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第二十九会「二人の恋模様」

初めて書いたので拙いと思いますが、これから成長していければと考えていますので、温かい目で見守っていただければ幸いです。

 

 二学期が始まってから数日。

 今日は経理委員の手伝いに来た。

 経理委員…。仕事はハードだったけど、それよりも金美さんとおこなった『くっつき大作戦』の方が大変だったな…。

 そう思いながら俺は経理委員室のドアを開けた。


「失礼します…って、ええ!?」

 その時目に飛び込んできたのは、経理委員長の冬馬先輩と副委員長の金恵先輩が仲良く話していて、それをぼーっとした表情で見つめている金美さんがいるという光景だった。

「お!月じゃないか。何日か俺たち経理委員会を手伝ってくれるんだってな。よろしく」

「それはもちろん、戦力になれるよう頑張るつもりではあるんですけど、それよりもこれって…」

 俺は一学期の半ばの、初めて経理委員会を手伝った時のことを思い出した。

 冬馬先輩がいると何もできなくなってしまう金恵先輩。

 話すらできなかったあの時を思うと今のこの状況は考えられない。


「あ、あのね、月くん。私たちなんだけど…」

 俺は金恵先輩から説明を聞いた。

「夏祭りに一緒に行って、なんだかんだあってお付き合いをすることになった!?」

「そうなの…。あんまり大きい声で言わないでよ、恥ずかしい///」

「ああ、すみません…」

 俺は驚きのあまり大きな声で復唱してしまった。

 それにしても、あんなに緊張して話すらできなかった金恵先輩が冬馬先輩と…。なんなら付き合っているだなんて…。


「ごめんね。月くんには前に手伝ってもらったこともあったからほんとはもっと早く伝えるべきだったんだけど…」

「い、いえ。そこはあまり気にしていただかなくて大丈夫なんですけど…。冬馬先輩も、前聞いたときは妹みたいなって言ってましたけど、そこは変わったんですね」


「そうなんだよ。ずっとそんな感じだと思ってたんだけどな。夏祭りで金恵の気持ちを聞いて、俺も金恵と同じ気持ちなのかもって思ってさ。それでお互い好きだってことになってな…」

「そうなんですね…。じゃあ今は妹みたいだということではなくなったんですね」

「そうだな。今は『妹』じゃなくて『彼女』だからな。とても素敵で魅力的な人として考えているよ」

「冬馬先輩…///」

「金恵…」

 なんだこのラブラブな空間は。

 俺は金美さんのところまで行き、小声で話しかけた。


「金美さん、この二人はずっとこうなの?」

「…」

「金美さん?」

「ふぇ!ごめんねぇ、ぼーっとしてたぁ」

「あの二人はずっとこんな感じなの?」

「そうだねぇ。もう少し人が増えてきたらいつもの感じに戻るけどぉ。二人以外に私しかいない時はあんな感じだねぇ」

「そうなんだ…」


「お姉ちゃん、夏祭りが終わって以降なんかさぁ。家でも冬馬先輩が、冬馬先輩がーって、ずーーーっとその話ばっかりなんだよねぇ」

「そ、それはまた大変だね…」

「ほんとだよぉ」


 もうおなかいっぱいだというような呆れた顔でそう言った金美さんと一緒にその日の仕事を終わらせ、俺たちは二人を置いて経理委員室を後にした。


 ―――――――――――――――――――――――


「はぁ…」

 最近のお姉ちゃんは委員長のことばっかり。私のことなんて一ミリも考えていない。

(私のおかげでもあるじゃん…)

 こんなことなら手伝うなんて言わなければよかった。

 まあ、これのおかげで買ってもらえたゲームもあるけどさ…。


「か、金美ちゃん!」

「ん?」

 声をかけてきたのは紡木だった。


「紡木。どうしたのぉ?」

「な、なんだか金美ちゃんが元気ないような気がして…。ため息もついてたし…」

「えぇ?そんなことないよぉ?」

「そ、そうですか?」

「うん…」

 わざわざ紡木に心配をかけさせるわけにはいかない。


「…いえ、やっぱりいつもと様子が違う気がします…」

「…」

 紡木は結構鈍感なタイプのはずなんだけど、こういうことにはすぐ気づいちゃうんだね…。

「あ、ほんとに何でもないんでしたらいいんですよ!私の勘違いってことですし…」

「…紡木にも分かられちゃうなんて、結構顔に出てたのかなぁ」

「え…?」

「まあ、ちょっとねぇ」

 紡木は私に本当に何かあったんだと知って少し驚いた表情をしていた。


「…私で良ければ、聞きますよ?」

「…ほんとぉ?」

 私は今の気持ちをどこかに吐き出して、共有したくて、紡木に自分の気持ちを話した。


 ―――――――――――――――――――――――


「…っていう感じなんだよねぇ」

「そうだったんですね…」

 私はひと通り思っていることを話した。

 お姉ちゃんが委員長とべったりなこと、お姉ちゃんが私に構ってくれないこと、ちょっとだけ寂しいこと。

 最後のは強がってちょっとだけって言っちゃったけど。


「私にも弟がいますけど年が離れているので…。そんな風に思ったことはないんですけど、もし弟に彼女ができたらって考えたら…。ごめんなさい、何とも思わないかもでした…」

 紡木はなんとかフォローしようとしてくれていたが、変な感じになってしまい慌てて謝っていた。


「ぷっ、あはははは!」

「な、何で笑うんですか!?」

「ごめんねぇ、なんか紡木のそういうとこ、見たことないなって思ってさぁ」

 紡木とはまだそんなに話したことがあるというわけではなく、真面目な人だと思っていたけど、フォローも真面目にっていう感じがなんだか可笑しくて笑ってしまった。


「紡木、面白いねぇ。なんだかすこし元気がでたよぉ」

「も、もう!…でも、元気が出ただけでスッキリしたわけじゃないんですよね?」

「うーん、まあそうだけどぉ。これに関してはどうしようもないしねぇ」

「…それじゃあ、こういうのはどうでしょうか…」

 紡木は私に耳打ちをした。


「…えぇ?それ、大丈夫かなぁ」

「大丈夫なはずです!それにこれはラブコメであるあるなんです!リアルで起きているところを見てみたい…!」

「それぇ、ちょっと私情入ってない?」

 こうして私は紡木から提案されたことを実行することになった。


 ―――――――――――――――――――――――


『今日の放課後って時間あるぅ?』

 俺のスマホには一通のメッセージが届いた。

 金美さんからだ。


『時間あるよ。どうかしたの?』

『経理委員室に来てくれない?』

 俺は金美さんのメッセージに了解というスタンプを返信した。

 今日は委員会がなかったはずだが一体何だろうか…。


 そして放課後になり、俺は経理委員室に向かった。

「金美さん、来たよ…」

 経理委員室に入るとそこには金美さんと紡木さんが向かい合って座っていた。


「つ、紡木さん?どうしたの?」

「ちょっとこちらへ…」

 紡木さんは手で指示して俺を金美さんの隣に座らせた。

 金美さんも下を向いたまま動かない。


「つ、紡木、やっぱりやめた方が…」

「いえ、月くんも呼んだんです。やりましょう!」

「ちょっと、いったい何をしようと…」

 俺は何にも知らなかったので二人にツッコんだ。


「月くん。あなたにはこれから金美ちゃんとカップルになってもらいます」

「はぁ!?」

「そして金美ちゃんのお姉さんが来たらこの部屋でイチャイチャしてもらいます」

「ちょ、何言ってるの!?」

「ご、ごめんねぇ、月くん。実は…」

 俺は金美さんから事情を聞いた。


「なるほど。たしかに冬馬先輩と金恵先輩のイチャイチャは一回見ただけの俺でもおお…、ってなったし金美さんが金恵先輩のこと大好きなのも知ってるから寂しいっていうのはわかったよ。でも、わざわざ俺たちがカップルのふりをして金恵先輩に同じ気持ちを味わわせなくても…」

「そうなんだよぉ。でも紡木が聞かなくてさぁ…」

 紡木さんの方を見ると、メガネをクイッとして興奮した様子で話している。


「何を言ってるんですか!金美ちゃんは悲しい思いをしているんです…。これを解消するにはお姉さんにこの気持ちを知ってもらって、何をしてほしいか伝えないといけないんです!それにこのシチュエーション、リアルで見てみたい…」

 最後の方は紡木さんの私情じゃないだろうか。

 そう思ったがもうこの紡木さんを止めるのは無理だろうと思い心の中に留めておいた。


「それじゃあ、金美ちゃん、月くん。頑張って!」

 そう言って紡木さんは経理委員室から出ていった。

「…ええと…」

「ごめんねぇ、変なのに付き合わせちゃってぇ」

「いや、俺は大丈夫なんだけど、金美さんはいいの…?」

「まあ、『ふり』だしねぇ。それに紡木もなんだかんだ話を聞いて考えてくれたことだしぃ、無下にはできないっていうかねぇ…」


「そっか…。じゃあ、やれるだけやってみますか!」

「そうだねぇ」

 正直俺は誰かとお付き合いした経験がないので何をすればいいのかわからないが、そこは金美さんに合わせていこう。

 すると経理委員室のドアが開き、ターゲットの金恵先輩がやってきた。


「あれ、月くんもいるんだね。それで金美、話って何?」

「い、いやぁ、ええとぉ…」

 金美さんはなかなか言い出せなかった。


「何よ。はっきり言いなさいよ」

「あ、あのぉ…。あ!委員会の仕事で手伝ってほしいことがあってぇ…」

「なんだ、そんなことだったのね。それで月くんも呼んでるわけか。それじゃあ、さっさと終わらせましょう」

「そ、そうだねぇ。それじゃあこれ…」

 そう言って金美さんは金恵先輩に資料を渡した。

 俺は金恵先輩に聞こえないよう金美さんに小声で尋ねた。


「ちょっと、金美さん?言わなくていいの?」

「いやぁ、なんか直接言おうと思ったら恥ずかしくてさぁ。それよりもこんな感じで手伝ってもらいながら見せつける方が同じ土俵って感じがするしさぁ…」

「なるほど…」


 金美さんからの説明は言い訳っぽくも聞こえたが一理あった。

 そして俺たちも席に着いて仕事に取り組んだ。


 ―――――――――――――――――――――――


「それじゃあ、こういうのはどうでしょうか。月くんに彼氏のふりをしてもらって二人が付き合っていることにするんです。そしてお姉さんに対して二人で同じことをする。そうすればきっとお姉さんも金美ちゃんの気持ちをわかってくれて、構ってくれるようになりますよ」

「…えぇ?それ、大丈夫かなぁ」

「これはラブコメであるあるなんです!…」

 私は金美ちゃんに自分の思いついたことを提案した。


 ちょっとだけ私情は入ってるけど、もちろん金美ちゃんの気持ちをスッキリさせることが第一優先。

 きっとこの作戦で何とかなるはず…。

 この話を提案した時、なんだか胸にチクッとした痛みが走った。


(…?)

 急にどうしたんだろう。不整脈?何かの病気?

「それぇ、ちょっと私情入ってない?」

「は、入ってないよ!」

 金美ちゃんの鋭い質問で引き戻された私は、胸の痛みを気にしないことにして金美ちゃんと作戦を練った。


「そもそもぉ、月くんが了承してくれるかが問題じゃ…」

「月くんならきっと助けてくれますよ!」

「おぉ…。すごい自信だねぇ。まあ、わからなくもないけどさぁ」

 そう言って金美ちゃんは月くんに連絡を入れた。


「…月くん、大丈夫だってぇ」

「ほんとですか!それじゃあ月くんに事情を説明して、カップルのふりをしてもらって…」

 チクリ…。私がそう言った時、またなぜか胸に痛みが走った。


(また…。なんでだろう…)

「…紡木?」

「あ、ああ、ごめんなさい…。それでいけばきっとお姉さんも分かってくれます!」

「…うん。私の話を聞いて紡木が考えてくれたんだもんねぇ。きっとうまくいくよぉ。私、頑張るねぇ」

 金美ちゃんもやる気になってくれたようだ。


「それじゃあ、今日の放課後にねぇ」

「はい!また」

 こうして私と金美ちゃんは別れてそれぞれの教室に向かった。


(…もう痛くない…)

 さっき痛んだ胸はなぜか治っていて、それから放課後まで痛むことはなかった。

 そして放課後。

 月くんが経理委員室にやってきたので、私は彼を金美ちゃんの隣に座らせて作戦を説明した。


「月くん。あなたにはこれから金美ちゃんとカップルになってもらいます」

「はぁ!?」

 こうして説明を終え、二人がやる気になったのでスタンバイを始める。

「それじゃあ、金美ちゃん、月くん。頑張って!」

 私は経理委員室を後にする。もちろん、陰から見守るつもりだ。


 せっかくアニメ漫画のラブコメ展開がリアルで見られるんだから、見ておかないと…。

 金美ちゃんのお姉さんが経理委員室に入った後、私は少しだけドアを開けて見守っていた。

 チクリ…。

 また痛む。それも今までより少し大きい痛み。


(…もう。なにこれ…)

 私は胸の痛みに少し不安になったが、これから始まるラブコメ展開にドキドキしているんだと自分に言い聞かせてドアの隙間から三人を見守ったのだった。



最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。

続きもぜひ、読んでいただければと思います。よろしくお願いします。

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