第二十話 躍動
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俺とティナには剣を振うとその先にわずかな【色】が観えてくる。それは、剣の入射角によって色が異なる。
俺たちは天空の力を使いし者、要は大気変化を感じる力も一級品なのだ。恐らくパルスの奴が放っている超音波は、大気に歪が生じていると思われる。
その歪みを意識して目視していると、【色】が観えてくるのだ。パルスとのバトルで俺は一気に畳み掛けられてしまったので、その確認は出来ていなかったがティナがその色を認識していた。
超音波にも種類が存在していて、一種類ではないと思われる。
俺が剣を振っても複数の色の出現がある。これは何を意味しているのか?剣を振うと大気にわずかな歪みが生じる。それが色となって表れる。
俺の仮説はこうだ。超音波には超音波をぶつければ良い。そうすれば、超音波は相殺されて消滅する。条件としては、同じ波長の超音波であることと同規模力量以上をもった超音波であること。
波長には色が存在する。例えば、虹の色の種類は波長の表れだ。それは音波においても同様で、音波の波長によって色が発生する。通常の人間ならば、音の波長が生じる色は可視出来ない。
しかし、俺とティナは天空の力を司る特殊な存在だから、それが観えてくる。
パルスが発生する超音波の波長と同じ波長をゼロとレイちゃんで発生させれば良い。但し、剣一本では超音波ほどの強さの剣速は出すのは難しい。
そこで、ゼロとレイちゃんの登場だ。今、ゼロとレイちゃんの魔力はほぼ同レベル。この同レベル二本の魔剣同士をぶつけ合う。
その時に生じる大気の歪み強度が超音波と同レベル以上であれば良い。歪みの強度が同レベル以上になれば、後は波長の種類を合わせれば良い。これに関しては色としての可視が俺には出来る。
その色を出すパターンを体で覚えていき、バトル本番で柔軟に出していけばパルスの超音波は破壊出来るハズ。
ガキーン!キーン!ガッキーン!
ゼロとレイちゃんの魔力衝突で発生する衝撃音。それと共にどんな色が出るのか、俺とティナは確認をしていった。ある程度まで色のパターンを出す方法はマスターした。
しかし、人間楽な方が良いに決まっている。超音波と同レベル以上の波長を出しつつ、俺は騎気を剣二本にまとわせた。その騎気のコントロールによって、色のコントロールが出来るようになったのだ。
こちらの方が時間短縮になって、より速く発動することが出来るのだ。最大の問題は、パルスの奴が超音波を発動させて俺が瞬時に対応出来るかどうかである。
相手の神経をサーチして、その情報から瞬時に対応するというロックオンⅡは、奴には機能しなかった。究極のロックオンⅢは考えてはいたが、まだ練習も不足しているので今回は使用しない。
それに大量の騎気を使用するので、そのリスクも高い。
ならば、どうするか・・・奴は音速での移動が可能だ。俺が天空の力でスピードを上げても、奴のスピードが上だ。ん?奥の手があったじゃん!これしかないな!
俺は自分で勝手に納得し、作戦を固めた。何とかパルスの超音波に反応して、瞬時に波長で対応していく。この時間稼ぎをしていくことによって、短気であるパルスは焦りからの雑な攻撃になる。
そして、頃合いをみて俺の奥の手発動だ!俺たちはファイに魔界からスティール星に転移してもらった。
ブレスのホットラインを使いパルスの元へと移動する。
「よぉ、久々だなぁ~。もう来てくれないかって思ってたよ。少しは強くなったのかな?さぁ、今度は楽しませてくれよ。」
俺は黙ってゼロとレイちゃんをブレス内から取り出し、両手で二刀流の構えを取った。
「もしかして、その剣が僕への対抗手段なの?ガッカリしたよ。そんなものは屁の役にも立たないって。他にも手はあるんでしょ?」
《おい、我たちをバカにするでない。我は魔剣ゼロ、そこいらの剣と一緒にしないでもらおうか。》
《そうよそうよ!私はレイちゃん。カワイイ名前でしょ?私たちは、スゴいんだからね。後で吠え面かかないでよね!ゼロ、いくわよ!》
「えっ?剣がしゃべった?魔剣って、もしかして僕が崇拝するキャンティ様の作じゃないよな?魔界きってのカリスマ鍛冶師キャンティ様・・・あの科学工学スキルと美貌は反則レベルだからな。」
「お前、キャンティ知ってるのか?そうだよ、この魔剣二本はキャンティ作だし、俺のブレスにはキャンティの魔動石、剣の石がある。あとな、超電磁リング二つとおかめちゃんという仮面もあるぞ。」
俺はここぞとばかりに、キャンティと仲が良いことを言い放った。こいつ、いつも余裕ぶっこいていたからな。たまには、こっちが優位に立たないと面白くない・・・じゃなくて、こうやってこいつの集中力を少しでも欠かないとな。
しばらく、唖然としていたパルスであったが、気を取り直して話を始めた。
「お前、スゴイな~。あのキャンティ様のこと呼び捨てだし、キャンティ様作の魔剣やら魂の欠片とも言える魔動石なんかも持っているのか。見直したよ。魔動石を持っているってことはキャンティ様に認められた証だからな。でもさ、それと勝負は別物だ。面白い!盛り上がろうぜ!」
そうパルスが言うと、一気に戦闘モードに変わり音速で動き回る。一応、事前にロックオンをしていたので、その移動箇所は把握済みなのだ。
だが、いかんせん速さはピカイチで光速を封印された俺にはビハインドであった。俺は神経を研ぎ澄まし、二本の魔剣には騎気をまとわせていつでも応戦出来るように構えを取る。
次の瞬間、赤と青の超音波が俺目がけてやってくるのを感じた。俺はゼロとレイちゃんの魔剣二本を使い、その波長で二つの超音波を打ち消した。
成功だ!机上の空論ではあったが、科学の力は偉大だ。予測通りの結果に少しホッとする俺。
「おやおや、こいつは驚いた!その二本の魔剣、やっぱ只者じゃなかったね。流石はキャンティ様だ。じゃあ、こいつはどうだ?」
俺の周囲八方から八種類の超音波が襲い掛かる。ゼロとレイちゃんは俺の指示に合わせて、八種類の波長を撃ち放ち、超音波全てを打ち消した。
「こいつでもダメか。お前、スゴイな。よくこの短期間でそこまで対応出来るようになったな。感心するぞ。でも、これならば防御不可能だ。受けてみな。サウンドアロー!」
パルスの前には、無数の音波が矢状になりズラリと並ぶ。ゼロとレイちゃんは何やらコソコソと話していた。
俺は、このサウンドアローは想定外であった。まぁ、他にも技があるだろうとは思っていたが、まさかこんなに無数の矢が放たれるとは思ってもいなかったのだ。
でも、想定外の時になったら、奥の手を使うつもりだったので俺はそのように考えをシフトしていた。
さて、奥の手を使うとするかな・・・次の瞬間、ゼロとレイちゃんが俺に念話で伝えてきたのだ。
《カイ、我とレイでさっきの無数の衝撃波を放つ。これにお前の目一杯の気弾を連続でぶちかますのだ。》
《そうしたら、わたしたちの衝撃波が気弾とコラボしてあいつのサウンドアローに飛んでいき、破壊していくって感じよ。どう?名案でしょ?早速行くよ。ゼロ!カイ!》
俺はコクリと頷き、こいつらの提案にのった。お前らスゴイな・・・俺が考えもしない戦法を考え付くなんて。ゼロとレイちゃんが俺の手を離れ、無数の衝撃波を生み出す。その姿は剣舞となって、観るものを釘付けにするに十分であった。
俺も遅れを取らないように無数の気弾を衝撃波に向かって撃ち放っていった。ゼロとレイちゃんの華麗な剣舞に気を取られたのか、パルスには一瞬のスキが生じた。激しい爆音と共に無数のサウンドアローが木っ端みじんに破壊される。
「フッ!思わず見とれてしまったよ。でも、あの剣舞は見事だったよ。さて、お遊びはここまでだ。これで終わりにしようか。サウンドスピン!」
パルスは自らの腕を左右にピンと伸ばし、コマのようにして回転を始める。こいつは、アレしかないな・・・
「ヘルスピン!」
俺も両腕を左右にピンと伸ばし、コマのようにして回転を始める。しかし、パレスは音速での回転が可能であり、これで超音波を連続で放たれたら俺に勝算は無い。
要は回転不足であるし、そもそも超音波を気弾で打ち消すのはムリな相談だ。とりあえず、同じような行動を取っていけば、何か活路が見出せるかも的な感じのノリでやったのだ。
自らの騎気を使って回転するのみじゃ、やはり回転力には限界があるな・・・この状態で気弾を連続で放っても、その威力はたかが知れている。そんな考えをしていたら、ゼロとレイちゃんが念話で話しかけてきたのだ。
《おい、カイ。我の柄を地面に突き刺し、レイを両手で地面に対して水平に持つのだ。》
《カイは騎気を全開で開放して!それは、回転のみに使ってね。》
俺は二人の念話を聴いて確信した。こいつらは、科学を使った超音波発生を自分たちなりに応用しようとしていると・・・
俺は回転を一旦止めた。それを観たパルスも音速での回転を止めたのだ。
「どうした?諦めたのか?僕と同じ行動で超音波を相殺しようとしたんだろ?もっとも、あの回転力じゃムリだったケドね。」
「パルス、サウンドスピンやってみろよ!俺たちも違った方法でお前に勝ってやるぜ!」
俺はゼロに言われた通り、ゼロの柄を地面に突き刺した。ゼロは自らの形状を変形させる。肉厚だった剣身は薄く幅広に変形し、魔糸は俺に絡みつき大量の魔力を送ってくる。
《ゼロ、この大量の魔力は何だ?これではお前がパワーダウンしちまうだろ?》
《カイ、案ずるな。先程までこっそりとパルスの奴から、魔糸を使って我とレイで大量の魔力を奪っておいたのだ。あいつは我たちの剣舞に見入っていたので気付いていないようだがな。我の剣身を薄く幅広にしたのは、考えがあってな。》
《私も奪った魔力を使って目一杯高速回転するからさ、カイも回転だけに意識を向けてくれ。超音波の波長は私が見極めて、ゼロとのクラッシュ時に調整するからさっ!これで音速並みの回転になる計算だよ。》
そうか、そういうことか!ゼロの変形も大気に振動を出すにはその方が適しているし、こいつら考えやがったな!
「ヘルスピン改!」
俺はゼロとレイちゃんの案にのり、言われた通りに回転力だけに意識を向けた。
ゼロから送られてくる大量の魔力のお蔭で、俺の想定を上回る回転力を出せている。
レイちゃんも同様に魔力を使って、俺を軸にした高速回転を始めた。その回転がピークに達した時に、ヘルスピン改は予定通り音速に達していたのだ。
そして、ゼロとレイちゃんの連続クラッシュの発動。
その衝撃は大気に超振動を与え、超音波連撃に変化したものがパルスに向かっていく。サウンドスピンの超音波連撃と俺たちの超音波連撃のクラッシュ!
辺り一面に激しい爆音が鳴り響き、俺たちもパルスもその爆風で吹き飛ばされた。
俺はヤバいと思った瞬間にガードをかけていたので、特に衝撃波の影響も受けなかった。
一方のパルスは予想外の展開に対応しきれなく、倒れたままピクリとも動かない。
「おい、パルス。しっかりしろ!これくらいの爆風、問題ないだろ?おい、ゼロ、レイちゃんお前たちの魔力をパルスに返してやってくれ。」
《カイ、いいのか?復活したら、今度はお前がやられるかもしれぬのだぞ。折角、お前が有利になるように我らがしたことがムダになるが・・・》
「ゼロ、レイちゃん、俺は勝つことが全てじゃないって思ってる。確かに勝つために必死こいて戦略を駆使して戦うことは大事だよ。でもな、こいつの魔力を回してもらった時に気付いたんだ。こいつの魔力には全く邪気がないってな。純粋なこいつに俺は敬意を表したい。だから、こいつの魔力は返してやってくれ。頼むよ。」
《カイ、お前あんな状況でよく相手の魔力の質まで感じ取ったな。私も思ったよ。こいつの魔力は、純粋に戦う楽しさを追及して上がっていったものだって。ゼロ、良いな?》
《了解した!我も外見では何かチャラい奴かと思っていたが、意外と真っすぐな奴だったしな。》
ゼロとレイちゃんは魔糸を使って、パルスに魔力を還元した。
魔力が戻ったことで、魔気が充実してきたパルス。しばらくすると起き上がり、俺たちに話しかけてきた。
「スゲ~な!ビックリしたよ。まさか、こんな戦法を取ってくるなんて。僕はてっきり、最後は真空状態を作って超音波を無効化する作戦でくるのかって思ってたから。」
「お前、超音波の弱点が真空状態って知ってたのか?俺は科学には少しは詳しいから、最終手段としては考えてたケドな。剣舞と最後の攻撃はゼロとレイちゃんが自分たちで考えて俺に進言してきたんだよ。」
「剣が自らの意思で考え行動してきたというのか?しかも、あんな高等技術を?流石はキャンティ様作の魔剣だ。まぁ、僕も魔力を奪われていたのは気付いてたんだケドさ、あの剣舞に見入っちゃって。まぁ、魔力くらいイイかなって。ハッハハハ~。」
「お前、もしかして勝負なんかどうでもいいって思ってなかったか?俺が天空の力を持っている段階で真空状態も覚悟していたみたいだし。」
「ん?まぁ、やっぱし負けるのは残念だケドさ、それよりも楽しみたかったんだよ。天空の力ってどんなにスゴイのか。マイちゃんが認めた人間がどんだけの奴なのか。キャンティ様作の魔剣ってどんな感じなのか。僕もマイちゃんと同じで、このウン万年間は魔動石を人間には託さなかった。だって、どんなに強くても魅力的には感じなかったし、裏表ある奴も多かったからさ。」
パルスもマイちゃんの事を知ってたのか・・・激レアの力を持つ二人だ、知っていて当然だよな。パルスもマイちゃん同様、人間不信だったんだな。
だから、自分の力を人間には託してこなかった。俺はこいつに認めてもらえたのか?
特に大したことは出来ていないし、最後の方はゼロとレイちゃんのお手柄だったしな。
「なぁ、カイ。何でお前、僕に魔力を還元してくれたんだ?僕から魔力を奪って勝ったから、罪の意識か?」
「俺は途中で勝負よりもゼロとレイちゃんの成長が嬉しくなっちゃったんだよ。何かワクワクしちゃってな。こいつらは確かに自我を持っていた。でもさ、俺やキャンティが嫌がることは絶対にしない。今後、どう成長して俺を驚かせてくれるのかなってな。」
その言葉を聴いたゼロとレイちゃん。無言ではあったが、俺には二人の心のガッツポーズが感じられた。
「そうか・・・お前、意外とイイ奴だな。いいよ、僕の力使っても。何か、お前ら楽しそうだし。ところで、ずっと気になってたんだケドさ、そっちの彼は人間なのか?魔力や波動力、全く感じないんだケド。お前に同行しているから、友達なんだろ?レベル低そうだしな。君、危ないからさ~あまりこういった場所には来ない方がいいよ。」
あちゃ~こいつ言っちゃったよ。ファイはこういうの気にしない方だケド、何かイヤな予感するんだよな・・・
「ありがとな、オレのこと気にかけてくれて。でも、見くびるなよ。オレはやる時はやる男だから。お前の最大の攻撃は何だ?さっきのサウンドスピンって奴か?オレにもやってみてくれよ。オレには通用しないって証明してやるからさ。」
「な・何を言うんだ。あんなのまともに人間が喰らったら、精神の崩壊どころじゃ済まないんだぜ。止めとくよ、カイの友達にそんなこと出来ないしな。」
俺はファイが、超音波に対してどんな対応をするのが観てみたかったので、パルスにこう言った。
「パルス、こいつの言う通りにしてやってくれよ。一度言い出したら、引かない奴なんだ。責任は俺が取るからさ、目一杯頼むよ。」
「解ったよ。カイがそう言うならな。僕の奥義を見せてやるケド、後悔するなよな。サウンドボール!」
パルスはファイを球状の超音波で閉じ込めた。それを繰り返す事、五回。要は五重の超音波壁でファイは囲まれてしまったのだ。
ひとたび、それに触れると無限の超音波連鎖が始まり、パレスからの解除がない限り収まらない。
俺がやったように剣二本を使って大気に振動を与え、超音波を作り出すという作戦は現状、ムリである。ファイには魔槍キュベルがあるのみ。
「さて、ここで僕が外部から超音波をぶつけたらどうなるか。サウンドボールは一気に連鎖をして中にいる彼に襲い掛かるよ。さぁ、どうする?」
「フッ!オレを誰だと思っていやがる。」
ファイは両腕を水平に広げたと思ったら、それを一気に自身の目前でパーンと打ち鳴らす。礼手の如く手と手で発したその一音は、ただの一音ではなく大気を振動させ俺たちが立っている地面にも大きな亀裂を生じさせたのだ。
パルスの作った五重の球状の超音波壁は、何事もなかった如く一瞬で消滅してしまった。
「バ・バカな!僕のサウンドボールが、あんな礼手一発で消滅してしまうなんて。しかも、五重も一気に・・・あんた何者だ?只者じゃないだろ?」
「オレはカイの親友だ。こいつはオレの中で最高の人間だ。こいつはいつもティナや魔剣たちに守られているが、最終的にはオレがついている。カイと一緒にいると楽しいぞ、今もお前に対するカイの言動は素晴らしかった。まぁ、過去のオレはヒマしてた単なる魔王だったがな。」
それを聴いたパルスがフリーズした。
「おい、ファイ。お前が正体をバラしたから、パルスの奴フリーズしちまったじゃん。あいつに攻撃される前に正体をバラした方が良かったんじゃないか?お前に粗相しちまったって思ったから、あいつカチンコチンになってるぞ。」
魔獣である自分が、雲の上の存在である魔王に対して失礼極まりない言動をしてしまったとフリーズするパルス。
「まぁ、お前の攻撃もナカナカ面白かったぞ。
だけどな所詮、波動は波動だ。その波動をかき消しちまえば、なんてことはない。オレも波動を出そうか?マジでやったら、大方の奴は分子崩壊しちまうかもしれんケドな。」
「ファイ、それ位にしといてやれって。お前はそんなバトルよりも、より楽しく生きていく方が興味あるんだろ?今度、ゲンとスポーツスタッキングが出来るチャンスを作ってやるからさ。」
「カイ、スポーツスタッキングって何だ?スポーツの一種なのか?ゲンはそれが上手いのか?」
「スポーツスタッキングっていうのは、プラスチックのカップを積み上げたり崩したりするんだケド、そのスピードを競うスポーツだ。ゲンはな、それのチャンピオンでスティール星のナンバーワンだったんだぞ。俺は何回も挑戦したケド、まるで歯が立たなくってさ、一回も勝てなかったよ。お前がゲンに勝てたら、俺よりもレベルが上ってことだ。」
「それ!頼むよ。ワクワクするな~!後で練習に付き合ってくれよな。あっ!ルールもあるんだろ?それも教えてくれ。パルス、オレは忙しくなったから、じゃあな。お前さ、もし強さを求めるんなら、今の攻撃方法にこだわらないでさ、波動の質を変えて体にダメージを与えることや精神攻撃も出来ると思うぜ。カイ、早く行こうぜ。」
「ま・魔王ファイ様、申し訳ありませんでした。アドバイスまで頂いて、ありがとうございます。このパルス、強さにはこだわっておりませんが、この地を守る者として自らの精進に励みます。人間は未だに信用が出来ないと思っておりますが、カイの仲間は信用出来ると確信致しました。カイ、これを受け取ってくれ。そして、平和の為に僕の力を使ってくれ。」
俺はパルスから、音の魔動石を受け取った。
それをブレスにセットする。
「ティナ、ファイ、ゼロ、レイちゃん、最初は【天空】【光】【音】での結合魔動石を考えてたケド、今は【天空】【光】【剣】で斬滅極の結合魔動石が出来てるからな。音の力は天空の力と相性がイイから俺にとって、絶対プラスになる。うまいこと使いこなして、斬滅極の力をより活かしていくよ。」
俺は意気込みを皆に伝えて、キャンティの工房に移動しようとしていた。しかし、ブレス内で想定外のことが起きたのだ。ブレス内では振動が始まり、斬滅極の石と音の石が結合していこうとしていた。
慌ててブレス内のキャンティの石に呼びかける俺。
「おい、キャンティ。俺の結合魔動石と音の魔動石で、再び結合魔動石に変化しそうな感じだぞ。一回、結合魔動石になっても更に進化していくことは有り得るのか?」
《カイ、あたいのブレスのプログラムには結合魔動石の回数は組みこんでいないんだよ。っていうか、もはや色んな面であたいの想定を超えた現象が起きている。ヴァンの風炎の結合魔動石誕生にもビックリしたしね。だから、何が起きても不思議じゃない。相性の良い力ならば、石はどんどん進化していくと思うよ。》
なんと!ブレス作成者の予想を上回る現象。こんなことが起き得るのか?
でも、俺は密かに想う・・・これって、単に石の相性だけの現象じゃないのでは?石の主である魔獣や魔人と、人間との絆的なものの強さが引き起こした現象なんじゃないかなって気がする。
キャンティ作成の魔剣は、成長し続けるって言ってたしな。同じ作者のブレスも成長していっても不思議ではない。
そして、ブレス内での石の結合が完了した。天空・光・音・剣・・・この四個の魔動石が結合し誕生したのは、【無限】の石。
石の表面には無限の文字がハッキリと表示されていた。無限って、限界無しってことなのか?確かにこの四個の魔動石の特性には波動という共通点がある。
光の波動、音の波動、剣の波動・・・これらの媒体が大気、つまりは天空だ。俺は激レアといわれていた、光と音の力を手に入れた。
人間不信であった、マイちゃんとパルスが人間である俺に力を託してくれたのだ。そして、ソードマスターでカリスマ鍛冶師でもあるキャンティの信用も得た。
キャンティの奴は格別高いプライドの持ち主。ティナも含めて四人と俺の絆は強い。その結果誕生した無限の石・・・
これって使い方によっては、とんでもないことになりそうだ。能力の試技はリアトリスでやろう。周囲に被害が出てはいけないからな。
あっ!その前にファイにスポーツスタッキングの基礎を教えてやらんといかんかった。
ゲンは瞑想していた。自分が望む力は今の所三つ・・・
プラズマスター・プラント・阿修羅だ。ゲンの考えとしてはこうだ。プラズマスターの力でプラズマ系の力をコントロールし、プラントの力で魔力を絶えることの無く生産をし続ける、そして阿修羅の力で俺とヴァンの力を存分に引き出しそれを融合させていく。
これが出来れば、ゲンの理想通り無敵のチームが出来るのだ。
但し、それには俺とヴァンの力が圧倒的な状態まで成長していなければならないが・・・
プラズマスターの力は何とか手に入れることが出来た。
しかし、プラントのルギアと阿修羅のイプシロンは一筋縄ではいかない。イプシロンと接触するのは、まだ時期尚早だ。
イプシロンは阿修羅の力を有し、その力は図りし得ないと耳にする。
問題はルギアである。ルギアはプラントの力を有する。それは生産工場の様に魔力を絶えることなく作り続けることが出来る能力。ボクにはルギアと対決すべく攻撃力が無い。あるのはプラズマスターの力と空間転移の力のみ。
ここはカイに相談だな・・・
《カイ、相談がある。ボクはプラントの力を狙っている。奴は魔力を限界無しで作り出すことが出来る厄介な奴だ。対してボクはプラズマスターの力と空間転移の力のみしかない。どのように接触したら良いか、何か名案はないかな?》
《プラズマスターって、手足がプラズマ系に覆われ攻撃防御が可能になるんだろ?だったら、お前暗黒空間リアトリスに来いよ。そこで名案を教えてやる。で、ついでと言っちゃなんだが、ファイとスポーツスタッキングの勝負をしてくれよ。じゃあな。》
ファイとスポーツスタッキング?ファイって魔王のファイ?何でまた?・・・
まぁ、名案があるって言っていたので、とりあえず行ってみるか・・・
ゲンは暗黒空間リアトリスに空間転移した。そして、俺の名案に驚くのであった・・・