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44:先生の呼び出しとか青春ね!

 オリクトは校内の廊下を静かに歩いていた。足音を立てず滑るような歩み。と言うよりも、彼女の両隣を一歩下がって続く二人の紳士の足音の大きさに隠されていた。

 ドルドンと護衛のノルマンだ。両手に花、と言っても過言ではない現状に少しだけワクワクしていた。

 ドルドンは褐色肌に銀髪と、好きな人なら胸の奥深くまでぶっ刺さるようなビジュアルだ。

 そしてノルマン。鍛え上げられた身体は男らしさの象徴。女子は一度は憧れる素敵な騎士様そのものだろう。

 なんて贅沢なんだろうか。逆ハーレムなんか興味無いしドルドン一筋。しかしこういった趣向は悪くない。なんせ通りすぎる生徒や教師達が気圧されているのだ。


(フフフ……これぞ王女様ね。威嚇の一つくらいしとかないと、まーた悪い虫が寄ってくるものねぇ)


 力の誇示……と言えば良いのだろうか。聞こえは悪いしどうも悪役らしい立ち振舞いだ。しかしこれは必要な事。こちらが上だと見せなければ隙を生む。隙ができれば足元を掬おうとする者が現れる。

 オリクトは王族だ。ただ上でふんぞり返ってる暗愚になる気はない。地位に付属する責任を果たさなければならないのだ。彼女達の肩にはコーレンシュトッフ王国の民、その命がのし掛かっている。

 獣が牙や爪を見せ威嚇するのは? 虫が毒があると派手な色をしているのは?  全て自分の見を守る為だ。

 オリクトも己の身を守らなければならない。女の身である以上、利用しようとする者はごまんといる。


(まっ、私を女だからと舐めてかかれば痛い目に会わせてやるんだから。私のリア充学園ライフと歴史に名を残す女公爵の物語は邪魔させないわ。しかしまあ……)


 ちらりと二人に再び視線を向ける。ああ、眼福だ。だが少しだけ足が重い。なんせ入学早々学園長からのお呼びだしだ。

 普通に考えればオリクトの叔母である学園長から入学祝いだと思っただろう。しかし入学初日にガソリンをぶちまけた馬鹿がいる。その火種であるオリクトに小言の一つでも言われるかもしれない。しかもご丁寧にドルドンも呼ばれている。

 これは絶対に怒られると額から冷や汗が垂れる。


(叔母様って厳しい人だからなぁ。あー怖い)


 逃げたい気持ちもあるがそんなのはオリクトのプライドが許さない。ここで逃げては成長は無い。もっと優秀な人間へ、もっと称賛される王女へとなるのがオリクトの望みだ。

 反省もすれば改善もする。他者の意見にも耳を傾けよう。


「…………叔母様怒ってるかなぁ」


 それでも怖い気持ちはある。憂鬱な気持ちが沸きだしてきた所で学園長室の前に到着する。

 内心ため息が出るが仕方ない。あの日から平穏は崩れ去った。もう後戻りはできない。叔母の小言も飲み込んでやろう、寧ろ彼女も利用してやろう。


「ドルドン。十中八九、叔母様は入学の件を言ってくるわ。余計なトラブルを起こさないよう釘を刺すでしょう」


「厳しそうな方ですからね」


「そりゃもう凄い人なんだから。お母様と王妃争いをした淑女中の淑女よ。小言もあるでしょうけど、味方に率いれれば頼もしいわ」


 ドルドンだけでなくノルマンも苦笑する。


「殿下だけでなくドルドンも呼ばれたのならそうでしょうね。いやはや」


「笑い事じゃないよ。僕ももう胃が痛くて……」


「お喋りはここまで」


 オリクトの声色が変わる。学園長室に到着したのだ。


「ノルマンは護衛だからここで待ってて」


「はっ」


 ぴしっと背筋を伸ばす。こう見ると騎士としては本当に格好良い。だが好色家なとこが本当に残念なイケメンにしている。フリーシアが頭を抱えるのも無理はない。


「さっ、学園長様とお話ししましょ。ついでに素敵な婚約者を叔母様に紹介しなきゃ」


 ほんの少しだけ勇気が湧いてくる。

 オリクトの新たな花嫁捜索作戦。その助っ人になるか否か。楽しみになってきた。

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