表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/61

第十二会「彼女の気持ち」

初めて書いたので拙いと思いますが、これから成長していければと考えていますので、温かい目で見守っていただければ幸いです。


「それではみんなさん、テスト&一学期お疲れさまでしたということで…。乾杯!」

「「「かんぱーい!」」」


 ―――――――――――――――――――――――


 テストも終わり、美化委員での三週間を終えた俺は生徒会室に来ていた。

「入神会長、美化委員長からのサインです」

 俺は世理先輩からもらったサインを会長に渡した。

「うむ、受け取った。これですべての委員会の委員長からサインを受け取ることができたな」

 そう言って会長は書類をまとめて何か書き込んでいる。

「これで生徒会選挙に立候補できるな。といってもお前は副会長への立候補だが」

「はい。副会長になれば、生徒会長への近道になるので立候補しますよ」

「日奈もいるがな」

「うっ…」

 そうだった。日早片さんも生徒会長を目指しているのだ。副会長に立候補するのは当然だろう。

 そうなると俺は彼女と争わなければならない。

「まあ、今回副会長になれなくても生徒会長になれないわけではないさ。可能性は少し低くなるがな」

「何があっても生徒会長になってみせますよ」

「楽しみだな」

 俺たちがそんな会話をしていると、日早片さんも生徒会室へやってきた。

「お疲れ様です。会長」

「ああ、お疲れ様」

 日早片さんはそのまま何か作業をし始めた。

「ああ、そうだ。月曜日がテストだったからな。前々から言っていた通り、終業式のあと毎月の委員会会議を行う。お前たちは毎度のとおり、一年生同士の報告会をしてくれ」

「わかりました」

 俺と日早片さんは返事をする。

 テスト前に連絡があったのだが、テストとかぶったので日をずらしたらしい。

「じゃあ、そういうことだ」

 入神会長はそう言って生徒会室から出ていった。

 俺と日早片さんの二人きりになる。

「…」

 お互い沈黙が続いた。

 すぐに出ていけばよかったのだが、なんとなく先に出たくなかったのだ。そのままタイミングを逃した。

「あなた」

「?」

 日早片さんの方から話しかけてきた。

「私に勝つんじゃなかったの?」

「くっ、それは…」

「二位ですらない。おまけに土門さんにも負けている」

「…」

 俺は何も言い返せなかった。

「待て、教科!各教科ならどうだ」

 自分で言ってて情けないが、俺の得意な国語ならや今回頑張った理科なら同じ点数、あるいは勝っているのではと思ったのだ。

 せめて一つでも勝っていたい。

「現代文!」

「100」

 負けた。俺が一番高い点数の現代文で負けた。

 だけど最後の問題が鬼だった理科なら。他も結構難しかったはずだ。もしかしたら勝っているかもしれない…!

 日早片さん、文系科目の方が得意そうだし…。


「理科!」

「200」

「え?」

「200」

「嘘だろ?」

「200」

「最後の問題、解けたのか?」

「うん」

 日早片さんがここで嘘をつく理由もないし、本当だろう。

「まじか…」

「…」

「すごいな」

「え?」

 日早片さんはきょとんとした顔をしている。

「俺、理科が苦手だったから先輩から教えてもらってたんだよ。それで今回のテストも理科は最後以外全部正解できたしさ。でも最後の問題はさっぱりだった。先輩も時間かかってたし。それなのに日早片さんは解けたんだな。本当にすごい」

 俺は素直にそう思った。

「…」

 日早片さんは反対側を向いたまま黙っている。

「日早片さん?」

「ま、まあね」

 それだけ言って日早片さんは出て行ってしまった。

(なんだったんだ…)

 俺もしばらくしてから生徒会室を後にした。


 ―――――――――――――――――――――――


「すごいな」

「え?」

 まさか素直に褒められるなんて思っていなかった。

 今まで褒められたことなんてほとんどなかったから。

 しかも月くんには嫌われていると思っていたし私もそういう態度をとっていたから。

 どうせ今回も嫉妬されて変なこと言われると思った。

「本当にすごい」

 やめて。私はすぐに反対を向く。

 おさえろ、おさえろ。

 にやついてしまう顔を何とか元に戻そうとする。とにかくここからいなくならないと。

「ま、まあね」

 変な顔になっていたかもしれない。

 急いで生徒会室から離れる。歩いている最中もにやつきが止まらなかった。

 自分の頑張りが素直に褒められることがこんなに嬉しいことだったなんて。

 久しぶりすぎて忘れてしまっていた。

 周りから変な目で見られないように、私は早足で誰ともすれ違わないよう教室に戻った。


 ―――――――――――――――――――――――


 終業式が終わり、生徒たちは早めの下校となった。

 俺たちは報告会が残っているのですぐには帰れない。

「それでは、報告会を始めます」

 日早片さんの司会で今月の報告会が開始した。

 今回は一学期の全体のものも行うので、今までのようにすぐ終わるというのではなかった。

「ふ、風紀委員では…」

 紡木さんから、今月、今学期の校内の様子、一年生の様子が報告される。内容もそれなりにあった。

 日早片さんはすぐに議事録を作成しているが、司会も行っている。

「手伝うよ」

 俺は毎月報告会で日早片さんを手伝おうとするのだが断られていた。

 今回も断られるかもしれないと思ったが、声をかけてみた。

「…」

「お願い」

 日早片さんから議事録の紙を渡された。

 まさか渡されると思っていなかったので、少し戸惑ってしまう。

「あ、ああ。オーケー。これね」

 日早片さんから紙を受け取り、経理、催事、美化委員の報告をそれぞれまとめていった。


 やはりいつもより時間がかかってしまったが、報告会も終了した。

「なあ、みんなこの後暇か?このメンツって、おそらくこのままいけばみんな委員会に入るだろ?これからも交流あると思うし、打ち上げに行かないか?テストと、一学期お疲れ様ってことでさ」

「いいね!賛成だよ!」

 土門の提案に火恋さんが乗っかる。

「俺も、いいよ」

「私はどっちでもいいやぁ」

「じゃ、金美ちゃんは賛成で!」

 俺と金美さんも参加する意思を示す。紡木さんはどうしようか困っている様子だった。

「紡木さんも、行かない?」

「つむちゃんも!来てよ!」

 その言葉を待っていたかのように紡木さんの顔が明るくなった。

「!はい!行きたいです!」

「日早片さんも…」

 土門がそう言った時、日早片さんは紙をまとめて立ち上がった。

「私は会長に報告しないといけないので」

 そう言って日早片さんは会議室から出て行ってしまった。

「あらら」

 土門は仕方ないという顔をしている。

「じゃあ、このメンバーで行くか」

「……。悪い、俺もちょっと会長に用があるんだった。後で合流するから先に行っててくれ」

「おー、分かった。場所、送っておくわ」

「月くん、頼んだぜ!」

「よろしくぅ」

「え?え?」

 火恋さんと金美さんは親指を立てて俺にそう言った。紡木さんはよくわかっていないようだった。

 土門も何の用があるのかということは聞いてこない。紡木さんを除いてみんなきっとわかっているのだろう。

 俺は土門に連絡を頼んで、日早片さんの後を追った。


 ―――――――――――――――――――――――


「失礼しました」

 そう言って日早片さんは生徒会室から出てきた。

 そのままこちらに歩いてくる。

「おい」

「!」

「…なんでいるの」

「日早片さん、せっかく土門が誘ってくれたのにあんな断り方はないんじゃない?」

「…別に」

「まあ、いいけどさ。さ、行こっか」

「何言ってるの」

「みんな揃ってるんだしさ、これからきっと交流あるでしょ。せっかくだし行こう」

「な、なんで」

「俺も勉強について聞きたいしさ」

「…」

 しばらく沈黙が続いた。

「…そういうことなら」

「よし。場所は近くのファミレスだってさ。他の生徒と帰る時間がずれたからあんまりうちの学校の生徒もいないくて空いてるって」

 俺は土門から来た連絡をそのまま日早片さんに伝えた。

 土門には日早片さんも行くことを伝える。

 こうして俺たちは二人でファミレスまで向かった。



「なあ」

「…」

 俺はファミレスに向かっている途中、日早片さんに話しかけた。

「なんでそんなに誰かといるのを嫌がるんだ?」

「…」

「…まあ、言いたくないならいいけどさ」

 何か言えない理由があるのかもしれないと思ったのでそれ以上聞くのはやめた。

「…」

「…」

「逆に…」

「え?」

「逆に、どうしてそんなに私に構うの」

 日早片さんから質問された。

「どうしてって…」

 俺は自分の思いを伝えた。

「もちろん最初は嫌われてると思ったし、今も思ってる。でもさ、ライバル、とは言えないかもしれないけど同じ生徒会長を目指している日早片さんを放ってはおけなかった」

「それに、さっき言ったみたいに勉強とかいろいろ教えてもらいたいしね」

「でもそう思っているのはあなただけ。みんなはさっきや今までの態度を含めて私のことは嫌いなはず。そんな中に私が行っても…」

「じゃあなんでついてきたんだよ」

「!」

「もし本当にそう思っているのなら俺の誘いなんかはっきり断ってこなければよかった」

「そ、それは」

「本当はみんなと話したいんじゃないの?というか友達になりたいんじゃないの?」

「…」

 日早片さんは黙り込んでしまった。

「まあ大丈夫だと思うよ。みんないい人だし。少なくとも俺は日早片さんとも友達になりたいと思ってるよ」

「…!」

 日早片さんはこちらを見て驚いた顔をしていた。

 あとは特に会話することなく、俺たちはファミレスに到着した。


 ―――――――――――――――――――――――


「いらっしゃいませー」

 店員さんの声とドアを開けた時のチャイムが同時に聞こえてくる。

「おーい、こっちこっち」

「あ!日早片さんも来てくれたんだね!」

「どおもぉ」

「あ、あの、えと」

 みんな私が来たことに何の不満もなさそうだった。

「早くこっち来なよ」

 月くんはすでに席に座っていて、私を呼んでいる。

 私は空いている席に着いた。

「日早片さんは飲み物、何にする?オレンジジュースでいい?お茶にする?」

「あ、えと、お茶で…」

「おっけい!月くんはこれね」

「もう決まってるのかよ」

「俺チョイスだ」

「不安だな」

 私があっけにとられていると月くんはこちらを向いて一言話した。

「ね、言ったでしょ?」

 確かに誰も私のことは気にしていないようだった。

「それではみんなさん、テスト&一学期お疲れさまでしたということで…。乾杯!」

「「「かんぱーい!」」」

 土門さんの音頭とともにみんなでグラスをぶつけ合った。

 みんな私にも乾杯をしてくれた。

 その後も、委員会のことや部活、最近のことについて話していた。私にも話を振ってくれたがうまく答えられない。

「…」

 この人たちなら、きっと。

 そう思い私は自分の思っていることをみんなに話した。

「あ、あの」

 みんながこちらに注目する。

「まずはさっきの報告会、それに今まで嫌な態度をとってごめんなさい」

 私が謝るとみんな気にしていないとフォローしてくれた。

「私は、小さい時から勉強や習い事で誰かと遊ぶ時間とかが無くて。それに成績とかで嫉妬されたりして。だから自分から友達は作らないようにしていた。でも本当は友達も欲しいし誰かと遊んだり話したりしたかった。今更言うのも都合がよすぎるというのはわかってる。でも、もしよければ…」

 今まで言ったことのない言葉でなかなか次が出ない。

 前を向いたらみんなが優しい顔で私を見守ってくれていた。

(ああ、どうして今までこうしなかったのだろう)

 月くんが与えてくれたチャンスを無駄にはしない。

「もしよければ、私と友達になってください」


 ―――――――――――――――――――――――


 日早片さんがそう言うと、すぐに明るい声で返事があった。

「もちろんだよ!私も日奈ちゃんと友達になりたかったんだー!あ、日奈ちゃんって呼ぶね!」

 相変わらず火恋さんは距離の詰め方がすごい。

「よろしくねぇ」

「あ、あの、木本紡木、です!」

「土門でーす、って同じクラスだしな」

 みんなも改めて自己紹介をしている。

「日奈ちゃんってさー…」

 その後は火恋さんを中心としてたくさんの話題で大盛り上がりだった。

 日早片さんも時々困った様子ではあったが、何とか食らいついていた。

 俺も勉強や習い事についていろいろ聞いたりした。

 日早片さんとまともに話したことがあまりなかったので、いろいろなことについて知れた。

 みんなでの打ち上げはとても楽しかった。



 楽しい時間はあっという間に時間も過ぎ、解散することとなった。

 用がある人や帰り道が違う人がいたのでその場で解散する。

 俺は日早片さんと一緒になった。

「大丈夫だっただろ」

「うん」

「よかったな」

「…」

「あなたに借りができた」

「気にしなくていいよ」

「…」

「あ、ありがとう」

「どういたしまして」

 こうして日早片さんと俺を含むみんな友達になることができた(俺も友達ってことでいいんだよな?)。

 明日からは夏休みだ。長い休日、どう過ごそうか考えながら俺も帰路についた。


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。

一学期はここで終了です。

続きもぜひ、読んでいただければと思います。よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ