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第十六話 俺流

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 よろしくお願い致します!

 ここまででもヴァンとデルタの戦いで、激震が幾度となく起きていた。

 しかし、事前に俺がセットした【光のガード】と【雷のガード】のお蔭でリアトリス外には何ら影響がなかった。これが無かったら、リアトリス外にも少なからず影響があったかもしれない。

 ここまでは順調に予測の範疇でことが進んでいる。後は俺次第、そういうことだ。


「さぁ、こちらの準備はいつでも良いぞ。デルタ、お前は少し休憩を取らなくても大丈夫なのか?」

「カイ、案ずるな。私がこの程度の疲労やダメージで不利になると思うか?先程までの疲労やダメージはもうすでに回復済みだ。心置きなく戦えるぞ。」

 俺はデルタの状況を探ってみた。

 確かにヴァンとの戦いで生じたハズの疲労やダメージは全回復されている。流石は覚醒魔人・・・

「じゃあ、こちらからいくぞ!光弾と雷弾の乱れうちだ。」

 俺は指から光と雷の弾丸をデルタに向かって乱れうちした。光速でデルタに光弾と雷弾がぶち当たる。

 スピード自慢のデルタでも秒速三十万キロメートルの光は流石にかわすことが出来ないのは当然だ。光弾は光の粒子が刃の如く切り裂くように加工した光の弾。雷弾は雷を凝縮したもので一億ボルトのダメージを与える雷の弾。

 この二種類の弾丸を打ちまくる俺。

 予測では光のスキルは無効化されてしまうだろうというのがあったので、これはダメ元で有効打は期待していなかった。ただ、光のパターンと雷のパターンのどちらも有効打にならないのかを確認したかったのだ。


 ヴァンは疲弊していた。

 デルタとのバトルで波動力を使い果たし、その残量は空っぽになっていた。

「お前、よくやっていたぞ。ここまでの力があるとは思わなかったし、よくぞ炎の力をここまで応用出来るようになったの。」

 クロちゃんはヴァンに対して称賛してくれた。それは、決して甘口な評価ではない。口を開けるに値しない場合、クロちゃんは無言になるし相手にもしない。

 敢えて言うならば、無言放置・・・

「そうそう、あのフェニックスは特に良かったぞ。あれだけは波気をしっかりとコントロール出来てたしなっ!」

 ヴァンはギョッとした。いつの間にか隣にいる少年。見た目、八歳位であろうか?笑顔がカワイイ彼。何なんだ?こいつはいつの間に俺サマの隣にいやがったんだ?

 全く気配を感じなかったし、波気を感じることが出来るって只者じゃねぇな・・・ヴァンは魔気や波気は感じることが出来ないので、彼が魔族なのか人間なのかは解らない。

 しかし、彼が人間ではない可能性が高いことは予想された。何故ならば、リアトリス自体が特殊でフツウの人間では中に入ることが容易ではないからである。


 ゲンに以前聴いたことがある。

 魔界に存在するリアトリスは人間の心を闇におとしいれる・・・と。

 例外としては魔族が認めた者は同行を条件にその闇化を免れることが出来るらしい。そんな特殊な空間にこんな少年が?

 魔族なのか、魔族と同行してきた人間なのかは不明だが今はカイとデルタのバトル観戦に集中したい。

 目の前でスタートするバトル。カイの光弾と雷弾がデルタを襲う。

 しかしヴァンはその瞬間、無意識にクロちゃんと謎の少年を引き寄せ、覆いかぶさる。直後、激しく爆音が響き渡り、それがヴァンの体にも襲いかかる。


 ドガーン!ドーン!ドーン!

「ウッ!!クッソ~!!」

 カイが放った光弾と雷弾はデルタにダメージを与えることなく、難なく全てを弾き返した。

 その弾き返した攻撃が三つほど、ヴァン達に向かってきたのである。波動力を使い果たしていたヴァンには、それを回避すべき手段が無い。あるのはリンと共に鍛え上げた体一つと不屈の精神のみ。

「ふぅ~何とかやり過ごすことが出来たぜ。しかし、カイの奴こんな攻撃デタラメ過ぎるだろ。俺サマだったから身体硬化のお蔭で何とか無事だったが、それでも光弾は肉体を激しくえぐるし、雷弾は破壊力がヤバすぎるだろ。」

 それにしてもカイの攻撃、俺サマの身体硬化でさえこれだけのダメージを与えるのかよ。信じられんな・・・傷の修復にどんだけかかるやら。

「イヤ~ヴァン。助かったよ。ワイがこんなの食らったら、旅の手記を書く前にあの世行きになっちまう所だったよ。」

「オイラも助けてもらって、サンキューな。でも、何でまたオイラを助けてくれたんだ?お前の知り合いでもないし、さっき会ったばかりなのに。」

 ヴァンは二人に礼を言われ、顔を赤らめていた。ブレスからはリンが出てきて、ヴァンの代わりに説明をする。

「あのね、ヴァンはいかついケド、こう見えてめっちゃイイ奴なんだよ。損得で物事考えないっていうかさ、すぐ危険が迫っているのに自分だけ助かろうなんて奴じゃないんだ。命の重さは誰もが一緒だろ?」

「バカ、リン!ベラベラしゃべるなよな。俺サマはそんなんじゃねぇ。たまたまだよ。たまたま体が反応してお前たちに覆いかぶさっただけだって。おい!少年。ここは危険だから早いとこ遠くへ行け。じゃあな。」

 ヴァンは本音を言わなかった。本音はリンが言った通りである。

 が、ヴァンはそれを認めることはしない。男は黙って行動あるのみと思っているからである。

「おい、ヴァン!お前のこと、気に入ったぞ。オイラもお前たちの旅に連れて行っておくれよ。足手まといにはならないからさ。」

「何でお前みたいなチビッ子を俺サマが面倒見なけりゃならないんだ?冗談じゃないぜ。強い奴がイイなら、カイと一緒に旅をしたらイイだろ?あいつは俺サマよりも強いし、頭もイイ。な!そうしろよ。」

「カイは強いし、頭もイイ。人間性がイイから黙っていても人が寄ってきて協力してくれるだろう。でも、オイラはヴァンの不器用だが真っすぐな人間性が気に入ったんだよ。お前はまだまだ強くなるし、未知なる可能性がある。」

 自分のことを理解してくれるのが、今まではカイ、ゲン、リンとグリフォンだけだったヴァン。出会って間もないこの少年にそこまで言われたのだ。興味を抱かないわけがない。


 俺は自分の予測と結果が同じだったことで逆に安堵した。自分の考えにズレはない。さて、どうする?目の前の強者に光の力は通用しない・・・ワクワクしてくるな。

 余力がある内はワクワクした戦いにはならない。自分の手の内を少しずつ出していき、このバトルを楽しもう。でも、さっきのヴァンとのバトルの時に出していた風の力。なんか特殊な感じがした騎気だった。

 おっと!そうだ!俺には困った時の知恵袋、ワイの石があったのだ。

《おーい!クロちゃん、チョッと聴きたいんだがこいつの騎気なんだケド、何か特殊な感じがする。風の力も独特っていうか、フツウの風と違うんじゃないかって思うんだよね。どうだ?何か解るか?》

《よく感じられたものだ。スゴいな、カイくん。デルタの風は【太陽風】そのものだ。科学に詳しい君のことだから、太陽風は解るかな?だから、騎気も特殊で当たり前。高い次元の騎気でなければ、太陽風はコントロールしきれないからな。》

 なんと、こいつの風は太陽風だったのか・・・太陽風っていうのは、磁気を帯びた超高速のプラズマ風。何でも太陽から生まれた風で時速百万キロメートルらしい。

 光のスピードには勝てないケド、十分早いスピードだ。そのスピードと磁気を帯びた風じゃ、ヴァンに勝ち目は無かったな。でも、この力を是非ヴァンに持たしてやりたい。この太陽風の力とヴァンの炎でとんでもない戦闘力になるぞ。

 で、俺が勝てる方法は・・・無い!

 だって、太陽だよ太陽!太陽から生み出されたプラズマ風に俺の天空の力じゃ勝てないだろう。

 ゼロトルネードでも、やっぱ太陽のパワーには勝てないよな。現状、ゼロトルネードはMAXの二十パーセントのパワーしかだせないのだ。

 それ以上の出力にしたら、ゼロがもたない。

ゼロが覚醒したり、レイちゃんと合剣したら、それ以上の出力にも耐えることが可能だろうケドな。今は「たられば」の話を出しても仕方がない。

 考えろ!考えるんだ俺・・・

 ここではクロちゃんには質問しない。それは俺のポリシーに反するからだ。どうしたら、勝てるかを知るのは生死をさまよった時以外では必要ない。

 もっとも、俺は細胞全てが消滅しない限りは不死身なんだケドね。

 難局を苦労して乗り越えてこそ、達成感があるし成長していけるというものだ。ロックオンを使っていけば、デルタの攻撃を全てかわすことは可能だろう。

 しかし、かわしてばかりでは勝負に勝てやしない。考えがまとまらないまま、デルタの攻撃を受けることになる。

「先程の攻撃、見事であったぞ。二種類の光系の攻撃、どちらも高レベルだった。だが残念なことに私には光系の攻撃は通用しない。もうすでに耐光効果を持ちあわせているものでな。ダラダラとバトルをしていても仕方があるまい。私の最高の攻撃である竜騎トルネード、受けてみてくれ。お前ならば、この技に対抗出来る何かをしてくれそうな期待感をもっているぞ。」

 おいおい、勝手に期待感を持たないでくれ。一応、対抗策は事前に準備しておいたケドな・・・デルタの騎気が膨れ上がる。

「竜騎トルネード!」

 俺も遅れることなく騎気を高める。

「ゼロトルネード!」

 ブレス内からゼロを取り出し、それを両手で持ちながら天にかざす。騎気をコイル状にしてゼロの周囲に巻き付け、電流を騎気に最大出力の十パーセント放出する。ゼロを軸にして電磁力が発生し、回転を始める。

 それを観て笑みを浮かべるデルタ。

「フッ!こいつもトルネード技を・・・面白い、非常に面白い、打ち砕いてくれようぞ!」

 デルタの竜騎トルネードは、太陽風を使って磁気のパワーを活かした技だ。脅威の力を持つ破壊竜ティアラの血とデルタの勝負への計りしえない執念が引き寄せた新たなる力・・・

「おっと!トルネードVSトルネード!こいつは楽しめそうだ。ヴァンはどっちが勝つと思う?観た感じ、オイラはデルタの方に分があると見たけどな。」

 ヴァンは無言で戦況を見守る。謎の少年の眼力は相当なものだ。もしかしたら、デルタの方の力が上なのかもしれない。

 しかし、ヴァンはカイを信じる。親友としてではなく、一人の男として・・・


 う~ん、デルタのトルネード・・・

 近くで観るととんでもないな。太陽風の磁気が思いのほか回転に力を加えていやがる。まぁ、当たって砕けろの精神でいこう。実際にゼロが砕けてもらっては困るんだけどな。俺は回転しながら考えていた。

 この技の威力を上げるにはどうすれば・・・試技の時には雷を付帯させて回転の先端に威力を出した。

 しかし、今回は光系のスキルはデルタに無効化されてしまい役に立たない。一つ思いついたのは光速での移動は可能だ。その圧倒的なスピードでデルタの後方に回り、後方の足元から一気に突撃する方法。

 これならば、勝算は十二分にあるだろう。何故ならば、この技のウィークポイントがそこにあるからだ。

 回転の先端に威力が集中するあまり、後方の足元が手薄になってしまう・・・というかガラ空きなのだ。下級の攻撃であればデルタの太陽風の磁気によって、後方からの攻撃でもその威力で吹き飛ばしてしまうだろう。

 しかし、デルタと同レベルの威力であればそこに活路はある。

 だが、例え十二分な勝算があったとしても、俺はその手段は絶対に取らない。

 勝てば良いという単純なことではないのだ。男として破壊竜の相棒として、竜人の想いを真っ向から受けなければならない。

 それが、竜人デルタがずっと抱いていた破壊竜ティアラへの想いだからだ。

 

 ならばどうする?

 そうこう考えていたら、ついに両トルネードが激突してしまった。俺の光の力による電流を使った磁気とデルタの太陽風の磁気の衝突。

 バチバチと激しく磁気を周囲に飛ばしながら、俺たちは最高の時間を共有していた。

 これがデルタの力・・・遥か古代の破壊竜の血がもたらした力なのか。

 スゴイな・・・

 無限に溢れ出す太陽風と磁気はとてつもないパワーだ。

《カイト、スゴイね。これがあたしのご先祖様の力の一端なのね。あたしたちも力を上げていこうよ。ゼロ、二十パーセントまで大丈夫だよね?一気にいくよ!》

《あぁ、我もこの痺れる感じがたまらない。魔剣として生まれ変わり、ここまでの緊張感と圧倒的なパワーの持ち主に出会えたことに感謝するぞ。》

 俺たちは電流をMAXの二十パーセントまで一気に引き上げた。

 高電流がもたらす激しい磁気がデルタに襲い掛かる。

 一方のデルタもまだ余力があったようで、その磁気に負けずと太陽風の磁気レベルを上げてきたのだ。

《嘘だろ?俺たちの電流二十パーセントでも全く引けを取らないなんて、なんて奴だ。これ以上はゼロに負荷はかけられない。》

「これがお前たちの限界かい?素晴らしいが残念だ。私はまだ余力があるよ。これが古の破壊竜MAXパワーだ。一気にいくよ。」

 デルタの太陽風の磁気が一気に五倍ほどに上がったのだ。

 俺たちは必死にこらえたが、徐々に消耗して打ち負かされるのも時間の問題だと感じていた。

 超回転には超回転以上の回転で立ち向かえば撃破出来るとは思うが、今の俺たちの回転力はこれが限界だ。

《カイト~何とかならないの?このままじゃ負けちゃうよ。ゼロ、電流をもっと上げられないの?》

《うむ、我もそれは考えたが、体がもたなければ同じこと。遅かれ早かれ我は崩壊する。これまでか・・・》

 俺は頭をフル回転させて、現状分析を行った。今の俺たちに出来ることはまだないのか?もう全て出し尽くしたのか?


・・・あるじゃん、まだやれていないことが!

《時間が無い、短的に言うぞ。ゼロ、マウントを取れ!ほんの少しでいい。ほんの少しの角度でいいからデルタよりも上部で回転するんだ。今はあいつと並列して回転してるだろ?それだけ踏ん張ってやってくれ!その後は俺に任せてくれ。》

《うむ、了解した。我の底力、見せようぞ。後はカイ、任せるぞ。》

《なんかよく解んないケド、ゼロ、カイト負けないでね!》

 ゼロは必死に魔力を開放して回転しつつ、何とかデルタのマウントを取ろうとする。

 激しい磁気が衝突しあい、磁気弾となって周辺四方に拡散した。

「あんなの食らったら、磁気で体が正常に保てなくなるんじゃねぇか?俺サマの体、もつのか?クロちゃん、坊主、俺サマの懐にまた入れ!」

「ヴァン、大丈夫だよ。今度はおいらがお前たちを守ってやるぞ。出でよ!ブラール波!」

 謎の少年の前には異質で今まで観たこともない黒い球状の塊が現れた。決して大きくはないが、何やらとてつもない塊だとヴァンはとっさに察知した。次の瞬間、カイとデルタの衝突で生じた磁気弾が三人の前に飛んできた。

「うわ!来た!やべぇ。」

「だから、大丈夫だって。」

おびただしい磁気弾は黒い塊に吸い込まれ、何事もないように収束した。

「えっ?今、何が起きたんだ?磁気弾が消えたよな?この黒い塊は何なんだ?ブラール波って言ってたよな。」

 謎の少年は得意気に説明する。

「これはブラール波。おいらの得意技でブラックホールの塊だ。全てのプラズマ系のエネルギーや少量の物質なら、吸い込んで暗黒世界に葬ってくれるぞ。あまりに巨大な物質は吸い込めないケドな。どうだ、スゴいだろ。」

 こいつ、とんでもないものを出せるな・・・

 ブラックホールってホントにあったんだな。こんなことが出来るなんて、こいつ人化した魔人か?とてもじゃないケド、人間にはムリな事だし、でもどう見てもこいつは人間にしか観えないしな。

「お前、魔人か?スゴい技だな。ビックリしたぞ。まだ小さい少年だとばかり思っていたが。お前の名前は何なんだ?教えてくれよ。」

「おいらの名前?物心つく頃には、この暗黒空間リアトリスの守護をおいら一人で任されてからさ。あれから、もうウン万年間経っていて名前はつけられて無いよ。」

「えっ?そうなのか?じゃあ、お前は今日からブラールだ。俺サマたちの友達になってくれよ。お前、人を観る目はあるし笑顔もカワイイからすぐに人気者になれるぞ。」

「ブラールか・・・まぁ、ブラックホールの略でブラール波ってつけただけだケド、おいらには合っているかもな。よろしく頼むよ。」


《クッ!なんてパワーなんだ。マウントどころか、もう我は消耗してきて魔力の限界が見えてきたぞ。申し訳ない・・・カイ、ティナ。》

《泣き言を言うなんてあんたらしくないんじゃない?やっとあんたたちの念話にわたしも入ることが出来るようになったよ。》

《レイちゃんか?今、のんきなことを言っている場合じゃないんだ。なぁ、ゼロの力になってやってくれ。何かいい方法はないか?》

《仕方ないなぁ~カイの頼みじゃね。ゼロ、わたしの魔力を魔糸で全部吸い取って!それを使いなさい。早くしな!時間ないんでしょ?》

《わ・解った。では、いくぞ!》

 ゼロは言われた通りにレイちゃんの魔力を魔糸で吸い取り自分の魔力として使っていった。

《ん?これはどうゆうことだ?ゼロ、お前よりもレイちゃんの魔力の方が上じゃね?いつの間にかお前、レイちゃんに魔力追い越されてんじゃん。》

《当然でしょ?わたしはキャンティの魔剣よ。天才は一気に開花するものよ。ゼロ、まだまだわたしの魔力残ってるよ。早くしな!》

 

 こりゃ驚いた・・・

 いつの間にか、レイちゃんはゼロの約二倍の魔力にまで成長していたのだ。

 ゼロの立場ナシ・・・

 そのお蔭で、今は九死に一生を得たんだケドね。レイちゃんの魔力を吸収していったゼロ。その魔力は今までとは段違いで一気にパワーアップした。

「こ・これはどうゆうことだ?まだ、お前たちには余力があったのか?こっちはフルパワーだっていうのに。」

 徐々にゼロの力がデルタの力を押し返していき、わずかにマウントポジションを取っていった。

「よしゼロ、良くやった。ティナ、いくぞ!俺たちの周囲の大気重力を千倍にするぞ!」

 一気に俺の体重五十キログラムが千倍の五十トンに変化する。マウントが取れれば、その圧倒的な重さはそのままデルタにのしかかり極大な力となる。

「バ・バカな・・・こんなことって。」

 一気に俺たちはデルタの上部から、レイちゃんの激しい魔力と圧倒的な重量で完勝したのだった。

 イヤ~レイちゃん様様だったよな。勿論、ゼロも頑張ってたケド、マウント取れたのレイちゃんのお蔭だもんな。

 しかし、この短期間でゼロの魔力を上回って約二倍にまで成長するとは・・・

 レイちゃん、どんだけスゴい奴なんだ。ゼロ、お前の今後に期待するぞ。頑張れとは言わない。ゼロは十分に頑張っているし、そもそも頑張れ!とか大丈夫?とかいう言葉が俺は好きではない。

 頑張れ!って応援しているようで、非常に抽象的な表現だからだ。

 大丈夫?ていうのも、本人が大丈夫でも他人からしたら大丈夫ではないことも多々あり、こちらも抽象的な表現だ。

 俺的にはゼロとレイちゃんの力は均衡している位が丁度良いと思っている。どちらかが圧倒的に上回っていると下の者は立場的に苦しくなるものだからだ。


 リアトリスの地面で横たわっているデルタ。こいつは不死身なので、ダメージで死亡とかいうことはない。

 リアトリスの外には二重のガードが張っていたので、外の魔界にも被害は生じていない。

 バトルを鑑賞していたヴァンやクロちゃんも無傷で言うことなしだ。


 俺たちの大勝利!

 ゼロは一人落ち込んでいるみたいだケドな。まぁ、切り替えの早い奴だから、すぐに立ち直ってくれることを願うのである。

「クッ!ここまでのダメージは想定外だ。お前たちはスゴいな。パワーを全開にした時にはもう確勝したつもりであったよ。」

「イヤ、お前は一人でよくやったよ。俺たちは皆で協力した結果だ。俺一人ではお前には絶対に勝てなかったしな。」

「謙遜するな。お前の望みを言え。約束だ、ひとつ望みを叶えてやるぞ。ただし、ムリな望みは聴けぬがな。」

 デルタは苦笑いをしながら、俺たちの望みを聴くと言ってくれた。

 

 俺は当初の目的を伝える・・・

「デルタ、お前の風の力。ヴァンに託してくれないか?ヴァンはお前には敗れたが、お前の能力が加われば無類の強さを発揮すると思うんだ。太陽風と炎のコラボ、俺は観てみたい。頼むよ。」

「了解した。この風の力、ヴァンお前に託そうぞ。お前とバトルしていた時にな実はお前の能力や可能性に惹かれるものがあったのだ。よろしく頼むな。」

 デルタは風の魔動石をヴァンに手渡した。風の魔動石をブレスにセットするヴァン。一瞬、ブレスが唸るような感じがした。

 それは俺が天空の力があるが故に感じたことなのかもしれないが、ブレス周辺の大気が確かに揺らいだのだ。

 結合魔動石のような極の能力ではないが、このコラボは必ずデカいものになると俺は確信していた。

「あの~おいらはブラールっていうんだケド、さっきヴァンと友達になったんだ。それでおいらも一緒に旅に連れて行ってほしいって頼んだんだケド、ダメかな?」

「あんたはこの暗黒空間の守護神なんでしょ?勝手に持ち場を離れたら、大魔王様に怒られるよ。」

 デルタがダメ出しをして、この話をストップさせた。大魔王ってやっぱ存在するのね・・・

 一度会ってはみたいものだが、人間風情がそんなことを言うものじゃないって怒られるのがオチだな。

「だよな~ちぇ~。仕方ない、ヴァン、これを持っていってくれよ。おいらの魔動石だ。お前においらの力を託すよ。おいらは暗黒の力を持つブラール。たまには話しかけてくれよな。この暗黒空間リアトリスってなんせ暇すぎてさ~頼むな。」

 えっ?ヴァン、これは棚ボタじゃん。

 風の力だけでなく、暗黒の力も手に入れるとは・・・

「あぁ、俺サマたちは友達だ。ブラール、お前の能力、正義の為に役に立てると約束するぜ。」

「おいらはヴァンの損得考えない行動やこれからの成長が楽しみでお前においらの力を託したんだ。一緒に夢を観させてくれよな。」

「ブラール、ウチがついてるから大丈夫だって。ウチとも一緒に楽しい話をしような。あっ!デルタ、お前もチームヴァンの一員だからな。ついて来いよ。」

「わ・解った。よろしく頼む。チームヴァン、今は四人なんだな。」

 お~い、いつからチームヴァンなんて名称がついたんだ?

 まぁ、こんなのは言ったもん勝ちだからな。

 ヴァンの性格上、こういったものの方があっている感じもするし、リンに任せておこう。

「よし、じゃあブラールとはここでお別れだな。俺とも友達になってくれよな。あと、ゲンっていう奴もいて俺たちは同じ目的で動いているからよろしくな。」

「ゲン?あぁ、魔界にも何回か来ているっていう人間がそんな名前だって耳に入ってるよ。何でもプラズマスターの力が欲しいって情報を集めているとか。」

「そうそう、ゲンはプラズマスターの力を目指しているって言ってたね。でもさ、カイト~ブレスがあればプラズマスターの力とはホットラインが作れるんじゃないの?」

「あぁ、確かに。でも、ゲンのことだ。きっと、プラズマスターの力を手に入れるには何かもっと情報が必要だって思ったんじゃないかな?」

 ここでデルタが思わぬ意見を言ってきた。

「プ・プラズマスターだって?それは異次元獣で超魔石の持ち主。炎、電気、光、雷、太陽など全てのプラズマをコントロール出来るとか。異次元獣は人化も出来るし、我々魔人とは比較にならないほどの気の持ち主だぞ。気をつけろとゲンに伝えておいてくれ。」

《デルタ、情報をありがとう。ボクたちはブレスを通じて念波が出来るから、情報の共有も早いんだ。君、強かったね~。カイとヴァンの強さにも驚いたケドさ。》

「な・なんだと!お前たちはそんなことまで出来るのか?ゲン、異次元獣にはあまり近付くな。魂を取り込まれたりする奴もいるらしいぞ。奴らは魔族だが、魔獣や魔人とは考え方が異なる。人間の魂に興味がある連中なのだ。」

 魂って・・・ちと変わった奴らなんだな。

 じゃあ、魂と金属で構成されているゼロたち魔剣も興味を持たれたら、ヤバいんじゃないか?

 俺の考えはティナ、ゼロ、レイちゃんに念話で伝わった。

 

 念話と念波は違うと思われる・・・

 念波は波長を合わせたグループ回線的なもの。

 念話は心のグループ回線じゃないかと俺は思っている。俺たちが使えている念話は、念波よりも早く情報が伝えられるからだ。

 若しくは、念波の上位版の通信手段なのかもしれないな・・・

《ボクもSNSなんかを通じてプラズマスターの情報をいくつか知ることが出来たよ。そろそろ、ボクも始動するよ。まだブレスにはキールの石しかないからね。それなりに勝算はあるから心配しないで。》

 

 ゲンはそう言うと念波から外れてしまった。俺たちはデルタからの情報を聴いた後なだけに一抹の不安にかられたが、ゲンの器用さと話術なら問題ないと思うようにしたのだった。

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