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第1章 2話 招待状

 ネット繋がっていない俺のノートパソコンに、何故か送られてきた怪しいメール。


 タイトルは、『ようこそ、アースガリアへ!』。



 俺は震える指先で、その不審極まりないメールを開いてみたのだった。



 =======================


 ようこそ、アースガリアへ!


 おめでとうございます! あなたの部屋は今、アースガリアを代表する最大級のダンジョン『あおの洞窟』につながりました。


 さあ、夢のファンタジー世界を存分にご堪能ください。


 =======================



 何が「おめでとうございます!」だ! 

 しかもネットにつながらず、ダンジョンにつながったのだと?!


 仕事に行かなきゃならんのに、冒険なんてしているヒマなんてあるか!


 そして、下の方には、ゲームで見たことのあるものが。

 いわゆるステータス画面だろうか。



【名前】:サトウ

【所属】:人族

【性別】:男

【レベル】:1

【スキル】:【言語理解】

【間取り】:3LDK

【所持金】:5,500ギル

【その他】:【宅配ボックス】【聖域化】



 名前は「サトウ」。

 確かに俺の名は「佐藤」だが。


 レベル、スキル……まるで学生時代に夢中になったゲームの世界のようだ。

 わざわざ『人族』なんて表示があるということは、他の種族もいるということだろうか。


 それから、ひとつ訂正させてもらえれば、俺の家の間取りは3LDKじゃなく、2LDKなのだが。


……っていうか、何で間取りがあるんだよ!


 そして、謎の所持金額。

 このギルっていうのは、通貨の単位のようだが、俺の貯金なら、銀行の口座に300万程はあるはず。


【 】の部分をクリックすると、それぞれ詳しい説明が出た。



 =======================



【レベル】

 ダンジョンの中で獲れたモノを宅配ボックスに入れるとポイントが付きます。一定のポイントを満たせばレベルが上がります。

 レベルは10上がるごとに【スキル】が与えられます。また、【ボーナス特典】が与えられることもあります。

 レベルが上限の100になれば、【無限廻廊】のスキルが解放され、この部屋と任意の世界をつなぐことが可能となります。

 *ポイントは非表示です。


【言語理解】

 異世界アースガリアの世界において読み書き及び現地の人々と会話による自然な意思疎通が出来ます。


【聖域化】

 玄関の前にセーフティースペースを設けました。ここには、あなたに対して害意や悪意を持つ者は入れません。


【宅配ボックス】

 ダンジョン内で手に入れたモノを入れると自動回収され、その価値がポイントとして蓄えられていきます。

 ダンジョン内以外のモノは所持金に反映されます。

 注文画面からは商品の購入が可能です。代金は所持金から引かれます。


 *1円=1ギルで等価交換されます。

 *ギル/円の交換はできません。

 *ポイントは非表示です。



 =======================




「何だよ、これは!」 


 今日がどれだけ大切な日だと思っているんだ!


「くそっ!」


 俺は怒りに任せて玄関から出て、外の石造りの部屋で声を上げた。


「誰か、助けてくれ! おい、そっちに誰かいるんだろ!」

「いたずらしてるんだよな。わかったよ。怒らないからもうやめよう。……い、いや、やめてくれないか」


 …………。


「俺が悪かったなら謝るよ!」


 …………。


「……お願いだから」


 …………。



「畜生、どいつもこいつも俺のことバカにしやがって!」


 “ガッ”


「いてっ!」


 怒りに任せて、石壁を叩いてみたのだが、リアルな痛みと薄く擦りむいた皮に血が滲んだ。



 俺はふらふらと部屋に戻り、もう一度リビングテーブルの椅子に座り直した。


 ホント一体どういうことなんだろう。


 さっきは、思わず外に飛び出してしまったが、まだ送られてきたメールを最後まで読み終えていないんだった。


(くっ!)


 俺は、奥歯をかみしめながら、全文を読むことにしたのだった。



 =======================


 *電気水道などの公共料金及び家賃は、基本料金として所持金から毎日午前0時に引き落とされます。

 *なお基本料金において、1,000円以下の端数は切り上げさせていただきます。

 *現在レベル1につき1日当たり以下の金額分の購入が可能です。なお、送料は無料です。よかったですね。


【購入金額上限】:100円



 =======================


 …………。


 何が「よかったですね」だ。送料が無料の分、毎日の引き落としで1,000円未満の端数が切り上げだろうが!

 これって、基本料金が1,001円の場合でも2,000円徴収されるということだろう。

 しかも、現在購入できる金額の上限は100円だと?!


 俺は痛む右手をさすりながら、怒りに震えつつも、画面の下にある【購入はこちら】と書かれた所をクリックすると、膨大な数の商品一覧が現れた。


 そこに並ぶ商品は、日本円で表示されている。何となく今までお世話になってきた某大手通販サイトの食料品コーナーに近い気がする。


 商品の価格は100円単位。

 特に記載はないが、送料が無料なのとは引き換えに、100円未満は切り上げられているようだ。


 例えば俺がよく使うネットスーパーで98円均一で買っているお菓子やおつまみは100円に。118円のカップラーメンや5食入り198円のPBブランドの袋ラーメンはどちらも200円の値段表示となっている。


 品ぞろえが食料品のみなのは残念だが、本当に購入できるのなら異世界でも元の世界と同じような食生活が送れそうだ。


 ただし、今の俺には関係が無い。


 最後に小さく、次の様な注意書きが書かれていたからだ。


 *ご注文は300円以上からとなっております。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 踏んだり蹴ったりの末、最後の煽り文句はとどめを刺されますね。 この部屋の外や世界自体がどのようなものか不明ですが、レベル上げに勤しむ必要に駆られそうです。 聖域化は色々応用できそう。 こ…
[良い点] 読みやすい! 読み進めてくと時々笑ってしまう。文章の構成が上手だと思いました。 勿論、ストーリーも面白かったです( ´∀`)b [一言] 今日は二話までしか読めず申し訳ないです。 また時間…
[一言] 新連載おめでとうございます! ちょっとまだバタバタしてるので、 また落ち着いてからゆっくり読みに来させてもらいますね(^○^)
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