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第四会「くっつき大作戦」

初めて書いたので拙いと思いますが、これから成長していければと考えていますので、温かい目で見守っていただければ幸いです。


「くっつき大作戦」とはいったものの、初めのうちは考えていられないほど仕事が忙しかった。

 購買での商品の在庫管理や備品を購入する時の金額のチェック、各部活への部費の相談など、お金に関するものはほとんどを経理委員が担当している。


 全体での仕事量が多い故、委員一人一人に割りあてられる仕事の量もとても多い。

 俺を含めみんなぎりぎりで仕事を終わらせていた。

「はい、みんなお疲れ様。今日はもう終わっていいよ」

 副委員長、金恵先輩の一言でみんな帰宅していく。

 俺は疲れて机に突っ伏していた。


「疲れたー、この仕事量はさすがに多いですね」

「大変だよねぇ」

 そう言いながら金美さんはゲーム機を取り出してゲームを始めた。


「そういえば委員長はまたいないんですか?」

「ええ。委員長は外に用事があるみたいなの」

 俺はまだ委員長、冬馬先輩が仕事をしている姿をきちんと見たことが無い。本当に仕事をしているのだろうかという疑問も生じてきた。


 金恵先輩はまだ仕事をしている。

 金恵先輩のことを見ていたのだが、本当に仕事のスピードが速かった。俺が一つの作業を終わらせている間に三つも四つも進めているのだ。

「金恵先輩、本当に仕事が速いですよね。どうやってるんですか?」

「こんなの慣れよ、慣れ。でもいくら仕事が速くても正確じゃないと意味がないのよ。特にお金を扱っているからね。だから初めのうちは速さよりも正確さを重視してね。そのために月くん含め一年生のは少し減らしているんだから」


 やはり俺たちの仕事量は少なかった。

 その分先輩たちが多くやってくれているのだと思うと申し訳なさを感じてしまう。

 その時冬馬先輩が部屋にやってきた。

「お疲れ様ー。今日の仕事も終わっちゃったかな?」

「お、お疲れ様でしゅ!」

 金恵先輩はまた噛んでいた。


 冬馬先輩は椅子に座りお茶を飲んで休憩している。

 しばらく雑談なんかをして、冬馬先輩はまたどこかへ行ってしまった。

 その間も金恵先輩はほとんど話をせず、黙々と仕事を続けていた。

「金恵先輩、良かったんですか?こういう時に話をしておかないと仲良くなれないですよ?」

「い、いいのよ。まだ仕事が残ってたんだから」

 その時金恵先輩が記入し終えた紙が風のせいで一枚こっちに飛んできた。


「あれ、これ、金額、全然違くないですか?」

「ええ、うそ?あ、ほんとだわ。ごめんなさい」

 その紙は委員長がいた時に記入していたものだった。

「お姉ちゃんはねぇ、普段の仕事はほんとに完璧で速さもすごいんだけどぉ、委員長がいるとポンコツになっちゃうんだよぉ」

 本当にその通りだった。委員長がいるときに行った仕事はほとんど間違えていた。


「それって、致命的じゃないですか?」

「う、うるさい!仕方ないでしょ、緊張しちゃうんだから」

 一緒に仕事はできなくて、雑談もできないとなると二人きりというのは難しそうだ。

「もう、今日はいいから、さあ、帰りなさい」

 そう促され、俺と金美さんは帰路についた。



「くっつき大作戦とは言ったものの、金恵先輩があれだと難しいよね」

 あれから数日様子を見たが、金恵先輩は委員長がいると自分から話すことはなかった。

「私たちぃ、お姉ちゃんのことばっかり考えてるけどぉ、委員長はお姉ちゃんのことどう思ってるんだろ?」

「確かに!冬馬委員長がどう思ってるかも重要かもね。まあ悪くは思ってないと思うけどさ…」

「今度聞いてみよぉ」

 そう言いながら金美さんはずっとゲームをしていた。


「金美さんってほんとにゲーム好きだね。何のゲームが好きとかってあるの?」

「えぇ、どんなゲームも好きだけど、そうだなぁ。今ハマってるのは、バトルロワイヤルのFPSゲームかなぁ。あれが本当に面白くてねぇ。味方と協力して一位になったときの快感が忘れられなくてずっとやってるんだぁ」

 金美さんはいつもよりテンション高めで少し饒舌に話してくれた。


「なんか面白そうだね。俺もやってみたくなっちゃった」

 金美さんがここまでハマってしまうゲームに興味がわき、俺は本心でそう答えた。

「じゃあ、家来るぅ?」

「え」

「やってみたいんじゃないのぉ」

 金美さんは何のためらいもなく家に誘ってきた。


 (いや、いきなり女子の家に行くのはさすがにまずいのでは!?)

「ま、まあとりあえずその件は置いておいてさ、明日委員長に聞いてみよう」

 俺が焦ってそう答えたところでちょうど道が分かれたので、俺たちは挨拶をしてそれぞれの帰路についた。


―――――――――――――――――――――――


「委員長、少しいいですか?」

 次の日の放課後、俺は冬馬先輩がいるタイミングを狙って声をかけた。

「委員長って、副委員長のことどう思ってますか?」

「ええ、急だな」

 冬馬先輩は少し考えた後、俺に思ったことを話した。


「金恵はすごく仕事ができるやつだよ。副委員長だからっていうのもあるのかもしれないけど、同じ学年の人たちより何倍もの仕事量をこなしてくれるしね。でも時々ミスがあるのがまた可愛いよな。完璧に見えるけど、そういうところもあるんだなって。ほら、こことかね」

 そう言って冬馬先輩は紙を俺に見せ、該当箇所を修正した。


「まあ、そうだな。一言で言うなら、妹みたいな感じかな」

 冬馬先輩は笑顔でこちらを見ながら答えた。

 (これは、いけるか…?)

 その後、冬馬先輩は用事があると言ってどこかへ行ってしまった。

 俺はこのことを報告するため金美さんが来るのを待った。


 

「なるほどねぇ」

 金美さんに冬馬先輩の言っていたことを伝えると、金美さんはゲームをしながら答えた。

「妹、かぁ。悪くは思われてないけど、女として見られてないよねぇ」

「難しいね」

「あれを使うしかないねぇ」

 そう言って金美さんはどこかへ行ってしまった。


 しばらくすると、金美さんも戻ってきて、二人で仕事にとりかかった。今日はもともと委員会が無い日なので、他の人はいない。俺たちが作戦を練るため経理委員室に集まったのだ。

「ふたりとも、今日もいるのね。仕事残ってたのかしら?」

 金恵先輩が経理委員室に入ってきて、椅子に座った。

 三人で少し雑談をしていると、金美さんが急に持っていたお茶を金恵先輩にぶっかけた。


「か、金美さん!?」

「ちょっと!いきなり何するのよ!」

「あぁ、手が滑ったぁ、ごめん」

 金恵先輩は頭からびしゃびしゃだ。

「お姉ちゃん、服乾かすからぁ、はい、脱いでぇ」

 金美さんはすぐに金恵先輩の服を脱がせ始めた。

 俺は急いで反対側を向く。


「ちょ、やめ、ああ!」

「代わりにこれを着てぇ」

「何よこれ!こんなの着れないわよ!」

「でもこれ以外服無いよぉ?下着のままいるのぉ?」

「あなたがお茶をかけたのが悪いでしょ!」

「はい、いいから着なよぉ」

 そう言って金美さんは無理やり金恵先輩に服を着せた。


 着替えが終了し、金美さんに見ていいと言われ俺は前を向いた。

 するとそこには、ものすごく顔を赤くした、メイド姿の金恵先輩がいた。

「あんた、こんなのどこで見つけてきたのよ!?」

「演劇部にぃ、借りてきたぁ」

 さっきいなくなったのはこれを借りに行ったかららしい。


「もしもしぃ、委員長ですかぁ?今、お姉ちゃんが大変なことになってしまっててぇ、来てくれませんかぁ?」

「な、何言ってんのよあんた!やめてよ!こんな姿委員長に見られたら私、死んじゃう…」

 泣きそうな顔で金美さんに懇願する金恵先輩はなんだか少し色っぽかった。


「大丈夫、お姉ちゃん。お姉ちゃんのそのでかい胸とエッチな体つきがあればどんな男もいちころだよぉ。それにメイド服着てるんだもん。今のお姉ちゃんは最強なんだからぁ。これで落ちない男はいないよぉ」

 確かに、金恵先輩は女性としてとても魅力的な体つきをしていた。それにメイド服なのだから、金美さんが言うように最強だろう。


「でも私、こんなの恥ずかしくて、無理…」

「お姉ちゃん、委員長と仲良くなりたいんでしょぉ?くっつきたいんでしょぉ?どんなに私たちが頑張っても、最後はお姉ちゃんが頑張らないとぉ、絶対無理だよぉ?大丈夫。お姉ちゃんは何でもできる、すごい人なんだからぁ」

 そう励まされ、金恵先輩も何とか決心がついたようだ。


「金恵!大丈夫か!」

 冬馬先輩が経理委員室にやってきた。

「な、なんだこれ!?」

 冬馬先輩は金恵先輩の姿に少し戸惑っていた。


「委員長、お姉ちゃんの服が濡れちゃってぇ、乾くまで一緒にいてあげてくれませんかぁ?私たちは少し用事があるのでぇ。ね、月くん?」

 金美さんがウインクをして合図してきた。

 なるほど、これで二人きりにする作戦か。

「そ、そうなんですよ!委員長、お願いします!」

 俺たちは有無を聞かずすぐに経理委員室を後にした。俺たちがいなくなると思っていなかった金恵先輩は、本当に泣きそうな顔でこちらを見ていたが、見なかったことにした。



「すごいことするね」

「ああでもしてお姉ちゃんの色気が出た状態で二人きりにしないとぉ、妹って認識は無くならなそうだからねぇ。それにお姉ちゃんの体はすごいんだから」

 それについては触れないでおいた。


「じゃあ私たちも行こうかぁ」

「え?どこに?」

「私の家だけどぉ?ゲームするんじゃないのぉ?昨日言ったじゃん」

「冗談じゃなかったの!?」

「あ、大丈夫だよぉ、親は帰るの遅いからぁ。お姉ちゃんにもしばらく帰ってくるなぁ!って連絡したしぃ」

「なおさらダメなんじゃ!?」

 そう思ったものの、金美さんがものすごくキラキラした目でこちらを見つめていたので断りきれず、俺たちは金美さんの家へ向かった。


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。

続きもぜひ、読んでいただければと思います。よろしくお願いします。

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