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第八会「体育祭②」

初めて書いたので拙いと思いますが、これから成長していければと考えていますので、温かい目で見守っていただければ幸いです。

 

 体育祭も後半戦に突入した。

 俺が出場する競技はあと二人三脚だけだがその前に委員の仕事としてこの時間の救護係を任されている。

といってもけがをした人や体調の悪い人が来たら保健室まで連れていくだけなのだが一応テントに待機している。


「もう少しで俺が担当する時間も終わりだな」

 俺は時計を確認しながらそう呟いた。今のところ誰も来なかったので、このまま来ないものだと思っていた。

「月、悪い、ケガしちゃった」

 そう言ってテントを開けたのは土門だった。


「土門!ケガしたのか、大丈夫か?」

 土門は足を引きずっていた。

「どうしたんだよ、何があったんだ?」

「それが障害物競走に参加する子が一人休んでてさ。一種目参加は俺と月と日早片さんだけだろ?月は委員の仕事があったし、日早片さんに頼むのもなんか気が引けたから俺が代わりに出場したんだよ。そしたらそこで転んでさ。その時に足くじいちゃったんだ」

「なるほどな。まだ痛む、よな。ほら、肩貸すから保健室行くぞ」

 俺は土門に肩を貸して一緒に保健室に向かう。


「まあ、痛むっちゃあ痛むけど、軽い捻挫だと思うんだよな。念のためな。いやー、転ぶなんてな。代わりに出場してケガなんて、笑いもんだぜ」

「なんだ、そこまで大きいのじゃないのか。安心した」

 土門はサッカー部でもあるためそちらに影響するのではと思ったが、軽めなら大丈夫そうだ。

「悪いな、月。この後の二人三脚は無理そうだ」

 そういえば俺は土門と二人三脚に出場する予定だった。


「おい、待て。じゃあ俺のペアはもしかして…」

「そうだな。日早片さん、だな」

「まじか…」

 どうやら俺は日早片さんと二人三脚をしなければならないらしい。

「こ、これってほかの男子に頼むことってできないのか?」

「んー、まあ大丈夫なんじゃないか?誰かやってくれそうな人に声かけてみろよ。まあ、あいつらは面白がって代わってくれなそうだけどな…」

 俺は土門を保健室まで届けた後、すぐにクラスの場所へ向かった。


 ―――――――――――――――――――――――


「つーづいてはー、二人三脚でーーーす!!!」

 社先輩の盛り上げアナウンスを合図に出場する生徒は定位置に移動し始めた。

 俺も移動してアンカーの位置についた。

「はぁ、結局こうなるのか…」

 そう、日早片さんと一緒にだ。

「…」


 俺はもちろんクラスの男子に頼みに行った。

 しかしあいつらは話を聞いた途端全員で顔を見合わせ、にやにやしながら胡散臭い演技をし始めたのだ。

「イタイ、イタイ。アア、アシガー」

「キュウニフクツウガー」

「おい!お前ら面白がってるだろ!」

 俺がそうツッコむとみんな笑って俺に近づいてきた。

「まま、日早片さんと走って来いよ。正直日早片さんって誰とも話したりしないだろ?俺たちも見てみたいのさ。日早片さんが誰かと南下してるところをよ」

 そう耳打ちしてみんな下手な演技をしながらはけていった。


「あいつら…」

 俺は仕方なく日早片さんのもとへ向かいお願いをする。

「日早片さん、さっき土門がケガしちゃってさ。決まり的に一種目にしか参加してない人がこういう時に代わりを務めることになるんだけど、俺と土門と日早片さんだけなんだよね。だから土門の代わりにお願いできるかな?」

「はぁ、仕方ない」

 俺が頼み込むと日早片さんは重そうに腰を上げ、アンカーの場所まで向かい始めた。



 ピストルと同時に第一走者たちがスタートを切る。

 俺と日早片さんの出番はまだなので待機していた。

「ほんとによかったのか?」

「しつこい。これは誰が悪いとかじゃなく仕方のないことだから別にいい」

「そんな言い方ないだろ。こっちも気を遣ってやってんだから」

「そういうの、いらない」

「ああそうですか。すいませんでしたね」

(ほんとに俺のこと嫌いなんだな)

 これ以上話してももっと雰囲気が悪くなるだけだと思ったので話さないでおいた。

 バトンがつながれ、俺たちの出番が近づいてくる。


「そろそろ準備してください」

 係の人に言われ、俺たちはお互いの足をハチマキで結んだ。

 (まあ、さすがにどんな順位でも誰も何も言わないよな)

 そう思いながら俺たちはレーンに立った。

 一組は今三位に位置している。一位と二位の組は先にバトンを受け取って行ってしまった。

「頼む!ラストがんばれ!」

 俺たちのクラスのペアが近づいてきてバトンを受け取る。

「ああ、頑張る!」

 そう言ってバトンを受け取り俺たちはスタートを切る。

(ちょっと待て、俺たちどっちの足から始めるか決めてないぞ)

 俺がそう思った時はすでに内側の足を動かし始めていたのでもうどうしようもなかった。

(まずい!転ぶ!)

 しかし俺たちが転ぶことなかった。むしろ最高の走り出しだった。

 たまたま足があったのかもしれない。ここから速さが合わずに崩れていくのではという考えが頭に浮かんだが、杞憂だった。


 俺たちは何の打ち合わせもしていなかったが、タイミングやスピードまでほとんど完璧に合っていた。

 どんどん風に乗り、スピードが上がっていく。

 俺が日早片さんに合わせているわけではない。じゃあ日早片さんが合わせているのだろうかとそちらに目をやったが、日早片さんも驚いた顔をしていた。

 そのまま前の一ペアを抜き去り、俺たちは二位でゴールした。

 一位のペアは俺たちがスタートを切るときにはすでにゴール手前にいたので仕方がなかったが、俺たちが同時にスタートしていたら勝っていただろう。

 俺たちは二位の場所に案内され、そこで足につけていたハチマキを外す。

「日早片さん、もしかして俺に合わせてくれた?」

「…合わせてない」

 そう答えて日早片さんはクラスの場所へ戻ろうとする。


「ありがとう!土門の代わりに走ってくれて」

「…」

 少し止まって日早片さんはこちらを振り向く。

「どういたしまして」

 それだけ言って日早片さんは行ってしまった。

(きれいだ…)

 今は桜もないし日早片さんがどんな人なのか少しは知っている。

 それでも俺は初めて会った時と同じ感想を抱いてしまった。



「結果発表ーーー!!優勝は…」

 社先輩の結果発表アナウンスがされている時、土門が俺のところにやってきた。

「めちゃめちゃ息あってたじゃんか」

「そうなんだよ。別にお互い合わせたってわけじゃないんだけどさ。なんかすごい走りやすかったんだ」

「俺とより?」

「もしかしたら」

「おいー、俺は悲しい…。月はあんなに練習した俺よりもその日限りの女を選ぶだなんて…」

「冗談だよ。もちろん土門との方がやりやすいのはもちろんだ。男だしな。でもなんていうか、打ち合わせもなしでお互い合わせようともせずにあのやりやすさは…。なんでだ?」

「さあね。なんだかんだお似合いなんじゃないの?君たちは」

「まさか。日早片さんに限って、絶対ありえないね」

「そうかねぇ」

 そう言って土門は空を見上げた。

「まあ、後で日早片さんにお礼言わなきゃな」

「みっなさーん、今日は楽しめましたかーー?」

 周囲から歓声が上がった。

「それではー!これで最皇高校体育祭、終了でーーす!皆さん、おっつかれさまでしたーーー!!」

 こうして高校入学後の初めての大イベント、体育祭が終了した。


 ―――――――――――――――――――――――


 俺は催事委員として片づけの仕事をしていた。

「おっ疲れ様!月くん!」

「火恋さん、お疲れ」

「今日、すっごく楽しかったね!委員の仕事もできたし、体育祭も大成功だったし!」

 火恋は大満足といった表情をしている。


「そうだね。火恋さんもたくさん一位とれたでしょ」

「もちろん!出た種目は全部一位だったよー!」

 そう言って俺にピースを向けてくる。

 火恋さんは本当にすごくて、元陸上部の走りで大活躍だった。

「月くんも、見てたよー。二人三脚、すごかったね」

「ああ、土門がケガしちゃったからどうなるかと思ったけど何とかね」

「急だった割には息ぴったりに見えたけど」

「あはは、何でかな。なんか意外とね」

「ふーん」


 火恋さんは少し考えた後、話をつづけた。

「ねぇ、もし私たちが二人三脚やったら息ぴったりかな?」

「どうだろう。火恋さんは足速いし俺が追いつけなさそうだな」

「そうかなー。やってみる?」

「やらないよ!」

「えー、残念だなー」

 そんな会話をしていると、社先輩から集合がかかった。

「みんな!今日はほんっとうにありがとう!みんなのおかげで体育祭、大成功だよ!」

 社先輩は俺たちに拍手をくれた。

「委員長がいたからですよ。盛り上げも俺たちのサポートも。ありがとうございました」

 副委員長に続いて俺たちも拍手を社先輩に送る。

「み、みんなぁ」

 社先輩は涙目になりながら俺たちに抱き着いてきた。

「ちょっと、委員長、やめてくださいよ!」

「いいじゃんいいじゃん!今はみんなとこの喜びと感動を共有したいの!」

 イベントごとでは感情も100%になるらしい。

 こうして委員長が落ち着くのを待ち、そのまま解散ということになった。


 俺は社先輩に声をかけた。

「社先輩」

「お、月くん。どうしたの?」

「あと一週間ありますが、大きい行事が終わったので一応。ありがとうございました」

「ああ!そうだね!月くん、三週間だけだもんね。まあ来週はないようなものだし、こちらこそありがとう!月くんがいてくれて助かったよ!」

「あの、俺ってサインをもらえる働きはできたのでしょうか。正直、あんまり仕事をたくさんこなしたっていう実感がなくて…。役に立っていなかったんじゃって」

「もちろんサインはあげるよ!しっかり仕事をしてくれたしね!」


「それにね、月くん。仕事をした実感がないって思うかもしれないけど、そんなことはないよ。月くん、土門くんを保健室まで運んでくれたでしょ?あの後何人か具合が悪い子が来てね。もちろんその子の対応は私たちがしたけど、月くんがいなかったら私たちが土門くんを連れて行かなきゃいけなかったからその子たちの対応まで手が回らなかったかもしれない」

 社先輩は俺の目を見て話してくれる。

「他にもたくさん助けられた場面もあったよ。自分が仕事をした実感がない、役に立ってないって思っていてもそれは絶対誰かの助けになってる。私もそうだしね」

 社先輩はそう言って俺の両肩に手を乗せ、続けた。


「これは仕事だけじゃなくて言葉、行動も同じなの。自分の何気ない言葉が誰かの支えになっていることもあるし、何気ない行動が誰かを助けているかもしれない。だからね、月くん。これから委員会以外でもこれまでのことを思い出して。そしていろんな人とお話をして、いろんなことに取り組んで楽しく学校生活を送ってほしいな。催事委員は楽しさを届ける委員会だからね!」

 社先輩は語り掛けるように俺に伝え、肩から手を離した。

 今日の社先輩は本当に頼りになったし、尊敬できた。社先輩が委員長だったから体育祭も大成功に終わったのだろう。

 夕日をバックにして立つ社先輩は本当に輝いていた。


 ―――――――――――――――――――――――


「失礼します」

 体育祭が終わり、休みを挟んだ今日、俺は催事委員室に来た。

 体育祭の日にサインは休み明けと社先輩に言われたので取りに来たのだ。

「社先輩、サインをもらいに来ました」

「えー、サイン?」

「そうです。ここにお願いします」

「あー、サインね、サイン」

 そう言って社先輩は紙にサインを書いて…。


 いる途中で寝てしまった。

「zzz…」

「社先輩?サインをお願いしますよ。おーい、社せんぱーい」

 社先輩はなかなか起きない。

 本当にあの日みんなを仕切って体育祭を大成功に導いたのはこの人なのか疑わしくなってしまった。

「ちょっと、社先輩!起きてくださいよーーーーー!!!」


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。

続きもぜひ、読んでいただければと思います。よろしくお願いします。

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