この地にプロレスが生まれた日
時は半年前にさかのぼる
何故ヒロシがギルマスになったのか?
何故プロレス団体を作ったのか?
彼がプロレス団体を作るきっかけは………
岡田弘至はごく普通の17歳の高校2年生
その日も最近ハマっている
アプリゲームをプレイ中
団体経営と女子プロレスラーの育成を行う
シュミレーションゲームだ。
「よし、そろそろ最後のベルトに挑戦させるかな」
その時
「なんか床が……?」
カーペットの上に座ってたはずのなのに
急にゴツゴツした硬い感触がする。
「ん……?」
周囲を見渡すといつの間にか
部屋が石造りになっていた、
そして正面に金のロングヘアと青い目の少女が1人
「「誰?」」2人の声がハモった
「なるほど異世界か」
地上の部屋で茶を飲みながら事情を聞くことになった
「はい、貴方から見るとそうなりますね
あ、私は召喚術士のミュリーナと言います」
「俺は岡田弘至だ、
それでどうしてこうなったんだ?」
「実はユニコーンを召喚しようとしたんですが
何らかの手違いで貴方が召喚されたようでして……」
「手違いって…それで、すぐに帰れるのか?」
するとミュリーナはわかりやすく目をそらし……
「えっとぉ……それがですね…
召喚魔法っていうのは相手のいる所まで
トンネルを開けてこっちに呼び出すって
イメージなんですけど」
紅茶を1口飲み
「何故かそのトンネルがあなたのいる所に
繋がったみたいで」
「つまり?」
「貴方のいた所を見つけるところから
始めないといけないのですぐにというわけには……」
それは実質戻れないのと同義では?
「そうか…じゃあどうするかな……」
「では、冒険者ギルドに登録してみるというのは?」
「冒険者ギルド?」
「私も生活費を稼ぐために時々
簡単な採取依頼を受けたりしてるんです、
良かったら案内しますよ?」
はっきり言って興味はある
それに、ただ置いてもらうのも気が引ける
「よし、行こう」
外に出ると周囲は家がまばらに点在していた
「言っちゃ悪いけどここって田舎なのか?」
「いえ、ここは王都ガリアードの外れです
実験や儀式で何かあった時の為に
ここに居を構える魔術師は結構いるんですよ」
「なるほど」
確かに街中で大爆発起こしたり
怪物が現れたりしたら大惨事だもんな、
30分程歩くと立派な街並みが見えてきた
TVで見たヨーロッパ辺りの大都市みたいだ
ってあんまりキョロキョロしてると
おのぼりさんだと思われるな、
案内されるままに路地を進むと
「ここです」
「ユニコーンヘッド…」
軒先にぶら下がっている看板に
ユニコーンの絵と共にそう書かれていた
「そういえば何で俺こっちの字読めるんだ?」
「それは召喚魔法の効果です
召喚獣に言語が通じないと命令出来ないでしょ?」
「ああそっか」
そういや海外のドラマで海外の犬が
その国の言葉の命令しか聞かなくて
主人公の命令を聞かずに暴れるってのあったな
ドタドタドタ!バタン!ドン!
「うわっと」中から何かが飛び出してぶつかってきた
「おお 、スマンの…ん?見ない顔じゃな」
「どうしたんですか?ギルマス」
この爺さんがギルドマスター!?
「おおミュリーナか、話しとる暇は無い
そこの坊主!こいつをやる、そんじゃの!」
ギルマスと呼ばれた爺さんは
弘至の首にペンダントをかけると、
年齢を感じさせない速さで走っていった。
「ジジィ待てコラァ!」
中ら出てきたのは褐色・黒髪の露出の高い女戦士
「何があったの?キュリア」
「話は後だ、ジジィはどっち行った!?」
弘至が爺さんの走っていった方向を指差すと
その方向に走っていった
後を追うようにもう1人
こっちは眼鏡をかけたロングの茶髪
スーツを着た見るからキャリアウーマンな感じ
「あらミュリーナ、その子は?」
「ジルさん、実は…」
「あら貴方の首のそれ…」
「え?ああコレはさっきの爺さんが
いきなり首にかけてきて」
「とにかく中に入って、話はそれから」
「ギルマスのライセンス?これが?」
「はい、つまりギルマスは貴方に
このギルドを譲渡したということです」
「ちょ・ちょっと待って、俺はこのギルドと
関係ないばかりかここに来たのも初めてなんだけど」
「安心してください、まだ譲渡は完了していません
ライセンスを見てください」
ネックレスを見るとはめ込まれた
青・赤・緑の3色の石のうち青の石が光っている。
「それは譲渡の承認待ちの状態です
貴方がギルマスになると意思表示した時
正式に譲渡は完了します」
「もし、承認しなかったら?」
「逃げたギルマスが戻らなければ
このギルドは所有者不在で取り潰しに
なる可能性が高いですね」
周囲を見渡すと皆の視線が痛い……
「えっとぉ誰かギルマスになりたい人ー?」
返事無し
「弘至さんがやるしか無いみたいですね」
「ミュリーナさん!?いや、貴女がやるという手も」
「私は貴方を帰すための作業とか
研究とかで忙しいので」
キィ……
「あ〜ダメだジジィ見つかんなかったぜ
ん?どうしたんだ?」
「えっとキュリアさんでしたよね?
ギルマスになる気ありませんか?」
「はぁ?なるわけないだろ」
いよいよ手詰まり、断れない
「わかりました」
俺がこのギルドのギルマスを引き継ぎます!」
カッ
ライセンスが緑の光を放ち
しばしして光が消えた。
「これで貴方がたった今から当ギルド
ユニコーンヘッドのギルドマスターです」
宏がライセンスをみると
青の光が消え緑の光が灯っていた
「改めて、私は国から派遣された
このギルド専属秘書ジルコニアと申します
ジルとお呼びください、ところで貴方のお名前は?」
「ヒロシでいいよ、よろしくジルさん」
しかしその翌日
「エラー?」
「はい、ライセンスの光がまだ点滅しています
通常はもう消えている筈なのですが」
「原因ってわかる?」
「つかぬ事をお聞きしますがギルマスのクラスは?」
この場合のクラスは職業を意味する
「いや、俺冒険者じゃないから…」
「……原因はそれです
すぐに冒険者登録をお願いします」
そう言うとジルはカウンターの裏から
水晶玉を持ってきた
「ここに手を置くと適正のあるクラスが
映し出されます、そこから選んでください」
言われた通り手を置くと表示されたのは
○ヒーラー
○黒魔術師
○アサシン
ヒーラーをタッチ
(元の世界に戻っても
回復魔法が使えるかもしれないしな)
火の魔法が使えてもたき火やBBQ位しか使い道無いし
「では冒険者ライセンスを作りますのでお待ちを」
小一時間して
「お待たせしました」
ジルさんからカードを受け取ると
ネックレスの光が消えた
「さて現在当ギルドは危機的状況にあります」
「危機的状況?」
「経営難です他の大手に多くの依頼を
持っていかれてこのままでは潰れます」
ここは不人気の零細企業だったらしい
「要はここを人気ギルドにすればいいのか?」
「端的に言えばそうです、
前ギルマスはそれが出来ず、
ギルドを投げだし逃げましたが」
道理で誰もギルマスになりたがらないわけだ。
しかしひきうけた以上どうにかしたい
「そう言えばここって女の人だらけだよな」
「ええ何故か」
……………!?
「そうだ!これならイケるかも!」
「プロレス?なにそれ?」
「武器を使わない武術大会みたいなもんだよ
入場料取って闘ってるところを見せるんだ
殺し合いではなくあくまで競い合いでね」
「確かに副業をしているギルドは
珍しくありませんが」
「奇をてらっただけのもんに
付き合う気はねぇぞ」
「このプランには三つの利点がある」
「利点?」
「1つ目はもちろん収入アップ、
入場料だけでなく
近辺の店に出店を出してもらって
その売上の1部を貰う契約をする
客が増えたら君達に給金も払える」
「まあ収入が増えるのはええよな」
「2つ目は知名度アップ、ギルドだけでなく
個人の知名度もあげることが出来る」
「知名度だけで依頼が増えるとは思えないけど」
「プロレスなら強さも見せつけることが出来る」
「3つ目は格闘スキルの習得
格闘スキルがあれば魔法や武器が使えない時に
素手で相手を制圧できる」
「格闘スキルかそれはいいな」
「どうだろう、しばらくの間だけ
この話に付き合ってもらえないかな?」
皆はお互い顔を見合せ、何やら話し合っているようだ
「でもやっぱりそんな聞いたことも無いもんに
付き合うのはなぁ」
「だったら…そこの君、魔法使いだよね?」
「え?私?そうだけど」
「名前は?」
「レインよ」
「君は強化スキルとか使える?」
「使えないけど」
「だったら決まりだ、
今から彼女にプロレスの技を教える
誰か彼女と闘ってくれないか?」
「ええっ!?私後衛職だから肉弾戦は……」
「大丈夫、じゃあちょっと向こうの部屋で
練習しよう、ジルさんも協力お願いします」
バタン
「だから無理だよ!瞬殺されるだけだって!」
「みんなもそう思ってるだろうね
後衛職が前衛職に勝てるわけないって、
でもそれをひっくり返したら
みんなビックリすると思わないか?」
「まあそれはそうだけど」
「その光景見たくないか?」
「そんなこと出来るのですか?」
そう言ったのはジルさん
「出来ると思う」
3人が奥の部屋に入ってから数分後
「さあ、誰が闘う?」
「面白いあたしが相手してやる」
名乗りを上げたのはキュリア
向き合う2人の間に立つヒロシ。
「いいか、相手が降参するか
闘えなくなったら勝ちだ
もちろん魔法や武器の使用は禁止とする」
キュリアは前衛職、単純にパワーなら
レインを圧倒している。
「では、始め!」
先に動いたのはキュリア
レインに連続で殴りかかる
「すげぇレインの奴全部かわしてるよ」
(まずは作戦通り避けに徹する)
数分前
「当然だけど真っ向からぶつかっても
やられるだけだ」
「それはわかってる」
「だから【弱者の闘い】をする」
「何それ?」
「狙いを1つに定めてそれが狙える時まで
ひたすら粘るってこと」
「前衛の攻撃をまともに食らったら
すぐ終わるってば」
(プロレス的には何発か食らって欲しいけど……)
「だから攻撃を捨てて避けに徹するんだ」
「よけながら攻撃のチャンスを待つってこと?」
「そうだ、そしてチャンスがきたら
教えた技を使え」
「あの技なら勝てるかもしれませんね
練習台になった私が言うんですから
間違いありません」
「ごめんジルさん横から見てる方が
教えやすかったから」
現在
「このっ!ちょこまかと」
キュリアのパンチをかわし続けるレイン、
するとパンチがさっきまでの
コンパクトなものから大振りに変わってる、
キュリアはムキになるあまり
パンチが大振りになっているのに気付いてない。
(今だ!)
拳を引いた瞬間に背後に回り込み
そしてスリーパーホールド!
「がっ!」
「まさか窒息させる気か!?」
観客の声にヒロシが答えた
「喉は締めてないから息はできるよ」
息はできるが確実に意識は失わせることが出来る
後は振りほどかれないように耐えるだけ。
「このっ!何で外せねぇんだよ!」
「間接技は力を何倍にも出来るんだ
力づくで外すのは難しいよ
降参するならどっかを2回叩いてね」
答えたのはレインではなくヒロシ
「くっ!このぉ!」ドン!
「あぅっ!」
キュリアは後ろに向かってダッシュ
レインをテーブルに叩きつける!
「耐えろ!耐えれば勝てる!」
レインは足をキュリアの腰に回し締め付ける、
(胴締めスリーパー!?教えてないのに、
ってしがみついてるだけか)
「よし!足にももっと力を入れるんだ!」
観客も多数が立ち上がり
会場がヒートアップしていく
キュリアの動きが鈍ってきた
人間1人背負って激しく動いたら
その分体力消費量も増える
体力の多い前衛職といっても長くはもたない
キュリアが膝をつき……
ぱん!ぱん!レインの腕を叩いた
「勝負あり!」
わぁぁぁぁ!
「すげぇ!戦士が魔法無しの魔法使いに負けた!」
「見たことない技ね」
「どうだ、今回は1つしか教えてないけど
技は他にも沢山いろいろな種類がある」
「もっと派手なのもか?」
「もちろん!客に見せる物だからな」
皆の反応が変わってきた
「技1つでも十分に盛り上がっただろ?
みんなが技を覚えてちゃんとした試合をすれば
もっと盛り上げられる」
場の空気が変わってきた
「さあプロレスをやるという人は
手を挙げてくれ!」
お互い顔を見合わせると
ほぼ全員が手を挙げた
「じゃあ冒険者ギルド兼プロレス団体
ユニコーンヘッド始動だ!」
こうして俺はギルド立て直しへと踏み出した
というわけで
ギルマス兼社長になったヒロシ
やることは山積みですね