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第六十一会「お願い(冬休み⑥)」

長い期間お休みして申し訳ありませんでした。これからは今までのように投稿できると思います。

 

 土門のストーカーに付き合わされた初詣。

 来てしまったからには仕方がない。

 せっかく来たのだからしっかりお参りしておこう。


 土門、きょろきょろしすぎだぞ。

 あんまりそうしてると余計怪しく…。

「なあ、月」

「どうした?」

「…すまん。トイレに行ってくる」

「…ああ、行ってきなよ」


 土門はダッシュでトイレに走っていった。

 そこで待ってるって言ったの、聞こえたか?

 まあ、聞こえてなかったら連絡が来るだろう。

 俺は近くのベンチに座って土門が来るのを待った。


「それにしても、寒いな…」

 雪は降ってないが、たまに吹く風が顔に刺さってとても痛い。

 そういえば午後にかけて風が強くなるって言っていたような…。

「ん?」

 そんなことを考えていると、俺の前を見知った顔が横切った。


「「あ」」

 目が合うと同時に声を出す。

「月じゃねーか」

「…どうも」

 そう、さっきから土門が探していた結川先輩だ。


「なんだ、一人で初詣か?」

「いえ、土門と来てますよ。トイレに行ってて」

「ああ、なるほど」

「結川先輩こそ、一人ですか?」

「私が一人で来るわけないだろ」

 そう言って結川先輩は俺の隣に座った。

 結川先輩の連れなんて一人しかいないだろう。

 いや、結川先輩が連れなのか?


「…」

「…」

「なんで座ったんですか?」

「いいだろ別に。私も待ってんだよ」

「待ち合わせはここなんですか?」

「そうだよ」


 結川先輩と話すのは久しぶりだ。

 去年、美化委員の手伝いに行っていたときはかなり仲良くなれたような気がしたのだが…。

 どんな距離感だっけ…。


「生徒会はどんな感じだ?」

「結構頑張ってます」

「結構?」

「めっちゃ頑張ってます」

「そうじゃなきゃ困る」

「すみません…」

 考えてみれば、二人きりでじっくり話すという機会はなかったかもしれない。

 いつも世理先輩がいたからな…。


「まあ、私は結構…」

「あああああ!!!!!」「あああああ!!!!!」

「「!?」」

「つ、つつ、月くん!?」

「結川先輩!?」

 やっぱり、世理先輩だった。

 ちょうど一緒に土門も戻ってきたようだ。


「結川先輩、き、奇遇ですね」

「土門、そうだな」

「月くん!なんでここに?」

「土門に連れられて、です」

 さっき結川先輩、なにか言おうとしていたような…。


「こんなに人がいるのにそろうなんて、すごいことも起こるもんですね!せっかくですし、このまま一緒に回りませんか!」

 土門が必死に二人をつなぎとめる。


「どうですかね、結川先輩」

「まあ、私はどっちでもいいけど…。どうします?世理先輩」

「そ、そうだね。四人がそろうなんてほんとにすごいよ、うん、うん。それじゃあ、みんなで回ろう!」

 世理先輩もなんか様子がおかしい気がする。


「見てみろ、月。やっぱりこういうことってあるんだなあ、まったく!」

「はいはい、良かったな」

 まあ、土門の目的を果たせたならよかった…のか?


 人ごみに紛れて迷子になってしまわないようにみんなで近づきながら初詣を回り始めた。


 ―――――――――――――――――――――――


「そういえば、二人は何をお願いするの?」

 世理先輩が俺たちを見ながらそう尋ねた。


「俺は健康に過ごせますようにとか、勉強ちゃんとついていけますように、とかですかね…」

「月くんは勉強の方は心配ないでしょ?」

「そうですかね…。結構心配なんですけど…」

 世理先輩は何の疑いもないまっすぐな目でこちらを見ていた。

 世理先輩の中でそんなに俺の評価って高いのか…?


「世理先輩はなんてお願いするんですか?」

「え、私?」

 世理先輩は左右の指をぐるぐる回している。

「わ、私は…」

「?」

 なかなか続きが出てこない。


「なんで言ってくれないんですか?」

「え、ええと…。ほら!こういうのって言ったらかなわなくなるって聞くし…」

「それじゃあ俺の願いはかなわないじゃないですか!!」

「そ、そんなことないよ!…たぶん…」

「まあ、言いにくいことだったら大丈夫ですけど…」

「ど、土門くんはなんてお願いするの?」

 世理先輩はそらすように話題を土門に向けた。


「俺ですか?俺は、そうですね…。俺は…。いや、俺も秘密でお願いします」

「土門くんも?そうだよね!そうしよう!」

「土門、お前…」

「藍ちゃんは?」

「この流れは私も秘密の方がよさそうですね」

「結川先輩まで!?」

 これじゃあ俺の願い事だけかなわないじゃないか…。


「大丈夫だよ。月くんなら神様の力が無くてもかなえられるよ!」

「だといいんですけど…」

 そうこうしているうちに、俺たちの番まであと数組というところまで来た。


「ええと、『二礼二拍手一礼』でいいんだよな?」

「ああ、確かそうだったような…」

 俺と土門で確かめるように前の人たちの動作を見たが、その通りで問題なさそうだ。


「一つでも間違えたら、ご利益がなくなりそうだよな」

「さすがにそこまで神様もケチじゃないんじゃないか?」

「一応、ご利益が最大になるようにミスの無いようにしないと…」

 とても張り切った様子の土門。


「なんでそんなに張り切ってるんだ?」

「そんなの、頼みごとをかなえてもらうために決まってるだろ」

「今更なんだが、この神社はなにか有名だったりするのか?」

「いや、あんまりそういうのは聞かないような…。あ、でも、どちらかというと恋愛面が強かったような…」

「はっきりしない神様だな」

 なんだか気まぐれっぽい神様のような気がして、信憑性が下がった。


「あ、私たちの番だ」

 とうとう俺たちの番がやってきた。

 一列に並び、各々がお賽銭を投げる。

「それじゃあ、鳴らします」

 全員の準備が整ったのを確認した結川先輩が鈴緒を何度か鳴らす。

 それを合図に二礼、二拍手、一礼を行い、その間に心の中で願いを唱えた。


『生徒会長になれますように…』



最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。

続きもぜひ、読んでいただければと思います。よろしくお願いします。

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