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第三十五会「最皇祭!①」

初めて書いたので拙いと思いますが、これから成長していければと考えていますので、温かい目で見守っていただければ幸いです。

 

 とうとう最皇祭がスタートした。

 金曜日の今日は校内の学生だけが見て回ることができ、明日土曜日は一般の人、学校外からお客さんが訪れる。


 俺は記録係として仕事をしていて準備にあまり参加できなかったので、シフトに多めに入るようにしていた。

 一日目はスタートの十時半から午後三時まで。二日目は午後二時から終わりの午後五時まで。

 その後の後夜祭は、催事委員会が主体となって行うが、俺と火恋さんは記録係の仕事を行っていたため免除されている。

 社先輩から後夜祭は楽しんでくれということだった。


「それでは皆さん、今日から二日間頑張りましょう!二日間の投票で一位になったら先生、みんなに何かご褒美をあげますね」

 先生の一言でみんなさらにやる気になったようだ。

 こうして俺たちのクラスは最皇祭スタートの合図と同時に一位を目指して『たこ焼き屋』をオープンしたのだった。


 ―――――――――――――――――――――――


「いらっしゃいませー」

 現在時刻は昼の十二時。ちょうど昼時ということもあり結構混んできた。

 三年生まで含めてたこ焼き屋は俺たちのクラスだけ。意外とたこ焼きはみんなから求められていたものなのかもしれない。


「…」

 後ろでは日早片さんが黙々とたこ焼きを作っている。

「いらっしゃいませ。何個買いますか?」

「んー、どうしよっか。二個にする?」

「そうだね。二個買おう」

「わかりました。たこ焼き二個ですね。日早片さん、たこ焼き二つね」

 日早片さんはコクリと頷いて新しいたこ焼きを作り始めた。


「ここで食べていきますか?それとも持っていきますか?」

「ここでお願いします」

「わかりました。では、席でお待ちください」

 俺は二人(多分カップル)のお客さんを席に案内し、厨房に戻った。


 日早片さんは手元に迷いなくたこ焼きをひっくり返している。

「たこ焼き、作ったことあるの?」

「…これが初めて」

「ほんとに?それ、すごくない?」

「…別に」


 そのまま日早片さんはたこ焼きを皿に乗せ、ソース、鰹節、青のりをかけて俺に渡してきた。

「よろしく」

「はいはい」

 俺は日早片さんから受け取ったたこ焼きとマヨネーズを持ってさっきのお客さんのもとへ運んでいった。


「お待たせしました。マヨネーズはお好みでおかけください」

「ありがとうございます」

 お客さんはマヨネーズをかけてそれぞれたこ焼きを口に運んだ。


「あふ、ほふっ」

「あ、熱いですよ!すいません、言い忘れました…」

「あふっ、でもうはい!」

「んね!おいしい!」

 女子生徒の方は全く熱くないといった様子でどんどん食べ進めていった。

 熱いのが得意な人なのだろうか。

「そうですか?では、ごゆっくりどうぞー」

 俺は二人の席を後にして厨房に戻った。


「おいしいってさ」

「…まあ、私が作ったから」

「めちゃめちゃ自信満々だな!?」

「当たり前」

「料理得意なの?」

「!…ま、まあね…」

「そっか…」

 なんだか変な間があったが、気のせいだろう。


 そんな会話をしていると、見覚えのあるお客さんがやってきた。

「いらっしゃいましたぁ」

「そっちが先に言うんだね。いらっしゃいませ、金美さん」

「たこ焼きくださぁい」

「何個?」

「んん、一個でいいよぉ」

「分かった。日早片さん、お願い」


 日早片さんはまたコクリと頷いてたこ焼きを作り始めた。

「誰かと一緒じゃないんだね」

「うん。火恋とは明日一緒に回るしぃ、紡木も今は仕事あるって言ってたからねぇ」

 今の時間はみんなシフトが入っていて、暇な人がいないらしい。

 俺も例にもれずその一人だ。


「食べていく?」

「どうしようかなぁ。人いっぱいいるしなぁ。持って帰ろうかなぁ」

「分かった」

「あ、一個だけここで食べていい?」

「?別に大丈夫だけど…」

「ありがとぉ」


 どうして一個だけ食べる必要があるのだろうか…。

 別に一個だけこの場で食べたところで特に変わりはないというのに…。

 そう思っていると、日早片さんからたこ焼きが渡された。


「はい。たこ焼き一つね」

「ありがとぉ。なんか、すごいおいしそうだねぇ」

「日早片さんが作ったからね。たこ焼き作るの得意らしいよ」

「へぇ…」


 俺がそう言うと、金美さんは不気味な笑顔を浮かべて日早片さんの方を見ていた。

 日早片さんも体をびくっとさせてゆっくりこちらを振り返る。

「それじゃあ、いただきまぁす」

 金美さんはたこ焼きを一つ、口の中に放り込んだ。


「んん、おいしい」

「それは良かった。やっぱり日早片さんが作ったたこ焼き、おいしいんだね」

「当たり前でしょ」


 その時、金美さんの目がきらりと光った気がした。

「うんうん、ほんとにおいしいよぉ、日奈。ちょっと前まで歪な形のたこ焼きを作っていた人とは思えないよぉ」

「え?」


 その言葉を聞いた日早片さんはまたびくっと体を震わせて顔を赤くしていた。

「日早片…さん?」

「あれぇ、言ってなかったのぉ?」

「…///」


 どうやら日早片さんはたこ焼き屋をやるという話になってからたこ焼きを作る練習をしていたらしい。

 ただ、家で作ってみても全くうまくできず、というか料理自体が苦手なようで金美さんに教えてもらっていたそうだ。


「日早片さん、さっき料理得意って…」

「…見栄を…、はった…」

「なんでよ…」

「ふっふっふ、残念だったねぇ、日奈。これでこの前私がゲームで負けた腹いせができたぁ」

「くっ、卑怯な…。ゲームならゲームで返しなよ」

「私がどれだけ悔しかったかぁ…」

「なおさらゲームで返しなよ!」

「何をぉ!」

「何よ!」

 二人はそう言ってポカポカとお互いをたたき始めた。


「なんだこれ…」

 もちろん本気でというわけではなく、軽い感じでたたき合っている。

 日早片さんもこういうことができるような関係ができたということになんだか嬉しさを感じつつ、周りの迷惑になりそうだったので俺は間に入って止めたのだった。


 ―――――――――――――――――――――――


 時刻は午後三時を回り、俺のシフトの時間が終了した。

 今日一日目は午後五時半まで最皇祭が開催されており、残り二時間ほどある。

 俺は一人でほかのクラスを回ることにした。


 とりあえず、クラスの混み具合を確認してみる。

 四組の占いは、ものすごい人気で行けそうになかった。

 紡木さんの占いは明日火恋さんと行くことにしよう。

 そのまま隣の五組を見てみると、少し空いていそうな雰囲気だったので入ることにした。


「いらっしゃいませぇ…って、月くんじゃん」

「来てみたよ」

「ようこそぉ、五組の和喫茶へ」


 俺は金美さんに案内されるがまま席についた。

「とりあえずメニューねぇ」

「ありがとう」


 メニュー表を見てみると、抹茶や緑茶、和菓子は一口サイズのモナカや団子などがある。

「すごい本格的だね…」

「まぁね。クラスに和菓子が好きな人がいて、出し物を決めるときもその人が率先してくれたからねぇ。本格的になるよう動いてくれたんだよぉ」


 そう説明する金美さんは準備中の時に見せてくれた割烹着姿だった。

 あの時にも思ったが改めて、似合っている。

 五組の他の人も同じ服を着ているのだが、なぜか金美さんを目で追ってしまう。

 きっと普段の様子を知っているからギャップにやられているんだ、と思い込むことにし、俺はおすすめと書いていた抹茶と団子を頼むことにした。


「かしこまりましたぁ。ちょっと待っててねぇ」

 そう言うと金美さんは手を振りながら厨房のほうまで行き、また別のお客さんを案内しに戻っていった。

(結構人が来てるんだな…)

 人の出入りの激しさに、やっぱり迷惑だったかもと思いながら俺は注文が来るのを待っていた。



「お待たせしましたぁ。抹茶と団子でぇす」

 そう言って金美さんは俺の席に頼んだものを運んできてくれた。

「おお…」


 運ばれてきた抹茶と団子は本当においしそうで、テレビやネットで見るような本格的な見た目だった。

「すごいね…」

「見た目はもちろん、味もちゃんとしてるよぉ。まずはお茶で口を潤してから食べるといいらしいよぉ」


 俺は金美さんの言う通り、先に抹茶を飲んでから団子に手を付けた。

 抹茶は苦みが少なく、とても飲みやすい。その後の甘い団子ともよく合っている。

「…おいしい!」

「でしょぉ?よかったぁ」


 金美さんはそう言って笑顔を向けてくれた。

「あとは、これぇ…」

 金美さんは後ろから袋に入った何かを取り出して俺に渡してきた。


「これは…クッキー?」

 金美さんが渡してきたのは和菓子とは関係ない、個包装に包まれた手作りのクッキーだった。

「ほ、ほらぁ。来てくれたらサービスするって言ったしさぁ!ここの料理を提供するのでもよかったんだけどぉ、やっぱり自分で作った方がいいかなぁって思ってねぇ」


「それのことか!ありがとう!今食べていいの?」

 俺は金美さんに今食べていいのか確認した。

「え、ええとぉ。うん。いいよぉ」


 俺は早速金美さんからもらったクッキーを口に入れた。

 さすが日早片さんに料理(たこ焼きだけだが…)を教えただけあり、ものすごくおいしい。

「…めちゃくちゃおいしい…!ありがとう!」

「うぅ…。それはよかったぁ…」


 そう言った金美さんは少し安心した様子に見えた。

「ほんとにおいしいよ。でもなんでクッキーにしたの?」

「んんとねぇ、同じく和菓子で合わせようとも思ったんだけどさぁ。それだとインパクトに残らないかなぁって。だから違うのにしようって思ってねぇ」

 確かに同じ和菓子だと、他のメニューの和菓子と混同してしまうかもしれない。

「そういうことだったんだ…。うん、この喫茶店のメニューには申し訳ないけど一番のお菓子は金美さんのクッキーかな」

「へ!?」

「そう思えるくらいおいしかったよ」

「うぅ…」

 俺がそう言うと金美さんは持っていたオボンで口元を隠して頬を赤くしていた。

(正直に思ったことを言っただけなのに、何をそんなに赤くなっているのだろう…)

「も、もういいからぁ。食べ終わってるねぇ?お会計どうぞぉ!」


 金美さんは食べ終わった俺を無理やりお会計に連れていき、そのまま出口まで案内された。

「ええと、おいしかったよ。全部…。特にサービスのクッキーが…」

「はい!それじゃあまた来てねぇ!待ってるよぉ!」

 そう言って金美さんは顔を赤くしながらせかすように俺を見送ったのだった。




最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。

続きもぜひ、読んでいただければと思います。よろしくお願いします。

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