リングを作れ!
プロレスやるなら
やっぱりリングは必須!
でも元の世界と全く同じ物
というわけにはいかず……
王都ガリアードの端っこの方
ヒロシが住んでいるミュリーナの家の近く
「じゃあ頼むよカミラ」
「はい、造形魔法」
紫を基調とした胸元の開いた服を着た
巨乳の魔法使いが呪文を唱えると。
目の前の地面が盛り上がり
角が直角な四角い台のような形に整えられていく。
「こんなもんでどうかしら? 」
ヒロシは土の台を一回りしながら
一通りチェックした。
「うん、高さ・硬さに大きさも要望通りだ
ここにマットをかければどうにかなるな」
「単純な形ですしこれくらい簡単ですわ」
造形魔法は本来ゴーレムとかを作る魔法なのだが
これを使って建物を作ったりもすると聞いたので
頼んだけど上手くいったな。
本来のリングは金属の骨組みの上に板を敷き
その上に板の破損防止の
ウレタンやゴムを敷いて布を被せる、
流石に骨組みを作るには資金が足りなすぎるので
骨組みは土魔法で代用することにした
ゴムなども何かで代用すればいいだろう。
資金はある程度目処がついた
ゴングも発注したし
コスもそれぞれデザインを決めて
街の服屋に発注済み。
とはいえまだ様々な課題がある。
「四隅の柱も言ったとおりに頼むよ」
「はい、造形魔法」
リングの四隅に設置された柱もチェック
強度はOK簡単に折れたりもしなさそうだ。
「うん、バッチリ、これでテスト完了」
さて後は一番の問題に取り掛からないとな、
一番の問題、それはリングのロープだ
プロレスのリングのロープはゴム製に見えるが
ゴムなのは表面だけで実際は
ワイヤーロープで出来ているのですごく硬い、
だからこそロープの反動を使ったり
ロープに乗ったり出来るのだが。
こっちの技術力ではワイヤーロープを作るのは無理
作れたとしても3本×四方=12本
1本約6mとして全部で約72mのワイヤーロープがいる
どの道別の方法で調達しなくてはならない。
「普通のロープを芯にして
何かで包めば何とかなるか?」
でもワイヤーは全部金属だし無理か
鉄のように丈夫かつ安く手に入る物があれば
「なぁカミラ、安くて金属みたいに丈夫で
紐みたいに細長く出来る素材って無いかな?」
「うーん、そういう事はミミに聞いてみては?
魔物に関してはあの子がウチで1番詳しいですから」
「ミミって確かスカウトの子だっけ?」
「はい探索が得意なのでその関係で
魔物に詳しくなったとか」
「じゃあ聞いてみるか」
ギルドにて
「ミミ」
「なぁに?」
ヒロシが話しかけたのは猫のような帽子を被り、
腰には短刀や物入れの付いたベルトを付け
露出の高い服の上に鎖かたびらのようなものを着て
その上に丈の短いシャツを着て端を胸の下で結んだ
格好の女の子。
「……というわけなんだけど」
「う~ん、それなら
メタルスパイダーの糸なんてどう?」
「メタルスパイダー?」
「細くて金属のように硬い糸を出す
蜘蛛の魔物だね、ほらあたしの着てる
この防具もメタルスパイダーの糸で出来てるんだよ」
「これが……」
一見鎖かたびらのように見える防具
使われている糸は蜘蛛の糸と言う割には結構太い。
「ちょっと触らせてもらっていい?」
「ええーっやだエッチぃ(笑)」
「(ちょい怒)その防具を触らせてくれないかな?」
「冗談だって(笑) いいよ、はい」
手触りは金属に近いし弾力もかなりある
知っている蜘蛛の糸とは全然違う
でもこれならイケる!
「えっとウチにテイマーっていたっけ?」
「え?まさかメタルスパイダーをテイムさせる気?」
「だってその糸、結構しそうだし、
大量に必要だから自家生産した方がいいかなって」
「魔物を家畜にする気なの?」
「だったらご自身で
テイムなさったらいかがですか?」
「ジルさん、ヒーラーの俺がどうやって?」
「《テイマーリング》と言って
魔物をテイム出来る魔道具があります」
「そんなご都合的な物が」
「もちろん無条件にテイムは無理ですが」
「それ持ってたりとか」
「いえ、魔道具店でお買い下さい」
やっぱそこまでうまくはいかないよね
「その店なら知ってるよ」
「じゃあミミ、案内してくれる?」
「んー、依頼料金貨1枚!」
「ギルマスから金取るのかよ!」
「だってその後メタルスパイダーの所にも
案内するんでしょ?それ込みで金貨1枚!
ギルマスでも国王様でも依頼するなら
報酬払ってもらわないとね」
「………わかった払うよ」
「まいどー♪」
「ここだよ」
こじんまりとしているが雰囲気はあるな
中に入るとカウンターにそれっぽい老婆が座っていた
「テイマーリングかい?」
「ありますか?」
「あるよ、こいつは1個で一体テイムできる
ただテイマーのテイムスキルと違い
ある程度懐かせないとテイムできないし
毎日魔力の補充がいる、指にはめなくても
首からかけてるだけで魔力は供給されるよ」
「それ六つください」
「六つ!そんなにテイムすんのギルマス?」
「2匹づつ交代で働いて貰うんだよ」
ワイヤーロープは1本作るのに
かなりの数のワイヤーがいる、
だから一匹だと過労死しかねないからね。
「まあいいさ、ほれ代金は金貨3枚ね」
翌日ミミと待ち合わせしている北門の前につくと
「あれ、クリスなんでここに?」
「ミミに護衛として付いてきてくれって
頼まれたんだよ銀貨3枚で」
あの依頼料ってクリスの分も込みって事だったのか?
「やっと来た」
「ってミミなんだよその大荷物」
「食べ物だよ」
「そんなに遠いのか!?」
「これはほとんどメタルスパイダー達の分
懐かせるなら餌付けは基本でしょ?」
というわけで前衛2人ヒーラー1人という
バランスが偏ったパーティーで
森へ向かうことになった、
メタルスパイダーがいるハリスの森は
ガリアードから南に半日
「メタルスパイダーはこの森の奥にいるはずだよ」
「他の魔物もいるんだよな大丈夫かな?」
「まあここの魔物はそんなに強くないから平気だぜ」
森の奥へ奥へと踏み込んでいく
「ところでメタルスパイダーって何食うんだ?」
テイムするなら知っておかないと
「普通に木の実や小動物だよ魔物だからね
大きくても弱っていれば食べたりするけど」
「人間も……?」
「もちろん」
「テイムすりゃそんな心配もないだろ
餌させ切らさなきゃ……な」
気をつけないとなとか思ってると
ガサッ!
「あ!あそこ!」
ミミが指差した先にデカい蜘蛛が
糸を使って枝から枝へと飛び移っている。
「あれがメタルスパイダー?」
「うん!」
「早くしないと逃げるぞ!」
指輪に魔力を込め
「『捕獲』!」
そう唱えると指輪から光線が出て
メタルスパイダーに命中して……弾けて霧散した。
「あ……」逃げられた
「だから懐かせなきゃダメだって」
「そうだった」
ほどなくして木の上に
別のメタルスパイダーを発見
「はいギルマス」
「ありがと」
受け取った肉を木の上に向けてブラブラさせる
「ほらほら美味しい肉だよ」
メタルスパイダーはこっちを見ると
糸でぶら下がりすーっと降りてきた。
「ほら、お食べ」
2、3歩近づき肉を置いて離れると
メタルスパイダーは肉に近づき食べ始めた。
この隙に他の食べ物も並べるリーゴ(リンゴ)に
ババナ(バナナ)に角兎の肉に森ネズミの肉
メタルスパイダーはそれらを平らげると
こちらに歩み寄ってきた
攻撃するでもなくこちらをじっと見ている
「まだ食べたいのかな?」
リーゴを差し出したが無反応
ひょっとして一緒に
来てくれる気になったのかな?
「『捕獲』」
指輪から出たビームは弾かれることなく
メタルスパイダーは指輪に吸い込まれた。
「よし、捕獲成功、外に出すには……『放出』」
指輪から出たメタルスパイダーはこっちを見ている
「さて、名前をつけないとね、
えっと……アインス、君の名前はアインスだ
それでいいなら手を挙げて」
そう言って手を挙げてみせると
アインスも手というか右の1番前の足を挙げてみせた
「なんか可愛く見えてきたぜ」
「ホントに」
その後も順調にテイムしていった
テイムした子達も協力してくれたので
思ったより早く6体揃った。
「じゃ点呼とるから名前呼ばれたら手を挙げて」
横一列に並んだ6体のメタルスパイダー達
「アインス、ツヴァイ、ドライ、フィア、
フュンフ、ゼクス」
性別はわからないのでドイツ語の
1~6を名前にした。
「じゃあ帰ろうか」
ズン!
後ろから聞こえた重い音に振り返ると。
「ブ・ブラックベア……」
「やばっ、ここで1番ヤバいやつだよ」
熊から逃げるにはゆっくり後ろに下がること
しかし出口はブラックベアの向こうなんだよなぁ。
「クリス、倒せない?」
「無理無理」
「ここの魔物はたいしたことないんじゃないのか?」
「あいつは別!」
かさかさかさかさかさ
「お前達」
メタルスパイダー達が『自分達が守る』
と言うかのように前に出た。
「やってみるか、アインスとツヴァイは後ろ足を
ドライとフィアは上半身フュンフとゼクスは
口を鋼糸でグルグル巻きにしてやれ!」
命令を下すと糸がブラックベアの体に巻き付き
身動きが取れなくなり倒れた
ミミの防具と同じ材質の糸なら簡単には切れないはず
「よくやった!今のうちに逃げるぞ『帰還』!」
6体を指輪に戻し急いで森をぬけた。
「はぁはぁ………た……助かったぁ」
「メタルスパイダーのおかげだな」
「一体だけだと難しかっただろうけどね
さあ、街へ帰ろう」
街に戻ってから明るいうちは家の外に放し飼い
そして二体ずつ1日働いて2日休む
というローテーションで朝昼晩の3回
無理せずに出せる分だけ鋼糸を出してもらう
酷使しなくて済むように6体集めたんだし
無理はさせたくない。
「よし、ドライ、フィア、夕方まで遊んでていいよ
お昼は用意してあるからね」
そう言うと2人はみんなの所へ
溜まった鋼糸を7本取り、1本を芯にして
残り6本をよりあわせていく、
これを7本作り同じ要領でより合わせる、
それを芯にして最初に作ったものと同じ物を
6本より合わせて……これを必要な太さになるまで
繰り返す。
強度も弾力も申し分無し、
ゴムがないから厚めの布で包んでロープの完成
ロープは2週間でようやく4本出来る計算
メタルスパイダー達の生産力を考えると
これ以上ペースは上げられない
ギルドのみんなも手伝ってくれてるし
ゆっくりやるさ。
後は板の上に敷くゴムやウレタンの代わり
またミミに聞いてみると
「クマの毛皮、ブラックベアとかいいんじゃない?
なにしろこっちには秘策があるんだし♪」
というわけで再びハリスの森
ブラックベアのいる奥地に踏み込む
今回はマジックバックを3つ買ってきた
中が8畳分もあるタイプだ。
ブラックベアを倒すこと自体は簡単
蜘蛛たちに拘束してもらって
クリスがしとめるこの繰り返し、
鋼糸も貯まるし一石二鳥
マジックバック3つにしとめた熊たちを収め帰還。
「おかげでLvが結構上がったぜ」
「俺も」「あたしも」
どうやらパーティー全員に経験値が入るらしい
パワーレベリングってやつか、
ユニコーンヘッドには解体場が無いので
よそのギルドで解体してもらう事にしたが。
「ブ・ブラックベア!?しかも10体も!」
ギルド内がザワつく中ドヤ顔のクリス&ミミ
Σ\( ̄д ̄;)ォィォィミミは何もしてないだろ。
「えっと何か問題でも?」
「ああいや、ブラックベアはオークより強いから
なかなか入らないんだよそれが一気に10体も
入ったもんだからな」
ああ、そりゃザワつくわけだ
「とりあえず皮と肉だけ返してもらって
残りは買い取りでお願いします」
買取値でマジックバックの代金分は取り返せた
皮は職人になめしを頼み、
数日後
肉と買取の代金と皮を引き取り、
広場に1枚広げ試してみると
上手い具合に適度に衝撃を吸収した、
完全に吸収されたら投げ技のダメージが
ゼロになってしまうからね。
今日は帰ったら熊肉BBQパーティーだ
ギルドではみんなが既に
準備を済ませて待っている
「熊肉初めてだな~楽しみだ♪」
ヒロシは広げた皮をマジックバックにしまい
軽い足取りでギルドへ帰って行った。
最初は普通の巨大蜘蛛出考えてたけど
ただの蜘蛛の糸だと丈夫だけど
ふにゃふにゃになりそうなので
安直にメタルスパイダーを出してみたり………