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第五十会「勝負の行方」

初めて書いたので拙いと思いますが、これから成長していければと考えていますので、温かい目で見守っていただければ幸いです。

 

「す、すげぇ…」

 画面には、二人が操作するキャラが縦横無尽に駆け回ってお互いを攻撃している様子が映し出されていた。

 二人は真剣な表情で画面を見つめている。

 コントローラーを操作する手の動きも速すぎて、俺にはよくわからない。


「私の知っているゲームじゃないわね…」

「ですよね」

「あなたたちは普段ゲームってやるのかしら?」

 会長は俺と日早片さんの方を向いて問いかけてきた。


「俺は、ゲーム持ってないんでやらないですね。スマホにも特に入れてないです。あ、でもこのゲームは、前に金美さんから借りて少しだけやったことありますよ。こんな動きはできませんでしたけど…」

「そうなのね…。日奈はどう?」

「私もゲームは持ってないですし、やらないです。…そういうのは触ってきませんでした」

「そう…。まあ、かくいう私もゲームの経験はないのだけれど」

 そんな話をしていると、一戦目が終了した。


 画面には、倒れた女のキャラと仁王立ちした男のキャラが映されている。

「一戦目は鮫川さんの勝ちか…」

 金美さんが負けることもあるんだな。


「マリナさんに一ポイントね。それじゃあ次、始めてちょうだい」

 金美さんが操作して、再び試合がスタートする。

 二戦目はさっきより金美さんが押していたが、最終的にもう一度鮫川さんが勝利した。


 これで鮫川さんが二ポイント先取、次を取れば鮫川さんの勝ちだ。

「どうしたのじゃ、金美。オフラインだとこんなものなのか?やっぱり普段はチートを使ってるんじゃろう?」

「…」

 金美さんは鮫川さんの煽りに反応することはなく、何かつぶやいていた。


 金美さんは〇対二という後がない状態に追い込まれてしまった。

 これで負けたら俺たちみんなゲーム部に入ることになってしまう。

 生徒会の仕事だけでいっぱいいっぱいな俺がゲーム部に入って両立なんてできそうにない。


 心配になった俺は、集中している金美さんに声をかけるわけにもいかず、日早片さんに話しかけた。

「ちょっと、金美さん大丈夫だよね?負けないよね?」

「…多分大丈夫、だと思う。金美さん、何か考えてる様子だし…」


 その時、金美さんが顔をあげた。

「うん、もう大丈夫そうかなぁ。じゃあ次、始めようかぁ」

「次が最後じゃ!それ以上はない!」

 そして三戦目がスタートした。


「あんなに啖呵切っておいて、やっぱりそこまでじゃったな!金美!」

「うんうん、そうだねぇ」

「よ、余裕そうじゃな…。この試合負けたらおぬしの負けなのに…。まあ、それでも容赦はしないのじゃ!……あれ?」

 画面には、倒れる男のキャラと勝利ポーズをした女のキャラが映し出される。


「金美さんに一ポイントね。これで一対二。じゃあ次、始めてちょうだい」

「お、おぬし、何をしたのじゃ!?さっきまでとは動きが…」

「それじゃあ次、いくよぉ」


 そして四戦目。金美さんは鮫川さんの攻撃をことごとくかわし、逆に鮫川さんは金美さんの攻撃をほとんどもらっていた。

 四戦目も金美さんが勝利し、二対二に。


「次が最後ね。二人とも、いいかしら?」

「はぁい」

「う、うむ…」

 鮫川さんは明らかに困惑した様子だ。


「最後五戦目、始めてちょうだい」

 運命の五戦目。試合はさっきと同様、終始金美さんがリードしていた。

 金美さんは攻撃の雨を降らし、鮫川さんに反撃する隙も与えない。


「金美さん、やっぱりすごいな…」

「…多分、金美さんは鮫川さんの動きを観察していた」

「観察?」


 俺が尋ねると、日早片さんはそのまま考えを話してくれた。

「確証はないけど、動きの癖とか攻撃を仕掛けてくるタイミングとかいろいろ。だから三戦目からほとんど攻撃が当たってない」

「た、確かに…」

 鮫川さんのHPがどんどん削れていく。


「な、何でじゃ!さっきまで我の方が強かったではないか!なんで急にこうなるのじゃ!」

「もう、私に攻撃は当たらないよぉ。タイミングとかもう見切ったからねぇ。二試合目まではどんな動きをするのか見せてもらってたんだよぉ。おかげで、全部手に取るようにわかっちゃう」

「そ、そんな…」


「はぁい、これで…。ドーン」

 男のキャラが倒れこみ、女のキャラが勝利ポーズをとる。

 そしてゲームセットの文字が画面に大きく映し出された。


 ―――――――――――――――――――――――


「ということで、今回の勝負は三対二で金美さんの勝利ね」

「いぇーい」

 金美さんは両手でピースをして喜んでいた。


「金美さん、前とは違うキャラなんだね」

「うん。前に使ってたキャラは開拓できるかなぁって試してただけだからねぇ」

「そうなんだ。…ってことは、前のキャラは全然練習してなかったってこと!?」

「あの日、初めて触ったキャラだねぇ」

 前戦った時、俺でもちょっと惜しいところまでいけたのはそういうことだったのか。


「それに、二戦目までは観察してたって…」

「そうだよぉ。前に火恋と三人でゲームをしたとき、月くん火恋にボコボコにされたよねぇ。あのときの火恋、月くんの動きを観察したからって言ってたじゃん?私、そういうこと今までしたことなかったからぁ、結構大事かもって思ったんだよねぇ。もちろん一発勝負の時はやらないけどさぁ、今回は二本取られてもよかったわけだしぃ。だから、あの時の経験が活きたよぉ」

 金美さんはニコニコしながらそう言った。


 すごいな…。ただでさえうまいのに、俺たち素人のやったことを参考にするなんて…。

 やっぱりこういう風に何にもとらわれない人が上手くなるんだろうな…。


「やっぱり、我じゃ勝てないのか…」

 鮫川さんは座りながらそう呟いていた。

「そういえば、マリナさんの順位はどれくらいなのかしら?」

 会長が鮫川さんに尋ねる。

「…」

「鮫川さん?」

 鮫川さんは蚊の鳴くような声でゆっくり口を開いた。


「…我は…」

「?」

「…に…位じゃ…」

「「??」」

 鮫川さんの声が小さくて聞こえず、俺たちは聞き返した。

 さっきまでの威勢がどこかへいってしまったようだった。


「一二七位じゃ!」

 そして鮫川さんは大きい声で自分の順位を口にした。

「一二七位…」

「なんじゃ!笑いたければ笑え!」

 鮫川さんは涙目になりながらそう叫ぶ。


「…どこに笑うところがあるのかしら?」

「え?」

 そのまま会長は続けた。


「もちろん金美さんの八位はものすごいことね。世界で両手に収まるほどですもの。でも、あなたの一二七位も十分すごいじゃない。金美さんに勝ちたくて頑張って練習してその順位を得たのでしょう?何かのために努力すること、そしてその努力の結果を笑う人なんていないわ。少なくともここにはね」


「そうだよ。俺、前にこのゲームやらせてもらったけど、今の二人みたいな動きなんて全くできなかった。二人の試合、見ててほんとにすごかったし楽しかったよ」

「すごかった。私もやってみたい」

 俺と日早片さんも会長に続けて話した。


「お、おぬしたち…!」

 鮫川さんは涙をぬぐって笑顔でこちらを向きながら続けた。

「いい人たちなのじゃ!!」


 ―――――――――――――――――――――――


「ゲーム部はもういいのかしら?」

 会長は鮫川さんにそう尋ねた。

「うむ!もとはといえば金美と勝負するために作ろうとしていたものじゃからな。その金美にもオフラインでぼろ負けしたのじゃ。ゲーム部はもういいのじゃ」

 鮫川さんはとてもすっきりしたような表情でそう答えた。


「そう。それじゃ、約束は覚えているわね?」

「それも分かっているのじゃ。もう学校でゲームはしないのじゃ。校則もしっかり守って生活するのじゃ」


「よろしい。でも、あなたのゲーム、見ていて楽しかったわ。学校ではしてはいけないけれど、これからも続けてほしいわね。今までの努力ももったいないもの」

「それはもちろんじゃ!きっといつか、金美に勝ってみせるのじゃ!」

 鮫川さんはそう言ってこぶしを突き上げる。


 すると、金美さんが鮫川さんの前に歩いてきて一言伝えた。

「これからも頑張ってねぇ。『シャーク』さん」

「!名前、憶えてくれたのじゃな!」

「…まあ、別にぃ。弱いっていうわけじゃなかったしぃ。観察してたって言ったけどあそこまですぐやられる予定はなかったからねぇ」

 金美さんは明後日の方向を向きながらそう話した。照れてるのかな…?


「そうじゃったのか…。うむ!金美、ありがとうなのじゃ!これから頑張って、必ず追いついて見せるのじゃ!」

 そう言って鮫川さんは生徒会室を出ていった。


「はあ、金美さんが勝ってくれたおかげでゲーム部に入らずにすんだよ」

「そういえばそんな話もあったねぇ。まあ、私が負けるなんてありえないから大丈夫だったんだけどねぇ」

「そうね。世界八位の実力は伊達じゃなかったわね」

「えへへぇ、ありがとうございますぅ」

 金美さん、嬉しそうだ。


「それはそうと、金美さん」

「なんですかぁ?」

 英田会長は一呼吸してから続けた。

「どうしてこんなゲーム機を学校に持ってきているのかしら?」

 あ…。俺はあえて触れないようにしてたのに…。


「え?い、いやぁそれはぁ…」

「これは、私が直々に没収します」

「ええ!待ってくださいよぉ!」

 金美さん、これはもう…。


「ダメよ。マリナさんがゲーム機を持ってきて没収されてるんだもの、同じく持ってきているあなたも没収されないと不公平だわ。しばらく私が預かります」

「そ、そんなぁ!」

 金美さんの懇願もむなしく散り、金美さんはその場で泣き崩れた。


「ねえ、日早片さん…」

 俺は日早片さんに声をかける。

「なに」

「これって、もしかして…」

 俺の予想があっているか日早片さんに確認する。


「うん。会長、きっとここまで考えて勝負させてたんだと思う」

「だよな。…会長、恐ろしい…」

 さすが生徒会長。この人を敵にするのはやめておいた方がよさそうだ。



最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。

続きもぜひ、読んでいただければと思います。よろしくお願いします。

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