第1章 25話 【聖女】スキル
「ど、どうしよう……」
クリスは部屋で、頭を抱えていた。
クリスの持ってるスキルは【ヒール】(微弱)と【危険感知】(小)なのだが、実はもう一つ誰にも内緒のスキルがある。
それは【聖女】のスキル。
このスキルは、他人の願望をひとつ叶えることが出来る。
ただし、使えるのは生涯に一度だけ。
しかも自分が【聖女】のスキルを持っていることを他人に知られれば、自分の願望は叶えられないというもの。
他人に知られた場合、スキルの能力が反転し、そのとき、自分が一番心に願っていることが永遠に叶えられないという。
自分にとって全く役に立たないばかりか、逆に迷惑極まりない。しかも名前の割に煩悩にまみれたスキルである。
◆
「サトウ様に変な子だと思われたんじゃあ……。しかも接客中に……」
当然だが、【聖女】のスキルのことは絶対に内緒。
これだけは命に代えてもばれるわけにはいかない。
しかし……。
今まで、私の方をまともに見てくださらなかったのに、今日は全てを見透かしたような視線を送ってこられた。
ひょっとして、新しい制服のせいだろうか。
特に私の膝の上や首の下のあたりに目線が来たと思うのだが、実はどちらも幼い時にケガをしたことのある個所。
今はもう完治していて見た目は分からないはずなのに、サトウ様はお見通しのようだ。
やがて視線は私の顔と全身へ……。
これが何を意味するのかは、鈍い私でもさすがにわかる。
心の中で【危険感知】のスキルも変に反応しているのだ。
これは危険というより、何か別のことを知らせる胸騒ぎというべきものだろうか。
こんな感覚今まで感じたことは無かった。
何しろサトウ様は異世界から来られた伝説のシャーマン。
これまで傍で、その強大なお力を何度も目の当たりにしてきた。
私の【聖女】スキルがばれたのかも。
いや、ばれたに違いない。
どうしよう……。
スキルのことがバレたということは、サトウ様と結ばれたいなんていう私の不遜で、はしたない気持ちまでばれたのかも。
となると、高潔な精神をお持ちのサトウ様はそんな私のことをどう思われるだろうか。
は、恥ずかしすぎる。
しかも、私の思いは絶対に成就しない。
「はうう……」
私はサトウ様に合わせる顔が無くて、布団をかぶって震えることしかできなかったのだった。
◆
「あ、あの夕飯なんだけど……」
「……」
「クリス、ごめんな」
「……」
どうやら、俺はクリスに決定的に嫌われてしまったらしい。
やはり、クリスのメイド服姿をガン見してしまったせいだろうか。
いやしかしそれくらいで……?
しかし、ここは異世界。俺には想像もつかないことがあるのかも……。
「あ?!」
そういや、クリスは【危険感知】のスキルを持っていたはず。
俺の視線に危険を感知したのかも知れない。
いや、単に可愛いと思って見とれてしまっただけで、変な下心なんて無いと言い訳したいところだが、クリスには俺の心の中なんて見抜かれているのか?!
あれほどの美少女なんだから、自分の身を守るため、男からの視線に対してはそれくらい敏感でないといけないのかも。
どうしよう……。
クリスの中で【危険察知】が発動したということは、俺は思い切り危険な奴として認識されたのかも。
となると、クリスは俺のことをどう思うだろうか。
は、恥ずかしすぎる。
最近、クリスのと距離がだんだん近づいてきたように思っていたのだが、どうやら俺の勘違いだったようだ。
以前、クリスの手を繋ぎっぱなしにしていたときには、すぐに機嫌を直してくれたのだが、今回は仲直りできるだろうか。
◆
食べ物で釣るわけじゃないが、せめてクリスの好きなモノをと思い、精神的なショックと、慣れない接客で疲れた体で何とか夕食を作った。
「あ、あのクリス。怒っているか?」
「いえ、そんな……」
「夕飯クリスの好きなモノを用意したんだけど」
「……」
しばらくドア越しに会話を交わしていた俺たちだったが、やがてクリスの方からおずおずとした様子でドアを開けてくれたのだった。
「面白かった!」「続きが気になる! 今後どうなるの~っ!」
なんて思われたら、下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら☆5つ、まあまあなら☆4つ、仕方ないなら☆3つ、一応読めたなら☆2つ、つまらなかったら☆1つ、ブックマークも何卒よろしくお願いいたします。
七生へのお気に入り登録もお待ちしております!