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第四十二会「不審者騒ぎの結末」

初めて書いたので拙いと思いますが、これから成長していければと考えていますので、温かい目で見守っていただければ幸いです。

 

「それじゃあ、早速出発しようか」

 こうして俺たち三人は、見回りを開始した。

 ちょうど下校時と重なっているので校門を出てからしばらくは、最皇生がほとんどだ。


「まあ、さすがにこの辺には怪しそうな人物はいないな」

「そうですね…」

「…」


「…そういえば、あと少しで選挙だな」

「そうですね」

「副会長、立候補するんだろう?」

「もちろんです」

「そうか。日奈も立候補するんだろうな」

「ですね」


「…いけそうなのか?」

「まだ、わかりません…」

「紡木は、どちらを応援するかなんていうのは決まっているのか?」

「は、はい!」

 紡木さんはいきなり話を振られたのに驚いたのか、体をびくっと震わせて返事をする。


「わ、私は…」

「なに、言わなくてもいいさ。どちらを応援するのも、個人の自由だからな」

「私は…」

「そういう国本先輩は、もう決めているんですか?」

 俺は国本先輩の考えが気になり、聞いてみた。


「私は、まだ決めていない。もちろん、関わりが多かったのは月のほうだし、月が頑張っているのも知っている。ただ、日奈が優秀なのは周知の事実だし、私も昨年から目の当たりにしているからな。どちらの方が良い、というのも何を基準とするかによって変わってくるだろう?だから私は、ぎりぎりまで考えさせてもらうよ」

 ほんとに、なんというか、この人がいうことは至極もっともで、それでいてかっこいい。


「…見ていてください!」

「ああ」

 そんな話をしながら見回りを続けたが、特に怪しい人物は見当たらず、この日は解散となった。


 ―――――――――――――――――――――――


 次の日も怪しい人物は見当たらず、見回りは三日目に突入した。

 同じように校門を抜け、見回りを開始する。

 その時、後ろから声をかけられた。


「おーい、月」

「土門…」

「何してるんだ?」

「風紀委員でちょっと、ね」

「ああ、そういうこと。だから紡木ちゃん…と風紀委員長もいるんだ」

 そう言って土門は二人にも挨拶をした。


「それで、どうしてまたこの辺を?」

「最近、不審な人物がいるといううわさがな。それで見回りを強化しているんだ」

「そういうことか…。俺も、手伝おうか?」

「え?いいのか?というか、今日部活は?」

「あったらここにいねーよ。どうですか、委員長。俺、足には自信ありますよ」

「そうか!手伝ってくれるか!それは助かる!名前は…土門くんだな。ありがとう!」

 国本先輩はそう言うと、土門と握手した。


「任せてくださいよ。月じゃ頼りなさそうですし、俺が捕まえてみせますよ」

「おい」

 こいつ、さりげなくディスってきたな。

「それじゃあ、早速行こうか」

 こうして俺たちは、昨日までと同じ箇所を土門も加えた四人で回った。


「そういえば、紡木は土門くんとも普通に話せるのだな」

「ど、土門くんは、大丈夫です…」

「そうですよ、委員長。俺たちは、結構前から話してますよ?それこそ、夏祭りなんかも月と紡木ちゃんと日早片さんと、あとはほかの委員会の一年生のまとめ役みんなで行きましたしね」

「そうだったのか」

 国本先輩はそれを聞いて驚いたような顔をしていた。


「夏祭り…」

「どうしたの?紡木ちゃん。なんか顔、赤くない?」

「だ、大丈夫です!」

「そう?」


「そういえば、夏祭りの時は月と紡木の二人で本部まで来たな」

「え?そうなんですか?」

 国本先輩の話に土門が食いついた。


「ああ。あの時は二人で迷子の子を連れてきてくれてな。二人がいろいろしてくれたみたいで、その子も満足そうに親の元へ帰っていったんだ。可愛い子だった」

 夏祭り、もう二ヶ月も前になる。社先輩も言っていたけど、時がたつのは早いな…。

「そして帰り際、一緒に連れてきてくれた二人のことを見て」

 ん?ちょっと国本先輩?何言おうとして…。


「わあああああ!」

「む?どうした?紡木」

「紡木ちゃん、どうしたの?」

「いえ、なんでも…」

 よかった。紡木さんが止めてくれた。土門がこの話を聞いたら、絶対からかってくるだろうからな…。


「それで委員長。その子はなんて言ったんですか?」

「あ、ああ。その子は『ありがとう、カッ…」

「わあああああ!」

「む?どうしたんだ、紡木」

「そ、そんな話はいいじゃないですか。ね、月くん?」

「そ、そうですよ。そんな話してないで、見回りに集中しましょうよ」

「まあ、そうだな」

 よかった。今度こそ夏祭りから話をそらせた…。


「ちょっと!俺、気になるんですけど!?」

「いいから!土門、気にしないで見回りするぞ!」

 まったくこいつは。こんな話をするために見回りしてるんじゃないぞ?

 国本先輩も…。なんでまたこんな話を…。


 その時、前のほうで誰かに話しかけられて困っている様子の人を見つけた。

 うちの制服を着ている。もしかして…。

「国本先輩!」

「ああ!行こう!」


 ―――――――――――――――――――――――


 俺たちは急いで不審な人物のもとへ向かった。

「おい!お前!」

「!」

 その人物は国本先輩の声に気づくと、走って逃げた。

 普通の速さだったが、そもそも距離があったので俺たちが追いつけそうにない。


「土門!」

「ああ…!」

 俺が土門に追いかけてくれという合図を送ると、初めからそのつもりだと言わんばかりの返事をして土門はその人物を追いかけた。


「…はっえー」

 土門はあっという間にその人物に追いついて捕まえていた。

 俺の周り、足速い人多いな…。

 そして俺たちも土門に合流した。


「土門、お前、足速いな…」

「まあな。このために俺は手伝ったんだぜ?」

 そう言って土門は自分の足をたたいて見せた。


「おい、お前!」

 国本先輩は不審な人物をにらんで、

「何をしている、うちの生徒に何の用だ!」

 と声を荒げた。


 その人はうちとは違う制服を着ている男子だった。

 身長は少し小さめで、160㎝ほどだろうか…。

 髪は短く切られていて、好青年という印象だ。同級生かな…?

 というかこの制服…。隣町のヤンキー学校の生徒じゃないか…?


「ああ、やっと…」

「?」

「やっと見つけた…!」

 その人はそう言って国本先輩の手を握った。


「!なんだお前は…!」

「俺、ずっとあなたを探していたんです!国本夏都さん!」

「私を?」

「あなたが好きです」

「…」

「「「…ええ!?」」」


 ―――――――――――――――――――――――


「ちょ、ちょっと待って!どういうことだ!?」

「まったく分からない」

 俺と土門は二人で首をかしげる。

「はわわわ…!」

 紡木さんは何で羨ましそうな顔をしてるんだ…?


「俺、夏休みの時、仲間といつもみたいにつるんで遊んでたんですよ。今まであんまり周りとか気にしてこなかったので、結構迷惑かけちゃってたみたいで。その時、夏都さんが現れて俺たちに注意してくれたんです…」

 彼はそう言うとゆっくり続けた。


「『人は生きているだけで誰かを傷つけたり、迷惑をかけたりしているんだ。せめて、自分から進んで迷惑をかけるような行動はとらない方が良い。君たちの価値が下がってしまうよ。』って。」

 国本先輩、休日にも風紀委員みたいなことしてるな…。しかも他校の生徒に…。


「俺、今までこんな風に誰かに叱ってもらったことなんてなかったので、感動しちゃって…。それから改心して、周りにも気を遣うように心掛けて。他の奴らにはからかわれたりしますけど、それでも、やってみてます…」

 そして改心までさせてるんだから、ほんとにすごいな…。


「その時から夏都さんが頭から離れなくて、居ても立っても居られなくて。それで、夏都さんがこの学校の人だっていうの情報を頑張って見つけて、探していたんです。この学校の制服の人に声をかけて聞いてたんですけど誰も教えてくれなくて…。まあ、この制服着てたら仕方ないのかもしれないですけど…」

 そういうことだったのか。

 たしかに、ヤンキー学校の生徒だとなれば、問題に巻き込まれるのではと勘ぐってしまうのも分からなくはない。


「だから、やっと夏都さんに会えてうれしいです。俺、夏都さんのおかげで変われました。周りへの気遣いとか、言葉使いとか、ほんとにいろいろ…。夏都さん、あの日からあなたのことがずっと好きです。これからもこの気持ちは変わらないです」

 彼は真剣な眼差しで国本先輩に告白した。


「きゃあああああ!///」

「「おお…」」

 俺と土門は二人で顔を見合わせた。なぜか紡木さんが照れている。


「…」

 国本先輩は黙ったままだ。

「…夏都さん、いきなりこんなこと言ってすみません。迷惑だったら振ってください。でも、俺はこの気持ちを伝えずにはいられませんでした」

「…」

「国本先輩…?」

 俺たち三人は気になってしまい、国本先輩のことを見た。


「いや、え、そんな…」

 国本先輩は顔の前に手を持っていこうとしている。

「夏都さん!」

 彼は国本先輩の両手を掴んで顔が完全に見えるようにした。


「きゃっ!」

 国本先輩から今まで聞いたことのない声が漏れた。

 ものすごく顔が赤い。いつもクールな国本先輩がこんな表情をするなんて…。


「わ、私は…ええと、その…」

 国本先輩は目をぐるぐるさせながらそう言い、そして頭から湯気が立ち上った。

「…お友達からで、良ければ…」

「…はい!よろしくお願いします!」

「「おお!」」

 国本先輩の返事に俺と土門は思わず声を出してしまった。

 後ろでは紡木さんが目をハートにして倒れている。なんでだ。


「そう言えば、お名前はなんていうんですか?」

 土門は彼にそう尋ねた。

「ああ、すみません。俺、中駄高校なかだこうこう二年の姫内沁ひめないしんです」

「「先輩だった…!」」


 ―――――――――――――――――――――――


 学校への戻る途中、俺たち三人は国本先輩を質問攻めした。

「国本先輩、別の学校の人にも注意してるんですか?」

「あの時はたまたま見かけたからだ」

「委員長、沁さんのどこに惚れたんですか?」

「な!まだ惚れていない!友達からだと言っただろう!」

「夏都先輩、すごく顔赤かった…」

「おい、紡木!なんで写真なんか撮ってるんだ!消せ!」


「でも、意外だよなー。委員長、クールで美人だし、今までいろんな人にあんな感じで告白されてたんだと思ってた」

「そうだよな。あんな風になるなんてな」

 俺と土門がそう言うと、国本先輩は立ち止まってゆっくり口を開いた。


「い、今までは、女子生徒からだけだったんだ。あんな風に正面から、男の人に言われたのなんて、初めてだ…///」

 少しずつ声が小さくなっていく。国本先輩はさっきみたいに真っ赤で、泣きそうな表情をしている。


「「可愛い…」」

「な!?」

 カシャッ!

「夏都先輩、可愛いです!」

「おい、待て!紡木!だから写真を撮るなー!!」


 こうして最皇高校の不審者騒ぎは、幕を閉じたのだった。国本先輩の普段見せない可愛い顔を添えて…。



最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。

続きもぜひ、読んでいただければと思います。よろしくお願いします。

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