。

「嘘だろ?フツウなら、もうそろそろ限界の頃だ。お前のエネルギーは底なしか?」

 ゲンの言動に慌てるルギア。限界無しのゲンのエネルギーを喰らいつつ、自らも魔力を生産し続けているのだ。

 発散することが現状出来ない体内のエネルギー量は、限界点を突破する勢いであった。

「お前のエネルギーは、底なしなのか?私はもう限界だ。このままでは体が暴発してしまう。私の負け負け、降参だ。」

 ゲン、キール、ハルさんは心の中でガッツポーズとハイタッチを行った。

「お前のエネルギー量、ハンパ無かったな。お前の体はどうなってるんだ?エネルギーの圧縮が可能なのか?」

「ボクはエネルギーのストックはしていないよ。宇宙のブラックホールとリンクして、そこからエネルギーを引っ張っていたんだよね。だから、君は宇宙のブラックホールのエネルギー量を吸収しようとしていたってわけ。どんなに容量があっても、それは流石にムリでしょ?」

「そうだったのか。納得したよ。お前は私の力を活かしてくれると確信した。今のお前の能力は高くはないだろう。その限られた能力を活かそうとしていく姿は素晴らしいよ。これを受け取ってくれ。そして、力を活かして私にも高みを見せてくれないか。」

 ゲンはルギアからプラントの超魔石を受け取り、それをブレスにセットした。

「よし、残りは阿修羅の力だ。これはまだ焦らなくても良いな。今はプラズマスターとプラントの力を使いこなせることが優先だ。キール、ハルさん、これからも頼むよ。」

《ゲン、予定通りですね。わたくしも組み手などで協力できることもあると思いますから、何でも言って下さいね。》

《私もここ最近、成長を感じます。どうやら、ゼロとレイには差を付けられてしまったようですが、私は私です。これからもゲンと共に歩みますよ。》

 三人は互いの意思を確認し、前を向いて突き進むのであった。


「僕たちが人間じゃないって、どういうこと?」

 こんたろが疑問に思うのは、ムリも無い・・・ぽんぽん、もんたも何言ってるんだという感じでファイの顔をジロジロと見るのであった。フッと溜息をついたファイは言葉を続ける。

「お前たち三人の両親は人間だと思われる。しかし、お前たちの先祖には妖怪の血が混じっているのだ。故にお前たちには、あやかしの力が備わっているのだぞ。まぁ、もっともそんな事は微塵も感じていないだろうがな。」

 こんたろ、ぽんぽん、もんた、この三人が妖怪と人間の血をひいている妖人だというのか?

見た感じ三人は、のほほんとしていて全くそんな気配はない。

 しかし、長いことファイと一緒に行動を共にしてきた俺は、こいつの魔眼に間違いはないと断言できる。

「そんなこと信じられないよ。僕は人間だし、ぽんぽんやもんたも人間だ!」

 薄っすらと涙を浮かべながら訴えかける、こんたろ・・・俺たちにはどうすることも出来ないが、ファイはそれを証明するようだ。

「解った解った。じゃあ、証明してやるから表に出ろよ。」

 俺たちは表に出て、ファイの行動に注目した。

「出でよ!クリオ!」

 ファイは、天に向かってそう叫ぶと時空の狭間から、ゆうに七メートルはあろうかという狼を召還したのだ。

「こいつは魔狼のクリオ。オレのペットだが、あやかしの血が流れし者で適合者には魔石と忠誠を誓う奴だ。人間には適合しないし、魔族ではオレ以外には適合しない。オレには解るんだよ。こんたろ、いやコタロー!お前がクリオの真なる適合者だ!」

 クリオはファイの言葉を聞くがいなや、すぐにこんたろの傍に近づき、その額からは魔石がこぼれ落ちる。

「何か訳わかんないよ。僕はコタローなんて名前じゃないし、ブレスも持っていない。まだ十六歳になっていないからね。」

「お前は風魔一族の血をひいている。本名はコタローであり、あやかしの血を引いてもいる。これが真実だ。オレの魔眼には全てが見えるんだよ。育ての親はお前が両親と思っている二人だがな。」

 コタローは困惑していたが目をキラキラさせて、ぽんぽん、もんた、めいめいが話に混じってきた。

「ぽんぽんもあやかしなら、魔狼みたいなペットがほしいの。」

「ボクもボクも!家にいても何か孤独だから、カッコいいペットが欲しいよ。」

「めいめいも!めいめいも!めっちゃカッコいいペット出してよー!」

 三人が同時にファイに対して、我も我もと意見を言ってきた。

「解ったよ。ぽんぽんはマリ、もんたはマトを召喚しよう。お前たちは風魔一族とは無縁だが、先祖は風魔一族に仕えていたようだぞ。めいめいは人間だからムリだな。」

 それを聞いたぽんぽんともんたは、めっちゃ喜んでいた。自分たちにも魔狼のようなカッコいいペットが傍につくのだ。

 一方のめいめいは、ぶすくれていた。自分だけ仲間はずれされたようで寂しかったのであろう。

「ファイ、めいめいにもチャンスをやってくれよ。この子には光る何かを感じるよ。その何かを魔獣が感じ取ってくれるかもしれないじゃん。な!頼むよ!」

「カイがそう言うのならば、めいめいにもチャンス位はやろう。お前には確かに他の人間には無い、何かを感じるからな。お前の根底にあるものにマッチした奴を召還してやる。だが、そいつがお前を選ぶかどうかは解らんぞ。いいな。」

「わーい!ありがとー!めいめい、頑張るよー!楽しみだなっ。」

 三人は浮かれていたが、次の瞬間表情が一変するのであった。

「出でよ!マリ、マト、エンマ!」

 ファイがそう叫ぶと時空の狭間から出てきたのは小柄なタヌキ、ウサギ、サルであった。

「これが魔獣なの?全然強くなさそうなの。」

「そうだよね。マリとマトって何なの?」

「キャー!お猿さん、かわいー!めいめい、お猿さんがいいよー!」

 ファイは三人の疑問を払拭すべく説明を行う。

「マリとは魔狸、マトとは魔兎、エンマとは猿魔のことだ。今はお前たちのレベルに合わせた形態になっているようだがな。本来の姿はクリオのように体長七メートルはあるんだぜ。」

 俺はふと考えた。ん?猿魔って・・・

「おい、ファイ!猿魔って地の力を持つ、あの猿魔じゃないのか?そんな大物召還しちまって、めいめい大丈夫なのか?俺やヴァンが一時、地の力を得ようと考えていたんだぜ。」

 ファイは俺の言葉聴いたが、視線はめいめいと猿魔にいっていた。

「キャー!お猿さんかわいいよー!ねぇ、めいめいと友達になってくれる?めいめい、こう見えて強いんだよー。」

 猿魔は最初、めいめいのことは無視していたが、次第に彼女の中にある何かを感じ、心を開いていくようになっていた。

「こいつは驚いた。猿魔の奴、めいめいに心を開きやがったぜ。カイ、オレの見る目も満更じゃないだろ?」

 ファイはドヤ顔で俺の方を見ていた。

 一方、ぽんぽんともんたも魔狸と魔兎に認められ、それぞれ魔石をゲットしていた。勿論、めいめいも地の魔動石をゲットして、早速ブレスにセットする。

「コタロー、ぽんぽん、もんた、お前たちはまだ十六歳になっていないから職業はついていないな。いいか、コタローは忍者としてブレスを、ぽんぽんともんたは武闘家としてブレスを十六歳になったらゲットしろよ。オレの魔眼を信じろ。そうすれば、未来はバラ色になること間違いないからな。」

 ファイはそんな大げさなことを言っていたが、確かにこいつの人を観る目は間違いない。

 だから、俺は安心して口を出さないでいた。

 

 一方のめいめいは、今小さくなっている猿魔を肩に乗せて、よっちゃんとミユーにみせに行ったのは言うまでもない。

 とんだサプライズであったが、最後にファイが一言コタローに伝えていた。

「お前、忍者となってレベルが上がれば将来、クリオととんでもない事が出来るようになるぞ。まぁ、精進するんだな。」

 意味深な言葉だったが、これ以上ここにいて問題をおこしたくなかったので、俺たちはめいめい達に別れを告げ、その場を去った。

 魔人と魔王では、能力にかなりの格差がある。また、魔王はその圧倒的力により、いざこざを望まない。日々の平穏を望み、退屈な日常をいかに楽しむかを模索している。

 一方の魔人は魔王に大きな嫉妬を覚えている者がいるのも事実である。なぜ、自分にはその資質がないのか。もし、魔王に勝る魔人が出現したら魔界の勢力図は如何に変化するのか。

 勿論、平和を望み現状に満足している魔人が多い現在の魔界。現在の勢力図としては、大魔王→覚醒魔王→魔王→覚醒魔人→魔人→魔獣と言われている。

 但し、一部の魔獣は魔人や覚醒魔人を上回る者も例外として存在する。ティナは魔獣としてその典型であるが、上だの下だのは全くもって関心が無い。また、覚醒魔王は特殊な経路で魔王になった者らしい。大魔王オメガの側近である覚醒魔王プサイは、オメガの意思を魔界に反映させるのが主な仕事だが、他にも重要ミッションがあるようだ。

 そんな魔界勢力図であるが、魔人ルーツはいつも不満に思っていた。力が欲しい、それも圧倒的な力を!この世に生を受けたからには、周囲から崇拝されたい。

 力を誇示することで、生を実感していきたい。そのような考えで日常を過ごしていたが、その魔力としては下級魔人の部類である。

 そういった不満を感じていたルーツは、いつしかスチールの力を得ていた。それは想いの強さが引き起こしたものなのか、突然変異的な発生なのかは解らない。スチールの力とは強奪の力・・・

 そういった欲望と力を有していたルーツは行動に移る。

 スティール星の宝石屋から、次々と魔石が消えていた・・・

 自分の能力に近い名前の星をターゲットにしたのも、スティール星を調査した結果、魔石や魔動石が多いと判明したからであった。

 そして、魔石から魔力を吸収していく。魔石の能力までは奪えないまでも、その魔力は容易にルーツのものになっていく。

 また、魔獣自体が襲われルーツに喰われていった。喰われた魔獣の魔力も、ルーツに魔力として取り込まれていった。

チリも積もれば・・・で少しずつ、力をつけていくルーツ。

 しかし、俺たちはまだその野望に気付いていない・・・

 

 俺、ヴァン、ゲンは各々、ペースは違えど順調に目的の能力を得ていた。ゲンはそんな中でも、SNSでの情報には関心を持っていた。

《カイ、ヴァン、チョッと相談があるんだ。》

 ゲンがプラントの力を得た後、ゲンから念波で俺たちに問いかけがあった。

《どうした?何か問題でもあったのか?》

《俺たちにとって問題なのか?何なら、クロちゃんやキャンティにも相談するぞ。》

 俺もヴァンも話の内容は解らなかったが、ゲンがわざわざ振ってきたのである。何かあったに違いないと思ったのだ。

《実はSNSの情報で、最近宝石屋から魔石が盗難されたり、フォロワーだった魔獣の存在が確認できなかったりといった現象が起きているんだよ。それが、たまたまというレベルではなく、結構な量の魔石や魔獣の行方が不明ということらしい。これって、何かの事件の前兆じゃないのかな?》

《あぁ、魔石が宝石屋から消えているというのは俺も耳にしていたよ。でも、そんなに件数が多いのか?魔獣の行方不明というのは初耳だケドな。》

《単なる魔石泥棒じゃないのか?あれは、魔獣が認めた人間しか能力は使えないだろ?だったら、宝石的な価値しかないんじゃないのか?魔獣の件は、俺サマにはよく解らんが。》

 俺たちの話を聴いたキャンティから、念波が入る。

《あのな、魔獣が消えているっていうのは確かにそうみたいだぞ。あたいも魔力があちこちで消えているのを不自然だと思っていたんだ。魔石に関しては、あれには魔力が込められて保存されているからな。宝石泥棒であれば話は別だが、もし犯人の目的が魔石の魔力にあるのであれば話は別だ。魔力強奪という目的ならば、魔獣から直接魔力を奪っているのかもしれんな・・・》

《ねぇねぇ、魔力って魔糸で奪えるじゃない?魔獣の存在が不明だったり、魔石が盗難になっているのであれば、犯人は魔糸が使えなくて直接魔力を集めているってこと?あたしには考えられないケド、そんなことするのは下級の魔獣か魔人が犯人じゃないのかな?》

《そうだよ、上位の魔獣や魔人はそんなセコイことしないって!ましてや、上位魔獣や魔人は強さの誇示をしないよ。ウチはそう思うな。》

《わたくしのフォロワーさんである魔獣が数百人、アカウントが消滅しているんです。心配でゲンに相談したら、こういった話になりました。まさか、魔力を奪える魔獣か魔人が何かを目論んでいなければ良いのですが・・・》

 数百人分の魔力って、かなりの量になるよな。

 しかも、プラスして大量の魔石からの魔力って・・・

 俺たちは沈黙していたが、俺は少し安心していた。それは、クロちゃんからの念波が無いことである。余程のことでないとクロちゃんは無言なのだ。

 それにクロちゃんは困ったことがあったら、念じてくれって言ってたしな。

 今はそんな状況ではないということだ。

《なぁ、それは問題かもしれんケドさ、めっちゃ慌てることでもないと思うよ。俺たちの力も上がってきているしな。かといって、もし俺たちの仮説がホントだったとしたら、それは早めに潰しておいた方がイイ。そいつがどんな奴かは解らんケド、力が低いうちに越したことないからさ。》

 俺たちは相談して、三方に分かれリサーチすることにした。もし違和感を感じたり、事件現場を目撃したらゲンに念波で伝え、集合し一気に叩くという作戦だ。

 俺たちは念波を終えて、作戦開始しようとした瞬間にファイが止めてきた。

《カイ、ヴァン、ゲン・・・ファイだ。勝手にお前たち念波に入らせてもらったぞ。もし、お前たちの仮説通りであれば、犯人は恐らく下級魔人のルーツで間違いない。奴は魔界でも有名な盗人で、力の誇示をしたがっていたのはオレたち魔王の中では有名だった。奴は力を集めていき、オレたち魔王に挑戦する予定なのだろう。スマナイ、下界の魔獣や人間に迷惑をかけてしまったようで。》

 おいおい、俺たちは念波のグループ化の中で話をしていたのに、そこに入り込んでくるとは何てデタラメな奴なんだ。

 事前に念波のグループに登録しておかないと、勝手に入り込むことは出来ないって以前キャンティから聴いていたのに・・・

 まぁ、ファイはいつも常識外れだからな。今更、驚くことでもないか。

 あっ!忘れてた。ファイがゲンとスポーツスタッキングの勝負を希望していたんだった。

《ファイ、ボクとスポーツスタッキングの勝負をしたいんだったよね?今度会ったときにでもしょうよ。この一件が片付いたらさ。》

《あぁ、そうだな・・・楽しみにしておくからな。皆、今から合流するぞ。急だが合流したら、ルーツの奴の所に乗り込むことにする・・・》

 ヴァンもゲンも意味が解らなかった。勿論、俺も・・・でも、ファイならルーツの所在を感知出来るのかもしれないなとは思っていた。

 俺たちは魔力や騎力を出さないようにして、よくかくれんぼをしていた。

 魔力や騎力を少しでも出してしまうと、すぐにファイやティナにその所在が解ってしまうからだ。

 しかし、ファイは俺たちが騎力や魔力をどんなに抑え込んでいてもすぐに見つけ出してしまうのであった。恐らくこいつには、何でもお見通しなんだろうと最初は思っていた。

 子供たちがよくする、かくれんぼ・・・

 ファイ流のかくれんぼは、一味違うのだ。

 人や魔族には、体温や心臓の鼓動が必ずある。それらも含めた雰囲気には、各々個性があるというのだ。だから、ファイは一度会った奴が今どこにいるのかが解るという。


 このかくれんぼの秘法が、俺たちを混乱させるとは夢にも思わなかった。

 まさか・・・ね。

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