94 最高の武器と防具を
「それじゃ、これを」
古巣に戻ったヨシユキは、早速持参した物を皆に配っていく。
「これは…………おい、これ!」
「すげえ…………」
「いいのか?」
「業物だぞ」
そう言って全員が驚いていく。
それもそうだろう。
ヨシユキが持ってきたのは、最新の装備。
三段相当の能力を持つ武具だからだ。
これらはヨシユキの旅団に所属する鍛冶が作ったものだ。
今後の探索の為に必要になるだろうと。
試作をいくつも作って仕上げたものだ。
迷宮都市内でも、探索者達の間にも出回ってはいない。
正真正銘、最新鋭で最高性能の武具である。
全ては、レベルを上げた鍛冶が作ったものだ。
ヨシユキが率いていた者達である。
一般的な技術の持ち主で迷宮探索には向かない者達。
それでも迷宮に挑みたいという者達。
挑まねばならない理由をもつ者達。
それらの面倒を見て世話を焼いた結果がここにあった。
レベルを上げた鍛冶が、迷宮街に腰を据えた結果でもある。
持ち込まれる武具を治す修理工房。
それが迷宮最高の武具を作り出す場所となっていった。
迷宮の外に出れば下がってしまうレベル。
だが、迷宮の中でならばレベルはそのままだ。
そこで鍛冶達は高い能力を最大級に使って武具を作っていった。
鍛冶だけではない。
その他の職人も加わっていく。
少しでも良いものを作ろうとそれぞれの職能を持ち寄っていった。
そうして出来上がったのが三段に至る武具である。
「けど、いいのか。
こんな良いものをもらっても」
「かまわないよ。
職人達も使ってくれって言ってたし」
彼らからすれば、使ってくれねば困ってしまう。
ヨシユキ達の為に作ったのだから。
その当事者に拒まれては立つ瀬が無い。
「それに、実際に使ってみて、使い心地を聞きたいんだって」
「なるほど、それならありがたく使わせてもらう」
そう言ってタケヒト達は受け取っていく。
職人からすれば、作ったものが本当に使えるのか知りたいのだろう。
それを知るためにも、探索者に使い心地を確かめてもらう必要がある。
ある意味、実験に使われるようなものだ。
だが、それで気分を悪くする者達はいない。
最高の武具を使えるのだから。
そんなタケヒト達だが、次のヨシユキの言葉には驚くしかなかった。
「試作で四段のものも作ってるんだって。
それに意見を反映させたいらしいから」
「四段……!」
「嘘だろ」
「もうそこまで行ってるのかよ」
信じられない事だった。
三段を飛び越えて四段。
どれだけの知恵者と技術者がいるのかと思った。
「俺も驚いてるよ」
ヨシユキも理解できないものがあった。
どうやったら四段という性能の武具が作れるのか。
自分の仲間とはいえ、その能力には圧倒される。
「でも、それが出来れば探索はもっと楽になるから。
協力お願い」
その協力もヨシユキ派遣の報酬の一つである。
最前線での使い心地を試すという最高の試験。
その成果が鍛冶達にとって最善の代金だった。
滅多に得られない最高の情報になるから。
「しっかりしてるな」
タケヒト達はある意味貪欲なヨシユキの仲間に笑うしかない。
ヨシユキも、
「まったくだ」
と頷いた。
ともあれ、これで三段相当の武具が使えるようになる。
性能は通常の物品の4倍ほど。
現時点では手に入る最高の能力だ。
他にも、ヨシユキが使ってるゴーグルのような補助装備も手に入る。
探索や探知をしやすくするもの。
浮遊などの特殊な効果をもたらすもの。
離れた者達との通話が出来るようになるもの。
そうした探索の助けになるようなものが幾つかもたらされる。
「凄いな、本当に」
もたらされる様々な装備に、古巣の者達は圧倒された。
「俺も驚いてるよ。
こんな物を作ってたのかって」
ヨシユキがそう言ってるのが、いくらかの慰めだった。
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