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第七会「体育祭①」

初めて書いたので拙いと思いますが、これから成長していければと考えていますので、温かい目で見守っていただければ幸いです。

 体育祭当日、俺を含めた催事委員はみんなより早めに学校に集合となっていた。

 当日準備や流れの確認などをするためだ。

 催事委員室に行くと、そこにはいつもと様子が違う社先輩がいた。

 いつもは少しぼさっとしている髪もしっかりまとめられ、寝るときにもかけたままだったメガネもかけていない。

「おっはよう!みんな。今日の体育祭、張り切っていこう!」

 そしてテンションもおかしい。

「副委員長、これって」

「ああ、言っただろ?委員長はイベント当日になるとスイッチが入ったみたいに元気になるんだ。そしてなぜかメガネも外れる」

「なるほど…」

 普段の火恋さんよりも元気になっている気がする。

「みんな、今日はもちろん委員としての仕事もあると思うしもちろん大事だけど、第一に体育祭を楽しむこと!これを忘れないで!困ったことがあったら何でも聞いて!」

 今日の社先輩は本当に頼もしくて、委員長みたいだった。いや、そういえば委員長だった。

「これより、最皇高校体育祭を開催しまーーす!!!」

 社先輩の元気なアナウンスとともに体育祭が始まった。



 俺の仕事は初めの100m走の案内と途中の救護係だけだった。

 火恋さんも似たような感じだと言っていて改めて一年生は仕事が少なめになっていることを実感する。

「月くん!お疲れ様!」

「火恋さん。早速出番?」

「うん!見ててねー!一番とってくるから!」

 そう言って火恋さんは自分のレーンまで行き、ピストルの合図と同時にスタートした。

 元陸上部ということもあり、きれいなフォームで走っていく。

 昨日言っていた足の速さには自信があるというのは本当のようで、周りと大差をつけてゴールテープを切った。

 一位の旗を持ってこちらに笑顔で手を振っている。

 俺は小さい子供のような火恋さんの無邪気な笑顔に少し照れてしまい、軽く手を上げることしかできなかった。


―――――――――――――――――――――――


 特に大きな問題もなくプログラムはどんどん進んでいった。

 俺の100m走は三位という何とも言えない結果だったが、周りが運動部だらけだったので悪くないのではと思っている。

 土門と日早片さんは一位を取っていたが。

 土門はともかく、日早片さんは運動神経も抜群らしい。

(超人だな、あの人は…)

 そう思っていると、プログラムは借り人競走に移った。


「続いてはー、かーりびと競走でーーーす!!!」

 社先輩のアナウンスはずっとこんな感じだ。周りの生徒も盛り上がっている。

 出場する生徒が続々とレーンに集まっていった。

「お題は開けてみてからのお楽しみ!ちょっと言っちゃうと、普通のものからキュン!なもの、え?ってなるもの何でも!さあ、あなたはどんなお題を引くのでしょう!」

 こうして借り人競走が始まった。毎年生徒に人気の競技らしい。

 いろんな人が連れていかれている。

 ゴール前で審判がお題を確認して問題なかったらゴール、だめだったらもう一度連れてくるというものだ。

 だめだと判定されている人もいる。少しふざけて笑いをとるのも醍醐味というものなのかもしれない。

 そう考えていると、俺のところに一人やってきた。

「月くん。一緒に来てぇ」

 金美さんだった。

「え?俺?」

「うん」

 俺は金美さんに手を引かれるままゴール前にたどり着いた。

「さて、お題は?」

 金美さんが持っている紙には「ゲームが得意な人」と書かれていた。

「金美さん?俺、ゲームが得意ってわけじゃ…」

「私よりゲームが上手い人見たことないんだよねぇ。だから自分を連れていきたいんだけどぉ、それはできないしぃ。なら私と一緒にゲームをやったことがある人なら私と戦ってるからゲームうまいでしょぉ」

 それでいいのか。

 審判もOKを出すか悩んでいる。

 後ろからほかの生徒も近づいてきていてこのままでは一位になれない。

「審判さんさぁ、このゲームやってるぅ?」

 そう言って金美さんはスマホの画面を見せた。

「ああ、やっている。人気だし俺も結構やりこんでいる」

「この一位、私なんだぁ」

「え!?あなたがあの〝狂った猫〟さんですか!?あなたが言うならそうなのでしょう!合格!」

 そうして金美さんと俺はゴールし、無事一位になることができた。

「ありがとねぇ、おかげで一位だよぉ。」

「役に立てたならよかった。金美さんはほかの競技出るの?」

「まさかぁ。これだけだよぉ。あとはゲームしてるぅ」

 そう言って金美さんは手を振ってクラスの場所に戻っていった。

 (相変わらずだな)

 マイペースな金美さんと別れ、俺も自分のクラスの場所に戻った。


 ―――――――――――――――――――――――


 クラスの場所に戻っている途中、また呼び止められた。

「あ、あの!月くん!」

 そう言って俺に声をかけてきたのは紡木さんだった。

「紡木さん?どうしたの?」

「一緒にきてほしくて…」

 紡木さんは恥ずかしそうにしながら下を向いている。

「うん、いいよ。行こう」

 紡木さんは嬉しそうな表情でこちらを見上げ、一緒にゴールに向かった。

「紡木さん、お題って何だったの?」

「ええと、その…」

 紡木さんは答えてくれず、結局ゴール前に着いてしまった。

「おお、また君か!さて、お題は?」

 審判に聞かれて紡木さんが紙を開くとそこには「友達(異性)」と書かれていた。

 確かに紡木さんは男子と話すことが苦手だし、この前の親睦会で友達になったばかりなので俺が適任だったのかもしれない。

「あなたたちは友達ですか?すごくよそよそしく見えるんですが」

 紡木さんがものすごく恥ずかしそうにしているので審判に少し疑われている。

「友達ですよ!ね、紡木さん!」

「は、はい!友達です!」

「うーん」

 まだ納得いってないようだ。

 (こうなったら…)

「ごめん、紡木さん!」

「え…」

 俺は紡木さんの手を握り、審判に見せつけた。

「ひゃぁ!」

「見てください!手も繋げるくらい仲いいですよ!」

「うん、これは認められますね。合格!」

 こうしてゴールできた俺たちは三位の旗をもらった。

「は、あの、月くん、て、てが…、まだ…」

 紡木さんのか細い声で俺はまだ手を握っていることに気づいた。

「ああ!ご、ごめん!いきなり手なんか握っちゃって」

「い、いえ、月くんがこうしてくれたおかげで合格をもらえましたし、ゴールもできました」

 紡木さんの声はか細いままで、一向にこっちを向いてくれない。

「わ、私、戻りますねー!」

「あ、ちょっと」

 紡木さんはそう言いながら走ってクラスの場所に戻ってしまった。

 呼び止めようとしたが紡木さんはもう見えなくなっていた。

 俺が完全に悪いのだが、嫌われたかもしれないというショックを抱えて俺もクラスの場所に向かった。


 ―――――――――――――――――――――――


「やらかしたなー」

 俺はさっきの行動を後悔しながらクラスの場所に戻った。

 よく考えればあんなことしなくてももっと別の方法があったはずだ。

 そんなことを考えていたら、また一人、俺の前に来た。

「ちょっと」

 そう声をかけてきたのは同じクラスの日早片さんだった。

「え?」

「あなたがお題の人なの。来て」

 そう言われ俺は日早片さんとともにゴール前まで向かう。

「なあ、お題は何なんだよ」

 俺がそう聞いても日早片さんは答えてくれず、ゴール前に着いてしまった。

「また君か…」

 審判には変な目で見られている。

 日早片さんは審判にお題を見せた。

「敵…?」

 審判は不思議そうな顔で紙とこちらを見比べている。

 お題には「敵」という文字がでかでかと書かれていた。

「おい、なんだよ敵って」

「私は生徒会長になりたい。そしてこの人も生徒会長になりたい。つまり私たちは敵同士」

 日早片さんはそう審判に説明した。

「なるほどね、んー確かに、それなら」

 そう言って俺たちは合格をもらうことができ、ゴールした。

「ちょっとー、敵って何ですかー?」

「私たちは敵同士。間違ってない」

「そこはライバルとかもっといい感じの言葉をさ」

「私の方が優秀。ライバルじゃない」

 カチンときたが、確かに成績も運動も日早片さんの方が上なので言い返せない。

「でもお題に適任の人がいてくれて助かった」

「そりゃどーも。よかったですね」

「あ、ありが、とう」

「え?」

 まさかお礼を言われるとは思っていなかったので俺はびっくりした。

「お礼を言うのは礼儀。常識」

 そう言って日早片さんはいなくなった。

(お礼を言われると、なんとも…)

 俺はどうしようもないこのモヤモヤを抱えたままクラスの場所に向かった。


 ―――――――――――――――――――――――


 さすがにもうないだろう。そう思っていたのも束の間でまた一人、俺のもとへやってきた。

「月くん!いいかな?」

 今度は火恋さんだった。

「ええと、もしかして…」

「そ!借り人ー!」

 俺は火恋さんに連れられゴールを目指した。

「見てたよー、月くん。金美ちゃんにつむちゃん、日早片さんにも連れていかれてたねー」

「そうなんだよ。まあお題にはあってたんだけどさ…」

「モテモテですな」

「なっ!違うって!」

「あはは!面白―い!」

「そういう火恋さんのお題はなんなのさ…」

「私のはね、同じ委員会/部活(所属していない人は隣の席の人)だった」

「それ俺じゃなくても良くない?」

「いいじゃん!なんとなくだよ、なんとなく」

 そうこうしているうちにゴール前までたどり着いた。

「…」

 もう審判は声もかけてくれない。

「さて、お題は?」

「これです!」

「二人とも催事委員です!」

「はい、合格」

 こうして俺たちはなんなくジャッジを突破して一位でゴールした。

 火恋さんはここでも一位をとるらしい。



 俺たちがゴールした後に一組の男女ペアが審判にお題を確認してもらっていた。

「お題は…。好きな人!」

 男子生徒側が選手だったようで、連れてこられた女子生徒は顔を赤くしながら照れていた。

「判定は…、合格!」

 合格をもらいゴールした後、男子がそのまま告白、女子が受け入れ一組のカップルが成立した。

 周りも生徒も大盛り上がりで社先輩のアナウンスもさらに周りをあおっていた。

「いいなぁ」

「…え?」

「私たちも歩いてるときはあんな風に見えていたのかな」

 火恋さんは成立したカップルを羨ましそうに眺めていた。

「いや、どうだろう。俺たちは違うんじゃないかな」

 俺がそう答えると火恋さんは泣きそうな顔で俺を見つめてきた。

 (え?なんでそんな顔するんだよ。もしかして俺とそう見られたいってことなのか…?)

 そう思い俺は続けて話す。

「いや、でももしかしたらそう思われてる、かも?」

 そう言った瞬間、火恋さんは俺に近づいてきて答えた。

「おや?もしかして月くんは私とそう見られたいってことなのかな?」

 火恋さんはいつもの顔に戻っている。

「いや、ちが、え?だって今泣きそうな…」

「ああ、ちょっと目に砂が入っちゃってねー」

「なんだよ!」

「あはは!ごめんごめん!でもありがと!月くんのおかげでこの競技も一位だよ!」

 火恋さんはそう言ってまた一位の旗を無邪気な笑顔で胸の前に掲げていた。

 またもやその仕草と表情にドキッとしてしまった俺は、恥ずかしさをかき消すために急いでクラスの場所に戻ったのだった。


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。

続きもぜひ、読んでいただければと思います。よろしくお願いします。

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