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結婚は家の都合ですわ

「ぼ、僕の婚約者にフリーシア嬢が?」


 何故彼女がと混乱するドルドン。逆にフリーシアは少しずつ理解し納得したように口元をゆがませた。


「あー……。お姉様、フリーシアは察したみたいだけどドルドンは解ってないみたい。私から説明しても?」


「お願い」


 小さくため息をつく。


「ドルドン。もし私達の結婚が白紙になった場合、次期国王のお兄様の世代でクド族の管理をする。それは解るわよね?」


「うん。僕の子がラゴス殿下の子、次の王子、王女の婚約者にさせようって事だよね」


 オリクトが頷く。どうやら事情そのものは理解しているそうだ。


「そっ。だから今のマグネシア家が貴族として安定させるのが先ね。王族の婚約者に相応しいよう高位の貴族の血筋も入れなきゃいけないと。お金だけじゃマグネシアを保たせられないわ」


「そうだね。…………ん?」


「あら。解ったみたいね」


 そこでドルドンは察したようだ。パズルのピースは少なくても全貌は推察できる。彼もオリクトの言葉で頭の中の絵が浮かび上がってきた。


「えっと。まず僕の婚約者求められる条件は、王族の婚姻に相応しい家の血筋。あと僕らクド族に友好的な人がいいんだよね」


「それと王家側(改革派)であること。魔道具の製造と利益が保守派に取られても厄介だもの」


「それで僕と同年代である事。そうなると……」


 三人の視線がフリーシアへと移る。家柄、派閥、友好関係、年齢。その全てを考えると……


「わたくし、ですわよねぇ」


 魔法武具を大量発注した太客、シルビラが嫁ぐ王家との関係。最適なのはフリーシアだった。

 理解しているからか、シルビラを除く三人は苦笑いを浮かべる。


「言っておくけど、ドルドンはあげないから」


「いりません。そもそも、私は殿下がドルドン様の囁きでフニャけるお姿が好きなものでして」


「ふぇ!?」


 まさかと驚き変な声が出てしまった。彼女に言っている事は解るし自覚している。しかし他者から言われると羞恥心が大きくなり赤面してしまう。

 面と向かって言われればこんなにも恥ずかしいとは思わなかった。いや、それ以上にシルビラに知られたのが痛い。実の姉に知られれば、こんな淑女にあるまじき顔をしていたと知られれば何を言われるやら。それが不安だった。


「あんた、本当に声が好きなのねぇ。人の好みは三者三様だけど……」


「別にいいじゃない。私がドルドンを好きになる理由なんて、顔が好きとなんの違いもないわ」


「オリー……」


 ドルドンも流石に照れている。好き。そんな言葉を聞いて舞い上がる気持ちを抑えるのに必死だ。


「相変わらず仲睦まじいことで。羨ましいですわ」


 フリーシアがため息混じりに呟く。

 仲が良いのは歓迎すべき事だ。オリクトも現状に満足してるし、未来に希望を抱いている。

 ただ、本当にこれで良かったのかと思わない訳では無い。大国との繋がりは確実に利益になるし、大体多数の令嬢からすればオリクトは羨望の対象だ。

 いや、これで良い。父の言い分には同意するし、何よりオリクトがやりたい事、やるべき事はここコーレンシュトッフにある。

 新たな人生、生まれた母国。そのために全力を尽くそう。


(とりあえずは求婚の返事だよねぇ。前世で見た事のあるタイプなら私に攻撃できないはず。そこを突けば……)


 きっと上手くいく。あの高慢な男を撃退できる。自分は助けてくれるヒーローを待つ不幸な少女じゃないのだ。


 ただ一つ、オリクトは読み違えていた。あの男の行動力を、自分に対する執着心を。

 まさかカルノタスが直接王城に求婚をしに来るとは思ってもいなかった。

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