13
かくしてエリザベスとレナードの旅は終わりを告げた。
国を出た頃には春だったのに、季節はすっかり秋になってしまった。久しぶりに会った両親と再会の喜びを噛み締めながら、エリザベスは土産話に花が咲いた。
私はパーティーの準備があるからね。と、レナードとはそれきり顔を合わすことはなくなってしまった。仕方のないことだ、エリザベスは登城する理由もなければ、旅の道すがらレナードと深い仲になったのは2人だけの秘密。レナードがエリザベスの元に訪れてしまえば、色々不審がられるだろう。
月日はあっという間に過ぎていく。旅の疲れを癒し、父の仕事を手伝ったりしながら、気付けばレナードの誕生日パーティーの1週間前まで差し迫っていた。
「お嬢様様。プレゼントが届いております。お嬢様のお部屋まで運んでおりますので、確認のほどお願いいたします」
父の書斎で書類を捌いていると、ノックの共にそんな報告が入った。見ておいで、と父が促してくれたものだから、書類は置いて、エリザベスは自室へ足を向ける。
プレゼント?なんて顔を父の前ではしていたが、実はエリザベスには心当たりがあった。『私の目と同じ、黄色のドレスを纏わせたいな』。その、レナードの言葉を忘れたことは一度たりともなかった。
だからエリザベスは、緊張に震えながら自室の扉を開いた。どうか、自分の思っているものが届いていますように、そう願いながら、プレゼントを包む箱のリボンを解いて——、
「まぁっ!美しいドレスだこと!」
嘆息を漏らしたのは侍女の1人だ。
エリザベスの眼下には、目を見張るほど美しい黄色のドレスが。誰が見ても上質な布で織られているそれ。繊細な刺繍が施され、糸の一本一本まで気遣っているのがわかる、最高級品だ。
「……レナード様……」
ドレスを抱きしめてエリザベスは愛しいひとの名前を小さく呼んだ。空気の読める侍女たちは誰もが見て見ぬふりをしてくれた。
「お嬢様、メッセージカードも添えられていましたよ」
侍女の1人が小さなカードを差し出した。急いで開けて、文面をなぞる。
『約束の品だよ。会えるのを楽しみにしている。』
たったそれだけの短い文。それでもエリザベスは嬉しくてたまらなかった。わたくしも早くお会いしたいです、とドレスを抱きながら、心の中でそう返事をした。
*
そうして、遂に運命の日はやってきた。
レナードから贈られたドレスを着て参加する、と父に告げたときは、それはもうすごい顔をされたが、最終的には許してくれた。
侍女も気合いが入っているようで、腕によりをかけてエリザベスを美しく着飾ってくれた。
かくしてエリザベスと、その両親は王城へと足を踏み入れた。
王城へ行くのは、婚約破棄が決まって以来のことだった。




