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第十話 目標

●「二人のブレス」全40話 配信していきます

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●続編「二人のブレス ゼータの鼓動」執筆中です


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 LINEのホーム→スタンプ→二人のブレス 検索 で出ます


 よろしくお願い致します!

 誰も知らない結合魔動石の作り方・・・それはこの後、キャンティ先生から告げられる。


「おっと、三竜姫がきっと心配しているであろう。とりあえず、戻るとするか。」

 俺たちはそれもそうだなと思い、来た道を戻ることにした。

 工房入口付近にいるティナたちは俺たちの姿を確認すると、ホッと安堵の表情を見せた。

「キャンティ、カイトに変なコトしなかったでしょうね?」

 ティナは俺の表情や態度を疑いの目で凝視しながら、キャンティに問いかける。

「あたいはフツウに施術をしただけだ。三人のブレスは無事にブレス改に仕上がったぞ。」

 そうキャンティが言ったものの、不信感をもったティナたち三竜姫はブレス内に転移した。

 これで俺たちの考えはティナたちに筒抜けになる。決して問題ある行動はしていないし、変なことも考えていない・・・ハズ。

「さて、結合魔動石の作り方だが、恐らく三竜姫もその存在自体は知っていても作り方までは知らないと思う。一度ブレスに石がハマったら、通常は外れないようになっている。例外はブレスに五つまで石がハメられるが、六つ目をゲットした際に不要になった石の上から新たな石を上乗せする。そうしたら、不要になった石はそのままブレス内の格納庫に収納されるのだ。」

「それは初耳だね。ボクらは六つ目の石をゲットしたら、その中から五つを選ぶことが出来るとは知っていたけど・・・」

「正直、並みの武闘家ならば五つの石が限界なのだ。六つめの石をゲットしようと思うと魔獣の方から武闘家を避けてしまうか、バトルしても途中で魔獣がバトルを放棄してしまうようだ。魔獣も武闘家を選んでいるのだよ。バトルする相手の持つ魔石で判断するらしいぞ。」

 

 そうなのか・・・魔獣も自分の能力を使ってもらうならば、強い武闘家に使ってもらいたいと思うのは当然だよな。

「結合魔動石の作り方は二通りだ。一つは五つ石をハメることが出来るスペース、ストーンスペースが空いていればそこに最後の石をハメてくれ。もう一つはストーンスペースが一杯であれば、最後の一つをブレス内の格納庫に入れてくれ。後は三つの石が共鳴して自動的に結合するよ。結合魔動石は色々あるから、お前たちが何を作るかあたいも楽しみだよ。あたいの知らない魔王石や魔星石なんかもあるから未知なる結合魔動石が出来るかもな。」

 そうか、可能性は無限大ってことなんだな。

しかし、魔王石や魔星石はレアだろう。

 ゲンのように空間転移出来るのであれば魔星石ゲットは可能かもしれないが・・・

「ゲンは魔星石には興味ないのか?宇宙には沢山の星があり、そこに住む星獣も無数にいるだろうから、色んな可能性があると思うケド。」

 俺はゲンに聴いてみたかったことを質問した・・・

「カイ、他の星ってカンタンに言うケド、知らない星の星獣ほど恐ろしいものはないと思うよ。スティール星の魔獣は皆比較的穏やかとは思わない?ボクたちの星はそういった風潮みたいだから。だから、安心してバトルも出来るよね。しかし、知らない星の風潮がとんでもなかったら、ボクなんか捻りつぶされるかもしれない。怖いんだよ。今はボクにはキールとハルさんがいる。二人をそんなことに巻き込みたくないし、守っていきたいんだ!」

 なるほど!ゲンはあいつなりに大切な人のことを真剣に考えているんだな。だから、星ではなく敢えて舞台を異次元や亜空間にしてるのか。


 それにしてもゲンの奴、話しているうちに感情が高まって口調が変化したな。

《ゲン、ありがとう。わたくしたちのことを考えてくれて。でも、ゲンがしたいようにしてください。決して後悔するような行動はしないでほしい。安全な道ばかり選んでいても本当に得たいものは得られないと思うので。わたくしたちは不死身ですよ。細胞が残っていれば必ず復活できますから。》

《その通りですよ。いざとなれば空間転移出来るじゃないですか。逃げるが勝ちということもあります。私の魔気をコントロール出来たのです。もっと自分に自信をもってくださいね。》

 キールとハルさんは共に進んでいく覚悟をしめしてくれた。ゲン、お前恵まれているぞと俺は思った。

 振り返ればゲンの周りにはいつもこんな女子が多かったよな。こいつの人柄はホントに素晴らしい。人を愛し愛される、そんな感じの言葉がピッタリだ。

 俺も当然、ティナとゼロのことを何よりも大切に思ってる。

 俺たち三人で伝説を作るんだ!少し大げさかもしれないが、そういう気持ちで俺は人間、魔獣を守りたい。いや、守っていくのだ。願望ではなく決心覚悟をもって・・・

《カイト~、あたし頑張るよ!キャンティとのこと、疑ってゴメン。だってカイト、イケメンで優しくてスキルもめっちゃ上がってきて男として申し分ないじゃん。だから、不安だったんだ。》

「ティナ、ありがとう。俺、今でも自分に自信ないよ。でも、愛するものを全力で守るっていうのは変わらない気持ちだ。これからも俺をサポートしてくれ。そして、二人で最高の【二人のブレス】を作るんだ。ゼロも頼むな!先々、お前が俺の切り札になるんじゃないかって思ってるよ。」

《カイ、我はお前と共に成長してきた。以前の我とでは魔力のベースがケタ違いだ。これからも共に歩もうぞ。》

 俺は泣きそうになった。俺が愛するティナとゼロ。こんなにも心が繋がっていることが大切で、これが生きているってことなんだと思えたことは今までになかったからだ。

 表面だけの付き合いだった今までの知人友人。こんな俺と仲良くしてくれている親友のヴァンとゲン。色んな人と関わりがある中で今の俺がいる。勿論、ヴァンとゲンとはこれからもお互い助け合って生きていくことに変わりはない。でも、いつも一緒というわけにもいかないのが現実だ。

 その点、ティナとゼロとはいつも一緒だ。情報もタイムリーに各々が得意な分野で教えてくれる。情報こそ最大の武器である!とジェニムのおっちゃんも言っていたがその通りだ。情報がないと俺たちの進むべき道が描けない。

 

 ブレス改をゲット出来た。

 光の魔動石もちの魔獣の情報もゲンから聴いた。後は突き進むのみ!だが、焦ってはいけない。俺はまだ半人前なのだ。いつも謙虚な気持ちを持って人や魔獣と接していくのを忘れないようにしよう。さすれば道も開けてくるってもんだ。


 さて、ここでの用事も済んだし俺たちはここで分かれてそれぞれの目標に向かって邁進していくのだ。あっ!その前にゲンにスティール星まで空間転移してもらわないとだな。キャンティから空間転移の新アイテム、超電磁リングをゲットしたが、片割れはまだ手元にあるからな。

 さっきゲットしたリングは超電磁の力を使っているから超電磁リングと名付けた。只のリングでも良かったが、なんかパッとしないからな。

「じゃあ、キャンティ先生。また来るよ。ケーキ食べたくなったら、超電磁リング使って来てくれよな。石の事で解らないことがあったら、聴きに来るからさ。」

 俺たちはゲンの周囲に集まり、空間転移にて魔界を離れようとした。

「カイ、チョッと待ってくれ。これを受け取ってはくれないか?」

 そうキャンティが言うと、差し出した手のひらにキラリと光る魔動石があった。

「あたいは剣の魔動石、ソードマスターの主でもあるんだ。カイの波気レベルの高さ、人間性、可能性において、あたいの魔動石を託すに値すると思ったわけ。どうか受け取ってくれないか?そして、あたいもお前の役に立ちたい。」

 俺はキャンティの魔動石を黙って受け取り、迷わずブレスにハメた。プライドの高い彼女がそこまで俺を認めてくれたのだ。俺もその想いに応えなければ男じゃない。

 

 ブレスに新しい輝きが宿った。二つ目の魔動石・・・ティナ以外の魔動石は初めてゲットしたが、魔動石からキャンティの念波が送られてくる。

《カイ、ありがとう。あたいも共に戦うよ。普段はスリープモードになっているから、必要な時に念じてみてくれ。あたいが知っている情報は教えるし、剣術はあたいの右に出る者はいない。あたいの念波についてきてくれれば、剣の修行をしなくてもリモートでスキルを教えられるよ。それに究極奥義を使えば、あたいがカイの体を依代にして戦うことも可能だよ。》

「キャンティ先生・・・いやキャンティ、俺たちはチームだ。あのさ、俺もキャンティの剣技で戦えるのはありがたいよ。でも、それじゃダメなんだ。俺は自分の力で剣技をマスターしなきゃ意味ないって思う。勿論、剣技の修行にはキャンティのアドバイスが欲しいし、絶体絶命の大ピンチの時には無条件でその究極奥義とやらを発動して俺たちを守ってほしい。それじゃダメかな?」

《カイ、お前ホントに素晴らしい奴だな。解ったよ。アドバイスもするし、必要な時には皆を守ってやる・・・しかし、こうして一緒の空間にいると解るが、ティナの気はスゴイな。波気と魔気の切り替えが出来るのか?まぁ、三竜姫の存在自体が希少だから今更驚かないがな・・・ゼロ、覚悟しておけよ。あたいの剣技に負けて気絶するなよな。》

《・・・も、勿論だ。我も成長している。どんな剣技にも応えてみせようぞ。》

 

 ゼロ、お前今確実に焦ったろ。キャンティはゼロの生みの親だからな。緊張もするだろうし、カッコ悪い所も見せたくないだろう。

 今言われて初めて気付いたが、ティナは波気と魔気の切り替えが出来るのか・・・まぁ、その時の属性みたいなもので切り替えて使っているのかもしれないな。ティナはそこの所は感覚でやっていると思うケド・・・

 

 しかし、これが他の魔動石か・・・天空とは異なるパワーを感じるし、秘めたるスキルも感じる。俺が努力して、キャンティのパワーもスキルも使いこなせなきゃダメなんだ。明日からゼロの素振りを修行に加えよう。

 そんな想いを持ちつつ、俺は魔界の大気を元に戻し、ゲンの空間転移でスティール星の秘密基地グリモアに移動した。

「でもさ、あのキャンティが魔動石もちとは完全に予測外だったな。でも、俺サマたちにとっては何とも心強い仲間が増えたよな。」

「そうだね。何よりも魔石については一番詳しい人物でしょう。カイは剣技もマスターしなければならなくなったね。ならば、ボクたちも剣技の修行もこれから加えていくべきかも。ヴァン、頑張ろう!」

「おう、俺サマはグリフォンと共に素振りの修行は行っていたぞ。でも、グリフォンから斬撃が出てしまい建物を破壊してしまったんだ。」

 なんと!ヴァンはやっぱりスゴい。

 魔気のコントロールが出来ないケド、パワーで相手を圧倒させるお手本のような感じだ。

 俺にはマネはムリなので、俺なりの剣技を身につけようと思う。

「皆、じゃあ何かあったら連絡してくれよな。

目的は世界崩壊阻止!この一つなんだ。その目的に向かって努力していこう。」

 俺たちはこうしてそれぞれに分かれて自らの道を進んでいくべく、グリモアをあとにした。


 皆と別れて、俺は本格的な旅支度がまだだったので、近くの街まで買い出しに向かった。

 まずは宝石屋で手持ちの魔石をお金に変えよう。

 数十分歩いた後、ようやく街の宝石屋マカロンに辿りつき店内に入った。波気を使って飛んでいけばもっと楽に着いていたのだが、それだと目立ってしまうのでなるべく目立たない行動をとっていた。

 そりゃ、フツウの人は特殊な道具を使わぬ限り飛べぬのだ。それが何の道具もナシに飛んでしまったら、動画を撮影されSNSにアップされたり、人が押し寄せてきたりして面倒な事になりかねない。それに実力もまだまだなのに、こいつ凄いんだぜ!なんて噂にでもなったら今後の行動に影響が出てしまうだろう。

 噂を聴いてきたんだケド、飛行法を教えてくれなんて言われたら面倒だし教えてやる道理が無い。

「へ~意外と沢山のお客さんが来てるんだね。宝石なんて頻繁に買う物じゃないのに。」

 ティナの言うことはもっともだ。なんでこんなに店内が賑わっているんだろう。チョッとしたライブ会場のように人がごった返していて、サクサクと前に歩いていけないのだ。俺は気になったので、近くの人に聴いてみた。

「お前さん、知らないでココに来ているのかい?今日は、あの超有名なカリスマ占い師のクロちゃんがこの店に来てるんだよ。」

 クロちゃん?俺が知らないのはともかく、ティナもゼロも知らないとの事だった。そうか、俺たちはテレビも観ないしラジオやネット動画も観ないで毎日修行に明け暮れていたもんな。

 いわばフツウの情報に関して無関心な情報難民になっていたのだ。

「ティナ、情報は大切だって言っていたが、こういった情報には無関心だったよな~。」

「そうだよね、でもカリスマ占い師のクロちゃんってどんな人なのかな?きっとカワイイ感じのお姉さんだよ。楽しみだね~。」

「ゼロ、お前も占ってもらうか?なにか面白いコト、言われるかもしれないぞ。まぁ、占いだから当たらないかもしれないケドな。」

《カイ、お前自分のことを占ってもらったらどうだ?なにかに気付くかもしれんぞ。我は良いのだ。しがない精霊魔剣なのだから。》

 俺たちはワイワイとそんなたわいのない話をしながら、魔石の買い取りをしてもらっていた。

「買い取り査定の価格が出ました。魔石十二個で一万五千六百エンドですが、宜しいでしょうか?」

 一個あたり千三百エンドか・・・悪くないな。良心的な店だ。中には人の足元を見て、一個当たり五百エンド位でしか査定してくれない宝石店もある。

 そんな店はお客もいないし、まず店が汚い。店がキレイか汚いかは大事なポイントなのだ。

 ここに店の主人のやる気と人間性が表れる。

今来ているマカロンはキレイだし雰囲気も良い。

 主もスマイルで接客してくれるし、繁盛しているのが解る。

 お客さんもお金持ちばかりで、高めの魔石や宝石がバンバン売れている感じだ。しかし、俺は解らないことがあったので主にその件を聴いてみた。

「なぁ、主。店はキレイにしているし雰囲気も良い。なのに何故、今日はイベントでカリスマ占い師を呼んだりしているのだ?」

「お客様、お褒め頂きありがとうございます。当店では普段イベントは行わないのですが、何故かクロちゃんの方から今日ココでイベントを開かせてほしいと申し出があったのです。当店としては著名な方ですし、断る理由も無かったのでお受けしました。」

 そうなのか・・・なんでもイベントの出店料に関しては今回無料ということになったらしい。クロちゃんの方からは出店料を支払いたいという申し出があったそうだが、著名なカリスマ占い師が来てくれるのだ。

 主としては宣伝効果が十二分にあるので、出店料は不要と伝えたそうだ。でも、なんでそんな著名な占い師がお金を払ってまで今日ココで出店したかったのだろう?

 そんなカリスマ占い師なら、無料のイベントにわざわざ出店しなくても良いものである。世の中には俺の考えることとは違う考えをする人もいるんだなということを再認識した。

「あっ!そうだ主。魔石の買い取り、さっきの価格でOKなのでヨロシク頼むよ。あと、この辺で宿を取りたいんだケド、飯が旨い所ってあるのかな?」

「はい、買い取り査定にご満足頂き、誠にありがとうございます。宿でしたら、ここを出て左に行き、突き当たりの宿が良いと思われます。宿の名前は、ぴよぴよです。二名様で予約しておきましょうか?」

 俺は魔石の買い取り価格一万五千六百エンドを受け取り、宿の予約も頼んだ。

 ぴよぴよか・・・何とも可愛らしい宿名だ。そして、クロちゃんの占いにも興味があったので主に順番の予約も頼んでおいたのだ。


 俺たちはマカロンを一旦出て、保存がきく食料の買い出しに出かけた。

 食料はブレス内に保存しておけば良いので非常に便利である。市場には色んな食材が所狭しと並んでいた。

 ティナはドラゴンフルーツが好きらしく、大量に買い込んでいた。

 ドラゴンフルーツって見た目は美味そうだけど、サボテンの一種で味はイマイチ好みではない。流石は竜姫、ドラゴンのネーミングが付いたものは好きなんだな。

 他には熱中症になってはいけないので、ドリンクも買っていこうとしたが、ティナに笑われたのだ。

「カイト~、あたしたちは病気にはならないんだよ。熱、冷、毒なんかへの耐性がバッチリだから安心して。カイトの体内にはあたしの気が流れているからね。」

「あのさ、よく解らないんだケド、竜姫の気と魔人の魔気って混じっても大丈夫なのか?副反応とか拒絶反応とかおきそうじゃん?」

 

 俺の質問にティナは焦って答えられない。

 っていうか、こういった化学的なことはティナには難し過ぎて解らないのだろう。

 こういった時はゼロの出番である。

《カイ、本来波気と魔気は同系統のものと考えたら良い。気は視覚化出来ない質的なもの。薬品や血液の様に混ざれば副反応や拒絶反応が発生するという心配をしたからだとは思うが、異なる気が混じっても副反応や拒絶反応は発生しない。波の力には波の得意分野があるし、魔の力も同様に得意分野がある。まだ言ってはいなかったが、今のお前は波気と魔気が融合してより強固なものになっているぞ。》


 やっぱ、ティナの気は状況に応じて使い分けていたんだな・・・

 それよりも、えっ?チョッと待って!なんだそれ?俺の気が変化したのか?聴いてなかったし、そういった異質な感じもしなかった。

 確かに体内の波気が充実しているという感じはしてたケド、それは俺の波気の成長からだとばかり思い込んでいたのだ。

 波気と魔気の融合?じゃあ、純粋な波気じゃなくなったんだな。

「ゼロ、波気と魔気が融合したらなんて呼ばれているんだ?それは波動力も波糸も変わっちゃったってことなのか?」

《そうだ、波気と魔気の融合は騎気と呼ばれている。故に今は騎動力、騎糸になっているぞ。呼び方が変わっただけではなく、それぞれ能力がスパイラル効果で昇格しているのだ。》

 なんだよそれ・・・めっちゃ、重要案件じゃねえか。ティナも正確な事は解らなくても、なんとなくそれっぽいことは解っていただろうし、ゼロに至っては完全なる黙秘犯である。


 俺は人気のいない街外れまで移動し、自らの力を試してみた。まずは天空の騎動力・・・とりあえず、ガードをやってみよう。

 俺は集中してガードを試みる・・・今までは念じて発動するまでの時間が俺的にはそこそこかかっていたと感じていたが、そのタイムラグが無くなっている。

 ほんの一瞬、時間にして百分の一秒もかかってはいないだろう。しかも、ガードの質も上がっているのだ。明らかに威力が増している。

 今までの四倍位にはなっているのではなかろうか?

 

 一+一が二ではなく、一+一で四になった感じなのだ。これは俺が日々行っている波気の練り上げ効果らしい。

 納豆を混ぜるのも、十回よりかは百回混ぜた方に粘りが出てくるのと一緒だとゼロは力説してくれた。これは嬉しい誤算だが、誰でも出来ることではないらしい。

 波気と魔気が融合してもほとんどの者が一+一の三弱で留まるということだ。それだけ波気を練り上げる力があることやそれをコントロールする力が無いと騎気レベルもスパイラル効果で昇格しないということのようだ。

 そして今は出来るようになったティナのブレイクスキルも試してみる。

 遠く離れた敵を片手で掴み上げ、もう片方の手で攻撃するスキル。通常では不可能だが天空の力があれば、可視不可能な大気の手が遠くの敵に伸びて掴みあげる。

 そして、もう片方の見えない大気の手が相手を強打するのだ。見えない大気の手というか、見えない波気を手のようにして掴み、強力な波気の塊を打ち込むと言った方が適切だろう。

 このスキルを習得するのにはかなりの時間を要したのだ。

 波気をコントロールするのには大分慣れてはきたのだが、それを具現化して相手に直接影響を与えることがめっちゃ難しかったのだ。

 俺はネーミングセンスが無いから、ティナとゼロに考えてもらった。ティナは今までこのスキルはグラスブレイクと呼んでいたようだ。グラスプが掴むという意味だから、グラスプ+ブレイクでグラスブレイクなんだって。

 ゼロは地獄という言葉に憧れていたので、攻撃技には全てヘルをつけたかったらしく、ヘルブレイクが良いと言い出したのだ。

 双方、歩み寄ることも出来ないまま最終的には俺が決めることになったんだけどね。

 結果、字数が多いと言いにくいのでヘルブレイクに決定!ティナはむくれてしばらく口をきいてくれなかったケド、ゼロは上機嫌だった。さて、ヘルブレイクの試技・・・俺は遠くに離れてある岩にむけてスキルを発動する。

「ヘルブレイク!」

 スキルを叫びながら俺は技を繰り出した。一瞬で木っ端みじんになる岩。俺はここでも気の質が変わったことに気付き、その発動スピードや破壊パワーもアップしていることに驚いた。

これもキャンティの石の効果か、スゴい昇格効果だな。


 俺たちは騎気を使った試技を終え、マカロンに戻る。

「よくお戻りになられました。丁度次がお客様の占いの順番になります。もう少々お待ちくださいませ。」

 マカロンの主がそう言うので俺たちは待合スペースで順番を待つことにした。俺たちの次の順番には、いかにも冒険者という感じの三人組が待っていた。

「いよっ!こりゃイケメンとモデルの登場だ。君たちもクロちゃんにスーパーな占いをしてもらいにきたのかい?」

「チョッとからかうのはおよしよ。ゴメンな、

こいつ人は悪くないんだケド、茶化すのが好きでさ。」

「フンッ!」

 何やら細身で軽いノリの兄ちゃん、その相棒と思われる少しふくよかな姉ちゃん、口数少ないゴリラみたいな感じの大男の三人組。

 装備もそれなりに整えていて、剣士と女剣士、それに格闘家っぽいゴリラくん。剣士はその風貌とは異なり、意外と重装備だ。

 重そうなシルバーアーマーと大柄な剣を持ち、盾と兜は身につけていない。見た目、ヘビに似てるのでこいつはヘビ男。

 女剣士は軽微な鎧と細身の剣、盾も軽量そうだがその他は身につけていない。こっちは見た目タヌキだからタヌ子だな。

 ゴリラくんはトゲトゲ兜、トゲトゲ鎧、トゲトゲハンマーのハリネズミ状態の装備。いざとなったら、こいつが何気に一番強そうだ。

 聴けば、お金があまり無いが故に欲しい装備も思うように揃えることが出来ないらしい。

 俺みたいにゼロを無料でゲット出来たりしている者とはお金の価値観が違うと思われるかもしれない。

 

 しかし、こうみえて俺もお金は大切に使っている。決して無駄遣いはしていないし、ホントに必要なことにしか使っていない。だから、必要以上に魔石をゲットしないようにしている。

 そりゃ少し前までは自分のスキルを上げる為に魔獣とはよくバトルをしていた。

 しかし、期をみてバトルを途中で切り上げたりして魔石をゲットしないようにしていた。要は魔石ゲットがバトルの目的ではなく、自分が強くなるためのバトルなのだ。

 そうは言っても必要最低限の魔石はゲットしていかないと俺も生活が出来ないので、そこは臨機応変に行動を変化させているのだ。


「ねぇ、お兄さんたちは何を占ってほしくて来たの?」

 俺は興味本位でヘビ男に聴いてみた。

「イヤ、実はさ俺たち冒険家なんだケド、魔獣をナカナカ倒せなくて魔石がゲット出来ないわけ。なにか、すんばらしいヒントをもらえたらイイな~って感じかな。占い料も今日はタダだしな。」

「そうなのよ。最近じゃ武闘家の方が装備費用、かからないから良かったんじゃないかって思う位なのよ~。」

「フンッ!」

 それぞれに思ったことを口にする三人。ヘビ男もタヌ子も予想通りの返答だな。ゴリラくんは相変わらず口数少ないケド・・・

「でも、お兄さんたちも戦う者としてブレスは持っているんでしょ?魔石の能力を少しずつゲットしていったら強くなるし、そうすればもっとカンタンに魔獣を倒すことが出来るんじゃないの?お兄さんたちのブレスを見せてよ。」

 俺は当たり前のことを当たり前のように言ったつもりだったが、これがこの三人組には衝撃的だったようで一瞬フリーズしているのが理解できたのだ。

「そうか!そうだよな。そこには気付かなかったぞ。ボーイには感謝しなくちゃな。サンキューな。」

 こうヘビ男は答えてきたが、俺たちはえっ?っと思ってしまった。

 どうやらこの三人組、魔獣を何とか倒してもその日の食事代がないらしく、すぐに魔石を宝石屋に売りに来ている自転車操業的な冒険者だったのだ。

「イヤ~、言われてみてハッと気付いたよ。もう少し余裕をもってやっていかないとだな。わたし達のブレス見せてもいいケド、魔石は一つもハマってないよ。」

「フンッ!だから言わんこっちゃない!オレはだからこのやり方は反対してたんだ!」

 うわっ!いきなりデカい声が響き渡った。今までフンッ!しか言っていなかったゴリラくんが溜まりに溜まったうっぷんを爆発させてきて、俺たちはビックリしたのだった。

 なんだよ、こいつしゃべれるんじゃねぇか。

 しかも声、めっちゃデカくて近くで言われたら気絶する奴いるんじゃないか?とか思ってしまった俺たち。そこでティナがある提案をしてきた。

「あの~提案なんですけど、もし魔獣に遭遇したら試しにゴリラくんが間近で目一杯大声を張り上げてみてください。これが意外と魔獣へのダメージになるかもしれません。その後にヘビ男さんとタヌ子さんで思いっきり攻撃してください。そしてトドメは一番攻撃力がありそうなゴリラくんが刺すのです。これ、意外とイケるかもしれませんよ。」

 

 うぉ~い、ティナ。ヘビ男、タヌ子、ゴリラくんって俺が考えた三人のあだ名じゃねえか。

お前一瞬ブレスの中に転移して俺の考えを読み取りやがったな。

 読み取るのはいいケドさ、それを本人たちに言うのはマズいぞ。いきなり怒り出してきても文句は言えない。

 そんなことを俺は考えていたが、三人の笑い声が響き渡る。

「あっはははは~!イヤ~それわたし達のあだ名かい?面白いね~お嬢ちゃん。特にゴリラくんはサイコーだよ。気に入った。わたしたち金は無いケド、手先は器用でこういうのたまに作ってるんだ。これあげるよ。」

 そうタヌ子が言うと可愛いイヤリングをティナに手渡した。それはプロ顔負けの出来栄えでとても可愛らしい一品。

「いいんですか~?ありがとうございます。タヌ子さん!」

 ティナは満面の笑みでお返ししたが、その表情を観たヘビ男、タヌ子、ゴリラくんからも素敵な笑みがこぼれだす。

 俺たちは今回たまたま和やかな雰囲気になったが、ティナの言動には注意していかないといけんなと俺は思うのであった。

 

 そんな一時を過ごしていたが、俺たちの占いの順番になったので呼び出しがかかった。

 さて、どんなカリスマ占い師なのか楽しみな俺たち・・・

 

 このクロちゃんこそ、俺たちにとって最も重要なキーパーソンであることを俺たちはまだ知らない・・・

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