第三十三会「文化祭準備」
初めて書いたので拙いと思いますが、これから成長していければと考えていますので、温かい目で見守っていただければ幸いです。
二年生の修学旅行が終了し、学校にはいつものにぎやかさが戻った。
俺も世理先輩とお昼を一緒に食べる時間が終わり、今までのように教室で食べている。
変わったことといえば、俺もたまにお昼におにぎりを作るようになった。
これならお金もそこまでかからないし簡単だということに気づいたのだ。
今日はおにぎりを作ってきた。そのおにぎりを食べながら世理先輩の作ってくれた弁当を思い出す。
(どれもこれもおいしかったな…)
俺は自分で作った歪な形のおにぎりを口の中に放り込み、午後の授業に備えた。
「それでは、きたる文化祭に向けて出し物を決めたいと思います」
午後は文化祭『最皇祭』の出し物について決める時間が設けられた。
体育祭の時と同じように、俺が司会をする。
たしかにこのクラスに催事委員の人がいないから生徒会(仮)の俺が進めるのは仕方ないとは思っている。
今思ったが、日早片さんも生徒会(なんなら俺より上の役職)なのだからやってもいいのではないだろうか。
日早片さんの方を見てみると、体育祭の時と同じように参考書を読んでいる。
俺が見ているのに気づいたのか、日早片さんが顔を上げて俺と目が合った。
俺は口パクで手伝って、と伝えたが、日早片さんはなぜかにやりと笑い任せた、と返してきた。
(あのやろう…)
そう思いながら、俺たち一年一組の文化祭の出し物について話し合うこととなった。
「ええと、『お化け屋敷』、『劇』、『たこ焼き』、『カフェ』、『ホットドック』…」
みんなたくさんの案を出してくれた。案は少ないよりも多い方がいいのでとても助かる。
「それじゃあ、この中から決めようと思うんだけど多数決でいいかな」
俺がみんなに聞くと、みんな了承してくれた。
「じゃあ、お化け屋敷がいい人は?」
何人かが手を上げたが、これが決定になることはない数だった。
「じゃあ次は劇ね」
こうして聞いていったところ、俺たちのクラスは『たこ焼き屋』に決定した。
準備もそこまでやることが無いし、当日のシフトもあまり大変じゃなさそうだ。
こうして文化祭の出し物についての話し合いは終了した。
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文化祭の出し物が決定したので、催事委員室に出しに行こうと向かっていると結川先輩と遭遇した。
「結川先輩、お久しぶりです」
「お、月じゃねーか」
「修学旅行、どうでしたか?」
「んー。まあまあだった、かな…。やっぱり私にはああいう集団でっていうのは性に合わないわ」
「そうですか…」
「おい、変に気を遣うなよ。ほらこれ」
そう言って結川先輩は俺にお菓子を投げてよこした。
「これって…」
「お土産だよ、お土産。家に買うついでにな」
「なるほど…。ありがとうございます。いただきます」
「お前の方はどうだったんだよ。美化委員手伝ってくれたんだってな」
「はい。人が少なくて大変でしたけど、頑張りましたよ」
「それは助かったわ」
「世理先輩の弁当もおいしかったですし…」
「は?」
しまった。つい口が滑ってしまった。
「い、今なんて言った…?」
「お菓子、ありがとうございました。後でいただきますね。それではこれで…」
「おい!ちょっと待てお前!世理先輩の弁当ってどういうことだ!まさか作ってもらったんじゃねーだろうな!おい!お菓子返せ!この野郎!」
俺はかんかんに怒っている結川先輩から逃げるようにして催事委員室に向かったのだった。
「失礼します」
何とか結川先輩から逃げ切り、催事委員室に着いた俺はクラスの出し物の計画書を提出した。
「…zzz」
「社先輩!計画書です!」
「…zzz」
「はぁ」
ほんとうにこの人は。イベントの時との差が激しすぎる。
体育祭、夏祭りの社先輩はいったいどこに…。
「しっつれいしまーす…って、月くん」
「火恋さん」
「どうしたの?」
「文化祭の計画書出しに来たんだけど、社先輩が相変わらずで…」
「なるほどー。それじゃあ私が受け取るよ!」
「ほんと?助かる」
俺は火恋さんに計画書を渡した。
「一組はたこ焼き屋さんなんだね!」
「うん。多数決でね」
「私、一組に行くね!」
「気が早いな。まあ、時間があったら来てみてよ。そういう二組は何やるの?」
「私たちはねー、喫茶店だよ」
「喫茶店か。楽しそう」
「月くんも来てねー」
そんな会話をしていると、社先輩がやっと目を覚ました。
「…んーーーーっ。はぁ」
「社先輩!おっはようございます!」
「おはようございます」
「んー。おはよぅ…」
社先輩は目を擦りながらメガネを探している。
「ここですよ」
「んあ、ありがとう」
俺は社先輩にメガネの場所を教えた。社先輩がメガネをかけてこちらを見る。
「月くん。なんでいるの?」
「計画書を提出しに来たんですよ!」
「私が受け取りました!」
「ああ、ならいいや…」
そう言って社先輩はゆっくり立ち上がると伸びをした。
寝起きなこともあり、髪や服装が乱れていて少し色っぽい。
火恋さんが社先輩に俺の計画書を渡してくれた。
「それじゃあ、受け取りました」
「よろしくお願いします」
俺が催事委員室から出ていこうとすると、社先輩に腕を掴まれた。
「や、社先輩?」
「どうせここだから、このまま」
「?」
俺は社先輩の言っている意味がよくわからなかった。
その時、俺のスマホに一通のメッセージが届いた。
『二学期の最初にも話したが、これから文化祭が始まる。それまでは催事委員の手伝いだ。よろしく頼む』
相手は入神会長からで、催事委員を手伝うようにということだ。
俺はそのことをすっかり忘れてしまっていた。
「なるほど…。そういうことですね」
「うん」
「え?なになに?どういうこと?」
俺は火恋さんにも事情を説明し、これから文化祭が終わるまで催事委員の手伝いをすることになった。
「おお!それじゃあ月くん。またよろしくね!」
「よろしく、火恋さん。社先輩もよろしくお願いします」
「はい、よろしく。ということで戦力が一人増えたからその分私は寝るね」
「「それはダメです!!!」」
「ええー…」
そう言って寝ようとする社先輩に俺と火恋さんは同時にツッコんだ。
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「まあ、今のところはそんなに仕事無いから」
「あ、そうなんですね」
「とりあえずこれから全クラスの計画書が集まるから、集まったらそれに目を通して変なのがないかチェックだね」
「わかりました」
「全クラスの出し物が一足先に見れるのって、なんだかラッキーだね!催事委員の特権って感じ!」
火恋さんは笑顔でそう話した。素晴らしいポジティブ思考だ。
「ポジティブだね。私はこういうのはあまり好きじゃない」
「そうなんですか?」
「だって…」
「「だって?」」
「盛り上がらない!」
「なるほど」
社先輩は堂々とそう言い放った。
「だから私は今まで通り当日に活躍するよ。普段もそれとなくやるけど」
そう言いながら社先輩はあくびをして再び椅子に座って机に突っ伏した。
「まだ計画書そろわないと思うし、揃ったら起こし…zzz」
「また寝た!?」
「ほんとに、社先輩はお眠りさんなんだからー」
そして俺たちは全クラスの計画書が届くのを待った。
「社先輩!全クラスの計画書が届きましたよ!」
「…ん」
社先輩はゆっくり体を起こした。素直に一回で起きたのは初めて見た。
「ふぁ…。ってもうみんないるじゃん」
社先輩が寝ている間に、催事委員もみんな揃っていた。
「はぁ。それじゃあ、今日の委員会を始めます。ええと、今日は…、なんだっけ」
「委員長!今日は計画書のチェックです」
「ああ、そうだ。ありがとう副委員長。それじゃあ計画書、確認してください。学年ごとでいいかな」
こうして俺たちは自分の学年のクラスの計画書を確認した。
一組はたこ焼き屋、二組は喫茶店、三組は劇、四組は占い、そして五組も喫茶店だった。
「紡木さんのクラス、占いなんだ」
「金美ちゃん、私たちと同じで喫茶店だ!」
それぞれのクラスで行う出し物に問題はなく、計画書もおそらく問題なかったので一年生の分はすぐに終わった。
二年、三年生たちも特に問題なかったらしく、すぐに終わらせていた。
「次は最皇祭内のイベントで何をやるか決めます。去年とあんまり変わらなくてもいいけどね」
「去年は何やったんですか?」
「出し物で劇をやるクラスは劇、出たい人が申請してバンド、そしてミスコンがあったかな」
「なるほど…。どれもいいですね」
「はいはい!それじゃあ今年はミスターコンもやりましょう!」
「んーー。いいんだけど、きっと読者は求めてない」
「読者?」
「こっちの話。だからミスターコンは一旦保留かな」
「校内のいたるところに隠し要素を作るのはどうですか?何でもいいんですけど、例えば隠れ○ッキーみたいな感じで…」
「…うん。いいねそれ。全部見つけた人にはなにかあげようか」
なんとなく思いついたものを提案したら案外通ってしまった。
やはりアイデアは思いついたら言った方がいい。
「じゃあ、みんなが楽しめるようにそれぞれが一つだけ好きな場所に隠そうか。そうすれば催事委員の人も楽しめるしね。景品は…」
さすが社先輩だった。ここでもみんなが楽しめるよう工夫を入れてくれる。
楽しさを届ける委員会なのだから、俺たちも楽しまなくてはということだろう。
それからいろいろと出た意見をまとめ、どれを行うかなどを考えてその日の委員会は終了した。
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「それじゃあ、今日は解散。お疲れ様」
「「「お疲れ様でした」」」
「いやー、少し疲れたねー」
「そうだね」
俺と火恋さんは一緒に伸びをしながら話した。
「でも!最皇祭楽しみになったね!」
「うん。俺もどんな感じになるのか楽しみ」
「はい、それじゃあ二人」
「「?」」
俺たちは社先輩に呼ばれた。
「二人を記録係に任命します」
「それって何ですか?」
「校内新聞とかホームページ用とか資料用として文化祭の準備から当日の様子を写真に収める仕事」
「なるほど」
「それじゃあカメラも渡すからいろいろ撮っておいてね。壊さないでね、冬馬くんに怒られるから」
「気を付けます」
俺たちはカメラを受け取り、記録係になった。
「みんなの様子を見に行けるなんて、最高の仕事だね!」
火恋さんはとても喜んでいた。
「そうだね」
「それじゃあ、早速明日からいっぱい撮っていこう!」
こうして文化祭、最皇祭の準備期間がスタートしたのだった。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。
続きもぜひ、読んでいただければと思います。よろしくお願いします。