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第四十四会「選挙」

初めて書いたので拙いと思いますが、これから成長していければと考えていますので、温かい目で見守っていただければ幸いです。

 

「ただいまより、生徒会役員選挙を始めます」


 ―――――――――――――――――――――――


 とうとう選挙当日。俺は緊張しながら教室に向かった。

「ついに、だな」

「ああ」

 途中で会った土門と一緒に教室に入る。


 教室にはすでに日早片さんもいた。

「日早片さん」

「…なに?」

「…いや。今日はお互い頑張ろう」

「…そうね」

 日早片さんはこちらを全く見ないで返事をする。


 俺は眼中にないってか…。

 そう思っていられるのも今のうちだ。

 きっと大丈夫。俺は今日までいろいろやってきたんだから…。


「はーい、みんなおはよう」

 先生が教室に入ってきて、そのままHRが始まった。

 選挙は昼休みをはさんだ午後から。

 それまでは通常通り授業を行う。


 一限、二限目を終えた三限目までの間の休み時間。俺はトイレへ向かおうとした。

「月くーん!」

「火恋さん…と金美さん」

「やぁやぁ、ほうもぉ」

 相変わらず、金美さんは火恋さんにほっぺをつままれている。


「それで、どうしたの?」

「いやー、緊張で震えている月くんをほぐしてあげようと思ってねー」

「緊張なんか!」

「してるでしょぉ?」

「うんうん!きっと緊張で授業の内容が入ってきてないんじゃないかなー?」

「くっ!」

 図星だ。さっきの数学と英語の授業は全く頭に入らなかった。


「その顔、やっぱりそうだ!」

「まあ、緊張してるよ…」

「それが自然だよねぇ」

 そんなに顔に出てしまっていたのか…。なんだか恥ずかしい。


「月くんなら大丈夫だよ。いろいろ頑張っていたところ、私たち見てたから。きっと大丈夫」

「そうだよぉ。結果は分からないけどぉ、自信持ってぇ。その方が上手くいくよぉ」

「二人とも…」

 火恋さんと金美さんはそう言って笑顔で親指を立ててくれていた。


「…ありがとう」

「うん!頑張ってね!」

「頑張れぇ」

 二人に励まされて、気持ちが軽くなった。


「よし!」

 気持ちが軽くなった俺は、そのままトイレへ向かった。

 なんだかトイレへの足取りも軽くなった…かも?


 ―――――――――――――――――――――――


 三、四限目の授業も終え、昼休みになった。

 あと少しで選挙が始まる。

 ここで俺が副会長になれれば…。


 俺と日早片さん、英田先輩は体育館に来るよう言われていた。

 選挙時の流れや投票、結果などについての説明もあるからだ。

 集合時間まであと少しある。

 俺は早めに向かうことにした。


 体育館へ向かっている途中、紡木さんとすれ違った。

「紡木さん」

「月くん」

 紡木さん、最皇祭の時はちょっと変な感じだったけど、最近一緒に見回りをしたときは普通だったな…。なんだったんだろうか…。


「え、ええと…」

「紡木さん、俺、頑張るよ」

「月くん!」

「は、はい!」

「月くんならできる!頑張れ!」

「…!」


 紡木さんからは絶対聞くことがないような声での声援。

 周りの人たちも気になって見に来るくらい大きい声だった。

 言い終わった紡木さんは少し恥ずかしそうにしている。


「…ありがとう!」

 俺も紡木さんに負けないくらいの声で返した。

 俺の返事を聞いた紡木さんは、にっこり笑って走って行ってしまった。

 火恋さんも金美さんも土門も紡木さんも…。


「…みんな、優しいな…」

 そして俺は改めて気合を入れ、体育館へ向かった。


 体育館には、もうすでに俺以外の人は到着していた。

 入神会長や社先輩もだ。

「すみません。遅くなりました」

「いや、まだ集合時間より前だからな。大丈夫だ」

「それじゃあ、みんな揃ったからちょっと早いけど説明しよっかな」

「ああ。頼んだぞ、春音」

「はーい」


 社先輩はそう返事をすると俺たちに説明を始めた。

「まず、流れについてですね。初めにみんなに公約的なものを言ってもらいます。次に投票、開票、そして結果の発表っていう感じです。行ってもらうものに関しては、どんな学校にしたいとか、どんなことをするとか。まあ、自分のアピールでもいいです。順番は生徒会長立候補者、英田さんからだね。次に副会長立候補者。順番はー、日早片さんからお願いしようかな」

「はい。分かりました」


「次に、投票についてです。投票はみんなにいろいろ言ってもらった後すぐに行います。まあ、ここは全校生徒がその場で紙を箱に入れるっていう感じです。開票に関しては、私たち催事委員、今は選挙管理委員だね。が、行います。最後に結果発表。これはいつもテスト結果を貼りだしている掲示板があると思うんですが、そこに貼りだします」

 社先輩はそこまで説明して、一息ついてから続けた。


「以上が選挙の流れです。まあ、みんなは最初に公約とかいろいろ話したらあとは結果を待つだけなんだけど…。何か質問ある人はいますか?」

 誰も手をあげない。難しいことは特になかったから問題ないだろう。

 俺も特に聞きたいことはないし…。


「大丈夫そうですね。それじゃあ、みんな、頑張ってください」

 今日の社先輩はぴしっとしている。やはり選挙となるとはっちゃけるわけにはいかないもんな…。TPOはわきまえているんだ。


「ありがとう、春音。とまあ、流れはこんな感じだ。全校生徒が集まるまであと少し、待っててくれ」

 入神会長の言葉でひと段落、休憩ということになった。

 俺はその場に座っていたがあまり落ち着かなかった。


「…もう緊張してるの?」

「心臓がドキドキだよ。そういう日早片さんは…全然平気そうだね」

「うん」

 日早片さんは俺の隣に座ると、珍しくあっちから話しかけてきた。


「はいはい、どうせ私が勝つからとか言うんでしょ?分かりましたよ」

「それもそうだけど、私が緊張しないのは今まで人前に立つことが多かったから。もう慣れたの」

「そうだったの?」

「うん」

 まあ、あれだけ優秀なら人前に立つことも多くなるよな…。


「でも、どうして急に話しかけてきたの?いつもなら自分から話しかけてくることなんてほとんどないのに」

「…だってあなた、緊張してたから」

「…へ?」

「私が勝つのは当然だけど、緊張して普段通りじゃないあなたに勝つのも少し嫌」

「案外、フェアなんだね」

「私は、しっかりあなたを叩き潰したい」

「物騒じゃない!?」

 急になんてことを言うんだこの人は。


「…どう?緊張は解けた?」

「あ…」

 気づいたら日早片さんと普通に話していた。もちろん、これで緊張がなくなった、というわけではないが、だいぶ落ち着くことができた。

 適度な緊張で、いい状態な気がする。


「まあ、頑張って」

「そっちもね!」

 その時、社先輩からもう一度集まるよう声をかけられた。

 ちょうど全校生徒が体育館に集まったようだ。


 この選挙に立候補するために一学期から頑張ってきた。

 ここで副会長になって、生徒会長になる道を確かなものにするんだ。

 そして俺は…。



「ただいまより、生徒会役員選挙を始めます」


 ―――――――――――――――――――――――


「本日進行を務めますのは、選挙管理委員会、社春音です。よろしくお願いします」

 とうとう始まった。俺たちはステージ横で待機している。


「まず初めに、皆さんも知っているかもしれませんが改めて本選挙の立候補者を紹介させていただきます。生徒会長候補。二年、英田英凛。生徒会副会長候補。一年、日早片日奈。同じく一年、月浦月。以上三名です。それでは、立候補者より、演説を行っていただきます。生徒会長候補、英田英凛さん、お願いします」

 社先輩のアナウンスで英田先輩はステージ中央の演台に進んだ。

 そして英田先輩は一つ咳払いをしてから、演説を始めた。


「皆さん、私のことはすでに知っている人がほとんどだと思いますが改めて。現生徒会副会長の英田英凛です。私が今、考えているのは、勉強、部活、行事、日常生活どれをとっても過ごしやすく楽しめる学校を作ることです。わが校は生徒主体に重きを置いています。生徒会、そして各委員会で学校を運営していることからも、わかりますよね。ですので、皆さんの意見をより多く取り入れ、可能な限りかなえていこうと考えています。何かこうした方が良いのではないか、こういうことをしたい、こういうものがあったらいい…。意見がある人は直接私に言ってくれてもかまいませんし、設置予定の意見箱に書いて入れてもらってもかまいません。学校生活の主人公は先生たちではない。私たち学生です。私たちも含め、皆さんが生活しやすく、楽しい学校生活を送ることができるよう努めます。ぜひ、信任していただけたらと思います」


 そして英田先輩は、お辞儀をしてステージ横に戻ってきた。拍手が起こる。

 すごい。俺にそんな立派なことがいえるだろうか…。


「ありがとうございました。次に、副会長候補、日早片日奈さん、お願いします」

 日早片さんの番が来た。日早片さんが演台に向かって歩いていく。

 その姿はとても美しく、きれいで入学式の前、初めて会った時を彷彿とさせた。


「日早片日奈です。私は成績優秀で、皆さんも知っていると思いますが現生徒会書記を務めています。私には今まで近くで会長や副会長の仕事を見て、支えてきた経験があります。副会長になることができたら会長のサポートはもちろん、先ほどもありましたが、生徒会全体でより良い学校にできるよう努めます。どうか私に清き一票をお願いします」


 日早片さんは深くお辞儀をしてステージ横に戻ってきた。日早片さんもすごいな…。

 確かに間近で生徒会の仕事を見ることができたのはかなりのアドバンテージになる。

 くそっ、ずるい…。


「それでは最後に、同じく副会長候補、月浦月さん、お願いします」

 とうとう俺の番が来た。心臓がどくどくと脈打つ。

 俺はゆっくりと演台の前についた。

 さっきまでいい状態だったのに、ここに立つと緊張が大きくなる。


 ステージ上からだとみんなが見える。

 それがさらに俺の鼓動を加速させた。

 落ち着け…。そして俺は一度目を閉じて深呼吸し、ゆっくり目を開けてから口を開いた。


「皆さん、こんにちは。月浦月です。早速ですが私は、生徒会長を目指しています。今副会長選なのに何を言ってるんだっていう感じですよね」

 そうだ。二人と同じように、俺がしたいこと、思っていることをそのまま伝えればいい。


「この選挙に立候補するために、入学してからすぐ生徒会仮役員として様々な委員会をサポートしてきました。もちろん、対抗馬である日早片さんのように、身近で生徒会の仕事を見たり実際に行ったりすることができたわけではありませんが、それに負けないくらいいろいろな経験をすることができたのも事実です。この経験を活かして、別の視点から生徒会長のサポートとともに、より良い学校を目指していきたいと考えています」


 よし。しっかり伝えられた。あとは…。

「ぜひ、月浦月に清き一票をよろしくお願いします!」


 ―――――――――――――――――――――――


「以上で生徒会役員選挙を終了します。結果に関しましては、集計が完了次第、掲示板にて報告させていただきます。掲示板に貼りだす際に改めて放送いたしますので、お待ちください」

 こうして生徒会選挙の投票までが終了した。


「みんな、お疲れさまだな」

「「「お疲れ様です」」」

 入神会長が俺たちを労ってくれた。

「立派だったぞ。結果はもう少し、待っててくれ」


「勉くん。ちょっと手伝って」

「ああ」

 入神会長は社先輩に呼ばれて行ってしまった。


「…」

 俺たち三人が取り残される。

「…ま、後は待ちましょう」

「そうですね。でも、英田先輩はきっと大丈夫ですよ」

「そうね。私は大丈夫よ」

 英田先輩は自信があるようにそう答えた。


「問題はあなたたちね」

「はい…」

「まあ、私はどっちがなってもいいんだけど」

「私がなりますよ」

「な…!」

 また決めつけて…。


「俺も手応えあったんだ。分からないだろ?」

「…まあ、そうね…」

「あれ、案外すんなり認めた」

「あなたも、しっかり演説していたから」

「お、おお…?」

 そんなにストレートに認められると調子狂うな…。


「ま、まあ後は結果を待つだけということで…」

「うん」

「それじゃあ、とりあえずみんなお疲れ様ということで」

 そう言って英田先輩は手をたたき、場を締めた。



最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。

続きもぜひ、読んでいただければと思います。よろしくお願いします。

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