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第六会「体育祭準備」

初めて書いたので拙いと思いますが、これから成長していければと考えていますので、温かい目で見守っていただければ幸いです。

「これより、最皇高校体育祭を開催しまーーーす!!!」


 ―――――――――――――――――――――――


 経理委員会での三週間も何とか仕事にくらいつき、「くっつき大作戦」も成功?させた俺は、冬馬先輩からサインをもらうことができた。

 入神会長に報告をするため生徒会室に足を運ぶと、そこには火恋さんとオレンジがかった髪色でロングヘアのメガネをかけた女子、真面目そうな男子がいた。

「月くんじゃん!」

「火恋さん。何か用事でもあるの?」

「そうなの!生徒会長に呼ばれてさ!」

 入神会長はまだ生徒会室にいなかった。

「月くんは?」

「俺は経理委員長からサインをもらえたから報告しに。あと次の委員会がどこになるのかを聞きにね」

「おお!サインもらえたんだね!金美ちゃんから聞いたよー?家に行って一緒にゲームしたんだってー?どうでしたか、初女の子の家は。楽しかった?」

「なんで初って決めつけるんだよ!」

「初じゃないの?」

「初だけど…」

「やっぱりそうじゃん!いいなー、私も行きたかったなー。ゲームやりたかったなー」

 (もしかして自分が誘われなくてすねてるのか?)

「じゃあ今度一緒に行こうよ、金美さんの家にさ。それでみんなでゲームしよう。金美さんに許可とってからだけどさ」

「女の子を誘って別の女の子の家に行くなんて、月くんは欲しがりだなー」

「そ、そういうわけじゃ!」

「あはは、うそうそ!今度一緒に行ってゲームしようね!」

 火恋さんは友達になってからいじってくることが多くなった気がする。

 そんな話をしていると入神会長がやってきた。

「遅れて申し訳ない。先生と話があってな」

「月もいるのか。ちょうどいいな」

 そう言って入神会長は席についた。

「今月末、六月末は毎年体育祭がある。今年も例年通り開催予定だ。催事委員も準備や運営等頑張ってもらいたい。これが仮配属の一年生を含んでの初めての大きな仕事になる。もちろん俺たちも手伝うが、頼んだぞ、社」

 入神会長がそう言うと、オレンジがかった髪色の彼女はゆっくり手を挙げて返事をした。

「ついでだ。月は今日から三週間催事委員に行ってもらう」

「わかりました」

 おそらく社という人は催事委員長なのだろう。その後も入神会長は催事委員長としばらく打ち合わせをしていた。俺たちは打ち合わせが終わるのを待った。



「私から紹介するね!催事委員長の社春音(やしろはるね)さんだよ!」

「社春音ー。よろしk」

 社先輩は最後まで言い切れずにその場に倒れこんだ。

「ちょっと!大丈夫ですか!?」

 俺は声をかけて慌てて駆け寄った。

「zzz…」

「寝てる!?」

 こんなところで、しかもこの一瞬で社先輩は眠ってしまった。

「社先輩はねー、すごい眠い人なんだよ」

「何それ!?」

 そういわれたが説明になってない気がした。

「社先輩、起きてください。教室行きますよ」

「んん、んー」

 火恋さんに起こされ、ゆっくり立ち上がった社先輩は、火恋さんに連れていかれた。

 (俺は催事委員でしっかり仕事できるだろうか…)

 社先輩を見て不安に駆られながらもとりあえず授業に向かうことにした。


 ―――――――――――――――――――――――


「体育祭では全員参加の種目を除いて、一人必ず一つは選択種目に参加してください」

 担任の先生からそう説明を受け、クラスで話し合うことになった。

「じゃあ、皆出場したい種目を教えて」

 各クラスで催事委員に所属している人が進行するのだが、このクラスには催事委員に仮配属されてる人がいない。俺は生徒会仮配属だが、今は催事委員のため進行することになった。

 次々と種目が埋まっていき、残っている選択種目は二人三脚、借り人競走のみとなった。

「月はどれに出るんだ?」

「俺は一個だけにしようかな。催事委員の仕事もあるしさ」

「そっか、今は催事委員だったな。進行役もお疲れさんよ。どうよ、風紀、経理と回った感想は?」

「どっちも大変だったよ。でも、やりがいもあった。委員会での仕事量がこんなにあるのに、生徒会長はさらに多くの仕事を抱えてるっていうのが恐ろしいね」

「おっと、さすがの月さんにも難しいですか」

「いや、頑張るよ。そういう土門はどうなんだよ。サッカー部と美化委員の両立は大変じゃないのか?」

「まあ、大変ではあるけど、まだ美化委員の仕事は思ったより多くなくてさ。先輩たちがやってくれてるのかもしれないけど、今のところは大丈夫かな」

 美化委員は仕事が少なめなのか。いいことを聞いたかもしれない。

「なあ、月。一緒に二人三脚に出ないか?これで選択種目に参加したことになるだろ。俺も一個にしておこうかなって思っててさ」

「いいね。じゃあそうしよう」

 俺は土門と俺の名前を二人三脚の欄に書いた。

「じゃあ後は…」

 まだ一つも出場していない人を探してみる。日早片さんがまだ一つも選んでいなかった。

「日早片さん、借り人競走でいいかな?二人三脚が良かったら変わるけど」

 日早片さんは読んでいた本(参考書かもしれない)から目を離すことなく頷きいた。

 (俺嫌われてるのか…?)

 そう思うほど冷たい対応だったがこれで全員参加する種目が決まり、そのまま放課後となった。


―――――――――――――――――――――――


「失礼します」

 今日から催事委員に所属することになっているので俺は催事委員室を訪れた。

「月くん!お疲れさまー!」

 火恋さんはもう催事委員室にいた。

「火恋さん、お疲れ様。早いね」

「催事委員はさ、行事とかが無い時は基本的に仕事が無いんだ。ちょっと他の委員会を手伝ったりとかはあったけどね。だから催事委員がメインの仕事がやっとできるからさ。張り切って早く来ちゃった!」

 火恋さんはそう言って力こぶを見せるようなポーズをとった。

 (なるほど。だからこのタイミングで催事委員なのか)

 催事委員がこのタイミングに合わせられていることに納得した。

「その紙は?選手表?」

 火恋さんは俺が持っている紙を見て尋ねてきた。

「そうだよ、俺のクラスの選手表」

「おお!いいねいいね!体育祭って感じ!見てもいい?」

 この紙には誰がどの種目に出場するかしか書かれていないので見せても問題ないだろう。

 俺は了承して火恋さんに紙を渡した。

「ありがとう!おおー、なるほどなるほど。月くんは二人三脚だけなんだね」

「うん。催事委員の仕事もあるし、あんまり参加しない方が良いかなって」

「確かに、それもそうかもね。後は…。選択種目で一つだけ参加なのは月くんと土門くんと日奈さんだけなんだね」

 言われてみればそうかもしれない。

「一つだけ出場の人は、誰か怪我したり休んだりしたときに優先的に代わりとして選ばれるからねー。まあ、全員無事に参加して無事に楽しく終わるのが一番なんだけどね!」

 火恋さんはそう言って紙を返してよこした。

「そうだね!それが一番だ」

 こうして二人で話をしていた時、奥側の椅子が急に動き出した。

 何だろうと思った時、ゆっくり体を起こし、大きく伸びをする人が一人そこに現れた。

 椅子を並べて横になっていたのだろう。布団で寝ていた人のようにオレンジ色の髪が乱れている。

「社先輩!?いたんですか!?」

 火恋さんは驚いて社先輩に声をかけた。

「うん、おはy」

 起きたと思ったら社先輩は言い終わる前に机に突っ伏した。

「どんだけ眠いんですか!」

 俺はツッコんでしまった。

 そうしていると副委員長含め委員の人が集まり、委員会が始まった。


 

 委員会の内容は特に難しいこともなく、種目の順番や休憩のタイミングを話し合ったり、借り人競走のお題を考えたりというものだった。

 お題にはクラスメイトや背の高い人、何々部といった普通のものに加え、好きな人や可愛い/かっこいいと思っている人などといった高校生らしいもの、変だと思う人や最近むかついた人などといった少しネタっぽいものなど様々だった。

 お題を決めている時も社先輩は眠たそうで、あまり意見を出しているとは言えなかった。

「副委員長、あれは大丈夫なんですか?」

 俺は小声で副委員長に尋ねてみた。

「ああ、まあ初めて見た人はそう思うよな。でも大丈夫。心配しないで」

 そう言って副委員長は親指を立て、社先輩に全体の流れと種目の順番を社先輩に確認した。

「これはこっち、この間に休憩の方が多分いい」

 社先輩は見た瞬間種目の順番を訂正し、副委員長もそれに従う。

「委員長はね、すごいんだ。委員長が運営に携わった行事やイベントは絶対に成功するし、みんな笑顔になるんだ。だから俺たちはこうして委員長の指示に従うし、信頼もしてる。それにね、当日はもっとすごいぞ」

 副委員長は尊敬の意を込めた眼差しを眠そうな社先輩の方に向けながら俺に話してくれた。

 (そんなにすごいのか)

 俺は当日を楽しみにしながら、体育祭の準備の話を聞いた。


 ―――――――――――――――――――――――


 月曜日の報告会も特に問題なく終了し、いよいよ今週末に体育祭は迫っていた。

 委員会はもちろんだが、クラスでもリレーや応援合戦に参加する人達の練習が盛んにおこなわれていた。

 もちろん、俺と土門も二人三脚の練習を何度か行っている。

「なあ月。俺たち、だいぶ速いよな、息ぴったりだ」

「そうだな。これもしかしたら一位狙えるんじゃないか?」

 俺と土門は二人三脚に出場する人の中でクラスでは一番の速さだった。それもあり、俺たちは二人三脚のアンカーを任された。

 クラスの雰囲気も良く、あとは体育祭を迎えるだけという状態だ。

 (意外と俺らのクラス、上位いけるのでは)

 そんなことを思いつつ、俺は催事委員の仕事に向かった。


 ―――――――――――――――――――――――


「保冷剤とスプレー、消毒液と…。これで買うものはオッケーかな」

「うん、オッケーだと思う」

 体育祭前日。俺と火恋さんは足りなくなっていたものを買い出しに来ていた。

 本当は経理委員を通して買ってもらうものなのだが、あちらも忙しいらしく、報告を忘れていたというこちら側のミスでもあるので俺たちが買い出しをしている。

「とうとう明日だね!」

 火恋さんはとても嬉しそうな表情で俺に話しかけてくれた。

「そうだね。楽しみだ」

「催事委員の仕事も忙しいかなって覚悟してたけど、私たち一年生は今日までの事前準備がメインで明日はそんなに仕事無いんだね。あってもちょっと手伝うくらいって先輩も言ってたし」

「思ってたより大変じゃなかったね。これならもう一個くらい出場しておけばよかったかな」

「まあそれは仕方ないよ。とりあえず催事委員の仕事もしっかりやって、自分の出場する種目も全力で取り組もう!」

 火恋さんは全員参加の種目に加えて、借り人競走と障害物競走、リレーに参加するらしい。

「火恋さんはたくさん出場するよね。運動得意なの?」

「もちろん!勉強も嫌いじゃないけど、体を動かすことの方が何倍も好き!」

「部活には入らないの?」

「部活みたいに全力でっていうのもいいんだけど、中学で燃え尽きちゃったかな。だから高校は部活じゃなくて体育とか行事とかで楽しくできればなって。あ、もちろん休日もいろいろ運動してるよ!」

「陸上部だっけ?」

「…うん」

 返事に少し間があった。火恋さんの表情も少し暗くなった気がする。

「火恋さん?」

「だからさ!足の速さには自信あるよ!明日も、いっぱい一位とるからね!一組には負けないよー!」

 火恋さんはすぐにいつもの表情に戻った。気のせいだったのかもしれない。

「俺たちだって負けないよ」

 そんな会話をしながら俺たちは学校までの道を歩いて戻った。

 学校に着いて社先輩に報告した後、少しグラウンドの準備をし、帰っていいよと言われたので俺たちは帰路についた。

 とうとう明日、入学して初の大きい行事、体育祭が始まる。


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。

続きもぜひ、読んでいただければと思います。よろしくお願いします。

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