88 預けていた装備を受け取りにいく
「でも、俺達も最前線に近づいてきた」
ヨシユキもそう言っていく。
「そろそろ推奨レベル40あたりに近づいてる」
「そいつは困ったな」
全く困った素振りも見せずにタケヒトが言う。
「それじゃ、俺達が偉そうに出来なくなるじゃないか」
「そう出来るように頑張るよ」
「楽しみだ」
言いながら笑っていく。
「そこでな」
あらためてヨシユキはタケヒト達を見る。
「預けてたものを取りにいきたいんだ」
その言葉にタケヒトも古巣の者達も興奮する。
「ついにか!」
「ようやくだな」
「そっかー、もうそれくらいになるのか」
「ようやくですね」
「うむ」
口々に喜びをあらわしていく。
古巣に預けていたヨシユキの装備。
低レベルの所で使うには強すぎる武具。
あっても持て余すと古巣に預けていたものだ。
それを引き取るという事は、
「ようやく戻ってくるのか」
という事になる。
ヨシユキの前線復帰。
そうでもなければ強力な武具は必要ない。
必要になってるというのは、それを使う場所までやってきたという事だ
その事をタケヒト達古巣の者達は喜んでる。
「また一緒にやれるのか」
「いやー、人手が足りなくて困ってたんだよね」
「警戒は私一人だし」
「戦闘もな。
やっぱり、あと一人援護がいてくれると楽なんだよ」
「魔術を使う時の護衛もな」
「いてくれると助かります」
古巣からそんな声が上がってくる。
ヨシユキは苦笑するしかない。
「いや、合流はまだ無理だよ」
「えー」
途端に残念がる声があがる。
「レベルも能力も足りてないし。
それに、みんなと一緒に行くかわからない」
「どうして?」
「俺の旅団があるから」
ヨシユキは周りを見ながら言う。
ヨシユキと古巣の者達のいる場所。
迷宮の中に設置した拠点。
ヨシユキの旅団が運営する迷宮街。
それはまさしくヨシユキの旅団である。
「こいつらがいるんだ。
攻略するなら、こいつらとって事になるぞ」
「そっかー」
残念がる声が出て来る。
「まあ、そりゃそうか」
「残念」
「せっかくまた一緒だと思ったんですが」
「上手くいかねえもんだな」
古巣の者達は本当に残念そうだった。
「でもまあ、見所のある奴がいたら引っ張っていってくれよ。
せっかくなんだから出世させてやりたい」
そう言って仲間を推薦していく。
ヨシユキと同じ凡庸な能力の持ち主ばかりではあるが。
それでも、優れた者も何人かはいる。
そんな者達ならば、タケヒト達と足並みを揃える事が出来るかもしれない。
「まあ、良い奴がいればな」
タケヒトも色よい返事をする。
やぶさかではないのだ、良い人材の確保には。
「でも、だったらお前が来い」
そうも言う。
「一番引っ張りたいのは、お前だ」
そう言われると、ヨシユキは何も言えない。
「ま、縁があったら」
そう言って誤魔化すしかなかった。
ただ、なんだかんだで装備はヨシユキの所に戻る事になった。
久しぶりに強力な武器を手に取り、迷宮に挑んでいく事になる。
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