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第一話 出愛

地球からは遥か彼方のスティール星での物語。

主人公のカイは容姿端麗が取り柄だけのへなちょこ男子であったが、十六歳の誕生日に少女ティナと運命的な出会いをする。

しかし、ティナは十六年前からカイが自分のパートナーであることを知り、カイを見守り陰ながら支えてきた。ティナは破壊竜で不老不死、人化した彼女は見た目は十六歳位のかわいい女の子。

ティナはカイの誕生日に自分の秘密を明かす。一方、カイの親友ヴァンとゲンも運命のパートナー、リンとキールに出会い同様に秘密を明かされる。リンは万力竜でキールは時元竜。彼女たちも人化したドラゴンで不老不死、ティナも含めた彼女たちは三竜姫と呼ばれていた。

職業を武闘家にしたカイ、ヴァン、ゲンはバトラーの証であるブレスレット、通称ブレスを手にいれる。ブレス、それは魔獣などから認められると魔石を託され、その魔獣の能力を得ることが出来るアイテム。

物語はカイとティナを中心に様々な困難を乗り越え、魔獣などから特殊能力を得ていき成長していく姿が描かれている。

そして、運命の魔剣たちと共にバトルは白熱していく。謎の老人クロちゃん、魔王ファイとの深い関わりを経て超魔人を撃破し、超星獣との激しいバトルの中で、カイとティナは真なる「二人のブレス」を発動させる。その真なるブレスがもたらした結末は何なのか?カイとティナは結ばれるのか?神をも巻き込んだラストに涙せずにはいられない。


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 よろしくお願い致します!

「チョ・チョッと待てって!」

「何でこんなことに?」

「これって、ヤバいんじゃねぇか?」

 余裕をこいてた俺たち三人は一転して大ピンチに・・・

 それは目の前に突如現れた無数のレイバー。人型のそれは只の人形ではないのが離れていても感じられる。圧倒的な威圧感と高密度を感じさせる得体の知れないエネルギーを持つ存在が無数に空を舞う。

「フッ!バカめ、お前たちはこの人形にやられてお終いよ!おっと、間違っても破壊して回避しようとしてもムダだぞ。表面は核パスタで出来ている。万が一、表面の破壊が出来たとしても同時に内部にあるプラズマがドーンと大爆発する仕組みだ。ちなみに中心部の構成は太陽と同じって言えば解るよな。」

 超星獣ストロームは不敵に笑い、俺たちは顔を見合わせる。

「なんだ?核パスタって食い物か?」

「ヴァン、核パスタってのは鉄の百億倍の硬さで究極の硬度をもつ物質だよ。」

「そんなものブッ飛ばせば済むだろ?」

「だから、内部は太陽と同じ物質で出来ているって言ってたじゃん。下手に衝撃を加えたら大爆発するんだって。」

「だから、ボクは余裕こいてないでトドメをさせばって思っていたんだよ!」

「お前だって楽勝だって、楽しんでたじゃねぇか!俺サマのせいにするなよな。」

「おいおい、もめてる場合じゃないって!どうする?」

 そもそも何でこんな大ピンチになったのか?時の波は俺たち三人が武闘家になろうと決めた時から動き出したのである。

 

 これは地球から遥か彼方のスティール星での一人のへなちょこイケメンと一人の最強ツンデレ美女を中心にした物語・・・

 舞台は人間と魔獣が共存する世界、ここでは戦争は起きていない。

 誰かが誰かを管理する、罰則を設けるということはない世界。政府というものは存在せずに自らが生きる為に人間も魔獣も弱肉強食で日々生活をしている。

 私利私欲が強い利己的な者が現れて戦争などを起こしそうなものだが、そういう者には圧倒的な強さの絶対神ゼウスの裁きがやってくる。

 勿論、絶対神もヒマではなくて他の星々にも関わっているのでタイムリーなタイミングでの裁きがない時もある。

 それでも人類も魔獣もそれなりに秩序を保って食物連鎖を行って現在に至っている。


 しかし、管理がないという中では当然小さい問題は発生する。どこに住もうが自由、早い者勝ちである。一つの家の大きさの規格は決まっていて不公平感はない。家を造る材料やシステムは自由なので、頑丈に造るもよし、セキュリティーを高めたものにするのもよしである。

 もし、盗みなどの軽犯罪が発生しても武闘家や探偵などが依頼を受けたら動き出し解決。そしてその依頼者はその報酬を払うという感じで平和が成り立っている。

 家の前に道路を造りたければ家の所有者が道を製造業の人に依頼し作成。作成料は依頼者が支払う。その道を通りたい者は、通行料を道の作成者に払い通行し経済は成立している。

こんな感じで弱肉強食ながら、経済はWIN WINで成り立っていて特に問題はない。

 問題があるならば、それはお金をケチって問題解決しない連中が愚痴を言っているくらいだろうか?そんな連中には人生全て自己責任という言葉を伝えてあげたい。


 俺の名はカイ。

 父ちゃんと母ちゃんは武闘家でそこまで強くはなかったものの、全国各地で行われている武闘大会での商品や賞金なんかで生計をたてて、俺を育ててくれた。

 そんな俺だから当然ケンカも強いはず!と思われがちだが、まったくもってのへなちょこで我がことながら武闘家であれば将来が不安である。

 長所は自分ではそうでもないと思っているのであるが、周囲の皆からはイケメンだということらしい。反射神経や動体視力だけは良いのだが、いかんせん体が反応しない。

 ボールに数字や文字を記入したものが目の前を通過したら、その数字や文字は余裕で理解出来る。

 マジックなんかを観ても、そのトリックはみえてしまうことも多い。だから、観ただけでそのマジックを再現させて周囲を楽しませることなんかも得意である。

 でも、非力で運動音痴なのでスピードを要求させることや体力が重要なスポーツには不向きでそこが悩みである。

 勉強の方はどちらかと言えば苦手で、記憶力が良いくらいであろうか。

 かなり前に人が言ったことや過去の体験を事細かく記憶している。理科のように化学や科学なんかは興味があり、とにかく考え予測することだけは好きである。

 何かと何かを合わせるとこうなるだろうとかイメージするのは得意!だから細かいレシピが重要なケーキ作りなんかは得意としており、スイーツ男子と周囲からは言われている。自分の誕生日に自分でケーキを作って自己満足しているのは俺くらいかもしれない。

 正に残念なイケメンと皆からは認識されている。

 そんな俺にも親友、いわゆるマブダチが二人いる。昔からの幼馴染で、常に助けあってきたものだ。


 一人がゲンヤ。

 ゲンヤだけどゲンと俺たちは呼んでいる。

 ゲンはとにかく手先が器用な奴で、話術に関しては俺なんか足元にも及ばない。マジックを教えたら、俺なんかよりも上手くトークも流暢である。何かを作る時は決まってゲンに相談したり、任せたりとしてきた。

 ぶっちゃけ、丸投げしたことも多々あったなんてことはゲンには言えない。

 話術に関してはその見た目とは異なり、とにかく口がうまい!見た目は俺が言うのも何だが、イケメンで無口そうな感じ。

 でも実際は口がうまくて、器用な奴である。

 だから俺とは異なり、女の子にもてまくりでゲンの周りにはいつも女の子がいる。

 ドローンの操縦やスポーツスタッキングが得意中の得意で、ドローンなんか操縦しながら実況中継も自分で行なって盛り上げるほど余裕があるのだ。

 スポーツスタッキングは大会に出て優勝したこともあったが、ある時を境に全くやらなくなった。

 その理由はライバルもいないし、スピードも限界を極めたからだそうだ。なんか解る気もするが勿体ない話である。

 そんなモテるゲンだが、特定の彼女はつくっていない。なんでも面倒だし、俺たちとツルんでいる方が楽しいそうである。そういってもらえるのは嬉しいんだけどね。あと、たまに敬語で話すときがあるんだけど、それは考え事をしているときなんだって。

 

 もう一人はヴァン。

 こいつはいわゆるガキ大将的な感じ。自分のことを俺サマといっていることからも解るでしょ?見た目は豪快だけど、こいつもイケメンだ。

 ケンカは強くてスポーツも万能。筋肉も俺とは異なり男らしくしっかりとついていて頼もしい。

 でも何かあれば俺とゲンとは腹を割って話をしてくれるし、弱い者の見方をいつもしている心優しい奴である。

 短所は自信過剰的な所があり、チョッと無謀だろ?って思う時も強引に行動してしまうことだろうか?

 以前に体力自慢の奴がヴァンとどっちが強いかということでやってきた。

 それはケンカではなく、ビルの屋上でフェンスを両手でつかみぶら下がって耐久勝負というのをしたのであった。

 結果としてはヴァンが勝利したのだが、緊急テレビ中継になって一時間ほどの耐久バトル中、ビルの下では出店が多数並び、どっちが勝つかのカケなども勃発し、チョッとしたお祭り状態になったのだ。

 負けた奴がビルから落下した所、瞬時にヴァンが片手を離し相手の腕をつかみ引き上げて二人とも無事であった。

 その後はヒーローインタビュー的な感じのテレビ中継になり祝勝会。

 そして、スポーツ企業からのスポンサーの申し出が多数あったりして、バタバタものであった。

 スポンサーの話は結局全てお断りしたものの、ヴァンが動くとかなり多大な影響を周囲に与えてしまうのだ。

 あっ!そんな危険な勝負は、くれぐれも良い子はマネをしないようにね。

 男としては、さばさばしていて気持ち良いし、男気があって女の子にも人気があるが、ヴァンもゲンと同じく特定の彼女は作っていない。

 その理由はゲンと同じということもあり、俺たちは親友として鋼の結束がある。

 

 人には長所短所がある。

 俺の短所はゲンとヴァンがフォローしてくれるし、ゲンとヴァンの短所も他の二人でフォローしている。

 まぁ俺が一番、短所が多いので二人には一番迷惑をかけているかもしれないんだけどね。

 でも二人はいつも気持ちの良い笑顔で対応してくれている。そんな親友にはいつも感謝していると共に、俺たちはいつも充実感をもって生きている。


 そんな笑えない俺だが、今日で十六歳を迎えた。

 なんと偶然か必然かゲンとヴァンも俺と同じ日が誕生日なのだ。スティール星では、十六歳になると同時に自分の職業を自由に選べるようになる。

 商人、鍛冶師、武闘家、陶芸家、農家などなど多種多様である。一応、父ちゃんと母ちゃんには相談をしてみた。

「お前は考えることが好きだから研究者になっては?」と父ちゃん。

「モデルよモデル!絶対売れるし、母さんがマネージャーになってあげる。」と母ちゃん。

 おいおい、研究者はまだしもモデルって・・・

 運動音痴だからムリなポーズやウォーキングの注文をつけられ致命的な失敗をしたら、もし人気があってもそこから人気転落でしょ?

 そもそもモデルって競争は激しいし、成功するのはほんの一握りの人だしね。

 万が一成功したとしても短命で、その後の人生どうするのか考えているのか?母ちゃんはそんな先の事、絶対に考えてないのは言い切れる。

 両親に相談した俺がバカだったと改めて認識したのである。

 

 しかし、こんな両親でも尊敬できる所は多々ある。人の気持ちを大切にする所、人を裏切らない所、人の為に苦労を惜しまない所・・・とにかく人を思いやり、人と共にということをいつも考え行動している。結果、困った時には必ず助けてもらえるし、両親の周りにはいつも人が集ってくるのだ。

 俺もそういった生き方を大切にする。それが心の幸せにつながるし、必ず良い結果をもたらしてくれると信じている。


 俺は、誕生日前日の晩に職業の事を悶々と考えた。

 結論は武闘家の両親を観て育ったのだ。

「俺は両親を超える武闘家になる!」

 ここでミソなのが「両親を超える武闘家になりたい!」ではないということ。

「なる」と「なりたい」では全く決心覚悟が異なるのだ。

「なりたい」は願望でなれたらいいな。なれなければ仕方ないなのレベル。

 まぁ、実現するかもしれないけど、実現しない確率の方が高いよね。ましてや俺は武闘家には向いていない。自分を限界まで追い込んで逃げ道を無くす。そこまでしないと武闘家で大成なんてしないし、大きな武闘大会で優勝して賞金をゲットするなんて夢のまた夢である。


 自分の職業を決めた俺は夜に家を抜け出し、ゲンとヴァンと落ち合い相談してみた。

「ボクも武闘家を考えていたよ。体力はヴァンほどないけど、新たな自分を見出したい。今でも充実感や達成感を得られることはあるけれども、もっと時間を大切にして新たなるチャレンジで人生をもっと楽しみたい!ってね。」

 ゲンこそモデルや芸能人向きなんじゃないか?とかって俺は勝手に思っていたが、予想外の考えにビックリした。

「俺サマも当然、武闘家だ。俺サマはこういったことしか出来ない筋肉バカだからな。それにお前らと同じ道を切磋琢磨しながら歩んでいきたいって思ってな・・・」

 少し顔を赤らめてヴァンが言った。こんな事で照れるこいつが純粋で男らしい。っていうか、こんな親友が二人もいて俺はホントに幸せ者だ。正直、武闘家になる!って言ったものの、へなちょこの俺としては不安しかなかったのだから・・・


 さて翌日の俺たち三人の誕生日、揃って職業申請所に向かった。誕生日になるとすぐに職業につくのが習わしだが、中には働きたくないからとブラブラしている奴もいる。そんな奴は誕生日翌日以降つきたい職業が出来ても希望職業の割合が多い場合、お断りされてしまうというので大概の人は誕生日に職業申請に来るのである。

 

 会場に来てビックリしたのが、俺たちと同じ誕生日の人が結構いたのだ。順番待ちで一時間少々待つと俺の順番になった。

「次の人、どうぞぉ!」と係りの人から声がかかり、緊張からあたふたとする俺。

「あ、は・はい!」と不覚にもドモってしまった。誕生日当日であれば、誰でも希望の職業につけるのだ。緊張する必要はないのだが、係の人がめっちゃキレイな二十歳位のお姉さんだったからと言うのはここだけの話である。

 俺は女性に対して免疫がない。残念なイケメンということもあり、女の子とつきあったことは十六年間の人生において一度もないのだ。

 まぁ、武闘家として将来大成すれば自信もつき、きっと女性ともフツウに対応できるだろうと単純に思うことにしていた。

「お名前と希望職業をどうぞぉ!」

「名前はカイ、希望職は武闘家でお願いします!」

「はい、カイさんで武闘家ですね!・・・それでは登録が完了しましたので、このブレスレットを装着してください。」とバトラー用のブレスレットを渡された。

「このブレスレットは通称ブレスと呼ばれています。左手に装着し、装着したら使用方法はブレスから情報が流れてきて理解が可能となりますが、私が直接ご説明致しましょうかぁ?」

「え・えっと、でしたら大丈夫です。」

「それでは素晴らしい武闘家になられることを期待しています。頑張って下さいねぇ!」

 と、めっちゃキュートな笑顔で見送られ、俺は顔をほのかに赤くしてしまった。そのやり取りを観ていたゲンとヴァン。

「いや~可愛い女の子だったね~。ボクもドモっちゃったらどうしよう。」ゲンは爽やかな笑顔でちゃかす。

「俺サマたちは遊びに来ているんじゃないぞ。もうチョッと緊張感を持たないと周囲の奴らになめられるぞ。」ヴァンはそんなことを言いながら表情は苦笑いをこらえていた。

 とからかわれたり、注意されたりしたけれども・・・

 クッソ~最初の受付が俺だったから、二人には思いっきり遊ばれてしまうはめになった。ゲンとヴァンも問題なく受付を済ませ武闘家としての第一歩を踏み出す段取りは出来た俺たち。


 ブレスをゲットしてワクワクしていた俺たちだが、何やら妙な視線を感じていた。

 視線の先には、髪色は薄いピンクで元気そうな女の子と髪色は薄いイエローで少し上品さを持った女の子がいた。その二人が、急に俺たちの方に向かって歩み寄ってきたのだ。

「ねぇ、そこのあなたたち。っていうかウチはヴァンに用があるんだけど、チョッといいかな?あ、ウチの名前はリン。よろしくね~。」

「わたくしはキールと申します。わたくしはゲンさんに大事なお話があります。突然ですが、少々お時間を頂きたいのですが宜しいでしょうか?」と一方的に話を切り出してきた。

「チョッと待ってくれよ。何なんだよ、いきなり!それに俺サマ達の名前を何で知ってるんだよ。ここの情報が洩れていたのか?まったく、個人情報の管理はどうなっていやがるんだ?」

「誕生日にいきなりサプライズだねぇ~。ボクらとは、どこかで会ったことあったかな?」

「イヤ、会話をしたのも初めてだし、会ったことすらないよ。ウチらは愛性が一致する人間を探していたんだ。」

 愛性って何なんだ?という疑問は生じたが、とりあえず俺はお呼びじゃないようだったので、こっそりとその場から消えようとした。

 しかし、ゲンとヴァンはそれを許すはずもなくその場にいた五人の会話は続く。

「さっきからいきなり何なんだよ?俺サマは別にあんたとする話はないし、折角武闘家になったんだから、腕試しも早くしたい。何よりも俺サマたち三人だけで語りたいことが沢山あるんだよ。悪いが今度またにしてくれ。」

「イヤ~ゴメンね~、ヴァンは口が悪くてさ。ボクも同感で時間を大切にしていきたいんだよね。またの機会にしてくれないかな?」

「なんなのさ!少しくらい話を聴いてくれてもいいじゃんか。そりゃあ、いきなり過ぎた感はあるかもしれないけど、やっとのことで巡り合った相手なんだから。」

「そうですね、ムリに話を切り出したわたくしたちが悪かったですね。申し訳ありませんでした。でも、とっても大事な話なんですよ。」

「俺はとりあえず君たちには用がないみたいだから、失礼するよ。」

 と再びこの場を去ろうとした所、今度はリンとキールと名乗る二人の少女に止められた。

「あんたにはティナっていう子が会場の外で待ってるよ。ティナもあんたに大事な話があるから、ちゃんと聴いてやってほしい。お願いね!ウチらからあんたに直接話をするのもアリなんだけど、後でゲンとヴァンから話を聴いてよ。その方が早いしな。それよりもヴァン!話聴けって!」

「なんだと!その上から話をしてくる感じは!それが人に話を聴いてほしい奴の態度か?少しは常識ってもんを考えろよ!」

「あははっ!ヴァンから常識って言葉が出るとはねぇ。いいよ!そこまで君たちが話したいことがあるのなら聴こうじゃないか。カイは会場の外の子と話してきたらいいよ。面倒だから問題なかったら、四人で話をするのはどう?ヴァンも少し冷静になって話だけでも聴いてあげようよ。」

「ん?そうだな、短時間で終わるのか?それくらいで良かったら、ゲンの顔に免じて聴いてやる。」

「ありがとうございます!カイさんはお先に会場の外へどうぞ!四人で話をするので大丈夫です。内容はゲンさんとヴァンさんから後で聴いて下さいね。」

「しょうがないな。ウチはヴァンとだけ話をしたかったのに。キールがそう言うんだったらそれでいいよ。」

「さっきから何で俺サマのことを呼び捨てにするんだ?初対面なのに馴れ馴れしいぞ。俺サマのファンならせめてヴァン様と呼べ!」

「誰がファンなのよ!だから愛性の相手だって言っているじゃない!ウチの話、ちゃんと聴いてるんか?」

 そんなワチャワチャ揉めている間に俺は会場の外で待っているティナという女の子を探しにその場を後にした。

 

 会場を出て周りをキョロキョロ見渡したり、しばらく会場内外をくまなく歩きまわったりしたけれども俺を探しているという感じの女の子は見当たらなかった。

 まぁ、リンとキールが言っていたティナっていう子はそもそも存在していなく俺が騙されたのか、もしくは存在していたとしても待ちきれないで帰ってしまったと勝手に結論付けた。

 俺はゲンとヴァンが会場から出てくるのを待っていたが、外では武闘家の心得を提唱する講義をしているおっちゃんがいたことに興味を抱いた。

 武闘家を志す俺と同じ誕生日の人々がわらわらとおっちゃんの周囲に集まり、講義を今か今かと待ちわびていた。

「さて、今日から武闘家になった皆さん、おめでとう!本日は武闘家の心得講義を担当させていただく、ジェニムと申す。よろしくお願い申す。」

 渋い声で自己紹介をしたおっちゃんに沢山の拍手が送られた。俺も勿論拍手をしておっちゃんの講義を楽しみにしていた。

 見た目、四十歳くらいの武闘家。左腕にはブレスが装着されていて、キラキラ光る魔石が五つセットされていた。魔石ってキレイだよな~と見とれていたが、次の瞬間、ブレスは左腕からスッと消えて無くなった。

 まだ俺も詳しい情報を把握していなかったので驚いたが、ブレスは本人の意思で左腕に出現させたり体内に保管することが出来るとおっちゃんは言っていた。

 そういえば、父ちゃんも母ちゃんも不必要な時にはブレスは左腕には無かったな・・・と思い出す。

 俺は勝手にブレスって腕からの取り外しが可能と思い込んでいたのだ。そりゃそうだよな。もしブレスの取り外しが出来て、盗人に盗まれでもしたら大事である。必死こいて集めた魔石が全部パーなんて、泣くに泣けないよな~。っていうか考えただけでも恐ろしい・・・

 

 おっちゃんのブレスには魔石が五つセットされていたが、どんな魔石かという説明は全く無かった。俺自身もそこには全く興味がなく、今回の講義を受けるにあたっての目的は武闘家の心得を聴くことである。

 他人の魔石など正直どうでも良いのだ。他人がどんなにカッコよい服を着ようが可愛い彼女を連れていようが俺には関心がない。そんなものは所詮自己満足であり、明日事故や病気で死んだら何にもならないのだ。

 所詮この世は弱肉強食、自分の身は自分で守る!愛する者も自分自身の力で守る!・・・なんてカッコ良い御託を述べているが、今のへなちょこな俺が言ってもまったくもって説得力がない。

 まぁ、そういう思考を持つのは自由だし、非常に我ながら理にかなっているとは思っているんだよね。

 さて、武闘家の心得だが・・・

 その一:自分に厳しく、周囲に優しくあれ!

 自分に甘い奴は生き残れない。まぁ、この世を考えれば当たり前のことである。自分を厳しく見つめなければ、短所は克服出来ない。

 長所って意外と伸ばしやすいんだよね。

 だって、得意なことって自分に自信があるからコツも解るしもっとこうしたら良くなるかもっていう可能性が見えてきて楽しくなる。

 楽しければ継続して訓練もするだろうし、成長に繋がる。

 俺はケーキ作りが好きなので今ではレシピも改良に改良を重ねて、めっちゃ旨い物が最短時間で作れるようになったのだ。

 逆に短所って克服するのは至難の業だ。

 苦手なことをほっといては、いつまでたっても苦手なのである。

 いつの日か急に出来るようになったなんてことは極々まれであり、そこに努力がなければ決して報われないのである。

 俺自身が今の今まで体を鍛えることが疎かだったからへなちょこなままで、これは自信をもって言えることなのだ。


 周囲に優しくあれ!

 これも理にかなっている。自分が困っている時に誰かに助けてもらったらやっぱり嬉しいものだ。

 今度は助けてくれた人の為に自分は何が出来るかを考え行動に移す。それが目的で人に優しくしようと思うのは愚か者で、決して良い結果を生まない。

 あくまで、本心から誰かの為に何かをしてあげようということが大切なのだ。この心意気が魔獣にも伝わり、しいては魔石ゲットにもつながると講義で教えられた。

 要は純粋な心に魔獣の心も動かされることがあるということなのか?魔石ゲットの方法については、後日ブレスから情報を引き出すとしよう。


 その二:情報こそ最大の武器である!

 いかに強い奴でも相手の奥の手に最後にやられることが多々あるということだ。要は手の内をさらけだしてしまったら、相手には対応方法を考える余地を与えることになる。

 急遽の攻撃・・・対応策は?どんな効果があるのか?攻撃力は?まだ他にも隠した能力があるのでは?とまぁ色々と考えなければならないことが出てくる。

 そして相手に余裕がなくなり、自分が優位になる!正にその通り!と拍手をしてしまったのだ。

 逆に相手の戦力情報が事前に解っていれば、その対策も練って対応することが可能だ。俺は勝利の為には、情報は必須ということを再認識したのである。

 今回の講義はこの二つについて、おっちゃんは力説していたが俺自身非常に有意義な時間になった。基本的なことなのかもしれないが、基本こそ大事という正に目から鱗状態で、今後の武闘家人生の教訓としていこうと思うのであった。

 そうそう、ゲンやヴァンにも後で教えてやらないとだな!俺たちはこういった情報はいつでも共有している。決して隠して自分だけの情報にしようとはしていない。

 それが親友であり、今後は武闘家として良きライバルにもなる為には必要なことなのだ。


 講義が終わって俺はボーっとゲンとヴァンが会場から出てくるのを待っていた。

 しばらくして、ふと人の視線を強く感じることに気が付いた。振り返ると見た目同い年位の女の子がニッコリとこちらを観ている。

 髪色は薄いブルー、目はキラキラと輝いていてパッチリ、モデルなみのプロポーションと素敵なファッション。

 とても魅力的な女の子だ・・・

 俺は再び顔が赤くなるのを感じていた。

「な・何か用?」とドモってしまう俺。

「あなたを待っていたの。とっても長い間!」と彼女・・・

 すると彼女は駆け寄ってきて、いきなり俺にキスをしてきた。何が何だか分からず、パニック状態になってしまった。

 

 俺が正気になるのには少し時間がかかったが、この後衝撃の事実を告白され更にパニック状態になってしまうのであった。

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