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第五十三会「かなちゃん/ある日の帰り道(日常②)」

初めて書いたので拙いと思いますが、これから成長していければと考えていますので、温かい目で見守っていただければ幸いです。

 

○かなちゃん


「ねえ、金美ちゃん」

「んー?」

「なんで金美ちゃんのほっぺはこんなにやわらかいの?」

「そんなの知らないよぉ」

 今は昼休み。私は金美ちゃんと一緒にお昼ご飯を食べている。


 金美ちゃんはいつも通りゲームに夢中。

 私がほっぺをつついたり揉んだりしても関係なしにゲームをしている。

 あ、また勝ってる。ほんとに強いんだな…。


 私、紗衣火火恋には今日成功させないといけないミッションがある。

 それは、「金美ちゃん」を「かなちゃん」と呼ぶこと。

 今後は「かなちゃん」呼びにシフトチェンジしていきたい。


 最皇高校に入学して一番に仲良くなったのは金美ちゃんだけど、その時の呼び方のままここまで来てしまった。

 別にそのままでもいいんだけど、やっぱりニックネームというかあだ名の方がなんか親しみがあるし、それに最皇祭でもいろいろあったし、金美ちゃんと今よりもっともっと仲良くなりたいって思ったから…。


 そんなに難しいことじゃないはずなのに、なんだか恥ずかしくて今日まで呼べなかった。

 だから今日こそは、かなちゃんって呼ぶ。

 私は金美ちゃんのほっぺを触りながらそう決心した。


「…ねぇ、か、か、かな…かなt」

「あああああ!!!!」

「!?…ど、どうしたの…?」

 急に金美ちゃんが大声を出した。


「見てよ火恋!このスキン、ずっと欲しかったんだよねぇ。やっとゲットできたよぉ」

「そ、そうなんだ…。よかったね」

 金美ちゃんはとても幸せそうな顔で再度スマホの画面に目を戻す。

 タイミングが合わなかったな…。よし、次こそは!


「ね、ねえ、かな、かな…」

「?」

「かな……、金縛りにあったことってある?」

「金縛りかぁ。私はないかなぁ」

「そっかー…」

 もう、何やってるの私は。ただかなちゃんって呼べばいいだけなのに。


「か、かな…」

 キーンコーンカーンコーン。

 昼休み終了のチャイムが鳴った。なんと間の悪いチャイムだろうか。


「…火恋?早く戻らないと授業の遅れちゃうよぉ?」

「金美ちゃん!」

「?」

 もういい、決めた。今呼ぶ。絶対今呼ぶんだから。


「あの、その、なんというか…。『かなちゃん』って呼んでもいい?」

「かなちゃん?」

「そう。金美ちゃんって呼んでたけどもっと仲良くなりたくて。いや!今が仲良くないっていうわけじゃないよ?今よりもっとというか、親しみを込めてというか…」

 ものすごく早口で話してしまった。なんか変に言い訳をした感じになって余計おかしいかもしれない。


「…」

 金美ちゃんは黙ったまま。もしかしてダメだったかな…。

 その時、金美ちゃんは笑顔で口を開いた。

「なんだぁ、そんなことかぁ。全然いいよぉ」

「…ほんと!」

「なんか今日の火恋、様子が変だなぁって思ってたからさぁ。体調悪いのかなって思ってさぁ。でもそうじゃないならよかったぁ」

 やっぱり今日の私は変だったんだ。自覚はあったけど。


「ほらぁ、そんなことより早く行かないと、本当に授業に遅れるよぉ」

「わわ、ほんとだ!戻らないと!」

「廊下は走ったらだめだよぉ」

「分かってるよ!」

 私は急いで席を離れて教室の入り口に向かった。

 そして教室を出ていく前にさっきまでいた方を振り返る。


「じゃあね、かなちゃん!また放課後!」


 ―――――――――――――――――――――――


○ある日の放課後


「それじゃ、おつかれー」

 俺はチームメイトに挨拶をして部室を後にした。

 俺たち一年生が片付けをしている間に二年の先輩たちは帰ったらしい。

 なぜか片付けはすべて一年生が行うという伝統があるらしい。


 この最皇高校サッカー部は県内でも結構強く、毎年地区大会優勝、全県総体でも上位に食い込んでいる。

 三年生が引退して新チームになった今、俺たちがその伝統を受け継がないといけない。

 片付けの伝統は受け継ぐつもりはないけど。絶対俺たちの代で終わりにするんだ。


 そして新チームになったことで俺たち一年生がレギュラーになるチャンスもめぐってきた。

 ゲーム形式の練習ではかなりアピールできたと思っている。

 これでレギュラーに選ばれればいいんだけどな…。


 それにしても今日の練習もまた一段と厳しかった。

 もう少しで新チームになって初の公式戦が控えているから仕方ないのかもしれないけど、さすがに二時間半のうち最初の一時間半ずっと走りっぱなしはない。

 顧問曰く、今日は寒いからあったまるまで走ろう!だと。

 いや、新人戦も近いんだからもっと違う練習をしようよ。というか汗で冷えるってーの。


 いつもと同じ、代わり映えしない帰り道。

 何か面白いことないかなと思っていると、見覚えのある顔が。

 あれは…。

 俺はその人に近づいた。


「よしよし。……可愛い」

「日早片さん」

「!?」

 急に声をかけられて驚いたのか、日早片さんは勢いよく後ろに飛びのいた。

 両手で猫を抱えて。


「何してるの?」

「いや、別に…」

 日早片さんは目をそらしながらそっと抱えていた猫を地面に下ろし、一度咳払いをしてからいつもの表情に戻った。


「土門さん。部活?こんな時間までお疲れ様」

「ありがとう。そういう日早片さんは?なんでこんな時間まで?」

「生徒会の仕事があったから」

「ああ、そういうこと。そっちもお疲れ様」

「ありがとう」

「…」

「…」


 そこから少し沈黙が続いた。

 正直俺は日早片さんとそこまで親しくない。

 もちろん委員会のみんなと一緒に遊んだこともあるけど、一対一で話せたことはほとんどない。というか挨拶くらいしかしたことないんじゃないか?


「…それじゃあ」

「猫、好きなの?」

「…!」

 帰ろうとする日早片さんに、ふと思ったことを聞きたくなった。

 俺の質問を聞いて、日早片さんはその場で立ち止まる。


「さっき、めちゃめちゃ幸せそうな顔で猫を撫でてからさ。普段そんな表情見たことないなって思って。猫好きなのかなって」

「…」

「日早片さん?」


「…見たの?」

「見たって?」

「さっきのこと、見てたの?」

「ああ、猫ね。可愛かっ…」

「私のこと、見てたの?」

 なんだか怒ってないか?


「まあ、ちょっとだけな。すごい幸せそうだったからすぐ声かけるのもお邪魔かなって思って…」

「消してください」

「?」

「今すぐ記憶から消してください」

 日早片さんはこちらに歩いてきて、少し涙目になりながら俺を見つめた。


「いや、そんなにならなくても…」

「ダメです。私はそんな幸せそうにとろけた顔なんてしていません。いいですか?」

「うーん」

 何をそんなに嫌がることがあるんだろうか。

 まあ、クラスの人にちょっと抜けたところを見られたのが恥ずかしいっていうのがあるんだろうけど…。


「はぁ。それじゃあ記憶からは消さなくていいです。誰にも言わないでください」

「それは、もちろん誰に言うつもりも…」

「月さんにだけは絶対に、言わないでください」

「…へ?」

 驚いて変な声が出てしまった。


「な、何で月?」

 もともと誰に言うつもりはなかった。でも日早片さんから月の名前が出てきたんだ。

 どうしてなのか理由くらい聞いてもいいだろう。


「どうしてって…。恥ずかしいじゃないですか…」

「そう?そんなことないと思うけど…」

「いえ、彼は絶対バカにしてきます。私にはわかります。頭で再生するのも容易いです」

 日早片さんは迷いなしにそう言い切った。


「それに、彼とは生徒会長の座をかけて争うんです。そんな腑抜けた隙なんて見せるわけにはいけません」

「そ、そっか…」

 日早片さんは月をライバルとして見てくれているんだな。


「わかった。誰にも言わない」

「ありがとうございます」

「でも、俺はさっきみたいな表情とかもっと見せていった方が良いと思うな」

「…?なぜですか?」

「だって、そっちの方が可愛いし、みんな親しみやすいって」

「…!?」

 日早片さんは顔を真っ赤にして俺の肩を思い切りカバンで叩いた。


「いてっ!」

「あなたもそういう人だったんですね!もういいです」

「そういう人って、どういう…」

 肩をおさえる俺に目もくれず、日早片さんは立ち去ろうとした。


「ちょっと!待って!」

「まだ何か?」

「まだ、聞けてない…」

「?」

 俺は叩かれた肩をおさえながら、さっきの質問を繰り返す。


「猫、好きなの?」

「どちらかというと、犬派です」

「犬派なんかい!!!」



最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。

続きもぜひ、読んでいただければと思います。よろしくお願いします。

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