95 ヨシユキがいる戦闘
迷宮攻略は進んでいく。
古巣の仲間との連携は、今も変わらず上手く出来た。
基本的な陣形は以前と同じだった。
斥候を先頭に、戦士が二人、魔術師二人が続く。
その後ろに戦士と後方警戒が一人つく。
この最後尾の警戒がヨシユキの分担だった。
後方から接近してくるというのも迷宮内では珍しくない。
通路が入り組んでるので、何がどこから来るか分からない。
その為、余裕があれば最後尾にも探知が出来る者を置くのが基本になっている。
その後方警戒をヨシユキが担当している。
探知能力では斥候のユキナに劣るからだ。
ただし、決して能力が無いわけではない。
あくまでユキナに劣るだけだ。
推奨レベルの高い最前線でも、ヨシユキの探知能力は充分に働いている。
その探知能力に引っかかる敵もやって来る事もなく。
もっぱら前方から敵はやってくる。
その都度斥候から、
「来たよ」
と声がかかる。
その瞬間に陣形がととのう。
まず、他の者達が左右に分かれる。
通路の真ん中を開ける形になる。
自然とヨシユキの前が綺麗になる。
敵への射撃が可能となる。
既に矢をつがえていた弓をヨシユキは構えていく。
探知と遠視・暗視の魔術によって敵の位置もはっきりする。
ゴーグルの効果とあいまって、相手の姿をしっかりととらえる。
その敵に向けて矢を放っていく。
三段の性能を持つ弓は凄まじい速度で矢を放っていく。
それは推奨レベル65の怪物を容赦なく貫いていく。
矢にも魔力が込められてるので、威力は更にかさましされる。
当たった部分を文字通りに吹き飛ばし、大きな穴を開けていく。
接近するまでにそうして敵を潰していく。
50メートルほど先にいた敵は次々に倒れていく。
それでもなお接近してくるものもいるが。
それらは前衛に立つ者達が倒していく。
今回の前衛であるタケヒトとタクマ。
それらが敵の突進を防いでいく。
盾で攻撃を受け。
あるいは剣で敵を切り裂く。
その隙をついて、ユキナも攻撃を仕掛けていく。
壁をのぼり、天井にはりつき、様々な方向から奇襲をかけていく。
魔術師であるシンヤも攻撃魔術を発動させていく。
後方にいる敵に酩酊の魔術を使い、行動を妨げていく。
酩酊、つまり酔っ払ったような状態になった敵はまともな思考と行動が出来なくなる。
比較的低レベルの魔術だが、その効果は大きい。
かけられた敵は千鳥足になって頭をふらつかせている。
前方にいる敵を切り伏せた前衛が、それらに襲いかかる。
これまた文字通りに瞬殺して戦闘を終えていく。
「これじゃ治療の必要もありませんね」
ほっとしたような、活躍がないのが少し残念なような。
そんな声をホナミは呟いた。
「俺も前に出る暇がねえよ」
後方で警戒についていたヒロシも憮然とする。
だが、それ以上に喜んでもいた。
「やっぱりヨシユキがいると違うな」
「おう」
そんな事を言い合っていく。
実際、彼らは助かっていた。
後方の警戒がいるので安心感が違う。
先んじて弓で攻撃してくれるので、敵の数が減る。
前衛は数多い敵を相手にしなくて済む。
魔術も威力は高いが消耗の激しいものを使わないで済む。
怪我も少ないので治療そのものが必要ない。
戦士も一人は控えに回れる。
おかげで体力の消耗もなく、次の戦いに備える事が出来る。
「一人いるだけでこうも違うのか」
あらためてヨシユキの存在感を確かめる事になった。
それを聞かされるヨシユキは、
「なにを大げさな」
と言うしかない。
「レベルが高いから上手くやってるだけだ」
「いやいや」
謙遜の言葉を全員が否定した。
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