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金策作戦

今回は商売会

プロレスの準備と並行して金策も始めた

なにしろ足りないものだらけ

コスチュームにゴングにリング

その他もろもろ

節約出来るところはするけど

それでもかなりの額が必要だ。

「ギルマ……社長はキッチンで何やってんだ?」

「ずっと何か煮込んでるみたいだけど

お昼でも作ってるのかな?」

「でもさっき覗いて見たけど煮てるの

骨とか野菜くずだったぞ?」

「それって料理………じゃないよね」

アクをすくいつつ煮込み続け数時間

今作ってる物こそ金策の第1歩、

金の卵ならぬ金の種だ。

「そろそろいいかな?」

ちょっと味見

うん、こんなもんだな、

布で鍋の中身をこして別の鍋に移し

あら熱を取ってから数個の瓶に移し替え

それを持って向かったのはよく行く食堂。

「いらっしゃいませ~」

「すみません今日は食べに来たんじゃないんですよ」

そう言うとカウンター席に座り厨房で調理中の

この店のマスターに声をかけた。

「マスター、ちょっとこれ

飲んでみてくれませんか?」

「なんだこりゃ?酒じゃ無さそうだが

……毒とか入ってないよな?」

「いや、俺がマスターを毒殺する

理由あると思います?」

「冗談だよ(笑)」

マスターはそう言うとカップに

少しだけ入れた液体を飲み干すと

「…………すまんもう1杯くれないか?」

「はいどうぞ」

マスターの持つカップに先程と同じ量を入れると

マスターは今度は少しずつ口に含み

念入りに味わうように飲んでいた。

「驚いたな、よーく味あわないとわからないが

凄くいい味がする、これはなんだ?」

「《出汁(だし)》と言って俺の故郷の料理には

よく使われているものです」

「だし……か、これを使えばうちの料理が

レベルアップするかもしれない……」

うん、それは保証する

こっちの世界の料理は塩味ベースの物ばかりだから

出汁は知らないと思ってたんだよね。

「使ってみますかコレ?」

「いいのか!?」

「はい、その上で価値(・・)を決めてもらえれば」

そう言うと俺は出汁の瓶を手渡した

実際に使ってみて出汁(これ)にいくら出すか……

マスターは煮込んでいた野菜を皿に盛り付け

出汁を入れ塩をふった。

「どれ……」

マスターと娘さんはスープを野菜ごと

すくって口に運ぶ

「これは!」

「なんか足りないピースがハマった感じ」

「ああ今までのがなんか足りない感じがするな」

今までは野菜煮た後煮汁を捨てて

湯と塩で味付けしてたもんね、

それ茹で野菜に塩かけたのと大差ないもん

むしろお湯の分塩味が薄くなるだろうし。

「で、出汁の作り方と使い方、いくら出します?」

「そうだなぁ」

出汁があれば確実に客が増える、

もたらす利益に見合う対価

「金貨50枚、うちじゃこれ以上は無理だ」

この世界の貨幣は日本円でそれぞれ

鉄貨(一円)銅貨(十円)小銀貨(百円)

銀貨(千円)小金貨(壱万円)金貨(十万円)

大金貨(百万円)白金貨(一千万円)らしい。

つまり日本円で50万円

流石に大金貨以上をを扱うのは

大店(おおだな)の商人か王族や貴族ぐらいだし

「わかりましたそれで手を打ちましょう」

「おお、そうか!」

代金の金貨50枚を受け取り

マスターに出汁の作り方そして主な使い方を教えた。

「そっか……煮汁は捨てない方が良いのか

前勤めてた店のシェフもそうしてたから

煮汁は捨てるのが当然と思ってたが……

俺達は今まで何やってたんだ……」

「アクさえすくえばちゃんと料理に使えるんですよ」

「今まで捨ててた部分に

こんな使い方があったなんてね」

娘さんも感心していた。


元手ほぼゼロから金貨50枚GET

でもまだまだ足りない、

これを元手にもっと増やさないと。

「次はアレだな」


やった来たのは金物屋

武器防具から日用品まで扱っている店

「いらっしゃい」

「深いフライパンありますか?」

「ああそれなら、そこの棚にあるはずだ」

店主が指差した台所用品の棚を調べると

「お、これは良さそうだ」

深いフライパンを発見

「あとは……」

ヒロシはあたりを見渡すと

「お、あったあった」

手に取ったのは金属製のトレイ、

フライパンとトレイ三つ

そして平たいお玉を持ってレジへ

「全部で小金貨1枚と銀貨5枚だ」

一万五千円か金属製だから

高くつくとは思ったけど結構するね。

「あ、そうだこれに穴開けて貰えます?」

普通のお玉しか無かったんだよね

「お玉に穴?汁がすくえなくなるだろ」

「具だけをすくいたいんで」

「なるほど、わかったすぐやってやる」

「穴はここと、ここと、ここと………」

「ちょっちょっとまて!紙に書いてくれ」

穴を開ける所を指差しで教えるのは無理だったか

店主がお玉を持って奥に引っ込むと

ガンガンガン……という音が聞こえてきた

音がやんでしばらくして店主が戻ってきた

「ほれ出来たぞ」

渡されたお玉にはキレイに穴が空いていた

ちゃんと裏側にめくれた部分も処理されている

代金に加工費として小銀貨二枚を追加で支払った

「なあそれウチで売ってもいいか?

タダでとは言わねぇ売り上げの2割払う」

……資金は少しでも欲しい所だし

「いいですよ」

「よし、今契約書作るから待ってろ!」

思わぬ所で収入源を得た


「後は材料と何か手頃な袋だな」

結局袋は見つからなかったので

木の皿を大量購入した。

3日後

「社長、ここに置いとくぞ」

クリスは抱えている荷物を下ろした

「ああ、ありがとう助かったよ」

「うう~重い……」

「レインもありがとう」

「これもトレーニングのうちだぞレイン」

ヒロシは屋台の並んでる場所に出店許可を取り、

空いている屋台で店の準備を始めた

この屋台街には主の居ない空き屋台が数ヶ所ある、

それは自分で屋台を用意する資金が無い人が借りる

レンタル屋台でヒロシが使ってるのもその1つ。

道具と食材以外の物はあらかた揃ってる

コンロに深いフライパンを乗せる、

大量生産するなら深さがあった方がいいからね

そしてその中にオーク肉から取った

オーク油を入れる、

「じゃトレーニングに戻っから」

「ああ、何かあったら《伝書鳩》で知らせるよ」

《伝書鳩》と言っても魔法で作った簡易魔法生物

メッセージを送る・受け取るしか出来ず

使用後は消えてしまう。

「さて、調理を始めるか」

皮を剥く、この練習に1日費やした

あの店でピーラーも作ってもらうんだったよ

絶対売れるだろうし更なる収入源になりそうなのに

片方は薄切りにしてもう1つは棒状に切る

これを煮たった油に投下し音の変化を待つ

「…………よし、今だ」

持ち手に布を巻いた穴あきお玉ですくい上げる、

あの網は流石にこっちには無かったので

穴あきお玉を使ったんだけど中々いい感じだ


「お、兄ちゃんこれなんだ?」

男は紙を敷いたトレイに並んだ物を見て

そう訪ねてきた。

「フライドポテトとポテトチップスと言って

メーン芋とダーシャ芋を使った料理ですよ」

こっちではメイクィーンをメーン芋

男爵いもをダーシャ芋という

芋に男爵とかクィーンって付けるのが

はばかられたのかどうかは知らないが、

調味料は塩のみ、その上安価で大量生産出来る

それがポテトチップスと

フライドポテトを選んだ理由だ

皮むき練習に1日、揚げ練習に数時間かかったけどね

でもコツは掴めた。

「どうです?酒のツマミにも

子供のオヤツにもピッタリですよ」

「匂いは美味そうなんだけどなぁ」

やっぱり新しい料理には中々手が伸びないか?

「では、試食します?」

「いいのか?」

まずは興味を持った人を呼び水とする

ヒロシはフライドポテトとポテトチップスを

少しずつ木の皿に盛り付け差し出した。

男はポテトチップスを口に運んだ

「おっ、パリパリして食感がいいな

香ばしくて塩だけなのにすごく美味い」

次にフライドポテトを口に運ぶ

「こっちも違う食感で美味いな

これいくらだ?」

「どちらも皿代込みで小銀貨4枚です」

「まかんない?」

「皿代込みなんで、ここで食べて皿を返してくれたら

その時小銀貨1枚返金しますよ」

皿だってタダじゃないんだし

皿代割り引いて持ち逃げされ無いように

“皿を返したら皿代分返金”にしておかないと。

「じゃあここで食うから両方くれ」

男から小銀貨を8枚受け取った

「ありがとうございます」

それぞれ1人前ずつ盛り付けて手渡すと

近くにある飲食スペースで食べ始めた。

「試食を何皿か置いておくか」

損して得取れこれは先行投資だ

さっきの客が食べているのを見て

興味を持った人達が集まってきたので

ヒロシは試食を進めた

「チップスの方をくれ」

「俺はフライドポテト」

「両方おかわり」

さっきの人、あまり食べすぎると体に良くないぞ

塩分的にも脂的にもな

「ねぇフライドポテト3人前欲しいんだけど

持ち帰りやすい入れ物は無いの?」

「油を通さない容器を持ってきてもらえれば

全部で小銀貨9枚にしますよ」

「じゃあ家から何か持ってくるわね」

本当はファストフード店のみたいな

紙の容器があれば良かったんだけど

普通の紙じゃ油が染み出してきちゃうし


昼が少し過ぎた頃になっても

客が途切れない

「ワンオペだと昼を食べる暇もないな」

《伝書鳩》を指に乗せると

「行き先はギルド、ユニコーンヘッド

要件『手が足りない何人か手伝いに来てくれ』」

そう言うと伝書鳩を空に放った

「さて、なるべくストックを作っておこう」

ポテトチップスの皿とフライドポテトの皿を

並べていると

「社長!手伝いに来たよ」

やってきたのはヒールユニット『ノワール』の3人

「助かるよ」

ヒロシは3人に調理の仕方とコツ、一人前の分量

料金システムの事を一通り説明した

「じゃ、俺は昼飯にするから」

「はい」「任せといてください」

「ゆっくり休んでていいよ」

本当にいい子達だよ悪玉(ヒール)頼んだのは

やっぱり間違いじゃなかったな


夕方、完売したので追加の芋と

他に色々仕入れた、

もちろんピーラーも注文した、

予想通り販売契約を結ぶ事になったよ

しかし絵に描いて説明しただけで

簡単に作ってしまうとはあのオッサン何者だ?

それともドワーフってみんなああいうものなのか?

それはそれとして

ギルドに戻った俺は次の手に取り掛かる、

マート(トマト)のへたを取り十字に切込みを入れ

反対側にも同じく十字の切込みを入れる

これを10秒ほど茹で流水に晒し皮を剥くと

皮を剥いたオオン(玉ねぎ)ガリク(ニンニク)と共に

徹底的にみじん切り、可能な限り細かくする

ホントはミキサーを使うんだけど無いからね

それを鍋に入れなめらかになるまで撹拌

鍋を火にかけ酢、砂糖、塩、

本当は胡椒も使うんだけど

流石に手に入らなかったので故障無しで

リーエ(ローリエ)を加え中火で熱しながらよく混ぜ

煮立ったら汁気が半分くらいになるまで

煮詰めたらリーエを取りだして冷まして完成

次は卵の黄身と白身を分け

黄身と酢と塩と混ぜる

そしてナネの種から取れるナネ油を

少しずつ混ぜていって完成

翌日

今日は最初からノワールの3人に

手伝って貰うことにした、

ヒロシの屋台には昨日用意した

新しい商品が加わっている、

赤と黄色のソースと棒状に切った野菜

「なんだいこれ?」

「赤いのはフライドポテトにつけるソース

黄色いのはそこの野菜スティックに

つけるソースです」

昨日作ったのはケチャップとマヨネーズ

やっぱり味変も必要だと思ったんだよね

「フライドポテトとソースをくれ」

「私は野菜スティックの方を貰おうかしら」

「赤いソースは小銀貨1枚

黄色いのは野菜スティックとセットで小銀貨3枚です」

飲み物は他の店で売ってるし

これで店は完全体になったと言ってもいいな

「ああここにいたのか

ギルドに行ったらここだって聞いてな」

やってきたのは出汁を教えた食堂のマスター

「マスター?どうしたんですか?」

「お前さんにこれを渡そうと思ってな」

ドサッ

マスターが置いた三つの麻袋を開くと

3つとも中は金貨がぎっしり。

「これって……」

「出汁を他の店にも教えたら皆大喜びでな

これはその礼金だ、全部で210枚ある」

金貨210枚てことは2100万円!?

「でもいいんですか?教えたのはマスターでしょ?」

「俺に教えたのはお前さんだろ

なら貰う権利はある、

俺もちょっとは貰ったから気にすんな」

「だったらありがたく」

「ところで野菜スティック1つくれ」

野菜スティックセットを食べると

「このソース………」

「レシピを売ってくれとか?」

「いや商業ギルドに委託販売する気は無いか?」

「委託販売?」

「製造方法と実物を渡して審査に通れば

ギルドが大量生産して適正価格で販売してくれる、

もちろん売上は委託者のものだ

ただし、売上からいくらかは引かれるがな」

なるほど売れると判断されれば

後は全部お任せで稼げるってことか。

「後で行ってみます」

後日屋台で売っていた物は全て審査を通り

街の商業ギルド経営の店で売られることになった

さて、かなり稼げたし本格的に準備に取り掛かるか。

という訳で金策はとりあえず完了

ちなみにピーラーと言ってるけど

作ってもらったのは昔の皮むき器です

(使い方は一緒だけど)

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