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第十会「テスト勉強」

初めて書いたので拙いと思いますが、これから成長していければと考えていますので、温かい目で見守っていただければ幸いです。

「お前が世理先輩とテスト勉強だと!?」

 少し切れ気味で突っかかってきたのは結川先輩だった。

 俺と世理先輩が美化委員室で話していたのを聞いていたらしい。

 動物たちの世話をしに行く前に結川先輩に呼び出され、詰められている。

「は、はい。世理先輩は理科が得意だと聞きまして。俺は苦手なので教えてもらおうと…」

「くそ!私と同じか…」

 結川先輩は小さい声で何かつぶやいていた。

「いいか?世理先輩と二人だからって変な気起すんじゃねーぞ?」

「起こしませんよ!」

 結川先輩に変な心配をされている。

「だったら結川先輩もくればいいじゃないですか」

「だめだ。私が行ったら世理先輩は二人の面倒を見なくちゃいけなくなる。世理先輩に申し訳ない」

「別に結川先輩は教えてもらわないで一緒に勉強するだけって言えば…」

「世理先輩は優しいから絶対私にも気を回してくれるんだよ。私の存在で世理先輩に迷惑をかけたくない」

「そうなんですか…」

 本当に世理先輩を慕っているようだ。

「だから!お前もあまり迷惑をかけるようなことをするんじゃねーぞ!絶対だぞ!」

「わかってますよ!」

 こうして結川先輩との小競り合いを終え、俺たちは仕事をしに世理先輩の元へ向かった。


 ―――――――――――――――――――――――


 その日の仕事も終え、早速俺と世理先輩はテスト勉強を始めた。

 図書室に行こうかという話にもなったが、他の生徒もたくさんいるだろうということになり美化委員室で行うことにした。

「世理先輩、お願いします!」

「う、うん。じゃあ早速始めようか」

 そう言って生物の教科書を開き、何が分からないのかを説明する。

「語句や意味なんかはある程度分かるんですけど、それを使った応用問題があまりわからなくて」

「うんうん。知識はちゃんとついているんだね。実験に関する問題は、与えられた数値や資料を比べてどうしてこうなったのかを理論立てて考えていくといいよ。もちろん身につけたものを駆使しながらね」

「わかりました。少し解いてみます」

 こうしてしばらくお互いが問題に取り組む時間となった。

 俺は何問か解き進め、早速わからない問題にぶつかった。

「世理先輩、ここって…」

「ん?どれどれ…」

 世理先輩は俺の横の席につき、身を乗り出して問題を覗いてくる。

 ものすごく近い距離になり、俺とぶつかりそうになるほどだ。

「ここはね…」

 世理先輩はそんなことお構いなしに解説してくれた。

 世理先輩の説明はとても分かりやすく、聞いただけですんなり理解できた。

 しかし、距離は近いままだ。

「わかった?」

 世理先輩は俺にそう尋ねた時、初めて距離の近さに気づいたようだった。

「はあっ!」

 世理先輩は慌てて俺と距離をとり、顔を髪で隠している。

「ご、ごめんなさい」

「いえ、世理先輩の解説、本当に分かりやすかったです。ありがとうございます。このまま類似問題に取り組んでみますね」

 俺は平静を装ったが、実際はものすごくドキドキしていた。

 あまり顔は見えなかったが、やはり女子にものすごく近づかれるのはドキドキするものだ。

 その後も何度か質問をして解説をしてもらってというやり取りを繰り返し、テスト勉強一日目は終了した。

「今日はありがとうございました」

「い、いやいや、月くんもすごい集中力と速さで吸収していってくれて、私も教えがいがあったよ」

「またお願いしてもいいですか?」

「う、うん。私でよければ…」

 こうして次の約束も取り付け、この日は解散となった。


 ―――――――――――――――――――――――


「おい!」

 週末をはさんで学校に行くと、俺は結川先輩に呼び止められた。

「お前、何もしてないだろうな?」

「してませんよ。勉強を教えてもらってただけです」

「ふん」

「世理先輩、本当にすごいんですね。解説がどれも分かりやすすぎて、すんなり理解できました」

「だろ!すごいんだよ世理先輩は!」

 結川先輩はものすごく興奮した様子で世理先輩の魅力を語り始めた。

 頭がいい、髪がきれい、顔を隠す仕草が可愛い、家に持ち帰りたい、優しい…。

 放っておいたらこのままずっと話し続けるのではないかというほどだ。

 途中で話過ぎていることに気づいたのか、咳払いをして俺の方を向く。

「とにかくだ。世理先輩はすごいんだから、そんな先輩から教えてもらってることに感謝しながら勉強しろよ」

「もちろんです」

 こうして結川先輩は自分の教室へと向かっていった。

(なんかものすごい疲れた)

 世理先輩への愛を聞かされた俺も、疲弊しながら自分の教室へ向かった。



「月、おはよ」

「おはよ、土門」

 教室に行くとすでに土門は登校していた。

「どうよ、テスト勉強の調子は?」

「ああ、それがさ…」

 俺は土門に世理先輩のことを話そうかと思ったが、結川先輩の言葉を思い出した。

(「世理先輩は優しいから絶対に気を回してくれるんだ」)

「まあ、何とか頑張ってるよ」

「そっか、それならいいんだけどさ」

(すまん、土門)

 申し訳なさを感じつつ、世理先輩とのテスト勉強を隠し通していると日早片さんも登校してきた。

「おっはよー、日早片さん」

「…」

「日早片さんは挨拶返さないって」

 土門の挨拶にもどうせ返さないと思い、俺は土門に教えてあげた。

 日早片さんは会釈だけして自分の席についた。

「おかしいな。二人三脚のお礼をしに行ったときは普通に返してくれたんだけどな」

「なんか、体育祭の時はある程度会話してくれたんだよな。なんでだろう」

「なんだかんだ楽しくてテンション上がってたんでない?」

「そうかもな」

 そんな会話をしていたら予冷が鳴り、先生が教室に来たので俺たちも自分の席についたのだった。


 ―――――――――――――――――――――――


 その日も俺と世理先輩はテスト勉強に取り組んだ。

 相変わらず世理先輩の解説はわかりやすい。

 俺は問題に取り組んでいる時、ふと世理先輩の方に目をやった。

 世理先輩の手元にはたくさんの紙の資料があり、テスト勉強をしている感じではなかった。

 必死にメモを取ったり、資料に書き込んだりして何かつぶやいている。

 何をしているのか聞こうかと思った時、世理先輩は突然声を出し立ち上がった。

「あ!」

「え?」

「そういうことか!」

「世理先輩?」

「ごめん、月くん。今日はここまでにしてもらっていいかな?」

 世理先輩は少し興奮した様子だ。

「は、はい。俺は教えてもらっている身なので、世理先輩に合わせますけど…」

「ほんとごめんね。ありがとう」

 世理先輩はそう言うと、美化委員室から飛び出していった。

(どうしたんだろう)

 結局世理先輩が何をしていたのかわからないまま、その日のテスト勉強は終了となった。


 ―――――――――――――――――――――――


 こうして何日も世理先輩に勉強を教えてもらい、俺はかなり力がついた。

 正直、今ならどんな問題でも解けるのではと思うほどだ。

 そしてテスト前最後の委員会の日、俺は生徒会室に呼び出された。

「失礼します」

 そこには入神会長はもちろん、英田副会長と日早片さんもいた。

「今のところ、委員会での仕事は順調なようだな」

「はい。各委員会で委員長や副委員長、委員の方たちが優しく教えてくださるのでしっかり取り組めています」

「それならいいんだ」

「サインも順調に集まっているようですし、後はテストだけですね」

 英田副会長はこちらを鋭い目つきで見ながらそう言った。

「定期テストでのルールはわかっているか?」

「はい。上位三割に入らなければ生徒会長になるという目標は叶わない。当然上位三割、なんなら一位を目指しますよ」

 そう言うと日早片さんが少し動いて反応する。

「うむ。俺としてもせっかくここまでいろいろな委員会を回って頑張ってきたお前にテストで失格の判を押したくはない。くれぐれも頑張ってくれよ」

 入神会長はそう言って俺を激励してくれた。

 会長の激励で俺は少しテンションが上がった。

 その時、日早片さんが俺の前に出てきて指をさしてきた。

「一位を取るのは私。あなたには負けない」

 生徒会に所属したときと同じ構図だ。俺はあの日のことを少し思い出した。

(あの時も日早片さんから言われたんだよな)

 そう思いながら俺も日早片さんに返す。

「俺だって負けない」

 こうして会長からの激励と日早片さんの負けない宣言を受けた俺は、テスト前最後の美化委員に向かった。


 ―――――――――――――――――――――――


「来週からテストだね」

「そうですね、世理先輩」

「藍ちゃんはどう?テスト勉強は順調?」

「もちろんです。世理先輩から教わった理科も今ではばっちりです」

「なら良かった」

 世理先輩と結川先輩は花に水を上げながら話をしていた。

「じゃあ、ちょっと月くんの方手伝ってきてもらえる?」

「わかりました」

 結川先輩は俺の方を手伝いに来てくれた。

「ありがとうございます」

「世理先輩に言われたからだ」

 そう言って結川先輩は作業をテキパキこなす。

「結川先輩、一つ聞いてもいいですか?」

「なんだよ」

「どうして結川先輩はそこまで世理先輩を慕っているんですか?」

「ああ?なんでだよ」

「結川先輩と世理先輩、性格的には真逆のタイプですし、正直結川先輩は控えめな人はあまり好きじゃなさそうというか…」

 結川先輩は少し考えた様子だったが、ゆっくり口を開いた。

「…いから」

「え?」

「可愛いからだよ」

「あ、なるほど」

「もちろんそれだけじゃねーけどさ。初めて見た時、世理先輩の可愛さに心打たれて絶対この人を守る、ついていく!って決めたよな」

 思ったより普通の理由だった。

「まあ、確かに、守ってあげたくなる感じではありますよね」

「ああ?なんだお前、狙ってんのか?許さねーぞ」

 ものすごく睨まれている。怖い。

「そういえば、テストはいけそうなのかよ」

「はい。世理先輩のおかげで正直無敵って感じです」

「当たり前だ。お前、世理先輩から教えてもらっておいて変な点数出したらただじゃおかないからな」

「が、頑張ります」

「ら、藍ちゃん、ごめん。ちょっと手伝って」

「はい!すぐ行きます!」

 俺がいい点数を取らないといけない理由がもう一つ増えてしまった。


 ―――――――――――――――――――――――


「それじゃ、今日はこのくらいにしておこうか。来週からテストも始まるしね」

「はい。世理先輩、今日まで本当にありがとうございました。世理先輩のおかげで本当にいろいろ解けるようになりました」

「い、いやいや、私が教えたのなんて最初の方だけだし、月くんが頑張ったから…」

「世理先輩に教えてもらえたからここまでできるようになれたんです」

「う、うぅ」

 そう言いながら世理先輩は顔を髪で隠している。

 世理先輩は生物だけでなく、物理や化学なんかも教えてくれた。

 今では理科が得意な教科だと思うほどだ。

「じゃあ今日はこれで…」

「あ、ま、待って、月くん」

「?」

 世理先輩に呼び止められ、俺は先輩の方に振り返る。

「こ、これ」

 世理先輩は一つの花を俺に渡してきた。といっても、花びらがあるようなものではなく、詳しくない俺にはつぼみにも見えた。

「先輩、これって…」

「これは『ネコヤナギ』。見た目は少し不思議だけど、私は好きなの。花言葉は『努力は報われる』。」

 この先輩は本当にいい人だ。俺が一方的に勉強を教えてくれと頼んだのに快く受け入れてくれて、こんな激励までしてくれるなんて。

「こ、こんなことしかできないけど…。月くん、テスト頑張ってね」

 世理先輩の髪の下からうっすら見えた顔は笑っている気がした。

「ありがとうございます!世理先輩に教えてもらえて本当に良かったです!ネコヤナギもありがとうございます!」

 世理先輩は顔を髪で隠し、そのまま走って行ってしまった。

「よし!」

 世理先輩からもらったネコヤナギを手に、来週からのテストに向けて俺は気合を入れなおした。


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。

続きもぜひ、読んでいただければと思います。よろしくお願いします。

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