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3/3

後編

 ――そして来る夜会の日。

 シャンデリアに照らされた鮮やかな会場の真ん中で友人たちと談笑していたジュリアーヌは、話に夢中なふりをしながら彼の登場を今か今かと待っていた。


 結局エルヴィン王子はカルヴィンの相手の女を掴めなかった。

 ので、この場でなんとか決着をつけるしかない。そしてそれは全てジュリアーヌの手にかかっているのだ。いくら『完璧令嬢』たるジュリアーヌでも、少しばかり緊張してしまう。

 エルヴィン王子も婚約者の女性と一緒にソワソワしながら彼を待っている様子だった。


 そしてしばらく後、彼は現れた。


「待たせたな、皆の者!」


 本当はジュリアーヌたち以外は誰も待っていないと思うが、本人――カルヴィンとしては皆が己の登場を心待ちにしていたと思っているのだろう。

 いつになく着飾った彼は胸を張り、ずんずんと人並みをかき分けながら歩いてジュリアーヌの元へやって来る。そして言った。


「ジュリアーヌ。今日はお前に話がある」


「はい、何でしょうカルヴィン殿下?」


 友人とのおしゃべりをやめ、令嬢たちの輪の中から抜け出したジュリアーヌに、不恰好に指を突きつけるカルヴィン。

 せっかくの美貌が台無しだ。しかしそんなところも愛らしいと思ってしまうのだから、ジュリアーヌはだいぶ重症であった。


 周囲の貴族は二人に注目し、何かが始まる予感にいろめきだっていた。


「お前は俺の知らないところで今まで非道な行いをしていたそうだな。お前がそんな女とは思わなかった」


「非道な行い? そのようなことは我がアラバスター公爵家の名に誓ってしておりませんけれど」


 どうせ浮気相手から唆されたのだろう。ジュリアーヌは余裕の態度で首を傾げる。

 しかしカルヴィンはそれに取り合わず、「おい、来てくれ」と会場の外に向かって声をかけた。そして女性特有のヒールの靴音がして、一人の少女が現れる。


「皆様、ごきげんよう」


 可愛らしいカーテシーを披露しながら微笑む彼女は、栗色の髪に翡翠色をしていた。

 彼女にジュリアーヌは見覚えがある。否、あり過ぎる。


「ジュリエット……!?」


 さすがに動揺を隠しきれず、彼女と同じ翡翠色の瞳を見開くジュリアーヌ。

 ジュリアーヌの妹、ジュリエット・アラバスターが、カルヴィンに腕を絡ませ、ジュリアーヌを見上げていた。


「そういうことだったか……」


 遠くでエルヴィン王子の呟きが聞こえた気がした。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ――姉様の驚いた顔を見るのは久しぶりだわ。ああ、姉様が素敵。


 王太子に腕を絡ませ、はしたなくも体を預けるジュリエットは、姉のジュリアーヌを見つめながらうっとりと微笑んでいた。

 周りから見ればきっと姉の婚約者を奪ったことにほくそ笑んでいるふしだらな娘だと思われていることだろう。それはあながち間違いではないが、別に王太子に好意を抱いているというわけではなかった。むしろその逆で嫌悪さえしている。

 ならなぜこんな暴挙に出ているか。その答えは簡単だ。


「これでようやく姉様を解放して差し上げられるわ」


 すぐ隣の『ダメダメ王太子』にも聞こえないような小声で呟き、ジュリエットは笑みを深めた。




 公爵令嬢ジュリエット・アラバスターは重度の姉好き……つまりシスコンである。

 何をしても完璧で誰よりも美しく尊い、最高に素晴らしい存在。それがジュリエットにとっての姉だった。

 慕っている、というよりは崇めていると言った方がいいかも知れない。


 そんなジュリエットにとって宿敵と言える人物がいた。それは、最愛の姉の婚約者である男――カルヴィン王太子である。

 あれはダメだ。地位以外ジュリアーヌの婚約者に相応しい点が何もない。


 まず、頼りない。何もかも自分でやらず、ジュリアーヌに押し付けてばかり。責任感がない。そのくせ偉そう。何様なのだ、あの男は。私の姉様を侮辱するな。彼は姉様を任せられる器ではない……幼い頃からずっとそう思っていた。

 だが、そのうちジュリアーヌもカルヴィン王太子に見切りをつけて別れを切り出すだろうとジュリエットは甘く見ていた。それがいけなかったのだろう。十七歳になっても婚姻が後一年に迫っているというのに婚約は継続しているままだった。


「父様、このままでは姉様があの男と、王太子と結婚してしまうわ。なんとかならないのかしら」


 いよいよ危機感を覚えたジュリエットは、父であるアラバスター公爵と相談。

 父もジュリエットと同感らしく、ずっと前から方策は考えていたという。ただしそれにはジュリエットの協力が必要で、躊躇っていたのだとか。


「父様、私なら何でもするわ。だって姉様のためだもの」


「ただ、ジュリエットの名に傷がつく可能性がある。婚約者との別れ話も出るかも知れない。それでもいいか?」


「もちろんいいわよ、そのくらい」


 ジュリエットは婚約者と好き合っていないわけではないが、姉に比べると優先順位がずっと下なのだった。

 即決した彼女は、早速行動を開始。つまり、カルヴィン王太子を己の女性らしさに富んだ体と甘ったるい声で誘惑し、姉のありもしない話を吹き込むこと――。


 そしてそれは見事に成功し、王太子はジュリエットの話を信じ込んだ。


 このことが公にならないよう知り合いの令嬢令息たちに協力を頼んで回ったせいでかなり時間はかかってしまったが、ようやく作戦を実行に移せた。

 ここから始まるのは愚かな王太子が『完璧令嬢』の断罪の真似事をし、落ちぶれさせるための婚約破棄劇。


「散々姉様に酷い仕打ちをしてきたんだもの、覚悟なさいね、カルヴィン様?」


 しかしそんな内心を表に出すことなく、ジュリエットは馬鹿な王太子の馬鹿な浮気相手を演じ続ける――。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「ジュリエット、あなた」


 ジュリアーヌもすぐに妹がカルヴィンの隣に立っている意味と、彼女の思惑を理解した。

 そうか。それでまるで尻尾が掴めなかったわけだ。ジュリエットは社交が得意で顔が広く、色々な人物に頼みさえすればいくらでも王太子との関係を誤魔化すことができる立場にある。そしておそらくこれには父アラバスター公爵の助力もあるのだろう。


 だが理解と納得は別の話だ。まさか、別れさせるためにここまでするだなんて。ジュリエットにだって婚約者がいるのに。信じられない、とジュリアーヌは妹を静かに睨みつけたが、対するジュリエットはわざとらしく怖がって見せただけだった。


「姉様が睨んでくるわ……カルヴィン様、私怖いです」

「ジュリアーヌ。妹をいじめるなんてみっともない。それでも公爵令嬢か!」


「殿下、色々と誤解があるようですわ。第一このような場所でお話しすることではございませんでしょう? 控え室にてお話しいたしませんこと?」


 浮気相手がジュリエットだったことは意外中の意外だったが、すぐに切り替え、ジュリアーヌはカルヴィンへ会場を一旦離れることを提案する。

 だが、


「しらばっくれても無駄だぞ。お前がジュリエットを虐げていたことはわかっているんだからな」


 やはりカルヴィンはこちらの言葉に応ずるつもりはないようだ。


 ここまでは予想済み。他人の言い分をろくに聞かないカルヴィンが、少し言っただけではで聞き入れるとは最初からジュリアーヌも思っていない。長年彼の婚約者として支えて来たのだからそれくらいは知っている。


 だから――。


「わかりましたわ。それなら仕方がありませんわね。

 では、皆様のご迷惑にならぬよう手早く済ませてしまうとしましょう」


 ジュリアーヌは計画通り、彼を完膚なきまでに言い負かすことに決めた。


「ではまず一つ目。わたくしがジュリエットを虐げたという証拠は?」


「もちろんある! これを見ろ」


 そう言いながらカルヴィンが差し出して来たのは、分厚い書類だった。

 と言っても、用意したのはきっとジュリエットかその周辺の誰かに違いないけれど。


 サッと資料に目を通したが、まともな人間が見れば誰もが鼻で笑うような代物であるとわかった。

 カルヴィンを騙せさえすればいいと思っているのだろうから完成度が低いのは当然かも知れないが、ジュリアーヌは少し、ほんの少し腹が立った。どうせやるなら手抜きせずにやればいいのに、と。


「あら、本当ですわ。冤罪内容がびっしり。よくもまあこれだけ用意できたものですわね、ジュリエット? 姉様の評判が落ちるかも知れないことは心配しなかったのでしょうか」


「姉様、嘘を言わないで……? 私、本当に意地悪されたのよ。カルヴィン様、姉様がひどいわ」


「そうだ。お前がそんな大嘘つきだったなんて。俺はこれでも、お前を信用してやっていたんだぞ」


 心底悲しげな顔でジュリアーヌを糾弾するカルヴィンの言葉に、場違いであるとわかっていながら少し嬉しくなってしまう。

 誰にも気づかれないほどわずかに頬を赤らめたジュリアーヌ。次の瞬間、彼女へ向かって王太子が告げた。


「仕方ない。ジュリアーヌ・アラバスター公爵令嬢。俺はお前との婚約を破棄する!」


 ――ああ、本当にこの人は。

 婚約破棄を受けてもジュリアーヌはにこやかなままだった。

 普通は悲嘆したり、謹んでお受けするべき場面なのかも知れない。しかし彼女の胸は彼への愛おしさで溢れていた。

 そしてジュリアーヌは一言。


「婚約破棄? 絶対絶対嫌ですわ」


 カルヴィンの宣言を真っ向から跳ね返した。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「どうして!」


「あなたのためですわ」


「何、俺のためだと?」


 何もわかっていない様子で首を捻るカルヴィン。

 ジュリアーヌはそんな彼へ聖母のような笑みを浮かべながら言った。


「婚約破棄。それはつまりわたくし、そしてアラバスター公爵家の後ろ盾を失うということですわ。

 わたくしがおらずとも殿下は必要な公務がこなせまして? もしそれが可能だとしても、公爵家の後ろ盾無くしては廃嫡の上、平民に堕とされることでしょう」


「……!? で、でもジュリエットはアラバスター公爵令嬢だろう!」


「もしやジュリエットに鞍替えするおつもりでしょうか。ええ、ええ、きっとそうでしょうね。でもそうはなりません。何せジュリエットはすでに婚約者がいます。この国では多重婚は認められていませんし、かといってジュリエットの婚約者を……弟君を追い落とし、その座を手に入れられる自信がおありですの?」


 廃嫡と聞いて顔を青くし、必死に叫び返すカルヴィンだが彼の言葉はジュリアーヌの正論を前に砕け散る。


 ジュリアーヌの妹、ジュリエット・アラバスターの婚約者、それが他ならぬエルヴィン第二王子なのである。

 エルヴィンとジュリエットの仲は良好だったからまさかジュリエットがこんな行動に出るとは思わなかったのだが、そこまでしてでもジュリアーヌの婚約を無くしたかったらしい。本当に困った妹だ。


「ひどいわ、姉様。姉様はエルヴィン様とでも婚約し直せばいいのに! それに私、知っているのよ。姉様が度々エルヴィン様と二人きりでお過ごしになっていることを」


「ジュリエット、わたくしとエルヴィン殿下がお会いするときは必ず立会人がおりますのよ。

 これ以上わかりやすい嘘でカルヴィン殿下を惑わせるのはおやめなさい。あなたはわたくしの妹である前にこの王国の臣下なのです。不敬罪に問われたくなくば、今すぐここで謝罪するのですわ。わたくし、愛する妹を騎士団に突き出すような真似はしたくありませんの」


「姉様……」


 ジュリエットが唇を噛み締め、苛立たしげにそう呟く。

 計画がうまくいかなかったことへの怒りか困惑か。それはジュリアーヌにはわからない。


「カルヴィン様、姉様がひどいわ。私はただ、本当のことを言っているだけなのに。姉様なんてカルヴィン様の婚約者に相応しくないわ! そうでしょう、カルヴィン様?」


「…………」


 いくら愚かと言えど、さすがに己の立場の危うさを理解してしまったカルヴィン王太子は何も言わない。言えない。

 ただ俯き、両手をぎゅっと握り締めているだけだ。せっかくの綺麗な顔は苦しげに歪んでいた。


 ――ああおいたわしや、殿下。

 ジュリアーヌは誰にも聞こえないようにそっと嘆息した。後でたっぷり甘やかさなければ。

 その前に、ジュリエットをしっかりと叱っておくべきだろうか。


「ジュリエット、いつもは見逃してきましたが今回ばかりは不敬が過ぎますわ。わたくしは殿下に相応しくあろうとして完璧と称されるまでになりましたのよ? なのにこんな愚かなことを企んで。あなたの婚約者様もさぞ残念がっておいででしょうね」


「知らないわ、そんなこと。悪いのは全部姉様なの。こんな風になるまで放っておいて。姉様にはエルヴィン様がお似合いなのよ! なのに、どうしてカルヴィン様なの!? こんなダメ男のどこがいいっていうの!」


 とうとうジュリエットは本性を現した。

 先ほどまで腕を絡めて親しげにしていた態度から一変、カルヴィン王太子を睨みつけ糾弾し始めたのだ。


「この男、『お前のことは何があっても守るから』って私に言ったのよ? なのに何よこの体たらくは。自分の身が危なくなったらすぐに弱腰になって。これで王太子? ふざけないで! そんな弱虫の分際で、私の姉様の夫になる資格があるわけないでしょうが!」


「待て、どういうことだジュリエット? お前は俺に惚れているはずじゃなかったのか。惚れているから助けを求めて来たんだろう」


 薄紅色の目を見開き、カルヴィンは驚愕の声を上げる。

 そんな彼は次の瞬間、ジュリエットに鼻で笑われ罵倒された。


「カルヴィン様、あなたって本当に哀れな人ね。私に騙されていたのよ馬鹿王子。優秀で高貴で何者にも変え難い姉様が、いじめなんて下等な真似すると思っているの!? それこそ不敬よ。姉様に謝罪し――むぐっ」


 しかしジュリエットのそんな声は、途中で強制的に中断させられる。


 なぜなら彼女の顔面を、エルヴィン第二王子の男性的な胸板が覆っていたからだった。


「愛しい僕の天使、いくらあんな人とはいえ、僕の兄上を罵倒しないでくれるかな」


「ちょっとエルヴィン様! いきなりなんてことするの!?」


「さっき兄上に身を寄せていただろう? その仕返しさ。君の婚約者は僕なのに。ずるいよ」


「やだやめてエルヴィン様、人前でイチャイチャしないって約束でしょう!? 姉様助けて! 姉様、姉様――っ」


 溶けてしまいそうな笑みを浮かべながら婚約者を抱きしめるエルヴィン王子、それに必死に抵抗しようとし、しかし敵わないジュリエット。

 ジュリエットの悲鳴だけを残し、彼らは夜会の会場からすぐに姿を消してしまった。


 そして残ったのは、唖然としたままのカルヴィン王太子とジュリアーヌ、そしてしんと静まり返った外野(貴族連中)だけ。

 しばらく静寂があたりを包んだが、それを破ったのはジュリアーヌの声であった。


「うちの妹がお騒がせいたしましたことをお詫びいたしますわ。さて殿下、お訊きいたしますけれど、今も婚約破棄なさる御意志はおありで?」


 尋ねると、カルヴィンは戸惑ったように目を伏せる。

 そして彼にしては珍しく、躊躇いがちに口を開いた。


「癪なことではあるが、今のを見てお前がジュリエットを虐げたというのはあいつの嘘だとわかった。だが、王族であり王太子である俺が一度宣言したものを撤回など……」


「殿下が落ちぶれるのをわたくしにただ見ていろとおっしゃいますの? 嫌ですわ、そんなの」


「……ジュリアーヌ」


「そもそもわたくしはまだ、婚約破棄を承認してはおりません。書状でも同じこと。

 わたくしのことを気にしていらっしゃるなら、わたくし、ちっとも腹を立てておりませんわ? 少し悲しかったのは事実ですが、悪いのはうちの妹ですもの」


 そう言いながらジュリアーヌは、そっとカルヴィンの手を取る。カルヴィンはそれに抵抗せず、ボソリと呟いた。


「すまなかった。もう二度と別れるなんてことは言わないと誓おう」


「素直でよろしいですわ。ふふっ」


 いつもは意地っ張りで偉そうなくせに、こんな時だけ雨に濡れそぼった子犬のようになるのだから愛おしまずにはいられないのだ。

 ジュリアーヌは心から愛する『ダメダメ王太子』ににっこり微笑むと、彼を伴って会場を後にしたのだった――。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆





 ジュリアーヌの婚約者、カルヴィン・エル・ドウェークは愚かである。

 婚約破棄事件の後しばらくは大人しくしていたものの、数日経てばジュリアーヌを待ちぼうけさせたり、偉そうな態度を取ったりと今までのことなんて忘れたかのように振る舞い始めるのだからダメ男としか言いようがない。


 でもそんなところが愛らしくて、ジュリアーヌは彼のことが大好きなのである。


「ねぇ姉様、本当に結婚するの? 今からでも遅くないわ。やはり別の人にした方が……」


 今日も今日とてジュリエットがそんなことを言ってくる。

 彼女はあんなことがあってからも二人の結婚にはまだ反対で、隙あらば別の男を紹介して来ようとしてきたりするので困る。

 しかしジュリアーヌは淑女の笑みでそれを受け流し、言い返してやるのだ。


「あらジュリエット、『別の男』なんて言葉を口にしたら愛しの婚約者様に嫉妬されてしまいますわよ?」


「愛しの婚約者様って……。そんな恥ずかしい呼び方しないで。私が一番好きなのは姉様なのよ」


「ほら、カルヴィン殿下がやって来ましたわ。どうやらエルヴィン殿下も一緒のご様子ですから、たっぷり甘やかされなさい」


「もう、姉様ったら」


 少し不満げながらもそれ以上言葉にせず、エルヴィン王子の方へと駆け寄っていくジュリエット。

 ジュリアーヌは彼女の後ろ姿を見送ると、我が愛しの婚約者――否、挙式してまもなく夫となる人を出迎えるべく席を立った。


「お待ちしておりました、カルヴィン殿下。いつもに増して素敵でいらっしゃいますわね」


「待たせたなジュリアーヌ。では式に行くか!」


 せっかくの花嫁ドレスを少しも褒めてくれないカルヴィンに、しかしジュリアーヌが腹を立てることはない。

 だって彼が心の中では自分を好いてくれていることをジュリアーヌは知っている。あの時、ジュリエットと肉体関係がなかった時点でそれは明らかだ。


 本当は甘やかしてくれるジュリアーヌのことが好きで好きでたまらないくせに、不器用過ぎるせいで自分の気持ちにすらあまり気づいていないカルヴィン。

 そんなところまで全て全て、彼女にとっては愛おしいのだから――。

 これにて完結です。ご読了ありがとうございました。

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[良い点] カルヴィンが終始ダメ男だったのがよかったですね。 ジュリアーヌにはそんな彼をいつまでも支えてあげて欲しいですね。
[一言] 完結おめでとうございます! めでたしめでたし( ˘ω˘ )
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