93 ヨシユキ レベル74
そのレベルになったとき、ヨシユキはあらためて古巣に出向いた。
出迎えるかつての仲間は一様に笑顔を浮かべている。
そんな彼らに、ヨシユキはどんな顔をしたら良いか分からなかった。
とりあえずぎこちない笑顔を作って、
「よう」
声をかけた。
「戻ってくるんだな?」
タケヒトは嬉しそうに聞いてくる。
肩をすくめてヨシユキは、
「そうなるかな?」
と答えた。
その途端、全員が飛びついてきた。
「遅かったじゃねえか!」
「待たせすぎ、この野郎!」
「おかえり、おかえり!」
「待ってました」
「遅い」
口々にそんな事を言ってくる。
「これでまた一緒だな」
タケヒトがまとめるようにそう言う。
「そうかな?
だといいけど」
ヨシユキとしてはなんとも言えない。
古巣に戻ってこれて嬉しいのは確かなのだが。
「でも、みんなを捨てることも出来ないから」
今はヨシユキが率いてる者達もいる。
それらを捨てて古巣に合流する事は出来なかった。
「あくまで出向とか派遣って形になるから」
それがヨシユキの出せる妥協だった。
自分の仲間や旅団を捨てる事は出来ない。
その為ヨシユキは、所属は自分の旅団ままとした。
古巣には派遣するという形で入るという事にしていく。
その間、ヨシユキの旅団からの援助は受け取らない。
古巣の中で稼ぎを分けていく事にする。
このあたりはしっかりとしておく必要があった。
うやむやにしたり、曖昧にしてると何かしら問題が発生する。
そして問題は、最悪の時に最悪の形で噴出する。
それをなるべく避けておきたかった。
タケヒト達はそれで良いと考えていた。
どんな形であれ、強力な探索者が仲間に加わるのだ。
この利益は大きい。
何より、かつての仲間である。
それと再び手を取り合える事が嬉しかった。
そんな古巣の者達は、現在レベル68。
おおよそこのあたりの強さを持っている。
能力値で見れば、ヨシユキとほぼ同等だ。
一緒に行動する上で支障になる事はない。
「むしろ、俺達の方が足手まといかもな」
レベルの差を見てそういう者もいる。
「よろしく頼むぞ」
「何言ってんだよ」
からかいの言葉にヨシユキは苦笑をかえした。
こうしてヨシユキは、最前線旅団に復帰した。
気に入ってくれたら、ブックマークと、「いいね」を




