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第二十三会「射的対決(夏休み⑦)」

初めて書いたので拙いと思いますが、これから成長していければと考えていますので、温かい目で見守っていただければ幸いです。


「それじゃあ、お祭り楽しもう!」

火恋さんの掛け声にみんなで乗っかり、いろいろな屋台を回った。

たこ焼き、焼きそば、わたあめ、チョコバナナ…。

俺は祭りの屋台が初めてだったのでどんな感じかドキドキしていたが、とても楽しかった。


「なあ、あっちにある射的やってみないか?」

「お!いいねー!じゃあさ、みんなで勝負しようよ!」

土門の提案に火恋さんが続き、誰がいい景品をとれるか勝負することになった。

「最下位の人は一位の人にジュースおごりだ!!」

土門が意味の分からない罰ゲームを付け加えた。


「これ、ゲームみたいなものだよねぇ。じゃあ負けられないなぁ」

金美さんは目に炎を浮かべている。本気のようだ。

「わ、私、射的初めてだからできるかな…」

「負けねぇ」

「私が勝つ」

みんな闘争心むき出しだ。罰ゲームもかかっているから俺も負けられない。

こうして罰ゲームをかけた射的勝負がスタートした。


―――――――――――――――――――――――


この射的では一発ずつ弾を詰めて撃つものではなく、連続で三発撃てるよう改良された銃が使われていた。

景品は一等と書かれた大きいぬいぐるみから小さいお菓子まで様々なものがある。

小さいお菓子とぬいぐるみは景品がそのまま的になっていて、それ以外は代わりの的を倒すことで景品がもらえるらしい。


初めは言い出しっぺの土門から。

「俺は小さい時から祭りに来るたび射的はやってたんだ。いい景品をとるコツも分かってるのさ…」

そう言って一等のぬいぐるみに狙いを定め、三発の弾を撃った。

全て命中したが、ぬいぐるみはびくともしなかった。

「な、噓だろ…」

土門は景品をとることができずに終了した。


「よーし、次は私が…」

そう言って火恋さんは腕まくりをし、土門と同じくぬいぐるみに狙いを定めていた。

「とりゃー!」

火恋さんの掛け声とともに一発の弾が飛んでいく。

弾はぬいぐるみに当たり、跳ね返って一番下の段にある小さいお菓子に命中して落ちた。

「あ、あれ?でもやったー!」

残りの弾は外れ、火恋さんはお菓子一つという結果で終わった。

「何もないよりはいいね!」

火恋さんは景品をとれたことにとても満足そうだった。


「つ、次は私が…!」

次は紡木さんが挑戦した。

紡木さんは堅実で、火恋さんがたまたま手に入れたお菓子と同じものを二つ命中させてゲットしていた。

「さすがつむちゃん。堅実だね…」

「くっそー、俺もそうしてれば…」

火恋さんは分析して土門は悔しがっていた。


「次は私がやる」

そう言って日早片さんは台の前に立った。

「日早片さん、やったことあるの?」

俺が聞くと日早片さんは首を横に振った。

「でも、なんとなくいけるでしょう」

日早片さんはそう言うと、狙いを定めて弾を撃った。

撃たれた弾は跳弾のように跳ね返りながらいくつもの景品を倒していった。

「ひ、日奈ちゃん…。すごすぎるよ」

「やるねぇ」

金美さんは顎に手を当てて感心している。

周りの観客たちからも拍手が沸き上がった。

「じょ、嬢ちゃん…。あんまりとられるとおじさん、困っちゃうな…」

屋台のおじさんも汗をにじませていた。

「じゃあやめておく」

そう言って日早片さんは残りの弾を空に撃って終了した。

手にはたくさんのお菓子や景品を抱えている。


「ほんとに初めて?」

「なんとなくでね。あなたも初めてでしょ」

「初めてだけどそんなのできる気がしないよ…」

日早片さんから銃を受け取りそのまま俺の番となった。

日早片さんのせいで知らない人たちからも注目されている。

(緊張するな…)

俺はどうせぬいぐるみは取れないだろうと思い、紡木さんと同じように小さいお菓子を狙うことにした。

一発目は思った通りに飛ばず失敗。二発目は右上をかすめ失敗。

最後の三発目。俺は慎重に狙いを定めて撃った。

弾はきれいに飛んでいき、お菓子に当たる、はずだった。

突然風が吹いて弾が上にそれ、なぜか一回り大きい的に命中して倒れた。

「じゃあこの中から選んでね」

おじさんから渡された景品にはお菓子やお面なんかが入っていた。

「じゃあこれで…」

俺はせっかくだったのでお祭り気分を味わえる狐のお面をもらった。

「やるね、月くん」

「月もゲットしたのか…」

「つ、月くん、すごいです!」

みんなから褒めてもらえたが、風のせいでたまたまだったので歯がゆい気持ちになった。

「たまたまね」

日早片さんからは見抜かれていたようだった。


「私が最後かぁ」

そしてとうとう最後、金美さんの番になった。

普段からゲームをする時構えているのだろう。

銃を構える姿が様になっていてスナイパーのようだった。

「…」

なんのタイミングをうかがっているのかわからないがなかなか撃ち始めない。

「…ここ!」

そう言って金美さんは三発連続で弾を撃った。

弾は一直線に飛んでいき、土門や火恋さんが撃ったときはびくともしなかったぬいぐるみが後ろにコテンと倒れた。

「…お、大当たり…」

屋台のおじさんがありえないといった顔でベルを鳴らしながらつぶやいた。


周りからはものすごい歓声と拍手が聞こえる。

「すごいよ!金美ちゃん!!」

火恋さんは金美さんに勢いよく抱き着いた。

「金美ちゃん、すごいです!」

「ど、どうやって…」

景品をとれなかった土門は悔しがりながらぬいぐるみをとった方法が気になっていた。

俺もどうやってとったのか気になる。

「加速させてた」

日早片さんは気づいていたようで、一言つぶやいた。

「お、さすが日奈。気づいたんだねぇ」

金美さんはニヤリと笑い説明を続けた。

「土門くんと火恋がぬいぐるみに当てた時、ぴくりとも動かなかったよねぇ。でもおじさんも、さすがにとれない景品を置いてるわけないと思ってさぁ」

金美さんがおじさんの方を見た時、おじさんは額に汗を浮かべながらもちろんだと微妙な笑顔で答えた。

「一つの重さじゃ足りないと思ってねぇ。だから連続ですぐに弾を撃ってぇ、一発目の弾に二発目と三発目の弾をぶつけて加速させたのぉ。これでぬいぐるみを倒せる威力にしたってわけぇ」

金美さんは普通に答えているが、こんなすご技誰にできるというのだろうか。

おじさんの反応を見るに、絶対取れないと思ってこのぬいぐるみを設置していたはずだ。

「じゃあおじさん。ぬいぐるみもらうねぇ」

「ああ!もう!もってけもってけ!二度と来るんじゃねーぞ!」

おじさんはあんなすご技使われたら仕方ないと思ったのか、泣きながら俺たちを送り出した。


「ということで、一位は金美ちゃん!」

「これには誰も勝てないわ」

「まあねぇ、ゲームは負けられないよぉ」

金美さんは勝ち誇った表情をしていた。

「最下位は…土門くん!」

「ちくしょう。やっぱり言い出しっぺが負けるのか…!」

土門は金美さんに何のジュースを飲みたいか聞き、買いに向かった。

「日奈、よく気付いたねぇ」

「なんとなく弾が私たちのより速かったから」

「素質あるよぉ。今度一緒にゲームやらなぁい?」

金美さんは日早片さんをゲームに誘っていた。

「わ、私で良ければ…」

日早片さんもすこし嬉しそうだった。


―――――――――――――――――――――――


土門も戻ってきて、みんなでまた屋台を見て回った。

夜に花火も上がる予定なので、人もだいぶ増えてきている。

「すごい人混みだな…」

「みんな、はぐれないように注意しよう!」

「な、なんかそれ、ものすごいフラグのような気がします…」

「だよねぇ」

そんな会話をしていると、後ろから人の波が襲い掛かってきて俺はバランスを崩してしまった。

「あぶねっ」

転びそうになるのを耐え、前を見るとみんなの姿はなかった。

どうやらフラグを速攻で回収してしまったようだ。

俺は何とかして合流しようと辺りを見渡したが、誰の姿も見当たらない。

(まずい、早くしないともっと離される…)

そう思った時、さっきまで見ていた浴衣の袖が見えた。

(あれは…)

俺は何とかして近くまで行くと、その人の手を引っ張って横に出て人ごみを抜けた。


「ふぅ、一旦抜け出せた…」

「はわわわわ!」

「ごめん!みんないなくなって、すぐ誰かと合流できたらと思って…」

「そ、そうですね!急に引っ張られたのでびっくりしました…。月くんでよかったです」

俺が合流したのは紡木さんだった。

「他のみんなは…」

「さっきの人波ではぐれてしまいました…」

「そうだよね…」

やはりみんなはぐれてしまったようだ。火恋さんがフラグを立てるから…。


「あ、あの…。手が…」

紡木さんは顔を赤くしてか細い声でそう呟いた。

「ご、ごめん!また必死で…」

「い、いえ、おかげで合流できましたし…」

「…」

「…」

少し沈黙が続いた。

紡木さんはいきなり手をつかまれ引っ張られて、怒っているかもしれない。

「…ふふっ」

「ど、どうしたの?」

紡木さんは微笑みながら話した。

「前もこういうこと、あったなって思いまして」

「あー、たしかに…」

状況は少し違うが、体育祭でも似たような感じになったことを思い出した。


「月くんには手を握られることが多い気がします」

「ほんとごめん!男から手を握られるの嫌だよね…」

「あ、その!違うんです!嫌だとかではなくて…。ただ、以前の私では考えられないなって」

「紡木さん、話すまで大変だったからね…」

「その節は本当にご迷惑をおかけしました」

「違う!そんなつもりじゃ…」

「ふふっ、わかってます。月くんは優しいですから」

紡木さんとこんな風に話すのは初めてかもしれない。

改めてみると紡木さんの浴衣姿は日早片さんとは違う美しさがあってとてもきれいだ。

そう思うと急に恥ずかしさがこみあげてくる。


「…」

「…」

「は、早くみんなと合流しないと!」

「そ、そうですね!スマホで連絡してみます!って圏外です…」

(やっぱりそうだよなー…)

この人混みなのだ。電波もすぐに繋がらないのが妥当だろう。

「頑張って探そう」

「はい!」


二人でそう話したとき、俺はズボンが引っ張られる感覚があった。

「ん?」

下を見てみると、小さい男の子が俺のズボンを引っ張っていた。

「パパ?ママ?」

男の子は俺を見上げてそう呟いた。

「ええと、僕、どうしたの?」

「パパ?ママ?」

男の子は涙目になりながらもう一度つぶやき、最終的に泣いてしまった。

「月くん、その子…」

「多分、迷子…」

さすがにこの子のことをほうっておくわけにはいかない。


俺たちはこの子の親を探しながらみんなと合流することに決めた。



最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。

続きもぜひ、読んでいただければと思います。よろしくお願いします。

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