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第二十五会「恋の花火(夏休み⑨)」

初めて書いたので拙いと思いますが、これから成長していければと考えていますので、温かい目で見守っていただければ幸いです。

 

「うわ!ものすごい着信の数…」

「私もです…」

 どうやら私たちはかずくんを届けることに夢中になっていて着信に気づかなかったようだ。


「かけ直しますね」

 私はスマホを耳に当て、火恋ちゃんに電話をかけ直した。

 その時、反対側の耳に近くの知らない女の人たちが話している会話が入ってきた。


「来年は男と来て花火見たいねー」

「え、どうして?」

「この祭りのジンクス知らないの?この祭であがる花火なんだけどね。最初に上がる花火が恋の花火なんだって。その花火を二人で一緒に手をつないで見た男女は固く結ばれるっていう恋の花火なんだよ!」

「そうなの!?初めて知った…。来年はあんたとじゃなくて男と来る!」

「私だってそうよ!」

(そんなジンクスあるんだ…)

 私もさっきの女の人のように初めて知った。


 それにしても火恋ちゃんになかなかつながらない。

「つながった?」

「いえ、なかなか…」

「俺もかけてみる」

 そう言って月くんは土門くんに電話した。


「…あ、土門?今どこにいるんだよ。うん、うん、わかった、今から向かう。紡木さんも一緒だよ。うん、それじゃ」

 そう言って月くんは電話を切った。

「土門たちはみんなでいるみたい。さっきの射的やったところにいるってさ」

「そうですか…。では向かいましょう」

「…うん」

 そして私たちはその場所に向かった。


 それにしても人が多い。花火ももうすぐだからか、人が増えている。

「紡木さん、いる?大丈夫?」

「は、はい。なんとか」

「もう少しで花火始まっちゃうね。これは最初の方はあっちに着く前に上がっちゃうかもな…」

 私はその言葉を聞いてドキッとした。

(最初の花火…。恋の花火…)


 そう思った時、後ろから人の波が押し寄せてきた。

「きゃあっ!」

「紡木さん!」

 私が転びそうになるのを月くんが手を握って支えてくれた。


「あ、ありがとうございます」

「…紡木さんが嫌じゃなかったらなんだけどさ、このままでいいかな?またはぐれちゃいそうで…」

「え?」

「あ、いやだったら裾でもいいからさ。せっかくならみんなでちょっとでも花火、見たいって思ったからはぐれたくないなって」

 月くんはそう答えた。


「いいんですか?私なんかと手を握って、さっきみたいに勘違いされたら…」

「さっきみたいって、カップルの?」

「はい…。私なんかとカップルって勘違いされるのなんて、嫌じゃないですか…」

 そう、私みたいな人と勘違いされるのは嫌なはずだ。


「…あのさ、紡木さん。どうしてそんなこというのさ」

「…へ?」

「もちろんカップルに間違われたいっていうわけじゃないけどさ。俺たち友達じゃん?俺の友達を悪く言わないでほしいな」

「その、ええと」

「あと流れで言っちゃうけど、その敬語も。無理にとは言わないけど敬語じゃなくても良くない?さっきかずくんに話している時は普通だったじゃん?」

「そ、それは小さい子だったから…。それに私が敬語を使わないのは変ですし…」

「何が変なの?さっき話してる感じ、なんの違和感もなかったよ?」

「その…」

 月くんを怒らせてしまったかもしれない。

 私が変なことを言ったから…。


「俺は紡木さんともっと仲良くなりたいって思ってるし、さっきの話し方の方が好きだけどな」

 月くんはそう言って私に笑顔を向けてくれた。

 その時アナウンスが鳴った。


「まもなく、花火がスタートします」

「やばい、ほんとに始まっちゃう。ごめん、紡木さん。裾でいいから頼めないかな?」

 私はコクンと頷いて月くんの服の裾をつかんだ。

 そして私たちは人混みをかき分けていく。

 それでもやっぱり私の力じゃ裾だけを掴んでいるのは難しくて離してしまった。


「あっ…」

 これは終わりだ。きっとまたはぐれてしまう。

(やっぱり私のせいで…。私が変なこと言わないでいれば…)

 その時私の手はがっちりつかまれてそのまま引っ張られた。


「やっぱごめん。こっちの方でいいかな?」


 月くんがそう言ったとき、上から光とともにドーンという大きな音が聞こえた。

「あー、やっぱり間に合わなかった…。でももうすぐだし、途中からは一緒に見れそうだ。行こ!紡木さん!紡木さん?」

 私はさっきのジンクスの話を思い出した。


(最初の花火は恋の花火で、手をつないだ男女がその花火を二人で見ると…)


「手をつないだ男女が二人で…。はぁっ!」

 今の状況そのままだった。私は月くんと手をつないで二人で最初の花火を見た。

 これは…。

 こんな漫画のような展開に自分が遭遇するなんて私は思いもしなかった。


 ―――――――――――――――――――――――


「紡木さん?」

 紡木さんはなかなか返事をしてくれない。

 もしかしてさっき言ったことで傷ついてしまったのだろうか。

 言い方がきつかったのかもしれない。


「…たりで、い…に…」

 何かつぶやいている。

「え?ごめん、花火の音もあって聞こえない!」

「…ばれる」

 まだ紡木さんがなんて言っているのか聞こえなかった。


「ごめん!まだ聞こえn」

 そう言いかけたとき紡木さんは顔を上げた。

 なんだかものすごく顔が赤い。

 花火の光が反射しているからだろうか。

 紡木さんは逆に俺のことを引っ張りながら進み始めた。


「紡木さん、さっきはごめん。言い方がきつかったかもしれない…」

 すると紡木さんはこっちに振り返った。

「月くんは悪くない!悪いのは私!だから早く行こう!」

 紡木さんは顔を赤くしたままそう言った。敬語じゃなく普通に。


「…うん!」

 そして俺たちは人混みを抜け、みんながいる射的の屋台にたどり着き、残り半分の花火をみんなで見て楽しんだ。


 ―――――――――――――――――――――――


「もう!二人ともどこ行ってたのさー!」

 火恋さんは心配した様子で俺たちに話しかけてくれた。

「電話もつながらないしさー、ほんと心配したよ!」

「ごめん!実はさ…」

 俺はさっき起きたことを簡単に説明した。


「そんなことがあったのか」

「大変だったねぇ」

「無事でよかったよ!男の子も二人も!」

「そうね」

 みんな俺たちを心配してくれた。


「ありがとう!」

「ありがとう、ございます」

「そういえば二人は最初の花火見たのか?」

 土門にそう聞かれた。

「最初の花火?それはもちろん見たよ。ね?紡木さん」

「あ、あのええと。はい…」

 紡木さんと俺が答えると土門はワクワクした顔でさらに聞いてきた。


「おお!じゃあもしかしたらあのジンクス…?」

「ジンクス…?」

 一体何のことを言っているのかわからなかったのでそう聞き返した。

「なんだ月、知らないのか。ここの花火はな…」

「わああああああ!!!!」

 土門が答えようとしたとき紡木さんが両手を振りながらに叫んだ。


「ど、どうしたの。紡木ちゃん…」

「あ、あの!改めて、ご迷惑をおかけしました!ごめんなさい!」

「ご、ごめん」

 紡木さんが謝ったので、俺も便乗して一緒に謝った。


「そんなに謝らないでくれよ。みんなで一緒に花火も見れたしさ…」

「そうそう!きれいだったね!」

「そうだねぇ」

「ええ、そうね」

 みんな本当に優しい。みんなと友達になれて、一緒に夏祭りに来れてよかったと思った。

 そして俺たちは撮影した写真をみたり、話をしたりしながら駅に向かった。


「月くん」

 歩いている途中紡木さんに話しかけられた。


「さっきはごめんなさい」

「俺の方こそごめん」

「私、もう自分なんかって思わないようにします」

「うん」

「それと敬語のことなんですが…」

 紡木さんともっと仲良くなりたいというのは俺の本心だ。

 でも改めて考えると、敬語だから、敬語じゃないからというのは関係ない。

 俺は自分の価値観を押し付けて紡木さんを困らせたことを後悔した。


「あ、それは、ええと、紡木さんを困らせたかったわけじゃなくて、その…」

 そこまで言ったとき紡木さんは俺の言葉を遮って口を開いた。

「私、今すぐには難しいけど!が、頑張ってみるね!…ます///」

「やっぱり恥ずかしいよー!///」


 こうして俺たちの夏祭りは終了したのだった。


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。

続きもぜひ、読んでいただければと思います。よろしくお願いします。

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