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第五十八話「クリスマスパーティー!3(日常③)」

 ○第五十八会「クリスマスパーティー!3(冬休み③)」


「みなさん!何か忘れてはいませんかね??」

 どうにかして優木くんと仲良くなろうと奮闘していると、火恋さんが声をあげた。

「ほらそこー、いつまで優木くんと遊んでるんですかー」

 火恋さん、自分は構ってもらえないからってすねたな…。


「それで、何かって?」

「ふっふっふ…。よくぞ聞いてくれました月くん!クリスマスパーティーといえば、そう!プレゼント交換だよ!」

 そうだった。忘れていた。


「みんなもちろん持ってきてるよねー?」

 火恋さんの言葉にみんな頷いた。

 クリスマスパーティーの話が出たときにプレゼント交換をしようということになっていたからみんな持ってきているはずだ。

 もちろん俺も持ってきている。


「それじゃあ、やろう!」

「そうだな。それじゃあみんなプレゼントを出してシャッフルでいいか?」

「それだとぉ、もう誰のプレゼントかわかっちゃわなぁい?」

「それもそうか…」

「あ、それなら…」

 紡木さんは何か思いついたように部屋から出ていき、お母さんを連れてきた。


「あらあら〜、どうしたのかしら〜?」

「一人ずつ隣の部屋に行って、お母さんにプレゼントを一旦預けるっていうのはどうかな?それをお母さんがシャッフルしてみんなに渡して、そこからさらにみんなで回すとか」

「それ!いいね!」

 他のみんなも紡木さんの提案に賛同したことで、一人ずつ紡木さんのお母さんが待機している隣の部屋にプレゼントを持っていった。


「俺のはこれです」

「あら〜、ずいぶん小さいのね〜」

「こういうのよくわからなくて…」

「クリスマスプレゼントなんてノリでいいのよ〜。お祭りみたいなものなんだから〜」

 紡木さんのお母さんにプレゼントを渡して部屋を出ようとする。


「あなたが月くんよね?」

「…?はい、そうですが…」

「なるほど〜」

「?」


「ありがとうね〜」

「な、何がですか?」

 この人、何かのほほんとしていてつかみにくい。金美さんみたいな感じだ。


「紡木のこと」

「あ…」

「紡木から話は聞いたわ〜」

「いえ、俺は特に何もしてないですよ」

 少し沈黙が続いた後、紡木さんのお母さんがゆっくり口を開いた。


「私、こんな感じじゃない〜?だから、紡木はしっかりしないとって、いつも頑張るのよ〜。中学のときも、そんな感じで風紀委員に入ってね〜。そこからは、ねえ…」

 それで紡木さんは風紀委員に入ったのか…。


「元々ではあったのだけれど、あれからさらに内向的になってしまったのよ〜。でも最近は、明るくなってこんなにお友達もできて、しかも男の子の友達も…。紡木がこんな風になれたのもあなたのおかげよ〜」

「紡木さんが頑張ったからですよ」


「それにね…」

「?」

「ふふっ、何でもないわ〜。とにかく、ありがとう。これからも紡木と仲良くしてたら嬉しいわ〜」

「それは、もちろんです!俺も紡木さんと友達になれて嬉しいですよ」

 紡木さんのお母さんはにっこり笑って俺のプレゼントをかごに入れた。


 ―――――――――――――――――――――――


「それじゃあ、プレゼント交換会、はっじめまーす!!!」

 火恋さんの進行でプレゼント交換会がスタートした。

 俺の前には大きめの袋が置かれている。


「ここで追加の出演者を紹介します。優木くんでーす!!!」

 土門の隣に座っていた優木くんは目を輝かせていた。

 優木くんのプレゼントはお母さんが代わりに用意したらしい。


「それじゃあ、つむちゃんママに音楽を流してもらってその間プレゼントを回す。音楽が止まったときに自分が持っていたものをゲットっていう感じでいいかな?」

「「「わかった!」」」

「よーし!プレゼント交換、スタート!!」


 火恋さんの合図で音楽が流れる。

 みんなで円状に座って隣の人にプレゼントを渡す。

 いつ止まるか、どのプレゼントが渡ってくるのか分からないこのドキドキが初めてでとても楽しかった。

 プレゼントが何周かしたタイミングで音楽が鳴り止む。


「ストーーーーーップッッッッッッ!!!」

 みんなプレゼントを渡す手を止めた。

「自分のプレゼントって人はいないー??」

 みんな首を横に振る。

 全員誰かのプレゼントが渡ったようだ。


「誰から開けよっ…」

「ぼくがあける!!」

 火恋さんの言葉を遮るように優木くんがプレゼントの袋を開け始めた。


「これは…?」

 優木くんの前にはきれいなスノードーム。

 ガラスの球の中に雪だるまと少年が立っている。


「?」

 優木くんはまだ何かわかっていない様子だった。

「優木、これはね…」

 紡木さんがスノードームを逆さにしてからもう一度元に戻す。


「きれいだ…!」

 気に入ったようだ。

「俺の、だな」

「土門くんのプレゼントだったんだ!」

「ああ。これならみんな喜べるかなってな」

「センスあるねぇ」

「まあね」

 こいつ、プレゼントを選ぶのも上手いのか。なんかイラついてきたな。


「かなみ!つぎあけて!」

「私?」

 優木くんに急かされて金美さんが包み紙に手をかける。


「はやくはやく!」

「待ってぇ」

 これだけせがむってことはきっと…。


「あぁ、お菓子の詰め合わせだぁ」

「それ!ぼくの!」

 やっぱり優木くんのだったようだ。


「うれしい?うれしい?」

「うん、嬉しいよぉ。すごいおいしそうだねぇ」

 金美さんの返事に満面の笑みを返す優木くん。

「うっ!まぶしい!!」

 その笑顔に俺と火恋さんはやられてしまった。


「それじゃ、次は俺開けようかな」

 そう言って土門もプレゼントを開ける。

「これは…」

 そこには三冊のシリーズものの小説。ということは…。


「わ、私のですね…」

「紡木ちゃんのか!これは小説?おすすめなの?」

「はい!私が読んできた中でかなり読みやすいし、ストーリーも分かりやすい小説です!三部に分かれてるので多いと思うかもしれませんが、きっとスラスラ読めると……はっ!ごめんなさい!急に語りだして…」

「そんなに面白いんだ!読んでみるよ」

「ぜひ!」


「じゃあ俺も開けようかな」

 俺は自分の前にあるプレゼントを開けた。

「タオルだ」

「私のだね!」

 やっぱり、火恋さんのだった。


「月くん、運動してる?運動はいいよ、やっぱり体を動かすと元気になるからね」

「最近は特にしてないかな」

「ええ!?それじゃあ、走ろう!そしてかいた汗をそのタオルで拭こう!」

「なるほどね。でも一人で走るのって、少し退屈というか、さぼっちゃいそうだな」


「…も、もし月くんが嫌じゃなかったら、わ、私が一緒に……」

「お!走るの?俺も付き合うぜ、月」

「そうだな、土門、付き合ってくれ」

「任せろ!」


「…土門くん…」

「?どうしたの、火恋ちゃん」

「どうしたの?じゃないよ!ほんとに、もう!」

「な、なんか、ごめん」

 火恋さん、何で土門に怒ってるんだろう。


「もういいよ!次は私が…」

「先に私が開けてもいいかしら?」

「日奈ちゃん。もちろんいいよ!」

「それじゃあ…」


 プレゼントを開けた日早片さんの手には…ゲームのカセット。

 これはもう、確定だ。

「私のだぁ」

「「「「でしょうね!!!」」」」


 日早片さんは思い出すようにカセットを見つめていた。

「これって…」

「そうだよぉ。最皇祭の前に日奈に負けたやつぅ」

「これは私に渡していいの?あなたが練習するべきなじゃなくて?」

「ふっふっふ…。もう私はそれを極めたんだよぉ。今なら日奈なんて楽勝だねぇ」


「あら?そうかしら?同じ結果になるんじゃなくて?」

「それはないねぇ。一回勝ったからずっと勝てるなんてことはないんだよぉ。それに日奈はしばらく触ってなさそうだしねぇ」

「なるほどね…。今からやってもいいのよ?」

「おっ?やるぅ?私はいいよぉ」

「望むところね」

「ちょっとちょっとちょっとちょっと!」

 今にも対戦が始まりそうな雰囲気を火恋さんがぶった切る。


「まだプレゼントを開けてない人もいるんだから!対決はまた今度やってよ!」

「そうね。ごめんなさい」

「そうしようかぁ」


「はい!今度こそ私が開けるからね!」

「あっ…」

 日早片さんが何か話そうとしていたが火恋さんには聞こえておらず、プレゼントを開けた。


「な、なにこれ…」

 そこには何の動物なのか検討もつかないぬいぐるみ。

「なんだこれは…」

 みんな気になってそのぬいぐるみをじっくり見始めた。


「んー、恐竜?」

「頭は恐竜みたいだけどぉ、なんか体が変じゃない?」

「それに角も生えてるな。翼もある…」

「こわいよ…」

 優木くんも怖がっている。


「あと誰のが残ってるんでしたっけ?」

「俺と日早片さんのだね」

「これ、月くんの?」

「違うよ」

「じゃあ…」

 みんなが日早片さんの方にゆっくり視線を向ける。


「…私の、です」


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