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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

蒼天のフィンデーver.00

作者: 青填葵

カクヨムにて連載する小説の,始まりの部分です。見ないようにしても、楽しく読めるようにしたいです。

薄い空色のカラーリングに塗装された,何かが遥か彼方の土地を蹂躙する。

6脚の先につけられた、設置面が容赦なく人を巻き込み,轢き潰す。

そして腕につけられた,対人・対軽装甲用重機関砲が人の群れを肉片と血の塊へと変える。

そしてーーー唯一、淡くピンクに光る単眼モノアイだけが、それを見ていた。



皇暦、2605年。

かつて同じ名前の暦を用いていた時には戦争が終結した、素晴らしい年である。...いや、素晴らしい年になるはずだったというのが正しいか。

フィンデ・デリュービオンは昨日までは普通の中学生であった。かつて日本という国名だったこのヴィレディ帝国は、他国への干渉を極力嫌い自国領土に引きこもるとして、ネット中で憫笑と罵詈雑言に晒されていた。

フィンデも同じことを考えていたが、それは不敬罪になると知っていたので口は出さなかった。


そして、晴天の三月七日。高校生活で恋心を抱いていた少女、リア・ハムラッティンに想いを告げるために悪友も手伝ってデートに誘い、そして成功して胸がはち切れそうな彼は、心臓の高鳴りを隠せなかった。

だから、別の意味で心臓が高鳴る音が聞こえても気にはしなかった。


『ーーー朕はかねてより、他国へ一切の不干渉を貫いてきた。しかし、西方にあるブラオ公国は再び我が国への進軍を開始した。そして無垢なる民がブラオ兵によって屠られ、陵辱されるのは言語道断である。よって朕は、ヴィレディ帝国の繁栄と平和のため、かの悪逆無道なるブラオ公国を滅さんとする。従って民には国の勝利の為に、その身を賭して戦う必要があるのだ。ヴィレディ帝国に栄光あれ!』


そんな感じの放送が聞こえ、しかしフィンデは冗談か何かだろうと聞き流した。

...そしてその朝,強制的に自衛軍によって引きずられ、かつては刑務所であった収容所へと収容されて、オオタ曹長と名乗る男に兵のなんたるかを問われ、そして殴り飛ばされるまでは冗談だと思い続けていた。


国民皆兵を掲げるヴィレディ帝国は、収容所には女もいた。

ある程度の学区・年代分けがされているらしく、フィンデの入った収容所にはリアもいた。

何か話しかけようとしたフィンデだったが、オオタ曹長に睨まれているような気がしてシャキッとする。


「女には、陵辱されようとも機密を守る強さがなくてはならない」

オオタ曹長が言った最初の言葉はそれだった。

男女限らず驚いていると,オオタ曹長は初めて、表情を崩した。それは、自らの弱さを悔いるような顔だった。


「...政府はそういう建前にしているが、要は子を成すための性交渉を行えと言うことだ。長期戦になることを見越して、人員はたとえ年端もいかぬ子供であろうとも国民皆兵の精神で使い潰すことにしたのだ。だが,恨むのなら私を恨め。そして殺してくれたともいい。ただ...お国のために死ぬのは、民としての義務だという時代に生きているのを悔いればいい。私は,それ以外を伝えることはない」


...誰も動かなかった。

しかし、男というのは生存本能によって女を襲うモノだ。

全ての男が自らの行いに絶望するまで、女への陵辱は続いた。


「...では,狙撃の訓練をする。第27式銃を構えるように」

支給された、重い40口径の小銃を持つ。

訓練開始から半年が経過し、大半はすでに兵役を開始、そして7割が敵機甲師団によって撃滅されていた。

ここに残っているのはほんの一握りーーー例えば精力が強く子をなす種として使われ続けるモノ、暗殺に特化させるために山を駆け巡り続けるモノーーーそして、フィンデのように実剣、実銃共に非常に優れ、戦車も操れる...天才。


既に、フィンデの中で色々なものは破綻していた。

その中でも、うちに秘められた戦闘センスは非常に優秀なモノであったのだ。

狙撃銃を構えて,3km先にいる鹿に狙いを定める。

風も考慮して少々左にずらして、重力による落下分を考えてほんの少し上に上げる。そしてトリガ。


すでに耳栓をせずとも問題無くなった轟音が一帯に響くが、フィンデの目は確実に倒れた鹿を捉えていた。

そして、そんな天才が集まる場所へと向かった。皇暦が2606年になった日のことだ。



そこには,既に五十人ほどの人員がいた。

フィンデは気づかなかったが、皆彼のように顔が死んでいた。そしてもちろん全てが男だった。


置いてあった、謎の機械に手を触れる。

大口径砲に、対人機銃。前方には太いEカーボネイト製と思われる棒と,形状が違う同上のものがあった。

そして、屹立する3対の足。不気味…それを通り越していっそ、うつくしかった。


これが彼らの改造を受けて、〈蒼天〉と呼ばれる不気味な多脚兵器が蠢く戦場へとなるのはしばらく後のことだった。

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